本人が亡くなった後の成年後見人:死後事務の範囲と引継ぎ
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成年後見の本人(成年被後見人)が亡くなると後見は終わりますが、成年後見人は、相続人が財産を管理できるようになるまでの間、民法873条の2の「死後事務」として、①財産の保存、②期限の来た債務の支払い、③火葬・埋葬の契約などを行えます。③と、そのための預金の払出しなどには家庭裁判所の許可が必要です。後見人はあわせて家庭裁判所への報告、法務局への後見終了の登記、2か月以内の財産の計算を行い、最後に財産を相続人へ引き継ぎます。葬儀の契約は死後事務に含まれないので、親族が決めます。
Q1 本人が亡くなった後、成年後見人がしなければならないことは何ですか?
後見は、本人の判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで続く制度なので、本人の死亡で終わります。後見人の仕事は「本人のための管理」から「相続人へ引き継ぐまでの後始末」に変わります。
| 後見人がすること | 根拠・中身 |
|---|---|
| 家庭裁判所に本人の死亡を報告する | 裁判所の案内(家事事件Q&A)。死亡の記載のある戸籍謄本などを添える |
| 法務局に後見終了の登記を申請する | 後見人は本人の死亡を知ったら終了の登記を申請しなければならない(後見登記等に関する法律8条1項) |
| 財産の計算(後見の計算)をする | 任務が終わってから2か月以内(民法870条。家庭裁判所で期間を延ばせる)。後見監督人がいればその立会いで行う(871条) |
| 必要な死後事務を行う | 財産の保存、期限の来た債務の支払い、火葬・埋葬の契約など(873条の2) |
| 相続人に財産を引き継ぐ | 通帳・証書・権利証などと、計算の結果を渡す |
| 報酬を受け取るなら申し立てる | 家庭裁判所の報酬付与の審判で決まった額を本人の財産から受け取る |
後見人がいる家族の側は、本人が亡くなったら、まず後見人に連絡し、誰が相続人の窓口になるかを伝えます。後見人は相続人が財産を管理できるようになるまでの「つなぎ」なので、窓口が決まらないと引継ぎも進みません。
Q2 成年後見の死後事務として、後見人ができることの範囲は?
民法873条の2は、成年後見人が本人の死亡後にできる行為を次の3つに限っています。いずれも「必要があるとき」で、「相続人の意思に反することが明らかなとき」は除かれ、「相続人が相続財産を管理できるに至るまで」の間に限られます。
- 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為(例:建物の雨漏りの修理を頼む、債権の時効が完成しないようにする)
- 相続財産に属する債務で、弁済期が来ているものの支払い(例:入院費や施設の利用料の未払い分)
- 死体の火葬・埋葬に関する契約の締結、その他相続財産の保存に必要な行為(1・2を除く)。これには家庭裁判所の許可が必要
裁判所の案内では、許可が必要な行為の例として、火葬・埋葬に関する契約、債務を支払うための本人名義の預貯金の払戻し(振込を含む)、施設に残した動産を預ける寄託契約、電気・ガス・水道の供給契約の解約が挙げられています。2の支払いそのものは許可なしでできても、その支払いのために預金を下ろすことは3に当たり、許可が要る、という組み立てです。
| 場面 | 後見人の死後事務でできるか |
|---|---|
| 火葬場・納骨の契約 | できる(家庭裁判所の許可が必要) |
| 葬儀(通夜・告別式)の契約 | 含まれない。親族が決めて契約する |
| 施設の未払い利用料の支払い | できる。預金から払うなら払戻しに許可が必要 |
| 施設に残った衣類・家具を預ける | 寄託契約として許可を得て行える |
| 自宅の売却・遺産の分配 | できない。相続人(遺産分割)の仕事 |
- 本人の死亡→後見人が家族に連絡、相続人の窓口を決める
- 家庭裁判所に死亡を報告、法務局に後見終了の登記を申請
- 必要な死後事務(火葬・埋葬の契約、未払いの支払いなど)→許可が要るものは家庭裁判所に申立て
- 2か月以内に後見の計算(財産目録・収支)
- 相続人に財産を引き継ぐ→報酬付与の申立て
なお、この権限は成年後見人に限った定めです。任意後見人の場合、任意後見契約は委任契約の一種なので、本人の死亡で終わります(民法653条1号)。保佐人・補助人にも、現行法では同じ権限の定めはありません。
Q3 死後事務の許可の申立ては、どこにどう出しますか?
