暦年贈与の契約書の書き方:ひな形と毎年作る理由・保管の仕方
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暦年贈与の契約書は、法律上はなくても贈与そのものは成り立ちますが、作っておくのが基本です。 民法549条で贈与は「あげる」と「もらう」の合意で成立し、書面は要件ではありません。一方で、書面のない贈与はまだ渡していない部分を取り消せる(民法550条)ため、約束の中身が不安定です。そして相続や税務調査のとき、「その年に、誰が誰に、いくらを贈与し、受け取った人が承知していたか」を示せる一番の証拠が契約書です。この記事では、そのまま使えるひな形と、書き方・保管のしかたを示します。
暦年贈与の契約書は必要か:法律と税金の両面から
契約書の役割を、法律の面と税金の面に分けて整理します。
| 面 | 契約書がない場合 | 契約書がある場合 |
|---|---|---|
| 民法 | 口約束でも贈与は成立する。ただし渡していない部分は各当事者が解除できる(550条) | 書面による贈与になり、解除の規定が及ばない |
| 贈与の時期 | 書面によらない贈与は、実際に渡した時に財産を取得したとされる | 書面による贈与は、契約の効力が生じた時に取得したとされる |
| 相続・調査 | 受け取った人が知っていたか、本当に贈与だったかを示しにくい | 日付・金額・署名で、合意があったことを示せる |
(贈与の時期は国税庁タックスアンサーNo.4402のQ&Aの説明による)
特に大事なのは、受け取る人が贈与を知っていたことの証拠です。親が子の名義で口座を作って入金を続け、子は何も知らなかったという形は、受諾がなく贈与が成り立っていないとみられ、親の財産(名義預金)として相続税の対象になりえます。国税庁の令和6事務年度の調査の状況でも、贈与税で非違があった財産の62.9%が現金・預貯金等でした。
暦年贈与の契約書のひな形(現金を振り込む場合)
次の文例は、親から子へ現金を振り込む1年分の贈与を想定したものです。名前・金額・日付・口座は自分の内容に置き換えます。
贈与契約書
贈与者 山田一郎(以下「甲」という。)と受贈者 山田太郎(以下「乙」という。)は、次のとおり贈与契約を締結した。
第1条 甲は、現金 金壱百壱拾万円(1,100,000円)を乙に贈与するものとし、乙はこれを受諾した。
第2条 甲は、第1条の現金を、2026年11月30日までに、乙名義の下記口座に振り込む方法により引き渡す。 ○○銀行 ○○支店 普通預金 口座番号1234567 名義 ヤマダ タロウ
第3条 振込にかかる手数料は甲が負担する。
以上を証するため、本契約書を2通作成し、甲乙それぞれ署名押印のうえ各1通を保有する。
2026年11月10日
甲(贈与者)住所 ○○県○○市○○町1-2-3 氏名(自署)山田一郎 印
乙(受贈者)住所 ○○県○○市○○町4-5-6 氏名(自署)山田太郎 印
受け取る人が未成年のとき
受け取る人が未成年なら、乙の欄に子の名前を書き、その下に親権者が署名します。
乙(受贈者)氏名 山田花子 上記法定代理人 親権者 父 山田太郎(自署)印 上記法定代理人 親権者 母 山田由美(自署)印
民法824条は親権者が子の財産に関する法律行為について子を代表すると定め、824条の2は親権を父母が共同して行うのを原則としています。父母の両方が親権者なら、両方の署名をそろえておくと迷いません。孫への贈与で気をつける点は孫への暦年贈与:加算対象外になる場合と未成年の口座管理で扱います。
書き方の注意:日付・金額・署名・振込をそろえる
契約書は、振込の明細や申告書と照らし合わせて読まれます。食い違いがないかを、次の表で確かめます。
| 項目 | 書き方 | よくある失敗 |
|---|---|---|
| 契約日 | 実際に署名した日を書く | 後から過去の日付で作る |
| 金額 | 数字と漢数字の両方で書く | 振込額と契約額がずれる |
| 引き渡し | 振込先の口座(受贈者本人の名義)と期限を書く | 贈与者が管理する口座を書く |
| 署名 | 当事者それぞれが自筆で書く | 贈与者が全員分を書く |
| 受諾 | 「乙はこれを受諾した」と書く | あげる側の意思だけを書く |
| 通数 | 2通作り、各自1通を持つ | 1通だけで贈与者が保管する |
