生前贈与と贈与税 / Q&A

贈与税の時効は6年?成立しにくい理由と名義預金との関係

この記事のもくじ
  1. 贈与税の時効は6年:数え始めは「翌年3月15日」
  2. 早見表:何年分の贈与まで課税されうるか
  3. 時効を当てにしにくい理由:そもそも贈与が成立していたか
  4. 延滞税:期限後に申告・納付すると何が加わるか
  5. 過去の贈与に心当たりがあるときの整理のしかた

贈与税の「時効」は、正確には税務署が贈与税を課税(更正・決定)できる期間のことで、相続税法37条により、申告書の提出期限から6年、偽りその他不正の行為があった場合は7年です。数え始めは贈与の日ではなく、もらった翌年の3月15日です。そして、この期間が意味を持つのは「贈与が成り立っていた」場合だけで、子の名義にしただけで贈与が成り立っていない預金は、6年たっても贈与税の時効とは関係なく、親が亡くなったときに相続財産として相続税の対象になりえます。この記事では、期間の数え方と、時効を当てにしにくい理由を示します。

贈与税の時効は6年:数え始めは「翌年3月15日」

相続税法37条1項は、税務署長は贈与税の更正や決定を、申告書の提出期限から6年を経過する日まですることができる、と定めています。偽りその他不正の行為によって税を免れた場合は、同条4項で7年に延びます。国税の原則の期間(国税通則法70条の5年)より長い、贈与税だけの特則です。

ここで言う「時効」には2つの意味が混ざりがちなので、分けておきます。

言葉 中身 期間
課税できる期間(除斥期間と呼ばれる) 税務署が、申告されなかった贈与税を決定したり、税額を直したりできる期間 申告期限から6年(偽り・不正は7年)
徴収の時効 決まった税額を、税務署が取り立てられる期間 課税できる期間とは別に定めがある

ふだん「贈与税の時効」と言われるのは、上の行の「課税できる期間」です。

起算点の申告期限は、贈与を受けた年の翌年3月15日です(No.4429)。つまり、1月にもらった贈与も12月にもらった贈与も、同じ年の分は同じ日から数えます。

早見表:何年分の贈与まで課税されうるか

申告期限が平日の年を例に、課税できる期間の終わりを示します(筆者の計算。申告期限が土日祝日にあたる年は、期限が次の開庁日にずれる点に注意。表の「終わり」は申告期限の日付に6年・7年を足した日付で、その日が休日のときの扱いは考えていません)。

早見表:贈与した年と、課税できる期間の終わり
贈与した年 申告期限 6年(通常)の終わり 7年(偽り・不正)の終わり
2018年 2019年3月15日 2025年3月15日 2026年3月15日
2021年 2022年3月15日 2028年3月15日 2029年3月15日
2022年 2023年3月15日 2029年3月15日 2030年3月15日
2026年 2027年3月15日 2033年3月15日 2034年3月15日

2026年10月の時点で、2018年分は7年の期間も終わっています。一方、2021年分は通常の6年でも2028年3月まで課税されうる範囲にあります。表にない年は、その年の申告期限を確かめてから同じように6年を数えます。

7年になるのは「偽りその他不正の行為」で税を免れた場合で、条文は単に申告を忘れていた場合と書き分けています。どちらに当たるかは、個別の事実をもとに税務署が判断します。

時効を当てにしにくい理由:そもそも贈与が成立していたか

6年が過ぎても安心できない一番の理由は、「贈与ではなかった」とされると、贈与税の時効の話ではなくなるからです。

贈与は、あげる人が財産を無償で与える意思を示し、もらう人が受け入れることで効力が生じる契約です(民法549条)。親が子の名義で口座を作り、子に知らせずに毎年入金して、通帳と印鑑も親が持っていた、という形では、子が受け入れた事実を示すものがありません。この場合、その預金は親の財産を子の名義で置いていただけ(名義預金)と扱われ、親が亡くなったときに相続財産として相続税を計算することになりえます。

判断の材料 贈与として成り立っている方向 名義預金とされやすい方向
受け取った人が知っていたか 入金を知り、受け入れていた 存在を知らなかった
通帳・印鑑・カードの管理 受け取った人が自分で持っている あげた人が持ったまま
お金の使い道 受け取った人が自分のために使った 誰も手を付けず、親が出し入れした
書類 贈与のたびの契約書がある 書類がない
申告 110万円を超えた年に申告している 超えた年も申告していない

