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成年後見人が自宅を売るには:居住用不動産処分の許可の手続き

この記事のもくじ
  1. 許可が必要な「居住用不動産」と「処分」の範囲
  2. 売却の流れ:連絡から決済・報告までの手順
  3. 許可の前に契約するときの条件と、価格の決め方
  4. 売った後のお金と、後見人の報酬・税金の見通し

成年後見人が本人の自宅を売るには、売る前に家庭裁判所の「居住用不動産処分の許可」を得る必要があります(民法859条の3)。許可を得ないでした売却は無効になると、裁判所は案内しています。施設に入っていて今は住んでいない家も対象です。進める順番は、①売る必要を整理して家庭裁判所に連絡、②不動産会社の査定を取り、買主と条件を詰める、③売買契約書の案ができた段階で許可を申し立てる、④許可が出たら契約・決済・登記、⑤売却代金を家庭裁判所に報告、です。

許可が必要な「居住用不動産」と「処分」の範囲

許可が要るのは、本人が住むための建物とその敷地を処分する場合です。裁判所と東京家庭裁判所のハンドブックの説明を合わせると、範囲は次のとおりです。

区分 含まれるもの
居住用不動産 今住んでいる家、病院や施設に入る前に住んでいた家、将来住む予定の家、過去に住んだことがある家
処分 売却、賃貸、賃貸借の解除、抵当権の設定、使用貸借、建物の取り壊しなど
持ち家でない場合 本人が借りている家の賃貸借契約を解除する、公営住宅を返す場合も処分に当たる

許可を申し立てられるのは成年後見人です。保佐人や補助人は、不動産を処分する代理権を家庭裁判所から与えられている場合に限って申し立てられます(民法876条の5・876条の10)。

この許可が特に慎重なのは、住まいが変わると本人の心身や生活に大きな影響が出るためだと、東京家裁のハンドブックは説明しています。家庭裁判所が見るのは「本人のために売る必要があるか」です。施設費や医療費を払うための資金が要る、空き家のままでは傷みや近所への迷惑が心配、といった本人側の事情を、資料で示せるようにしておきます。

まだ後見人がいない段階で、認知症の親の家を家族が代わりに売ることはできません。その場合の進め方は認知症の親の不動産売却は誰がどう進める?意思能力で分かれる3つの道で確かめてください。

売却の流れ:連絡から決済・報告までの手順

東京家庭裁判所は、処分が必要な事情をあらかじめ連絡票で裁判所に送ったうえで取引の交渉を始め、取引が成立する一歩手前の段階で申し立てるよう案内しています。審理に日数がかかるので、決済日には余裕を持たせます。

  1. 売る必要を整理する:施設費などの収支の見通し、家の状態、ほかに資金を用意する方法がないかを書き出します。監督人がいれば相談します。
  2. 家庭裁判所に連絡票を出す:売却を考えている理由を伝えます。
  3. 査定を取り、不動産会社と媒介契約を結ぶ:申立てには不動産業者が作った査定書が要ります。
  4. 買主を探し、価格・引渡し日などを詰める:売買契約書の「案」を作ってもらいます。
  5. 許可を申し立てる:申立書に、契約書の案、査定書、固定資産の評価証明書、登記事項証明書などを付けます。
  6. 許可の審判を受ける:審判書が届いたら、契約・決済の日程を確定します。
  7. 決済と所有権移転登記:登記の申請では、登記原因に第三者の許可が要る場合、その許可を証する情報を出す決まりです(不動産登記令7条1項5号ハ)。許可の審判書を司法書士に渡します。
  8. 売却代金を管理し、報告する:東京家裁のハンドブックは、不動産の売却代金など多額の金銭を受け取ったら、入金先の通帳のコピーを付けて裁判所に連絡するよう求めています。

申立ての費用と書類は、裁判所全体の案内と東京家裁の例で次のとおりです。

項目 内容
申立先 後見開始(保佐開始・補助開始)の審判をした家庭裁判所
手数料 収入印紙800円分
郵便料 裁判所ごとに違う(東京家裁は110円分の郵便切手)
売却の添付書類 不動産の全部事項証明書(提出済みで変更なしなら不要)、売買契約書の案、評価証明書、不動産業者作成の査定書
監督人がいる場合 監督人の意見書(東京家裁)
手順図:後見人が自宅を売るときの順番
  1. 売る理由を整理(施設費・家の傷み)→ 監督人がいれば相談
  2. 家庭裁判所に連絡票
  3. 査定書を取り、媒介契約
  4. 買主と条件を決め、売買契約書の案を作る
  5. 居住用不動産処分の許可を申し立てる(印紙800円+郵便料)
  6. 許可の審判 → 契約・決済・登記(審判書を添える)
  7. 売却代金を本人の口座へ → 家庭裁判所に報告

