認知症・成年後見・家族信託 / Q&A

成年後見人に家族はなれる?選ばれ方と家族が後見人になる注意点

この記事のもくじ
  1. Q1 家族は成年後見人になれる?選ぶのは誰?
  2. Q2 家族ではなく専門職や監督人がつきやすいのはどんな場面?
  3. Q3 家族が後見人になったら何をする?報告の義務
  4. Q4 家族が後見人になるデメリットと、事前に話し合うこと

家族は成年後見人の候補者として申立書に書けますが、誰を選ぶかは家庭裁判所が決めます。令和7年(2025年)の最高裁の概況では、選ばれた成年後見人などのうち親族は約16.4%で、残りは司法書士・弁護士・社会福祉士などの親族以外でした。家族が選ばれた場合は、毎年の家庭裁判所への報告、本人のお金と自分のお金を分けること、本人の財産を家族のために使えないことなどの決まりを、本人が亡くなるか判断能力が戻るまで守り続けることになります。

Q1 家族は成年後見人になれる?選ぶのは誰?

なれます。法律で後見人になれないと決まっているのは、次の人だけです(民法847条)。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で法定代理人・保佐人・補助人を免ぜられた人
  • 破産者
  • 本人に対して訴訟をし、またはした人と、その配偶者・直系血族
  • 行方の知れない人

ただし、申立書に書いた候補者がそのまま選ばれるとは限りません。家庭裁判所は、候補者が適切かを審理し、候補者以外の弁護士などの専門職や、複数の後見人を選ぶこともあります。誰が選ばれたかについて不服申立てはできず、申立ての取下げにも家庭裁判所の許可が要ります(家事事件手続法121条)。

令和7年の概況の数字を並べると、次のとおりです。

項目 割合・件数
親族が候補者として申立書に書かれていた事件 約19.7%
選ばれた成年後見人などのうち親族 約16.4%(7,014件)
選ばれた成年後見人などのうち親族以外 約83.6%(35,718件。司法書士11,966件、弁護士8,903件、社会福祉士7,280件など)
申立人が市区町村長だった事件 約23.7%

二つの割合は母数が違うので、「候補者を立てた家族の何割が選ばれたか」はこの表からは出せません。言えるのは、そもそも親族を候補者に立てる申立てが2割ほどで、選ばれた人の8割以上は親族以外ということです。申立ての書類と流れは成年後見の申立ての流れで確かめてください。

Q2 家族ではなく専門職や監督人がつきやすいのはどんな場面?

選ぶ基準の一覧は公表されていませんが、公表資料から読み取れる場面があります。

  1. 本人の預貯金が多いとき:東京家庭裁判所は、本人の流動資産が500万円以上ある場合を、後見制度支援信託・後見制度支援預貯金の利用を検討する対象にしています。これは日常に使わないお金を信託銀行などに預け、払い戻すには家庭裁判所の指示書が要る仕組みで、契約は専門職の後見人が結ぶ扱いです。利用を望まない場合は、裁判官の判断で後見監督人が選ばれることがあると案内されています。
  2. 本人と後見人の利益がぶつかる手続きが控えているとき:遺産分割で本人と候補者がともに相続人になるなど。後見監督人がいれば監督人が本人を代理し、いなければ手続きのたびに特別代理人を選びます(民法860条・826条)。家庭裁判所の調査官は、申立人や本人、候補者から事情と本人の意見を聴いて審理するので、こうした予定は申立ての段階で正直に伝えます。
  3. 報告が遅れた・内容に不備があったとき:選ばれた後でも、東京家裁は、正当な理由なく報告の期限を過ぎた場合、専門職の調査人の選任、専門職の後見人の追加、監督人の選任、任務違反による解任がありうると案内しています。

監督人や専門職がつくと、その報酬は本人の財産から出ます。額の目安は成年後見の報酬:後見人・監督人に払う額の目安にまとめています。

Q3 家族が後見人になったら何をする?報告の義務

後見人は、本人の意思を尊重し、心身の状態と生活の状況に配慮して、生活・療養看護・財産の管理をする義務を負います(民法858条)。財産の管理には、他人の財産を預かる者としての注意(善良な管理者の注意)が求められます(民法869条・644条)。家族であっても「親のお金だから自由に」はできません。

