家族信託を頼む司法書士の選び方:経験と見積もりで確かめる点
家族信託を司法書士に頼むなら、①家族信託の契約書案を作った経験の中身、②信託登記と銀行との調整まで一続きで担えるか、③見積もりで報酬と実費が分かれ、どこまで含むかが書かれているかの3点で比べます。家族信託は、契約書の書き漏れが親の判断が難しくなった後に直せないため、依頼先の経験の差が結果に出やすい手続きです。ここでは、誰が何を担うかの分かれ方から、面談で使える質問の文例、見積書の確認点までをチェックリストにしました。
家族信託は誰に頼む?仕事の分かれ方
家族信託の手続きには、資格ごとに担える仕事が分かれる部分があります。
| 仕事 | 担える人 | 根拠 |
|---|---|---|
| 設計の相談・信託契約書案の作成 | 司法書士・弁護士が多く扱う。行政書士も契約書の作成を業とできる | 日司連の報酬アンケートに設例あり/行政書士法1条の3・1条の4 |
| 公正証書の作成 | 公証人(公証役場) | 手数料は公証人手数料令で決まる |
| 信託登記の申請代理 | 司法書士(と弁護士) | 司法書士法3条・73条、弁護士法3条 |
| 税の判断・申告 | 税理士(と国税局長に通知した弁護士) | 税理士法2条・52条 |
| 争いがある場合の交渉・代理 | 弁護士 | 弁護士法72条 |
不動産を信託するなら、信託登記は避けて通れません。設計から登記までを同じ事務所が担えると、契約書の条項と登記の信託目録の書き方がそろい、手戻りが減ります。一方、遺留分をめぐって兄弟と争いになりそうな家や、親の財産をめぐる対立がすでにある家は、交渉を担える弁護士に相談する場面です。資格ごとの違いは相続手続きの専門家の違い:弁護士・司法書士・税理士・行政書士の頼み分けで詳しく比べています。
| 家の状況 | まず相談する先 |
|---|---|
| 家族は賛成していて、実家や賃貸物件を信託したい | 家族信託を扱う司法書士 |
| 賃貸物件が多い、受益者を親以外にしたい | 司法書士に加え、設計段階から税理士 |
| 兄弟が反対している、遺留分の請求が見込まれる | 弁護士 |
| 親がすでに契約の内容を理解できない | 家族信託ではなく成年後見の相談へ |
司法書士の探し方と登録の確かめ方
依頼先の候補が見つかったら、まず司法書士として登録されているかを確かめます。
- 日本司法書士会連合会の「司法書士検索」で、氏名・事務所名・所在地が出てくるか(掲載は推薦ではなく、情報は月2回更新)
- 家族信託のサービス会社経由なら、実際に契約書案と登記を担当する司法書士の名前が示されているか
- 近くで相談先を探すなら、各都道府県の司法書士会が設けている司法書士総合相談センターも使えるか(相談料は有料のところも無料のところもあるので、各会に問い合わせる)
相続全般で司法書士を探す手順は相続に強い司法書士の探し方:司法書士会の検索と面談で見る5点にもまとめています。公的な相談窓口の番号は相続手続きの無料相談窓口一覧で確かめられます。
面談で経験を確かめる質問(文例)
「家族信託に詳しいです」という説明だけでは比べられません。経験は、具体的な質問への答え方で見ます。次の質問をそのまま使えます。
文例:「これまでに、家族信託の契約書案を作って、信託登記まで担当されたことはありますか。実家を売る目的の信託と、賃貸物件の管理の信託では、それぞれどんな点を条項に入れていますか。」
文例:「受託者の息子が先に亡くなった場合や、病気で動けなくなった場合に備えて、どのような定めを置くことを勧めていますか。」
文例:「信託口口座について、取引予定の銀行に契約書案を事前に見てもらう段取りまで、お願いできますか。」
文例:「親の判断が難しくなった後に、条項を変える必要が出てきたら、どうすれば変えられるように書きますか。」
答えを聞くときは、次の点を見ます。
- 次の受託者、変更の方法、終了の事由と帰属先について、自分から触れるか
- 身上監護はできないこと、損益通算や遺留分の扱いなど、不利な点も説明するか
- 税の判断が要る場面で、税理士につなぐと言うか(自分で税額を断言しないか)
- 親本人と直接話し、意思を確かめる段取りを取るか
