相続の手続きと期限 / Q&A

預金の相続に期限はある?手続きの期限と10年で休眠預金になる前に

この記事のもくじ
  1. 預金の相続の期限:払い戻しに法律の期限はない
  2. 3か月・4か月・10か月:預金の手続きより先に来る期限
  3. 10年で休眠預金になる前に知っておくこと
  4. 遺産分割の10年と、手続きを先延ばしにしたときの困りごと

預金の相続の払い戻しそのものには、法律で決まった期限はありません。10年以上取引がなく休眠預金になっても、金融庁の案内では相続人が金融機関所定の手続きで引き出せ、引き出しの期限もないとされています。ただし、相続するか放棄するかを決める3か月(熟慮期間)、準確定申告の4か月、相続税の申告の10か月といった先に来る期限があるため、預金の手続きはこの3つから逆算して進めるのが実際の目安です。

預金の相続の期限:払い戻しに法律の期限はない

銀行の相続手続きの流れ(連絡・書類の準備・依頼書の提出・払い戻し)は全国銀行協会が示していますが、「いつまでに」という期限はありません。遺産分割も、民法907条で共同相続人は「いつでも」協議で分割できるとされています。

それでも「期限はない」とだけ覚えると困る理由は2つあります。1つは、払い戻しを受けるには遺産分割協議書などの書類がそろっている必要があり、そろえるのに時間がかかることです。もう1つは、下の表の期限が、預金の手続きの前後で動いていることです。

早見表:預金の相続に関わる期限
期限 起算点と長さ 預金との関係
熟慮期間(相続放棄・限定承認) 相続の開始があったことを知った時から3か月以内 放棄するなら、預金を払い戻して使う前に決める
準確定申告 相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内(申告が必要なとき) 亡くなった人の所得税。還付金の受け取り口座も相続人名義で指定する
相続税の申告・納付 被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内(遺産が基礎控除額を超えるとき) 残高を申告に使う。納税の資金に充てるなら払い戻しを間に合わせる
配偶者の税額軽減の分割の期限 申告期限から3年以内(分割見込書を出した場合) 申告期限までに分けていない財産は軽減の対象外
特別受益・寄与分の主張 相続開始の時から10年(2023年3月31日以前に始まった相続は、2028年3月31日と相続開始から10年のどちらか遅い日まで猶予あり) 10年を過ぎた遺産分割では原則として主張できなくなる
休眠預金 最後の取引から10年 移管されても引き出せ、引き出しの期限はない

3か月・4か月・10か月:預金の手続きより先に来る期限

3か月:相続放棄を考えるなら、引き出す前に決める。 民法915条は、相続人は自分のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、承認か放棄をしなければならないと定めます。相続財産を処分すると単純承認とみなされることがあるため(民法921条)、借金がありそうなら預金に手を付ける前に判断します。期限の数え方は相続の期限一覧にまとめています。

4か月:準確定申告。 亡くなった人に申告が必要な所得があれば、相続人が4か月以内に申告します。この申告で税金が戻る場合、還付金は相続人が受け取るので、預金の手続きと同じ時期に受取口座を決めておくと二度手間になりません。

10か月:相続税の申告と納付。 相続税は金銭で一度に納めるのが原則で、延納や物納は金銭で納めるのが難しい場合の制度として要件が決まっています。納税の資金を亡くなった人の預金から出すつもりなら、10か月より前に遺産分割をまとめ、払い戻しを受けておく必要があります。分割が間に合わないときは、遺産分割の前でも一定額を払い戻せる制度(民法909条の2)があり、同じ金融機関からは150万円までです。上限の計算例は預金の相続の仮払い制度の記事にあります。

配偶者の税額の軽減も分割と結びついています。国税庁の案内では、申告期限までに分割されていない財産は軽減の対象にならず、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて3年以内に分割すれば対象になる、とされています。預金をどう分けるか決めないまま申告期限を迎えると、この特例を使う手順が増えます。

