家族信託の費用:契約書作成・公正証書・信託登記の内訳と比べ方
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家族信託の費用は、①専門家の報酬、②公正証書の公証人手数料、③不動産の信託登記の登録免許税、④その他の実費の4つに分けると比べやすくなります。日本司法書士会連合会(日司連)が2024年3月に行った報酬アンケートでは、自宅(評価額3,000万円)と預金1,000万円を子に託す設例で、契約書案の作成支援から信託登記の申請代理まで頼んだ場合の報酬の平均が327,576円(消費税込み)でした。これに公証人手数料と登録免許税が加わります。以下、それぞれの決まり方と、見積書の比べ方を説明します。
家族信託の費用は4つに分かれる
まず全体像です。法律で額が決まっている費用と、依頼先が決める費用を分けて考えます。
| 費用 | 決まり方 | 支払先 | 目安の出し方 |
|---|---|---|---|
| ①専門家の報酬 | 依頼先が自由に決める | 司法書士・弁護士など | 日司連のアンケート、各事務所の報酬基準 |
| ②公証人手数料 | 公証人手数料令で決まる | 公証役場 | 目的の価額の区分表+信託の加算1万3,000円 |
| ③登録免許税 | 登録免許税法で決まる | 国(登記の申請時に納付) | 固定資産税評価額×税率 |
| ④その他の実費 | 実際にかかった額 | 役所・法務局など | 印鑑証明書・住民票・評価証明書・登記事項証明書など |
このうち②と③は、同じ財産なら誰に頼んでも額は変わりません。見積もりの差が出るのは①で、比べるときは①を中心に見ます。
| 区分 | 依頼先で変わるか | 中身 |
|---|---|---|
| 専門家の報酬 | 変わる | 設計・契約書案・公証役場との調整・登記・口座開設の支援 |
| 公証人手数料 | 変わらない | 公証人手数料令の計算どおり |
| 登録免許税 | 変わらない | 土地0.3%(2029年3月31日まで)・建物0.4% |
| 実費 | ほぼ変わらない | 証明書の取得費、郵送費、出張の日当など |
専門家の報酬:日司連アンケートの設例で見る
司法書士の報酬は各司法書士が自由に決め、報酬の基準は定められていません。日司連は参考として、2024年3月に会員を対象に行った報酬アンケートの結果を公表しています。民事信託(家族信託)の設例は、評価額3,000万円の自宅と預貯金1,000万円を信託財産とし、子を受託者とする信託契約で、頼む範囲を段階的に広げた4つです。
| 設例 | 頼む範囲 | 有効回答 | 報酬の平均(税込) |
|---|---|---|---|
| 民事信託-1 | 信託契約書案の作成支援 | 126 | 206,175円 |
| 民事信託-2 | -1+公正証書作成への同行 | 113 | 246,819円 |
| 民事信託-3 | -2+金融機関との調整・信託口口座の開設支援 | 107 | 277,196円 |
| 民事信託-4 | -3+所有権移転と信託の登記の申請代理 | 127 | 327,576円 |
読むときの注意が3つあります。1つ目に、これは報酬だけの平均で、公証人手数料・不動産の調査費用・日当は入っていません。2つ目に、設例の条件(財産の種類と額、受託者1人)が変われば報酬も変わります。賃貸物件が複数ある、受託者を2人置く、信託監督人を置くなど、設計が複雑になれば作業も増えます。3つ目に、平均は「相場」ではありません。自分の家の条件で見積もりを取り、この設例のどの段階に当たるかを照らし合わせる使い方が合っています。
弁護士に頼む場合も、報酬は事務所ごとに決まります。家族信託のサービスを打ち出す会社に頼む場合は、会社への手数料のほかに、契約書を作る弁護士や登記を担う司法書士への報酬が別にかかるかどうかを確かめます。
公正証書の手数料:公証人手数料令での計算
信託契約を公正証書にするときの手数料は、公証人手数料令で決まっています。法律行為の公正証書は、目的の価額の区分に応じた別表の額が基本で(9条)、信託の公正証書は、その額に1万3,000円を加えます(22条の2。信託財産の価額が1億円を超えるときは加えない)。2025年10月1日から適用されている別表の一部は次のとおりです。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 49,000円 |
筆者の計算例:信託財産の価額4,000万円を目的の価額として計算すると、33,000円+信託の加算13,000円=46,000円です。実際に目的の価額をどう数えるかは公証人が嘱託の内容から算定するので、公証役場で見積もりを出してもらいます。このほか、証書の枚数が一定の枚数を超えると1枚ごとに300円が加わり(25条)、正本・謄本の交付には、紙なら1枚300円、電子データなら1件2,500円がかかると日本公証人連合会は案内しています。親が入院中で公証人に出張してもらう場合は、手数料の加算と日当・交通費が加わります。
信託登記の登録免許税と不動産取得税
不動産を信託すると、所有権の移転と信託の登記を同時に申請します。税の扱いは次のとおりです。
- 委託者から受託者への所有権の移転の登記:登録免許税はかかりません(登録免許税法7条1項1号)
