生前整理の進め方:物・お金・書類・デジタルの4分野で整理する
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生前整理は、元気なうちに自分の持ち物と財産を見直し、残す物・手放す物を自分で決めておく作業です。やることは、物・お金・書類・デジタルの4分野に分けると漏れなく進められます。順番は、まず書類と貴重品の置き場所を決め、次にお金の口座と契約を一覧にし、デジタルの情報を整理し、最後に時間のかかる物の片付けに取り組むのがおすすめです。財産を誰に残すかまで決めたいなら、一覧を土台に遺言書を作ります。
生前整理とは:終活との違いと、4分野のやることリスト
生前整理と終活は、法律で定義された言葉ではありません。一般には、終活が葬儀・お墓・医療や介護の希望まで含めた「人生の終わりへの準備」全体を指すのに対し、生前整理はその中の「持ち物と財産の整理」を指して使われます。亡くなった後に家族が行う遺品整理を、本人が先に済ませておく作業とも言えます。
亡くなった人の財産は、一身に専属したものを除いて相続人が引き継ぎます(民法896条)。生前整理をしておくと、家族はどこに何があるかを探す手間が減り、相続の手続きにすぐ入れます。本人にとっても、使わない物が減って暮らしやすくなり、お金の流れが見えるようになる利点があります。
| 分野 | やること | 終わりの目安 |
|---|---|---|
| 書類 | 通帳・印鑑・権利証・保険証券・年金の書類を1か所に集める | 置き場所を家族の1人が知っている |
| お金 | 口座・証券・保険・借入れ・引き落としを一覧にし、使わない口座を減らす | 一覧1枚で財産と負債が見渡せる |
| デジタル | スマホ・パソコン・ネット口座・有料サービスを書き出す | 家族が解約先と連絡先を分かる |
| 物 | 部屋ごとに残す・譲る・売る・手放すを決める | 床と通路に物がなく、保留の箱が1つ以内 |
手順1:書類と貴重品を1か所に集める
最初に書類を集めるのは、片付けの途中で大事な紙を捨ててしまうのを防ぐためです。家じゅうの引き出し、仏壇、たんす、金庫、バッグの中を見て、次の物を1つの箱かファイルボックスに集めます。
- 通帳・キャッシュカード・印鑑:使っていない古い通帳も、口座が残っているかを確かめる手がかりになるので捨てずに集めます。
- 不動産の書類:登記識別情報通知(権利証)、固定資産税の納税通知書、購入時の契約書。
- 保険と年金:生命保険・医療保険の証券、年金証書、年金の振込通知。
- 借入れと保証:ローンの返済予定表、借用書、連帯保証人になった書面。
- 契約と会員:携帯電話、光回線、新聞、クレジットカード、互助会などの契約書や会員証。
集め終わったら、箱の置き場所を決めて、信頼できる家族の1人に伝えます。権利証や印鑑など重要な物は、施錠できる場所に保管します。
手順2:お金の口座と契約を一覧にして減らす
次に、集めた書類をもとに、お金の出入りを1枚の一覧にまとめます。一覧の列は「種類・金融機関や会社の名前・支店・何のための口座か・毎月の引き落とし」の5つで足ります。暗証番号やパスワードは一覧に書かず、別に管理します。
一覧ができたら、使っていない口座の解約、引き落としの口座の集約、使っていないクレジットカードの解約を本人が進めます。口座が少ないほど、相続のときに金融機関を回る回数が減るからです。全国銀行協会は、口座の持ち主が亡くなった時点で預貯金は遺産となり、原則として遺産分割の手続きが終わるまで金融機関から引き出せなかったと説明しています。2019年の民法改正で仮払い制度ができ、相続人は単独でも、口座ごとに「相続開始時の残高×3分の1×自分の法定相続分」まで、金融機関ごとに150万円を上限として引き出せます。それでも家族が使えるお金には上限があるため、葬儀費用などの当座の分は、本人が元気なうちに家族と話しておくと安心です。口座が止まった後の流れは相続で口座凍結されたら:解除までの流れと公共料金・引き落としの対処で確かめられます。
借入れや保証の書類が見つかったら、預金と混ぜずに「負債」と見出しをつけて、一覧の上のほうに目立つように並べます。家族が相続するかどうかを決めるとき、負債の有無がいちばん大事な判断材料になるからです。
手順3:デジタルの情報を書き出す
スマホやパソコンの中にある情報は、物と違って家族の目に見えません。ネット銀行やネット証券は通帳が届かないことが多く、本人が伝えておかなければ、家族が口座の存在に気づかないこともあります。次の4つを紙に書き出します。
- 端末:スマホ・パソコン・タブレットの台数と、ロックの解除方法をどう伝えるか