この場合に問題になるのは贈与税ではなく相続税なので、期間も相続税の申告期限から数えます(相続税の課税できる期間は相続税の時効の記事)。何十年前から積み立てた名義の預金でも、親が亡くなった時点の残高が相続財産に入りうる、ということです。国税庁の令和6事務年度の調査では、贈与税の調査で見つかった財産の62.9%が現金・預貯金等でした。

いつ「もらった」ことになるかにも注意が要ります。国税庁の質疑応答では、口頭の贈与は実際に渡した時、書面による贈与は契約の効力が生じた時が、財産を取得した時期とされています。書面によらない贈与は、まだ渡していない部分なら当事者が解除できます(民法550条)。「昔、口約束をしていた」だけで実際に渡したのが最近なら、贈与の年は最近の側です。

延滞税:期限後に申告・納付すると何が加わるか

課税できる期間の中で期限後に申告すると、贈与税の本税に、延滞税と加算税が加わります。延滞税は、納期限(3月15日)の翌日から納めた日までの日数でかかります。

延滞税の割合(2026年は、2か月以内が年2.8%、2か月を過ぎた分が年9.1%)と、無申告加算税の割合・計算例は、親子の贈与税はばれるのかの記事の表にまとめています。ここで押さえるのは、何年分を遡るかで負担が変わる点です。

割合は毎年見直されるので、何年分もさかのぼるときは、年ごとの割合で計算します(国税庁 No.9205)。筆者の概算で、同じ本税48.5万円の贈与が3年分あり、いずれも2か月を過ぎて1年ずつ未納だったとすると、延滞税は1年分で約4.4万円(48.5万円×9.1%、端数処理は省略)、3年分で約13.2万円です。ただし古い年分ほど遅れた期間が長く、実際には年ごとに合計が変わります。遅れた期間に比例して増えるので、期間の中にある年分は、気づいた時点で早く納めるほど負担が小さくなります。

過去の贈与に心当たりがあるときの整理のしかた

  1. 年ごとに書き出す:いつ・誰から・いくら・どの口座に入ったかを、通帳の記録で1年ずつ並べる
  2. 贈与として成り立っていたかを見る:上の表の5項目に沿って、受け取った当時の状況を書き出す
  3. 課税できる期間の中か外かを見る:早見表のように、その年の申告期限から6年を数える
  4. 期間の中で110万円を超えた年があれば、期限後申告を考える:早く出すほど延滞税は小さくなる
  5. 親が存命なら、これからの贈与の形を整える:贈与のたびに契約書を作り、受け取った人の口座へ振り込み、通帳は受け取った人が管理する(暦年贈与の契約書の書き方)

「この預金は贈与だったのか、名義預金なのか」「何年分を申告すべきか」は、事実関係にもとづく個別の判断で、税理士の仕事です。書き出した表と通帳の写しを持って相談すると、話が早く進みます。これから贈与と相続のどちらで財産を移すかを考える場合は、次の贈与税と相続税の比較へ進んでください。

よくある質問

Q. 20年前に親からもらったお金は、今から課税されますか?

贈与として成り立っていた20年前の贈与なら、申告期限から7年もとうに過ぎているので、税務署がその年分の贈与税を課すことはできません。ただし、その預金が実は親の財産のままだった(名義預金)とされると、贈与税ではなく、親が亡くなったときの相続税の問題になります。どちらに当たるかは、受け取った当時の事実関係で決まります。

Q. 贈与税の6年は、贈与した日から数えるのですか?

いいえ。数え始めは、その年分の贈与税の申告書の提出期限(もらった翌年の3月15日)です。たとえば2026年中の贈与なら申告期限は2027年3月15日で、6年の期間はそこから数えます。贈与の日から数えるより、1年以上長くなります。

Q. 期限を過ぎて申告したら、延滞税はいつから付きますか?

延滞税は、納期限(申告期限と同じ3月15日)の翌日から、納めた日までの日数でかかります。2026年の割合は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を過ぎた分が年9.1%です。割合は年ごとに変わるので、その年の割合を国税庁の案内で確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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