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空き家を賃貸に出すか売るか:収入・費用・税金の比べ方

この記事のもくじ
  1. 空き家を賃貸に出すか売るか:判断表
  2. 賃貸に出す場合のお金:家賃から引かれるもの
  3. 売る場合のお金:譲渡所得と特例の期限
  4. 比べる手順:決めるまでの5つのステップ

空き家を賃貸に出すか売るかは、貸す場合の「修繕費・管理費・空室を差し引いた手取りの家賃」と、売る場合の「手取りの売却代金」を、税の特例の期限も含めて比べると決めやすくなります。とくに見落としやすいのが、相続した空き家を貸すと、売るときに空き家の3,000万円特別控除が使えなくなる点です。この特例は2027年12月31日までの売却が対象で、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までという期限もあるため、貸す前に「いつ売る可能性があるか」まで決めておく必要があります。

空き家を賃貸に出すか売るか:判断表

判断表:賃貸に向く空き家、売却に向く空き家
確かめる点 賃貸に向く 売却に向く
建物の状態 少しの修繕で住める 大きな修繕が要る(雨漏り・傾き・設備の全交換)
立地 駅や職場に通いやすく、借り手がいる地域 借り手が少ない地域、近くに同じような貸家が多い
将来の使い道 家族がいずれ住む・使う予定がある 誰も使う予定がない
空き家の3,000万円特別控除 対象外の家(1981年6月1日以後の建築、マンションなど) 対象になりうる家で、期限内に売れる
管理の手間 近くに住む家族がいる、管理会社に任せられる 遠方で、トラブルに対応できる人がいない
相続人の関係 1人で相続した、家賃の分け方で合意できる 共有で、意見をそろえ続けるのが難しい
お金の必要 当面まとまったお金は要らない 相続税の納付や、ほかの相続人へのお金の支払いがある

表の右側に当てはまるものが多いほど、売るほうが向いています。どちらとも言えないときは、次の見出しの手順で、家賃と売却代金を同じ物差しで比べます。

賃貸に出す場合のお金:家賃から引かれるもの

家賃は、不動産所得として所得税・住民税の対象になります。不動産所得の金額は「総収入金額−必要経費」で計算し、必要経費には固定資産税、損害保険料、減価償却費、修繕費などが入ります(国税庁タックスアンサー1370番)。返さなくてよい敷金や礼金、共益費として受け取る電気代なども収入に入ります。

手元に残るお金を見積もるときは、例えば次のように並べます(数字は説明のための例、筆者の計算)。

項目 年間
家賃 月6万円×12か月 72万円
空室2か月分を差し引く −12万円
固定資産税・都市計画税 −8万円
火災保険などの保険料 −3万円
管理会社への委託料 −3.6万円
修繕のための積み立て −10万円
税金を引く前の手残り 35.4万円

貸し始める前に200万円をかけて水回りなどを直したとすると、この手残りで取り戻すまでに約5年8か月かかります(200万円÷35.4万円)。ここから所得税・住民税が引かれ、空室が長引けばさらに延びます。家賃の水準や修繕の額は、地域の不動産会社の賃料査定と、修繕の見積もりで確かめてください。修繕にどこまでかけるかは空き家のリフォーム:目的別に費用をかける判断で整理しています。

相続したのが一戸建てではなく、すでに入居者のいるアパートの場合は、貸主の立場は亡くなった人から相続人へ引き継がれます(民法896条)。相続した時点で貸付けに使われているため、空き家の3,000万円特別控除の対象にはなりません。売るなら、入居者がいるまま収益物件として売る方法もあります。家賃の受け取りや敷金の返還の扱いは、遺産分割までの間も含めて、共有者で決めておく必要があります。

お金のほかに、契約の形も大事です。普通の建物賃貸借は、期間が終わっても貸主が更新を断るには「正当の事由」が要り(借地借家法28条)、通知をしないと同じ条件で更新したものとみなされます(26条)。いずれ家族が使う、数年後に売るといった予定があるなら、公正証書などの書面で契約し、あらかじめ書面で説明すれば、更新のない定期建物賃貸借(定期借家)にできます(38条)。

売る場合のお金:譲渡所得と特例の期限

売って利益(譲渡所得)が出ると、所得税・住民税がかかります。相続した家は親の取得日を引き継ぐので、親が長く持っていた家なら、多くは長期譲渡所得(所得税15%・住民税5%、ほかに所得税額の2.1%の復興特別所得税)になります。

