孫への暦年贈与:加算対象外になる場合と未成年の口座管理
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孫への暦年贈与は、孫が祖父母の相続で財産を何も取得しなければ、亡くなる前の贈与を相続財産に足し戻す「加算」の対象になりません。 加算の対象は、相続や遺贈で財産を取得した人が受けていた贈与だからです。ただし、遺言で財産を受け取る、生命保険金の受取人になる、親が先に亡くなって孫が相続人になる(代襲相続)、祖父母の養子になっている、といった場合は対象に入ります。赤ちゃんなど未成年の孫には、親権者が契約を結び、孫名義の口座を親権者が管理する形にします。
孫への暦年贈与が加算対象外になる場合・ならない場合
国税庁のタックスアンサーNo.4161は、加算の対象を「相続や遺贈で財産を取得した人」が加算期間内に受けた暦年課税の贈与としています。加算期間は2026年中の相続では亡くなる前3年以内で、2027年以後の相続から段階的に7年へ延びます。孫が相続で何も取得しなければ、この期間に入る贈与でも足し戻しはありません。
| 孫の立場 | 加算期間内の暦年贈与 |
|---|---|
| 相続人でなく、遺言にも保険金にも名前がない | 足し戻さない |
| 遺言で財産を受け取る、または保険金の受取人になっている | 足し戻す |
| 親が先に亡くなって代襲相続人になった、祖父母の養子になった | 足し戻す |
表の2行目以降に当たる場合の詳しい判定は暦年贈与の7年加算は法定相続人だけ?孫・子の配偶者の扱いにあります。見落としやすいのは、遺言と生命保険の受取人です。「孫には相続させないから大丈夫」と考えていても、遺言の一部で孫に財産を渡したり、孫を受取人にした生命保険に入っていたりすると、加算の対象に入ります。贈与を始める前に、遺言の中身と保険の受取人を家族で確かめます。
孫が遺言で財産を受け取ると、もう一つ、相続税が2割加算されます。国税庁No.4157によると、2割加算は配偶者・父母・子以外の人が対象で、代襲相続人の孫は対象外ですが、祖父母の養子になった孫(代襲相続人でない場合)は対象です。7年加算の対象になる人の範囲は暦年贈与の7年加算は法定相続人だけ?孫・子の配偶者の扱いで詳しく扱います。
孫の年齢で変わる税率:18歳未満は一般税率
110万円を超えた分の税率は、孫の年齢で変わります。祖父母から、贈与の年の1月1日に18歳以上の孫への贈与は特例税率、18歳未満の孫への贈与は一般税率です。
| 1年に受け取る額 | 18歳以上の孫(特例税率) | 18歳未満の孫(一般税率) |
|---|---|---|
| 110万円 | 0円 | 0円 |
| 300万円 | 19万円 | 19万円 |
| 500万円 | 48.5万円 | 53万円 |
| 1,000万円 | 177万円 | 231万円 |
(筆者の計算。国税庁No.4408の速算表による。500万円の2つの額は国税庁の計算例と同じ)
300万円までは差がありませんが、額が大きくなると差が開きます。小さい孫には、110万円以下を毎年続けるほうが税の面では素直です。複数の祖父母から同じ年に受け取ると、孫ひとりの合計で110万円を数える点にも気をつけます(祖父母4人から各110万円なら、合計440万円で計算)。
赤ちゃん・未成年の孫への贈与:契約は親権者が結ぶ
贈与は、あげる人の意思と、もらう人の受諾で成り立ちます(民法549条)。赤ちゃんは自分で受諾の意思を示せないので、親権者が孫を代表して受けます。民法824条は親権者が子の財産を管理し、その財産に関する法律行為について子を代表すると定めています。父母の婚姻中は父母の双方が親権者で、親権は共同して行うのが原則です(824条の2)。
契約の進め方は次のとおりです。
- 祖父母と、孫の親権者(父母)で、その年の贈与の額と時期を決める。
- 契約書の受贈者欄に孫の名前を書き、「上記法定代理人 親権者」として父母が署名する。
- 祖父母の口座から、孫名義の口座へ振り込む。
- 110万円を超えた年は、孫の名前で翌年2月1日〜3月15日に贈与税を申告する(手続きは親権者が行う)。
契約書の文例と、毎年作り直す理由は暦年贈与の契約書の書き方:ひな形と毎年作る理由・保管の仕方にあります。
孫名義の口座の管理:名義預金にしないための分担
