相続人と遺産分割 / 手順

遺産分割調停の流れ:申立ての費用・書類と1回目の期日の準備

この記事のもくじ
  1. 調停を申し立てる前に:誰が、誰を相手に申し立てるか
  2. 費用と申立先:1,200円と郵便切手、管轄の調べ方
  3. 必要書類のチェックリスト
  4. 期日の進み方と、終わり方(成立・不成立)
  5. 1回目の期日までにやっておく準備

遺産分割調停は、話し合いがまとまらないときに家庭裁判所で合意を目指す手続です。申立先は相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所(または当事者が合意した家庭裁判所)、費用は被相続人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手です。申立人以外の相続人全員を相手方にし、裁判官と家事調停委員でつくる調停委員会が間に入ります。合意できれば調停調書が作られ、できなければ自動的に審判に移ります。

調停を申し立てる前に:誰が、誰を相手に申し立てるか

民法907条2項は、遺産分割の協議が調わないとき、またはできないときは、各共同相続人が家庭裁判所に分割を請求できると定めています。裁判所の案内では、遺産分割調停は相続人の1人または数人が、他の相続人全員を相手方として申し立てます。

  • 申立人になれる人:共同相続人、包括受遺者(遺言で財産の割合を受けた人)、相続分を譲り受けた人
  • 相手方:申立人以外の相続人全員(話し合いに協力的な人も含む)
  • 弁護士:依頼しなくても手続はできると裁判所のQ&Aは案内しています

調停の前に、話し合いでどこまで決まっていて何が争いかを整理しておくと、申立書や事情説明書が書きやすくなります。よくある争いの型は相続トラブルの典型10類型と予防・相談先にまとめています。家事事件の手続は原則として公開されません(家事事件手続法33条)。

費用と申立先:1,200円と郵便切手、管轄の調べ方

項目 内容 確かめ方
申立先 相手方のうち1人の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所(家事事件手続法245条1項) 裁判所の「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」で、相手方の住所の市区町村から引く
収入印紙 被相続人1人につき1,200円分 裁判所の遺産分割調停のページ
郵便切手 連絡用。額は裁判所ごとに違う 申立先の家庭裁判所のページ。保管金として電子納付もできる
書式 申立書・事情説明書・進行に関する照会回答書・送達場所等届出書 裁判所の書式ページ(記載例つき)

注意したいのは、調停と審判で申立先が違うことです。調停は相手方の住所地ですが、最初から審判を申し立てる場合は、相続が開始した地(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所になります。審判の仕組みは遺産分割の審判とは:調停が不成立になった後の流れで扱います。

必要書類のチェックリスト

裁判所の案内にある標準的な書類は次のとおりです。

  • 申立書1通と、相手方の人数分の写し
  • 事情説明書(遺産分割)、進行に関する照会回答書(遺産分割)、送達場所等届出書
  • 被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本と、住民票または戸籍附票
  • 亡くなっている子(とその代わりに相続する人)がいれば、その人の出生時から死亡時までの戸籍謄本
  • 遺産に関する証明書:不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しまたは残高証明書、有価証券の写しなど
  • 相続人が配偶者と父母、配偶者と兄弟姉妹などの場合は、順位に応じた追加の戸籍

申立ての前に取れない戸籍は、申立て後に追加で出せます。戸籍の代わりに法定相続情報一覧図の写しを出せる場合もあるので、申立先に確かめます。同じ書類は1通で足ります。

図解:遺産分割調停の流れ
  1. 申立て(相手方の住所地の家庭裁判所)
  2. 期日の通知が全員に届く
  3. 期日:調停委員会が事情を聴き、資料の提出を求め、必要なら遺産の鑑定
  4. 解決案の提示・助言 → 合意を目指す
  5. 合意 → 調停調書(確定した審判と同じ効力)→ 登記・預金の手続へ
  6. 合意できない → 調停不成立 → 審判へ自動的に移る