家族の後見人が最初の1年にすることを順に並べます。

  1. 財産の調査と目録づくり:選ばれたら遅滞なく調べ始め、1か月以内に財産目録を作ります(民法853条。家庭裁判所で延ばせます)。東京家裁では、初回報告として後見等事務報告書、財産目録、収支予定表を期限までに出します。
  2. 口座の整理:預貯金の名義は本人名義か「本人名 成年後見人 後見人名」の形にし、後見人個人の名義にしません。現金での管理は50万円を超えないようにと案内されています。
  3. お金の出入りの記録:現金出納帳をつけ、領収書を残します。家庭裁判所から見せるよう求められることがあります。
  4. 定期報告:東京家裁では原則として年に1回、決められた時期に、後見等事務報告書と財産目録を資料つきで自分から出します。裁判所から催促の連絡は来ません。
  5. 大きな行為の前の連絡・許可:自宅の売却などは家庭裁判所の許可が要り、それ以外の重要な財産の処分も事前に連絡します。
早見表:家族後見人が「していいこと」「事前に連絡・許可」「原則できないこと」
  • していいこと:本人の食費・医療費・施設費の支払い、本人の借金の返済、後見の事務に要る交通費やコピー代(相当な範囲)、扶養している配偶者や未成年の子の生活費(適正な範囲)
  • 事前に連絡:自宅の修理、送迎用の車の購入など多額の支出、居住用以外の重要な財産の処分
  • 家庭裁判所の許可:本人の居住用不動産の売却・賃貸・取り壊しなど(民法859条の3)、本人と後見人がともに相続人の遺産分割は特別代理人の選任
  • 原則できないこと:子や孫への贈与・貸付け(相続税対策でも)、元本保証のない投機的な運用、本人の口座を後見人名義にすること (東京家庭裁判所 成年後見人・保佐人・補助人ハンドブック 令和7年4月版の説明をもとに作成)

Q4 家族が後見人になるデメリットと、事前に話し合うこと

家族がなる良さは、本人の暮らしをよく知っている人が身近で支えられることと、報酬を求めなければ本人の財産が減りにくいことです。そのうえで、引き受ける前に知っておきたい負担があります。

負担 中身
期間が長い 今の制度では、申立てのきっかけの用事が済んでも、本人の判断能力が戻るか亡くなるまで続く
事務が多い 毎年の報告書・財産目録・通帳のコピー、出納帳と領収書の保管、各窓口への届出
自由に使えない 本人の財産は本人のための支出に限られ、家族のための支出は原則できない
責任がある 本人に損害を与えれば賠償責任が生じうる。不正な行為や任務に適しない事由があれば解任されうる(民法846条)
きょうだいとの関係 本人の財産を管理する立場になるため、他の家族から使い道を疑われやすい

引き受ける前に、家族で次のことを決めておくと、後で揉めにくくなります。

  • 誰が候補者になり、誰が手伝うか(報告書の作成、通院の付き添いなど)
  • 後見人が報酬付与を申し立てるかどうか
  • 親の自宅を将来どうするか(売るなら家庭裁判所の許可が要ります)
  • 専門職が選ばれた場合も申立てを続けるか

親の自宅を売る予定があるなら、手続きの流れを成年後見人が自宅を売るには:居住用不動産処分の許可で先に確かめてください。

2026年6月に公布された改正法では、後見・保佐を補助に一元化し、本人の利益のため特に必要なときに後見人などを交代させられるようにする見直しが決まりました。施行は公布から2年6か月以内の政令で定める日で、2026年10月時点ではまだ施行されていないため、いま申し立てる人は現行の後見・保佐・補助で手続きします。改正の内容は成年後見とは?2026年改正の予定で確かめてください。

よくある質問

Q. 申立書に長男を候補者と書いたのに弁護士が選ばれました。不服を言えますか?

誰が後見人に選ばれたかについては、不服申立てができません。希望の人が選ばれなかったことを理由に申立てを取り下げることも、家庭裁判所の許可がなければできず、裁判所の案内ではその理由だけの取下げは原則として許可されないと考えられています。申立ての前に、家族以外が選ばれる可能性も含めて決めておく必要があります。

Q. 家族の後見人が親のお金から孫にお祝いを渡してもいいですか?

東京家庭裁判所のハンドブックでは、親族や友人の慶弔の香典や祝儀は、本人の意思や意向を確かめたうえで常識的な範囲なら本人の財産から出してよいとしています。一方で、配偶者や子・孫への贈与や貸付けは、相続税対策が目的でも原則として認められないとしています。額が大きい、前例がないなど迷うときは、出す前に家庭裁判所か監督人に連絡します。

Q. 家族が後見人になった後、仕事や介護で続けられなくなったら辞められますか?

辞任には正当な事由と家庭裁判所の許可が必要です(民法844条)。東京家裁のハンドブックは、高齢や病気、負担が重くなって職務を続けられない場合を例に挙げ、辞任の申立てと同時に後任を選ぶ申立てをするよう案内しています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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