孫への贈与でいちばん多い失敗は、祖父母が孫の名前で口座を作り、通帳と印鑑を祖父母の家に置いたまま入金を続ける形です。孫も親も知らず、祖父母が自由に引き出せる状態なら、贈与が成り立っておらず祖父母の財産のまま(名義預金)とみられ、祖父母の相続のときに相続財産として申告の対象になりえます。
| 誰が | すること |
|---|---|
| 祖父母 | 契約書に署名し、孫名義の口座へ振り込む。振り込んだ後は口座に触れない |
| 親権者(父母) | 孫名義の口座を開き、通帳・カード・届出印を管理する。孫のために使うときは記録を残す |
| 孫(成人後) | 18歳で成年になったら、通帳と印鑑を受け取り、自分で管理する |
親権者が孫の口座を管理するのは、民法824条の財産管理として自然な形です。祖父母が管理するのとは意味が違います。孫が成人したら、それまでの契約書と振込の記録を一緒に渡し、「いつ、誰から、いくら受け取ったお金か」を本人が説明できるようにしておきます。
教育費・精算課税など、暦年贈与以外の渡し方
孫にお金を渡す方法は、暦年贈与だけではありません。
- 教育費をその都度払う:民法877条で直系血族は互いに扶養の義務があり、祖父母も孫の扶養義務者です。学費や教材費を必要な都度、直接充てる分は贈与税がかかりません(国税庁No.4405)。
- 教育資金の一括贈与の非課税:2026年3月31日で終わり、4月1日以後は新しく使えません(国税庁No.4510)。
- 相続時精算課税:贈与の年の1月1日に60歳以上の祖父母から、18歳以上の孫へは、精算課税を選べます。2,500万円までの特別控除と年110万円の基礎控除がありますが、選んだ祖父母からの贈与は暦年課税に戻せず、祖父母の相続で足し戻されます。暦年贈与と違い、孫が相続で何も取得しなくても足し戻しの対象になり、孫が代襲相続人でなければ相続税の2割加算も受けます(国税庁No.4157・No.4161)。仕組みは相続時精算課税とは:2,500万円の特別控除と110万円の基礎控除で扱います。
孫への贈与を何年続けるか、誰に何を遺言で残すかは、遺産の額と相続人の構成で結論が変わります。生前贈与と相続のどちらで渡すかの比べ方は贈与税 vs 相続税:どちらが得かを比べる考え方にまとめています。
よくある質問
Q. 生まれたばかりの孫にも暦年贈与はできますか?
できます。赤ちゃんは自分で「もらいます」と意思を示せないので、親権者である父母が孫を代表して贈与を受ける契約をします。契約書には孫の名前と、法定代理人として親権者の署名を書きます。振込先は孫名義の口座にし、管理は親権者が行います。
Q. 孫が大学の学費を払うたびに祖父母が出すのは、110万円の枠に入りますか?
祖父母も孫の扶養義務者にあたるので、教育費をその都度、学校への支払いなどに直接充てる分は、贈与税がかからない財産として国税庁が挙げています。暦年贈与の110万円とは別に考えられます。まとめて渡して孫が預金した場合は、教育費の名目でも贈与税の対象になります。
Q. 孫に遺言で財産を残すのと、生前に暦年贈与するのとでは何が違いますか?
遺言で受け取ると、孫は(代襲相続人でない限り)相続税の計算で2割加算の対象になり、その孫が受けていた加算期間内の暦年贈与も相続財産に足し戻されます。生前の暦年贈与だけで渡し、孫が相続で何も取得しなければ、どちらも起きません。どちらにするかは、遺産の額と相続人の構成で変わるので、相続税を扱う税理士に試算を頼みます。
出典・参考にした公的な情報
- No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁)
- No.4157 相続税額の2割加算(国税庁)
- No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)(国税庁)
- No.4405 贈与税がかからない場合(国税庁)
- No.4103 相続時精算課税の選択(国税庁)
- No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税(国税庁)
- 民法 第549条・第824条・第824条の2・第877条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。