相続人と遺産分割 / 制度解説

遺産分割で介護の寄与分は認められる?要件と嫁の特別の寄与の違い

この記事のもくじ
  1. 介護の寄与分が認められる要件:条文を5つの点に分けて読む
  2. 寄与分があると取り分はどう変わるか:計算の例
  3. 寄与分の決め方:協議から家庭裁判所の調停・審判まで
  4. 長男の妻など相続人でない親族は「特別寄与料」:6か月・1年の期限
  5. 介護の記録の残し方:今からできる準備

親の介護をしたことは、それが特別の寄与に当たると認められれば、遺産分割で寄与分として取り分に上乗せされます(民法904条の2)。ただし家族としての手助けがすべて当たるわけではなく、介護によって親の財産が維持・増加したといえるかが問われ、相続人どうしで決まらなければ家庭裁判所が決めます。介護をしたのが長男の妻のように相続人でない親族の場合は、寄与分ではなく特別寄与料の請求になり、相続の開始と相続人を知った時から6か月という短い期限があります。

介護の寄与分が認められる要件:条文を5つの点に分けて読む

民法904条の2第1項は、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供や財産上の給付、療養看護その他の方法で、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした人がいるときは、その人の相続分に寄与分を加えると定めています。介護の場面に当てはめると、次の5点に分けて考えられます。

要件 条文の言葉 介護の場面での問い
誰が 共同相続人 介護したのは相続人本人か(被相続人の配偶者は相続人なので対象。長男の妻のように相続人でない親族は別の制度)
何をしたか 療養看護その他の方法 食事・入浴・排せつの介助、通院の付き添い、見守りなど
結果 財産の維持または増加 介護サービスや施設の費用を払わずに済んだなど、財産が減らなかったか
程度 特別の寄与 家族の手助けにとどまらず「特別」といえる中身・期間か
上限 遺産から遺贈を引いた残り(3項) 寄与分はこの額を超えられない

「特別の」に当たるかは、家庭裁判所が寄与の時期・方法・程度、相続財産の額その他一切の事情を考えて決めます(民法904条の2第2項)。ですから、介護をしたという事実だけでなく、どれくらいの期間、どんな内容を、どれくらいの頻度でしたかを具体的に示せるかどうかが、話し合いでも調停でも中心になります。

寄与分があると取り分はどう変わるか:計算の例

寄与分の計算は、遺産から寄与分を先に取り分け、残りを相続分で分けてから、寄与した人に寄与分を足す順で行います(民法904条の2第1項)。

数字の例です(筆者の計算。相続人は長女と長男の2人、遺言なし、協議で長女の寄与分を600万円と決めた前提)。

  1. 遺産3,000万円から寄与分600万円を引く → 2,400万円(みなし相続財産)
  2. 2,400万円を法定相続分1/2ずつで分ける → 各1,200万円
  3. 長女は1,200万円に寄与分600万円を足す → 1,800万円
  4. 長男は1,200万円

検算すると、1,800万円+1,200万円=3,000万円で遺産と一致します。寄与分の額そのものに決まった計算式は条文になく、ここでは話し合いで決まった額を入れています。逆向きの調整として、兄弟の一人が親から多くの生前贈与を受けていた場合の計算は特別受益とは:相続で兄弟が生前贈与を受けていた時の持ち戻しで扱っています。

寄与分の決め方:協議から家庭裁判所の調停・審判まで

寄与分は、まず相続人全員の遺産分割協議の中で話し合います。協議が調わない、または協議ができないときは、家庭裁判所に寄与分を定めてもらうよう求めることになります。裁判所の案内による要点は次のとおりです。

項目 寄与分を定める処分調停
申し立てる人 事業への労務提供・財産上の給付・療養看護などで特別の寄与をした相続人
相手方 申立人以外の共同相続人全員
申立先 相手方のうち1人の住所地か、合意で決めた家庭裁判所(遺産分割事件が係属していればその裁判所)
費用 申立人1人につき収入印紙1,200円分と郵便切手
注意点 調停が不成立で審判に移っても、遺産分割の審判の申立てがなければ不適法として却下される

実際には、遺産分割調停の流れ:申立ての費用・書類・期間と1回目の準備と一緒に申し立て、遺産分割の話し合いの中で寄与分も主張する形が考えやすい流れです。

もう1つ大事なのが期限です。相続開始から10年を過ぎた後の遺産分割では、寄与分の規定は原則として使われません(民法904条の3)。10年がたつ前に家庭裁判所に遺産分割を請求していれば例外になるので、介護をした側ほど、遺産分割を長く放置しないことが大切です。2023年4月1日より前に始まった相続の経過措置は特別受益とは:相続で兄弟が生前贈与を受けていた時の持ち戻しの「10年」の節に書いています。