ここで大きいのが、空き家の3,000万円特別控除です。1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた家などを、相続から3年を経過する日の属する年の12月31日まで、かつ2027年12月31日までに売ると、譲渡所得から最高3,000万円(家と土地を相続した相続人が3人以上なら1人2,000万円)を差し引けます。相続の時から売る時まで、事業・貸付け・居住に使っていないことが要件なので、一度でも貸せばこの特例は使えなくなります。売却代金が1億円以下であることや、家を残して売るなら売る時に耐震基準を満たしていること(または売った年の翌年2月15日までに買主が耐震改修か取壊しをすること)も要件です(国税庁タックスアンサー3306番)。

例で比べると、差の大きさが分かります(筆者の計算。2026年中の売却、相続人1人、取得費が分からず売った金額の5%を取得費とした場合)。

項目 特例を使う 貸したため特例を使えない
売った金額 2,000万円 2,000万円
取得費(5%)と譲渡費用 100万円+80万円 100万円+80万円
譲渡所得 1,820万円 1,820万円
特別控除 −1,820万円 0円
税額の目安 0円 約370万円(所得税273万円、復興特別所得税約5.7万円、住民税91万円)

この差は、上の例の手残りの家賃で約10年分に当たります。相続税がかかった人には、別に取得費加算の特例(相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却が対象。空き家の3,000万円特別控除とはどちらか一方)もあります。特例の要件の全体は相続した空き家の3000万円控除で確かめてください。どちらの特例が自分に使えるか、税額がいくらになるかは、税理士か税務署の相談で確かめる部分です。

比べる手順:決めるまでの5つのステップ

  1. 建築年と登記を確かめる:登記事項証明書で建築年と区分所有の登記の有無を見て、3,000万円特別控除の対象になりうるかを判断の材料にする。
  2. 売却の期限を書き出す:相続開始日から「3年を経過する日の属する年の12月31日」と、2027年12月31日のうち早いほう。
  3. 賃料の査定と修繕の見積もりを取る:家賃の水準、借り手の付きやすさ、貸すために必要な修繕の額。
  4. 売却の査定を取る:複数社の査定額と、その根拠を比べる。
  5. 10年の手取りを並べる:貸す場合の手残りの合計(修繕費を引いた後)と、売る場合の手取り(税と費用を引いた後)を並べ、家族の予定と合わせて決める。

売却の査定を取るときは、一括査定を使う方法もあります。

査定額は売れる値段そのものではなく、各社が根拠を示して出す見込みです。申し込むと複数の会社から連絡が来ることがあるので、「貸す場合の賃料の見込みも聞きたい」と最初に伝えると、比べる材料が一度にそろいます。売るか貸すかは、査定を見てから決めて構いません。

駐車場や土地として貸すなど、住まいとして貸す以外の使い方は空き家の活用方法7つ、自治体の窓口を通して売り手・借り手を探す方法は空き家バンクの使い方で扱います。解体の補助を受けてから土地を使う場合は空き家の解体補助金の探し方も参考になります。

よくある質問

Q. 兄弟と共有している空き家を貸すには、全員の同意が要りますか?

民法252条は、共有物の管理に関することは持分の価格の過半数で決めると定め、その決め方で設定できる建物の賃借権を3年を超えないものとしています。それより長く貸す場合や、更新が続く普通借家で貸す場合は、全員の同意を求められる場面になりえます。共有のまま貸す前に、誰が貸主になり、家賃と費用をどう分けるかを書面で決めておきましょう。

Q. いったん貸してから、数年後に売ることはできますか?

入居者がいるまま、収益物件として売る方法があります。ただし買い手は投資目的の人に限られやすく、空き家の3,000万円特別控除は貸付けに使った時点で対象外になります。数年後に空き家に戻して売りたいなら、期間が来れば終わる定期借家で貸すことを検討してください。

Q. 家賃収入はいくらから確定申告が要りますか?

家賃は不動産所得として、ほかの所得と合わせて確定申告するのが基本です。給与を1か所から受けていて年末調整を受けている会社員なら、給与以外の所得(家賃から必要経費を引いた額など)の合計が年20万円以下のとき、所得税の確定申告が要らない場合があります(国税庁タックスアンサー1900番)。住民税の扱いは市区町村で確かめてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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