認知症・成年後見・家族信託 / 手順

成年後見の申立ての流れ:必要書類・費用・審判までの期間

この記事のもくじ
  1. 成年後見の申立ての流れ(準備から後見人の仕事の開始まで)
  2. 必要書類のチェック表
  3. 費用:印紙・切手・鑑定と、専門家に頼む場合
  4. 審判までの期間と、申し立てた後に気をつけること
  5. オンラインでできること・紙で出すもの

成年後見の申立ては、本人の住所地の家庭裁判所に、裁判所の書式の申立書と、本人の診断書・戸籍・住民票・財産の資料などを出して行います。費用は後見開始なら申立手数料の収入印紙800円、登記手数料の収入印紙2,600円、連絡用の郵便切手(額は裁判所ごと)で、鑑定をする場合は鑑定費用が加わります。裁判所の統計(令和7年1月〜12月)では、審理の約71.1%が2か月以内、約93.8%が4か月以内に終わっています。申立てができるのは本人、配偶者、四親等内の親族などで、一度申し立てると家庭裁判所の許可なしには取り下げられないので、後見人を選ぶのは裁判所であることを家族で共有してから出します。

成年後見の申立ての流れ(準備から後見人の仕事の開始まで)

全体は次の7段階です。親の状態によって「後見」「保佐」「補助」のどれを申し立てるかが変わりますが、流れは共通です。

  1. 申立先を確かめる:裁判所の「申立書提出先一覧」で、本人の住所地を受け持つ家庭裁判所(支部・出張所を含む)を引きます。
  2. 医師に診断書を頼む:家庭裁判所の書式(成年後見制度用)で作ってもらいます。本人を支える福祉関係者には本人情報シートを頼みます。診断書の欄の見方と頼み方は成年後見の診断書と本人情報シート:医師への頼み方と書式へ。
  3. 書類を集め、申立書を書く:裁判所の書式をダウンロードして作ります(下のチェック表)。
  4. 提出:申立書類と収入印紙・郵便切手を家庭裁判所に出します。
  5. 審理:参与員が申立人から事情を聴いたり、家庭裁判所調査官が申立人・本人・後見人の候補者と面接したりします。必要なら医師による鑑定をします。
  6. 審判:後見開始の審判と同時に後見人が選ばれます。監督人が選ばれることもあります。
  7. 後見人の仕事の開始:後見人は選ばれた後、1か月以内に本人の財産を調べて目録を作り(民法853条)、家庭裁判所に財産目録や収支予定表を出します。法務局に後見の登記がされ、後見人は登記事項証明書で権限を示して銀行などの手続きをします。

保佐・補助を申し立てる場合、代理権や同意権を付ける範囲を申立てで指定します(代理行為目録)。補助や、保佐の代理権の付与には本人の同意が必要です。

必要書類のチェック表

裁判所の後見開始の案内に載っている標準の書類です。家庭裁判所によって別の書面を求められることがあるので、申立先の裁判所のページも確かめます。

書類 どこで用意するか 期限・注意
申立書(後見・保佐・補助開始等申立書) 裁判所の書式 記載例が裁判所のページにある
申立事情説明書・親族関係図・親族の意見書・後見人等候補者事情説明書 裁判所の書式 親族の意見書は、他の親族の賛否を知らせる書面
財産目録・相続財産目録・収支予定表 裁判所の書式 本人が相続人になっている遺産があれば相続財産目録も
本人の戸籍謄本(全部事項証明書) 本籍地の市区町村 発行から3か月以内
本人の住民票または戸籍附票 市区町村 発行から3か月以内
候補者の住民票または戸籍附票 市区町村 発行から3か月以内(法人なら登記事項証明書)
本人の診断書(成年後見制度用) 主治医など 発行から3か月以内
本人情報シートの写し 本人を支える福祉関係者 用意できなくても申立ては可能
本人の健康状態の資料 手元の書類の写し 介護保険認定書、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、身体障害者手帳など
本人が成年被後見人等の登記がされていないことの証明書 東京法務局後見登録課、または法務局・地方法務局の本局 発行から3か月以内。手数料1通300円
財産の資料 通帳、残高証明、不動産の登記事項証明書、借入れの資料 預貯金・有価証券・不動産・負債
収支の資料 年金額の通知、施設利用料・入院費の領収書など

マイナンバー(個人番号)が書かれた書類は出しません。写しを付けるときは番号の部分を見えないようにします。

書類を集める前に、次の点を家族で話し合っておくと、申立事情説明書が書きやすくなります。

  • 申立ての目的(預金の管理、施設の契約、実家の売却、遺産分割など)
  • 候補者を立てるか、立てるなら誰か
  • 他の親族は申立てに賛成か(親族の意見書で家庭裁判所に伝える)

費用:印紙・切手・鑑定と、専門家に頼む場合

費用 額 注意
申立手数料 収入印紙800円 保佐・補助で代理権・同意権の付与も申し立てると、その申立てごとに加わる(申立先の案内で確かめる)
登記手数料 収入印紙2,600円 後見開始の場合。登記印紙も当分の間は使える
郵便切手 裁判所ごとに違う 保管金として電子納付もできる
鑑定費用 鑑定をする場合のみ 令和7年は5万円以下が約43.7%、10万円以下が約85.8%。申立人が負担することがある
診断書の作成費用 医療機関ごと 通常の診断書と同じく本人側の負担
戸籍・住民票・登記事項証明書 発行元の手数料 登記されていないことの証明書は1通300円