期日の進み方と、終わり方(成立・不成立)

調停は、原則として裁判官1人と家事調停委員2人以上でつくる調停委員会で行います(家事事件手続法247条・248条)。裁判所の案内によると、調停では当事者から事情を聴き、資料の提出を求め、必要に応じて遺産の鑑定を行い、各当事者の希望を聴いたうえで解決案の提示や助言をして、合意を目指します。期日が何回開かれるかは事件の内容によって変わります。

終わり方は次の4つです。

終わり方 中身 その後
調停成立 合意が調書に記載される。記載は確定した審判と同じ効力(268条1項) 調書をもとに相続登記・預金の払戻しなどを進める
調停不成立 合意の見込みがないとして終了(272条1項) 調停申立ての時に審判の申立てがあったとみなされる(272条4項)
調停に代わる審判 裁判所が一切の事情を考えて解決案を審判で示す(284条) 2週間以内に異議が出れば効力を失い、審判の手続へ(286条)
取下げ 申立人が取り下げる(273条1項) 相続開始から10年を過ぎた後は、相手方の同意がなければ効力がない(273条2項)

遠方に住む人は、電話やウェブ会議で期日に加わる方法(258条1項で準用する54条)や、調停条項案を書面で受け入れる方法(270条)があります。10年の期限が分け方に与える影響は遺産分割に期限はあるかと10年・相続税の期限を見てください。

1回目の期日までにやっておく準備

1回目の期日では、何が遺産で、いくらと見るか、誰が何を希望するかが話題になります。次の5つを紙にまとめて持っていくと、話が進みやすくなります。

  1. 遺産の一覧:不動産・預貯金・株などを、証明書の写しと一緒に一覧表にする。家庭裁判所の手続は遺産を探し出す手続ではないため、他にも遺産があると考えるなら、裏付けの資料を自分で用意します(裁判所のQ&A)。
  2. 評価の資料:不動産は固定資産評価証明書に加え、査定書など自分が根拠にしたい資料。
  3. 希望する分け方と理由:「実家に住み続けたいので取得し、代償金を払う」など。代償金の考え方は代償分割とは?家を一人が継いでお金を払う方法を参照。
  4. 特別受益・寄与分の資料:生前の援助の記録、介護の日誌や領収書。主張するかどうかは早めに決めます。
  5. 借金の資料:借金は相続開始と同時に法定相続分で分かれ、原則として遺産分割の対象にならないと裁判所は案内しています。分け方の話と混ぜないよう、別に整理します。

主張の組み立てや、相手方の弁護士とのやりとりに不安があるときは、相続で弁護士に頼むべきときの見分け方を読んでから相談先を選んでください。申立書の書き方など手続の方法は、家庭裁判所の手続案内で聞けます。

よくある質問

Q. 相手方が調停に来ないとどうなりますか?

調停の期日に呼び出された人は出頭する義務があり、正当な理由なく出頭しないと5万円以下の過料に処すると定められています(家事事件手続法258条1項で準用する51条)。それでも合意の見込みがなければ調停は不成立となり、審判の手続に移ります(272条4項)。

Q. 弁護士に頼まずに遺産分割調停はできますか?

できます。裁判所のQ&Aも、弁護士に依頼していなくても調停の手続を行うことができると案内しています。ただし、特別受益や寄与分を主張したい、相手方に弁護士が付いている、遺産の範囲で争いがあるといった場合は、弁護士に相談してから進めると主張を整理しやすくなります。

Q. 遠方に住んでいて家庭裁判所に行けない場合は?

裁判所が相当と認めるときは、電話やウェブ会議など音声の送受信で期日の手続を行えます(家事事件手続法258条1項で準用する54条)。遠方で出頭が難しい人は、示された調停条項案を受け入れる書面を出し、他の当事者が期日で受け入れる方法で合意することもできます(270条)。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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