- ネットのお金:ネット銀行、ネット証券、電子マネー、ポイント、暗号資産の取引先
- 有料サービス:動画・音楽の配信、クラウド保存、アプリの月額課金
- 連絡とSNS:メールアドレス、SNSのアカウント、亡くなった後に残すか消すかの希望
パスワードそのものを書いた紙は、一覧とは別に封をして保管し、置き場所だけを家族に伝える方法があります。亡くなった後に家族がする解約や相続の手続きはデジタル遺品の整理:スマホ・ネット銀行・サブスクの解約手順にまとめています。
手順4:物を部屋ごとに整理し、遺言とノートにつなぐ
物の整理は、量が多く気持ちの負担もあるため、最後にじっくり取り組みます。1日1部屋、または1日1か所と決め、残す・譲る・売る・手放すの4つに分けます。譲りたい物は、相手に先に聞いてから渡します。思い出の品は無理に減らさず、写真に撮って現物は数点に絞るなど、本人が納得できる形を探します。
親の生前整理を手伝う場合、決めるのは親です。片付けそのものを嫌がる親との話し方は親が実家の片付けを嫌がるとき:話し合い方と少しずつ進める方法を見てください。物の量が多い、運び出せる人がいないときは、業者に一部を頼む方法もあります。頼める範囲と選び方は生前整理の業者に頼む費用と選び方:遺品整理業者との違いで比べています。
整理が進んだら、決めたことを書き残します。書き残し方は目的で2つに分かれます。
| 書き残すもの | 向いている内容 | 法的な効力 |
|---|---|---|
| 遺言書 | 不動産や預金を誰に引き継ぐか | あり(民法の方式に沿って作った場合) |
| エンディングノート | 物の置き場所、連絡してほしい人、葬儀や医療の希望 | なし |
自分で書く遺言書(自筆証書遺言)は、今の民法では全文・日付・氏名を自分で書いて印を押す必要があります(968条1項。押印を任意にする改正は成立していますが、まだ施行されていません)。法務局で預かってもらう自筆証書遺言書保管制度を使う場合、保管の申請は本人が予約をして法務局へ出向き、手数料は1通3,900円です。なお、仏壇やお墓は相続財産とは別の決まりで引き継ぐ人が決まり、本人の指定があればその人が引き継ぎます(897条)。誰に託したいかもノートや遺言に書いておくとよいでしょう。
遺言は、遺言をする時にその能力を持っていなければなりません(963条)。意思能力がない状態でした法律行為は無効とされる(3条の2)ことも合わせて、内容を理解して判断できる状態で書くことが前提です。分け方まで決めたいなら、元気なうちに取りかかることが大切です。遺言書とノートの書き分けは遺言書とエンディングノートの違い:法的な効力と書き分け方で、遺言の種類の選び方は遺言書の種類と書き方:自筆証書・公正証書・法務局保管の選び方で確かめてください。
よくある質問
Q. 生前整理は何歳から始めればいいですか?
法律や制度で決まった年齢はありません。物を運ぶ体力があり、お金や契約のことを自分で判断できるうちに始めるほど、選べることが多くなります。定年、子の独立、住み替え、大きな病気の後など、暮らしが変わる時期をきっかけにする人が多い作業です。
Q. 親の生前整理を子が代わりに進めてもいいですか?
親の物やお金の持ち主は親なので、何を残して何を手放すかを決めるのは親です。子は一覧づくりや運び出しを手伝い、決める場面には親に立ち会ってもらいます。口座の解約や契約の変更のように親本人の意思が必要な手続きは、親が元気で判断できるうちに本人がする必要があります。
Q. 生前整理で作った財産の一覧は、遺言書の代わりになりますか?
なりません。財産の一覧やエンディングノートには、財産を誰に引き継ぐかを決める法的な効力はありません。分け方を決めておきたいなら、民法の方式に沿った遺言書を別に作ります。一覧は、遺言書を作るときの下書きや、家族が手続きをするときの手がかりとして役立ちます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第3条の2・第896条・第897条・第963条・第968条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 自筆証書遺言書保管制度(手数料)(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度(保管の申請)(法務省)
- 亡くなった親の預貯金、すぐに引き出すことは可能ですか?(全国銀行協会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。