不利な点の説明があるかどうかは、後悔しないための大事な目安です。契約前に家族で確かめる項目は家族信託で後悔しないために:失敗の型と契約前に確かめる10項目にまとめました。
見積もりで確かめる点
司法書士は、仕事を受ける前に、報酬額の算定方法などの報酬の基準を依頼者に示さなければなりません(司法書士法施行規則22条)。見積書では次の点を確かめます。
- 報酬と実費(公証人手数料・登録免許税・証明書代)が分けて書かれている
- 契約書案の作成、公正証書作成への同行、銀行との調整、信託登記のどこまでが含まれるか
- 打ち合わせの回数や、案の修正に上限があるか
- 出張の日当・交通費、不動産の調査費用が別か
- 契約後の相談、信託の変更、終了時の登記の費用
比べるときの物差しとして、日本司法書士会連合会が2024年3月に行った報酬アンケートの設例があります。自宅(評価額3,000万円)と預金1,000万円を子に託す信託で、契約書案の作成支援だけなら平均206,175円、公正証書への同行・口座開設の支援・信託登記の申請代理まで頼むと平均327,576円(いずれも報酬のみ・税込み)でした。公証人手数料や登録免許税の計算例は家族信託の費用:契約書作成・公正証書・信託登記の内訳と比べ方で示しています。
依頼する前に家族でそろえる資料
最初の面談の前に次のものをそろえておくと、見積もりが具体的になります。
- 信託したい不動産の登記事項証明書(または登記の情報が分かる書類)
- 固定資産税の納税通知書(評価額が分かるもの)
- 信託したい預金の銀行名とおおよその額
- 賃貸物件なら賃貸借契約書と、借入れがあれば返済予定表
- 家族の関係が分かるメモ(親・子・兄弟の氏名と連絡先)
- すでに書いた遺言があれば、その写し
- 信託の目的(実家を売れるようにする、管理を移す、など)を家族で話した内容のメモ
親本人が面談に出られるよう日程を組むことも大切です。家族信託の契約をするのは親本人なので、子だけで話を進めず、親の希望を親自身の言葉で専門家に伝えてもらいます。実家の売却を目的にする場合の流れは家族信託で実家を売却する流れで扱っています。
よくある質問
Q. 家族信託は、司法書士と弁護士のどちらに頼めばよいですか?
家族の間に争いがなく、不動産の信託登記が中心なら、登記まで一続きで担える司法書士が選びやすい依頼先です。兄弟がすでに反対している、遺留分の請求が見込まれるなど、争いや交渉が絡むなら弁護士に相談します。どちらに頼む場合も、税の判断は税理士の関与があるかを確かめます。
Q. 家族信託のサービス会社に頼むのと、司法書士に直接頼むのでは何が違いますか?
サービス会社は窓口と調整を担い、契約書の作成は提携の弁護士や司法書士、信託登記は司法書士が担う形が考えられます。見積もりでは、会社への手数料と専門家への報酬が分かれているか、作業ごとに担当者の資格と名前が示されているかを確かめます。なお、信託を引き受ける営業には内閣総理大臣の免許が必要で(信託業法3条)、家族信託の受託者は家族です。
出典・参考にした公的な情報
- 司法書士法 第3条・第73条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法施行規則 第22条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第3条・第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士法 第1条の3・第1条の4(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 信託業法 第2条・第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士を探す(日本司法書士会連合会)(日本司法書士会連合会)
- 司法書士総合相談センター(日本司法書士会連合会)(日本司法書士会連合会)
- 司法書士の報酬(日本司法書士会連合会・2024年3月実施の報酬アンケート)(日本司法書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。