許可の前に契約するときの条件と、価格の決め方

裁判所の書類一覧が求めているのは、売買契約書の「案」や「写し」です。契約の前に申し立てるのか、条件付きの契約を結んでから申し立てるのかは、買主の都合や裁判所の運用で変わります。どちらにしても、許可が出なければ売却は無効なので、許可前に署名する契約には、**許可が出た時に効力が生じる条件(停止条件)**を入れるかを決めておきます。民法127条1項は、停止条件付きの法律行為は条件が成就した時から効力を生じると定めています。条項の書き方は、仲介する不動産会社と、登記を担う司法書士に確かめます。

価格は、家庭裁判所が「本人にとって不利な売り方ではないか」を見る材料になります。査定書のほかに、次の点を説明できるようにしておきます。

  • 複数の不動産会社に査定を頼んだか、査定額にどんな根拠があるか(宅建業者は価格に意見を述べるとき根拠を明らかにする義務があります。宅地建物取引業法34条の2第2項)
  • 売り出してからの期間と、買主から出た条件
  • 仲介手数料・測量・解体などの費用を引いて、本人の手元にいくら残るか

査定額は不動産会社が見込む売れそうな価格で、その額で売れることを約束するものではありません。会社を選ぶときは査定額の高さだけで決めず、根拠と売り方の説明を比べます。その比較の記録は、裁判所に価格の妥当さを説明する材料にもなります。

一括査定を使う場合も、申込みは後見人の名前で、本人の自宅を売る理由と「家庭裁判所の許可が要る」ことを最初に伝えます。許可までの日数を見込んだ売り出し方や、停止条件の扱いをどう考えるかを、その時に各社に聞いて比べます。

売った後のお金と、後見人の報酬・税金の見通し

売却代金は本人の財産です。本人名義の口座(または本人名と後見人名を併記した口座)に入れ、後見人個人の口座には入れません。東京家庭裁判所のハンドブックは、元本保証のない投機的な運用を避けるよう求めています。東京家裁は本人の流動資産が500万円以上ある場合を後見制度支援信託・後見制度支援預貯金の利用を検討する対象にしているので、売却代金が入った後にその検討を求められることもあります。

専門職が後見人の場合は、売却について付加報酬が加わる場合があります。横浜家庭裁判所の「報酬額のめやす」(平成23年)は、療養看護費用のために許可を得て居住用不動産を3,000万円で任意売却した例で、約40万〜約70万円を挙げています。報酬の全体は成年後見の報酬:後見人・監督人に払う額の目安で確かめてください。

売却益に税金がかかるかどうかは、本人の取得費や特例の使い方で変わり、個別の判断は税理士の仕事です。家族が後見人の場合の注意は成年後見人に家族はなれる?家族が後見人になる注意点、本人が相続人になっている遺産の中の家を売る場合は成年後見人と遺産分割:特別代理人に進んでください。査定の頼み方は不動産一括査定とは:申し込む前に確かめることで整理しています。

よくある質問

Q. 親は施設に入っていて、自宅にはもう戻れそうにありません。それでも許可は要りますか?

要ります。裁判所の案内では、今は住んでいなくても、施設に入る前に住んでいた家や将来住む可能性がある家も居住用不動産に含まれます。東京家庭裁判所のハンドブックは、過去に住んだことがある家も含むと説明しています。売る前に許可の申立てをします。

Q. 親の自宅ではなく、親が貸しているアパートを売る場合も許可が要りますか?

本人が住むためのものでない不動産は、民法859条の3の許可の対象ではありません。ただし東京家庭裁判所のハンドブックは、重要な財産を処分するときは事前に家庭裁判所か監督人に連絡するよう求めています。売る必要があるか、より安全な方法はないかを検討したうえで、連絡票で知らせてから進めます。

Q. 許可が出なかったら、結んだ売買契約はどうなりますか?

許可を得ずにした処分は無効になると裁判所は案内しています。そのため、許可の前に契約書に署名する場合は、許可が出たときに効力が生じる条件(停止条件。民法127条1項)を入れるかを、不動産会社と、登記を頼む司法書士に確かめておきます。許可前に手付金を受け取るかどうかも同じ時に決めます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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