申立てを専門家に頼む方法もあります。弁護士は本人や申立人の代理人として申立てができ、司法書士は裁判所に出す書類の作成を業務としています(司法書士法3条)。報酬は事務所ごとに決まり、公的な相場の統計はないので、次の点を見積書で比べます。

  1. 頼む範囲:書類の作成だけか、提出や調査官との面接への同席まで含むか
  2. 実費の扱い:印紙・切手・鑑定費用・戸籍の取り寄せ費用が報酬に含まれるか
  3. 後見人の候補者になるか:申立てを頼んだ専門家が後見人に選ばれた場合の報酬は、別に家庭裁判所が決める

申立人になる親族がいない場合や、費用の負担が難しい場合は、市区町村長が申し立てる仕組みもあります(令和7年は申立ての約23.7%が市区町村長)。地域包括支援センターや市区町村の高齢者福祉の窓口で相談できます。後見が始まった後に本人の財産から払う報酬は成年後見の報酬:後見人・監督人に払う額の目安と続く期間で確かめてください。

早見表:申立てから審判までの期間(令和7年の概況)
期間 割合
1か月以内 37.9%
1か月超〜2か月以内 33.2%
2か月超〜3か月以内 16.2%
4か月以内(累計) 約93.8%
鑑定の実施は全体の約3.4%。鑑定をする場合は期間が延びる。

審判までの期間と、申し立てた後に気をつけること

令和7年の統計では、約71.1%が2か月以内に審理を終えています。鑑定をすると、その分さらに期間がかかります。後見・保佐は、明らかにその必要がない場合を除いて鑑定をすることが法律の原則ですが(家事事件手続法119条)、実際に鑑定をしたのは全体の約3.4%で、多くは診断書などの資料で判断されています。

申し立てた後に知っておきたいことは次のとおりです。

  • 取下げには家庭裁判所の許可が要る(家事事件手続法121条)。希望した候補者が選ばれそうにないことだけを理由にした取下げは、原則として許可されないと裁判所のQ&Aは説明しています。
  • 後見人を選ぶのは家庭裁判所。候補者が選ばれるとは限らず、令和7年は親族が選ばれたのが約16.4%でした。誰が選ばれたかについて不服を申し立てることはできません。家族が後見人を務めたい場合の考え方は成年後見人に家族はなれる?選ばれ方と注意点へ。
  • 裁判所からの照会や呼出しには応じる。書式のページでも、照会や呼出しに応じるよう求めています。
  • 後見制度支援信託・支援預貯金の検討。裁判所の案内では、本人の財産を守るため、これらの利用を検討するよう求められることがあります。仕組みと条件は、申立先の家庭裁判所の案内で確かめます。
  • 始まった後見は、目的を果たしても続く。申立てのきっかけになった売却や遺産分割が済んでも、本人の判断能力が戻るか亡くなるまで続きます(2026年改正で見直される予定。施行前)。改正の中身は成年後見とは?2026年改正の予定にまとめています。

オンラインでできること・紙で出すもの

2026年5月21日に、民事訴訟のオンライン申立て(民事裁判手続のデジタル化)が施行されましたが、裁判所の家事事件のページは、家事事件手続(成年後見の申立てを含む)はその対象外で、令和10年6月までに対象となる予定と案内しています。そのため、2026年10月時点で成年後見の申立書そのものをオンラインで出す方法はなく、オンラインでできるのは次の周辺の手続きです。

手続き オンラインの扱い
申立書類の提出 窓口か郵送で出す。オンライン申立ては令和10年6月までに対象となる予定(家事事件のページ)
郵便料の納付 保管金として、インターネットバンキングやATMからの電子納付ができる
家庭裁判所調査官の面接 ウェブ会議を利用することもできる
登記されていないことの証明書 登記・供託オンライン申請システムで請求できる(マイナンバーカードの電子証明書が必要)
書式・記載例の入手 裁判所のウェブサイトからダウンロードできる

提出の方法(窓口か郵送か、事前の予約が要るか)は裁判所ごとに案内が違うので、申立先の家庭裁判所の案内で確かめます。出す前に申立書と添付書類の写しを手元に残し、裁判所からの連絡を受ける電話番号を申立書に正しく書いておきます。

申立ての後、後見人が実家を売る必要がある人は認知症の親の不動産売却は誰がどう進める?意思能力で分かれる3つの道も読んでおくと、売却までの期間の見通しが立ちます。

よくある質問

Q. 成年後見の申立ては、本人が住んでいない場所の家庭裁判所でもできますか?

申立先は本人の住所地を受け持つ家庭裁判所です。申立人である子の住所地ではありません。親が施設に住所を移していれば、施設のある地域の家庭裁判所になります。受け持ちの裁判所は、裁判所の申立書提出先一覧で、本人の住所の都道府県・市区町村から引いて確かめます。

Q. 申立てを弁護士や司法書士に頼むと、費用はいくらかかりますか?

報酬は事務所ごとに決まり、公的な相場の統計はありません。弁護士は代理人として申し立て、司法書士は裁判所に出す書類の作成を担います。頼む範囲(書類作成だけか、調査官面談への同席までか)と、印紙・鑑定費用などの実費が別かどうかを、見積書で比べます。費用の負担が難しい場合は、法テラスの窓口で利用できる制度があるかを聞きます。

Q. 申立てから審判まで、本人の財産を守る方法はありますか?

後見開始の申立てをした後、本人の財産の管理のため必要があれば、家庭裁判所は審判の効力が生じるまでの間の財産の管理者を選ぶなどの保全処分ができます(家事事件手続法126条)。悪質な勧誘を受けているなど急ぐ事情があるときは、申立ての時に家庭裁判所に相談します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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