家庭裁判所の許可が要る行為をするときは、後見人が申し立てます。
- 申立先:後見開始の審判をした家庭裁判所
- 費用:収入印紙800円分(1つの申立書で2つ以上の許可を求めても800円)と、連絡用の郵便切手(額は裁判所ごと)
- 添付書類:本人の死亡診断書(死体検案書)の写し、または死亡の記載のある戸籍謄本など
- 許可が要らない場合:成年後見人自身が相続人で、相続人の立場で行う場合
火葬は死亡から日を置かずに必要になるので、親族が火葬を手配できない事情がある場合(親族がいない、遠方で動けないなど)に、後見人がこの許可を得て契約する場面があります。親族が手配できるなら、親族が行います。
相続人がいない場合や、相続人が全員相続放棄をした場合は、相続人が財産を管理できるようになる時が来ません。そのときは利害関係人の申立てで家庭裁判所が相続財産清算人を選び、後見人はその清算人に財産を引き継ぐ流れになります。手続きの全体は法定相続人がいない場合の財産:相続財産清算人と特別縁故者の流れで扱います。
Q4 相続人への引継ぎと、後見人の報酬はどうなりますか?
後見人は、財産の計算を終えたら、通帳・キャッシュカード・証書・権利証・印鑑などの現物と、財産目録や収支の記録を相続人に渡します。相続人が複数いる場合、誰に渡すかは後見人と相続人で話し合います。遺言で遺言執行者が決まっていれば、遺言執行者に渡すこともあります。
急迫の事情があるときは、相続人が管理できるようになるまで、後見人が必要な処分をしなければならないという定めもあります(民法874条が準用する654条)。どんな処分が「必要」かは場面ごとに違うので、後見人は迷えば家庭裁判所に相談しながら進めます。
報酬は、後見人が家庭裁判所に報酬付与の申立てをし、裁判官が事務の内容や本人の財産を考えて決めた額を、本人の財産(相続財産)から受け取ります(民法862条)。申立てには後見等事務報告書や財産目録を添えるので、死後事務で何をしたかもそこに書いて報告します。家族が後見人だった場合も、申し立てなければ報酬は出ません。額の目安と続く期間は成年後見の報酬:後見人・監督人に払う額の目安と続く期間にまとめています。
Q5 引継ぎの後、家族がすることと、2026年改正で変わること
財産を受け取った相続人は、ここから普通の相続手続きに入ります。後見人から受け取った財産目録は、相続財産の一覧の土台として使えます。
- 後見人から受け取った財産目録と、通帳・証書の現物を照らし合わせる
- 遺言の有無を確かめ、なければ相続人全員で遺産分割を話し合う
- 相続税がかかるかを判定し、申告期限(相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)を意識する
- 相続人の中に判断能力が落ちた人がいないかを確かめる
相続人にも認知症の人がいる場合の申告や特例の扱いは相続人が認知症の場合の相続税の申告:誰が申告し特例はどうなるかで扱います。
2026年6月24日に公布された改正法(令和8年法律第45号)では、後見・保佐を補助に一元化し、補助人も本人の死亡後に火葬・埋葬の契約や、死亡当時の権限の範囲内での相続財産の保存に必要な行為(未払いの施設利用料の支払いなど)をできるようにする予定です。ただし成年後見の見直しは施行前で、施行日は政令で決まります。今、親が元気なうちにできる備えは親が認知症になる前にやること:財産・委任・信託の対策チェック表で確かめてください。
よくある質問
Q. 成年後見人に、葬儀の手配や葬儀代の支払いまで頼めますか?
民法873条の2で後見人ができるのは「火葬又は埋葬に関する契約」で、裁判所の案内でも葬儀に関する契約は許可の対象から除かれています。葬儀を行うかどうか、どんな形にするかは、相続人や親族が決めて契約するのが基本です。葬儀代を立て替えた場合の精算は、相続人の間で話し合います。
Q. 保佐人や補助人だった場合も、亡くなった後の手続きをしてもらえますか?
現行の民法873条の2は成年後見人について定めた条文で、保佐人・補助人には同じ権限の定めがありません。2026年に公布された改正法では補助人も火葬・埋葬の契約などができるようになる予定ですが、施行前です。今は、急ぎの事情があるときの必要な処分(民法876条の5・876条の10が準用する654条)を除き、相続人が手続きをします。
Q. 後見人から財産を引き継ぐとき、相続人は何を受け取りますか?
通帳や証書、権利証などの財産の現物と、後見人が作る財産目録や収支の記録(後見の計算)を受け取ります。後見の計算は任務が終わってから2か月以内にすることになっています(民法870条)。受け取ったら、目録と現物が合っているかを確かめ、相続手続きに進みます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第653条・第654条・第862条・第870条・第871条・第873条の2・第874条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 後見登記等に関する法律 第8条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 成年被後見人の死亡後の死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結等の許可(裁判所)(最高裁判所)
- 成年後見人等の報酬付与(裁判所)(最高裁判所)
- 家事事件Q&A 成年後見について(裁判所)(最高裁判所)
- 相続財産清算人の選任(裁判所)(最高裁判所)
- 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)概要資料(法務省民事局)(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。