| 年 | 契約日と振込日を同じ年に収める | 12月に契約し、翌年1月に振り込む |
最後の行は、どの年の贈与として数えるかに関わります。書面による贈与は契約の効力が生じた時に取得したとされるので、12月の契約で翌年1月に振り込むと、どちらの年の110万円の枠に入るのかで迷いが生じます。契約日と振込日を同じ年の中に置けば、この迷いは起きません。
振込が終わったら、通帳のその行に印をつけ、契約書と一緒に保管します。受け取った人は、口座のキャッシュカードと届出印を自分で持ちます。
毎年作り直す理由:まとめて作ると定期贈与とみられる
契約書は、1年ごとに、その年の贈与の分だけ作ります。何年分もまとめた書き方は避けます。
避けたい書き方:「甲は乙に対し、2026年から2035年まで、毎年金壱百万円を贈与する。」
国税庁のQ&Aでは、毎年の贈与をその都度行う場合は各年の合計が110万円以下なら贈与税はかからない一方、10年間にわたり毎年100万円を渡す約束をしている場合は、約束をした年に定期金の権利の贈与を受けたとして申告が要ると説明しています。上の書き方はまさにこの約束にあたります。
毎年作り直すと、次の年に金額を変える・やめる・相手を変える、という判断も自然にできます。贈与する人の健康状態が変わった年は、続けてよいかをその年の契約の前に考えます。暦年贈与の全体の流れは暦年贈与とは?毎年110万円の贈与のやり方と7年加算の影響にまとめています。
保管の仕方:確定日付と年ごとのファイル
作った契約書は、次のようにまとめておくと、相続のときに家族が困りません。
- 年ごとのクリアファイルに、契約書・振込の明細(通帳のコピーか取引明細)・その年の贈与税の申告書の控え(申告した年だけ)を入れる。
- ファイルの表に「2026年 父→太郎 110万円」のように1行で書く。
- 贈与者と受贈者がそれぞれ1部ずつ持つ。贈与者側の分は、遺言書やエンディングノートと同じ場所に置く。
契約書を作った日を後から争われないようにしたい場合は、公証役場で確定日付をもらう方法があります。日本公証人連合会によると、確定日付は私文書がその日に存在していたことを証明するもので、手数料は1件700円です。文書の内容が本当かどうかを証明するものではない点は覚えておきます。
契約書がないまま過去に動かしたお金が、後から贈与と認められるか、名義預金とされるかの考え方は贈与税の時効は6年?成立しにくい理由と名義預金との関係で扱います。
よくある質問
Q. 契約書はパソコンで作ってもよいですか?
贈与契約書の形式を決めた法律はないので、本文はパソコンで作っても構いません。ただし、当事者がその内容に合意したことを示すために、署名欄はそれぞれが自筆で書くのが安心です。日付と金額は、振込の明細と照らし合わせられるように正確に書きます。
Q. 契約書の印鑑は実印でないといけませんか?
贈与は合意で成り立つと民法が定めており、実印や印鑑証明書を契約の条件にした決まりはありません。大切なのは、それぞれが自分で署名し、内容を承知したことが後から分かることです。実印を使って印鑑証明書を添えると証拠としての重みは増すので、金額が大きい年に使う家庭もあります。
Q. 何年分も前の贈与について、今から契約書を作ってもよいですか?
過去の日付で今作ると、実際に作った日と書面の日付が食い違い、かえって信用を落とします。昔の贈与は、振込の明細や当時の申告書の控えなど、その時に残った記録で整理します。これから行う贈与について、毎年その年の契約書を作るようにします。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第549条・第550条・第824条・第824条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.4402 Q&A(毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合/贈与を受ける財産の取得の時期)(国税庁)
- No.4402 贈与税がかかる場合(国税庁)
- 確定日付・電子確定日付(日本公証人連合会)
- 令和6事務年度 相続税等の調査等の状況(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。