- 信託の登記:不動産の価額の1000分の4(別表第一)。土地は2029年3月31日までの間、1000分の3に下がっています(租税特別措置法72条1項2号)
- 不動産取得税:委託者から受託者に信託財産を移す場合の取得には課されません(地方税法73条の7第3号)。ただし、同条は例外も定めているので、受益者を子にするなど親以外にする設計の場合は、都道府県税事務所か税理士に確かめます
筆者の計算例:固定資産税評価額が土地2,000万円・建物500万円の実家なら、土地2,000万円×0.3%=60,000円、建物500万円×0.4%=20,000円で、登録免許税は80,000円です。
ここまでの例を足すと、日司連の設例4の平均報酬327,576円+公証人手数料46,000円+登録免許税80,000円=453,576円に、証明書代や枚数加算などの実費が加わる計算になります(筆者の計算。財産の額と頼む範囲で大きく変わります)。
始めた後に続く費用と手間
家族信託は契約して終わりではありません。始めた後にも、次の費用や手間が出てきます。
| 項目 | 中身 | 根拠・確かめ先 |
|---|---|---|
| 受託者への報酬 | 契約に定めた場合だけ、信託財産から受けられる | 信託法54条 |
| 信託監督人の報酬 | 専門家を監督役に置くなら、契約で決めた報酬が続く | 信託法131条 |
| 帳簿と年1回の報告 | 受託者が貸借対照表・損益計算書などを作り、受益者に報告 | 信託法37条 |
| 信託の計算書 | 受託者が毎年1月31日までに税務署へ。収益が年3万円以下なら不要 | 所得税法227条・同施行規則96条 |
| 確定申告 | 賃貸収入などは受益者の所得になる。税理士に頼むならその報酬。見積もりでは、頼む範囲(申告だけか、信託の計算書の作成も含むか)、年1回か随時か、報酬の決め方の3点を確かめる | 税理士の見積もり |
| 終了時の登記 | 信託が終わり、財産を帰属先に移す登記の登録免許税と報酬 | 契約の内容と司法書士の見積もり |
契約後の相談や契約の見直しに継続の料金がかかるかどうかも、依頼先ごとに違うので見積もりで聞きます。初期費用だけでなく、5年・10年続いたときの合計で比べます。
見積書を比べるときの確認点
見積書を2〜3か所から取り、次の点をそろえて比べます。司法書士は、仕事を受ける前に報酬の算定方法などの基準を示すことが求められています(司法書士法施行規則22条)。
- 報酬と実費(公証人手数料・登録免許税・証明書代)が分けて書かれているか
- 日司連の設例の1〜4のどこまでが含まれるか(契約書案、公証役場への同行、銀行との調整、登記)
- 契約書案を作るのは誰か(司法書士・弁護士の名前)
- 登記の申請を代理するのは誰か
- 打ち合わせの回数や、契約書案の修正回数に上限があるか
- 出張の日当・交通費は別か
- 契約後の相談や見直しの費用(月額・年額・都度)
- 信託監督人を置く場合の報酬
- 銀行で信託口口座が作れなかった場合の扱い
依頼先の選び方は家族信託を頼む司法書士の選び方:経験と見積もりで確かめる点に、手順の全体は家族信託の手続きの流れ:相談から契約・信託登記・口座開設までにまとめています。仕組みから知りたい人は家族信託とは?親の財産を子が管理するしくみを先に読むと、見積もりの項目の意味がつかみやすくなります。
よくある質問
Q. 契約書を自分で作れば、家族信託の費用は公証人手数料と登録免許税だけになりますか?
実費だけに抑えることは制度上はできます。ただ、契約書の条項に抜けがあると、親の判断が難しくなった後に直せず、信託が役に立たなくなるおそれがあります。報酬を払うかどうかより、誰が条項を点検するかで考えると判断しやすくなります。
Q. 信託する財産が少なければ、費用も小さくなりますか?
公証人手数料と登録免許税は財産の額に応じて決まるので小さくなります。専門家の報酬は事務所ごとに決め方が違い、財産額に比例する料金表もあれば、作業の範囲で決める料金表もあります。見積もりを取るときに、何を基準に金額が決まるのかを聞きます。
出典・参考にした公的な情報
- 司法書士の報酬(日本司法書士会連合会・2024年3月実施の報酬アンケート)(日本司法書士会連合会)
- 公証人手数料令 第9条・第16条・第22条の2・第25条・別表(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 手数料(日本公証人連合会)(日本公証人連合会)
- 登録免許税法 第7条・別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 租税特別措置法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法 第73条の7(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 信託法 第37条・第54条・第131条・第137条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 所得税法 第227条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 所得税法施行規則 第96条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。