長男の妻など相続人でない親族は「特別寄与料」:6か月・1年の期限

寄与分を主張できるのは相続人だけです。夫の親を介護した妻のように、相続人でない親族が介護をしてきた場合は、民法1050条の特別寄与料を相続人に請求する制度を使います。2019年(令和元年)7月1日に施行された制度で、裁判所の案内では、それより前に始まった相続については申し立てられないとされています。

寄与分 特別寄与料
主張できる人 共同相続人 相続人でない親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族:民法725条)。相続放棄した人などは除く
介護の条件 療養看護その他の方法による特別の寄与 無償での療養看護その他の労務による特別の寄与
誰に求めるか 遺産分割の中で他の相続人と調整 相続人に金銭の支払いを請求(各相続人は相続分に応じて負担)
期限 相続開始から10年を過ぎた遺産分割では原則使えない(904条の3。それまでに家庭裁判所に遺産分割を請求すれば例外) 家庭裁判所への請求は、相続の開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年まで
裁判所の手続き 寄与分を定める処分調停 特別の寄与に関する処分調停(収入印紙は申立人1人につき1,200円。相手方や被相続人が2人以上なら人数に応じて増える)

特別寄与料は、当事者の協議が調わないときに家庭裁判所に処分を求められますが、相続の開始と相続人を知った時から6か月、または相続開始から1年を過ぎると求められなくなります(民法1050条2項)。この期限は家庭裁判所に処分を請求することについての定めで、相続人に支払いを求める話し合い自体に期限があるわけではありません。ただ、話し合いが長引いて6か月を過ぎると、まとまらなかったときに家庭裁判所へ持ち込めなくなります。葬儀や四十九日の準備に追われているうちに半年はすぐたつので、話し合いが長引きそうなときは、期限の前に申し立てるかどうかを先に決め、申立先の家庭裁判所の手続き案内を確かめておきます。

介護の記録の残し方:今からできる準備

寄与分も特別寄与料も、介護の中身を後から示せるかどうかで話し合いの進み方が変わります。介護をしている最中の人は、次の記録を残しておくと、相続の場面で説明の材料になります。

チェックリスト:寄与分・特別寄与料の説明に使える介護の記録
  • 介護日誌(日付、時間帯、したこと。食事・入浴・排せつ・通院・夜間の見守りなど)
  • 要介護認定の結果の通知と、ケアプランの写し(介護の必要の程度が分かる)
  • 介護サービスの利用明細(サービスを使わずに家族が担った部分との比較に使う)
  • 通院・入退院の記録(付き添った日が分かるもの)
  • 立て替えた費用の領収書と、親の口座からの支出の記録
  • 介護のために勤務を減らした・休んだことが分かる資料
  • 親から受け取ったお金の記録(お礼・生活費の名目と額)

文例(きょうだいに伝えるとき):「この3年間の介護の記録をまとめました。日誌とケアプランの写しを添えるので、遺産分割の話をする前に一度見てもらえますか。」

記録はきょうだいを責める材料ではなく、何をしてきたかを同じ資料で見てもらうためのものです。それでも分け方に納得がいかないときに法律で調整できることの全体は、相続が兄弟で不公平と感じたら:法律で調整できることと話し合い方で整理しています。

よくある質問

Q. 介護のために仕事を辞めて収入が減った分は、寄与分で取り戻せますか?

寄与分は、介護などによって亡くなった人の財産が維持・増加したことに対する上乗せで、介護した人の収入の減少をそのまま補う仕組みとしては条文に書かれていません。家庭裁判所は寄与の時期・方法・程度などの事情を考えて決めるので、仕事を減らして介護に当たった事情は、介護の中身や期間を示す資料と一緒に伝える材料になります。

Q. 介護の間に親からお礼のお金をもらっていた場合、寄与分は主張できませんか?

相続人の寄与分を定める民法904条の2には「無償」という言葉はありませんが、受け取ったお金の額と介護の負担の釣り合いは、特別の寄与かどうかを考える事情の1つになりえます。相続人でない親族の特別寄与料は、民法1050条で「無償で」の介護などが要件と書かれているので、お礼の有無と額を記録で整理しておきます。

Q. 寄与分だけを、遺産分割とは別に先に請求できますか?

できません。民法904条の2第4項は、家庭裁判所への寄与分の請求は遺産分割の請求があった場合などにできると定めており、裁判所の案内でも、遺産分割審判の申立てがないまま寄与分の審判に移ると不適法として却下されるとされています。寄与分は遺産分割の中で一緒に決めるものと考えます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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