10年で休眠預金になる前に知っておくこと

金融庁の休眠預金のQ&Aから、相続人に関係する点を抜き出すと次のとおりです。

  • 対象は、2009年1月以降に最後の取引があり、そこから10年以上取引がない預金。普通預金・定期預金・定期積金などが入り、外貨預金や財形などは入らない。
  • 最後の取引から9年以上たつと金融機関がウェブサイトで公告し、残高1万円以上なら登録住所に通知が届く(金融庁によると、この通知を受け取ると、その後の10年間は休眠預金等にならない)。
  • 移管された後も、取引のあった金融機関で引き出せる。引き出しの期限はない。
  • 預金者が亡くなっていれば、相続人が金融機関所定の手続きを経て引き出せる。
  • 金融機関が合併していれば、引き継いだ今の金融機関で手続きする。

つまり、休眠預金になること自体で相続人が預金を失うわけではありません。「時効」との関係では、民法166条が債権一般について、権利を行使できると知った時から5年、行使できる時から10年で消滅すると定めています。預金の払戻請求にこれがどう当てはまるかは事案ごとに違い、個別に判断するのは弁護士の仕事です。金融庁は、2009年1月より前に最後の取引があり休眠預金の対象外になる預金についても、通常、金融機関は引き出しに応じていると説明しています。長く放置した口座が見つかったら、時効を自分で見積もらず、まず相続人として金融機関に手続きを申し出ます。困るのは、通知が亡くなった人の住所に届いたまま誰も開けず、口座があることに気づかないまま時間がたつことです。早めに口座を洗い出し、見つけた金融機関には死亡を連絡しておきます。洗い出しの手順は預金の相続手続きの流れと必要書類にまとめています。

遺産分割の10年と、手続きを先延ばしにしたときの困りごと

2023年4月1日に施行された民法904条の3により、相続開始の時から10年を過ぎた遺産分割では、原則として特別受益(生前の贈与など)や寄与分(介護などの貢献)を主張できなくなりました。10年たっても預金の分割そのものはできますが、法定相続分を基本に分けることになります。例外として、10年が来る前に相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求していれば、特別受益・寄与分を考慮できます。2023年3月31日以前に始まった相続は、相続開始から10年と施行から5年(2028年3月31日)のどちらか遅いほうまでに請求すれば足ります。生前の援助や介護の負担を分け方に反映させたいなら、10年を待たずに話し合い、まとまらなければ家庭裁判所への請求を考えます。期限の詳細は遺産分割に期限はあるかの記事で扱っています。

先延ばしで起きやすい困りごとは、期限そのものより人の側にあります。

  • 相続人の誰かが亡くなり、その人の相続人(配偶者や子)が協議に加わって人数が増える
  • 相続人が高齢になり、判断能力が衰えて協議に参加できなくなる
  • 戸籍や印鑑証明書を取り直す回数が増える

預金の手続きは「期限がないから後で」ではなく、「3か月・10か月に間に合うように」と考え、亡くなってから1〜2か月のうちに金融機関への連絡と書類集めを始めるのが現実的な段取りです。

よくある質問

Q. 親の預金を10年以上放っておいたら、時効で消えてしまいますか?

金融庁の案内では、10年以上取引のない預金は休眠預金として預金保険機構に移管されることがありますが、移管後も取引のあった金融機関で引き出せ、引き出しの期限はないとされています。預金者が亡くなっていれば、相続人が金融機関所定の手続きを経て引き出せます。2009年1月より前に最後の取引があった預金は制度の対象外で、通常、金融機関は引き出しに応じていると金融庁は説明しています。

Q. 預金の相続手続きは、相続税の申告より前に終わらせる必要がありますか?

順番の決まりはありません。ただ、相続税の申告書には財産ごとの明細を書くので、死亡日時点の預金の残高は申告より前に把握しておく必要があります。納税の資金に預金を充てるなら、10か月の期限より前に払い戻しを受けられるよう、逆算して遺産分割と手続きを進めます。

Q. 口座が凍結されたまま公共料金が引き落とされないと、どうなりますか?

引き落とし口座の入出金が止まると、料金が未払いになり、請求書払いへの切り替えや督促の連絡が来ることがあります。凍結は払い戻しの期限とは別の問題なので、連絡と並行して、各契約先に支払い方法の変更か解約を申し出ます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

預金の相続手続き:銀行への連絡から払い戻しまでの流れと必要書類

預金の相続の仮払い制度:遺産分割前に引き出せる上限と手続き

相続の期限一覧:3か月・4か月・10か月・3年の順番と過ぎたときの影響