遺品整理と実家の片付け / 手順

デジタル遺品の整理:スマホ・ネット銀行・サブスクの解約手順

この記事のもくじ
  1. デジタル遺品は「お金・契約・思い出」に分けて順番を決める
  2. 故人のスマホは無理にロックを解かない:手がかりは端末の外にある
  3. ネット銀行・ネット証券・暗号資産の相続手続き
  4. サブスク・携帯電話の解約手順と、記録の残し方
  5. 写真・メール・SNSは急がない:端末を手放す前に決めること

デジタル遺品は、お金に関わるもの(ネット銀行・ネット証券・暗号資産)、料金がかかり続ける契約(サブスク・携帯電話)、写真やメールなどの思い出の3つに分けて、この順で手を付けます。ネット銀行やネット証券は通帳がないだけで、店舗のある銀行・証券会社と同じ相続財産です。故人のIDでログインして操作するのではなく、各社の相続の窓口に連絡して手続きします。故人のスマホは、ロックを無理に解こうとせず、郵便物・カードの明細・通帳の引き落とし欄から契約先を洗い出すのが近道です。

デジタル遺品は「お金・契約・思い出」に分けて順番を決める

相続人は、亡くなった人(被相続人)の財産に属した一切の権利義務を、一身専属のものを除いて引き継ぎます(民法896条)。画面の中にしかない口座も例外ではありません。一方で、動画や音楽の配信などのサブスクは、解約の連絡をするまで料金が引き落とされ続けることがあります。写真やメッセージはお金の面では急ぎませんが、端末を初期化したり手放したりすると戻りません。性質がばらばらなので、まず3つに分けます。

分類 主な例 すること 急ぐ度合い
お金に関わるもの ネット銀行、ネット証券、暗号資産の取引所、電子マネーやポイント 各社の相続窓口に連絡し、払い戻し・移管の手続き 相続放棄を決める3か月、相続税の申告に間に合うように
料金がかかる契約 携帯電話、動画・音楽の配信、写真の保存容量、有料アプリ、会員制サイト 契約先を一覧にして、解約か名義の引き継ぎ 毎月の引き落としが続くので早めに
思い出・やり取り 写真、動画、メール、SNS、メッセージアプリ 残す物を家族で決めて保存 急がない。端末を手放す前に決める

進める順番は次のとおりです。

  1. スマホ・パソコンは充電して保管し、回線はすぐに解約しない。 各社からの連絡が電話番号やメールに届くことがあるため、お金の手続きの見通しが立つまで残します。
  2. 端末の外にある手がかりから、契約先の一覧を作る。(次の見出し)
  3. お金に関わる会社に死亡を伝え、相続の書類を取り寄せる。
  4. 料金のかかる契約を解約する。 解約した日と方法を記録します。
  5. 思い出のデータを残すか決めてから、端末を手放す。

相続放棄を考えている場合は、3と4でお金を受け取ったり、故人の財産から支払ったりする前に立ち止まります。相続財産の処分は単純承認とみなされることがあるからです(民法921条1号)。してはいけないことの全体は相続放棄の前にしてはいけないこと:預金の引き出し・解約・処分にまとめています。

故人のスマホは無理にロックを解かない:手がかりは端末の外にある

「故人 スマホ」と調べる人の多くは、パスコードが分からず中を見られないことに困っています。思いつく番号を何度も入れるのは控えます。機種や設定によっては、入力の失敗が重なると操作できない時間が延びたり、中のデータが消去される設定になっていたりするため、まずメーカーの案内で扱いを調べるのが安全です。

開けた場合でも、故人のIDとパスワードでネット銀行などにログインし、送金や解約をするのは避けます。不正アクセス禁止法は、他人の識別符号(IDやパスワード)を、利用権者やアクセス管理者の承諾なく入力し、制限された機能を使える状態にすることを「不正アクセス行為」と定めて禁じています(2条4項1号・3条)。亡くなった家族の場合にどう扱われるかを自分で判断するより、相続窓口を通すほうが、後で他の相続人に説明もしやすくなります。端末が開いたときは、アプリの一覧とメールの差出人を写真やメモに残すところまでにします。

契約先は、端末を開けなくても次の手がかりから見つかることが多いです。

手がかり 見る場所 分かること
クレジットカードの利用明細 郵便、カード会社への照会 毎月請求のあるサブスク、アプリ、携帯電話
通帳の引き落とし欄 店舗のある銀行の通帳、取引明細 携帯電話・プロバイダの料金、ネット銀行への振替
郵便物 取引報告書、規約変更のお知らせ、年間取引報告 ネット証券、ネット銀行、暗号資産の取引所
パソコン・タブレット ブラウザのお気に入り、メールソフトの受信箱 会員サービス、通販、クラウドの保存先
確定申告の控え 書類箱、税理士とのやり取り 配当や暗号資産の売却益の申告から口座の存在
メモ・エンディングノート 机の引き出し、金庫 使っていたサービスとIDの一覧

上場株式(ETFやREITを含む)の口座が漏れていないか心配なときは、証券保管振替機構(ほふり)に開示を請求すると、口座のある証券会社の名前が分かります。銘柄や残高は分からず、非上場株式や外国株式の口座も対象外なので、判明した証券会社に直接問い合わせます。費用と期間は株の相続手続き:証券口座の調べ方から移管・売却まで、放置の影響に、預金・不動産・借金も含めた照会先の全体は相続財産の調べ方:預金・不動産・借金を漏れなく見つける照会先一覧にあります。

ネット銀行・ネット証券・暗号資産の相続手続き

入り口は、各社のサイトにある「相続」「口座名義人が亡くなった場合」の案内か、電話の窓口です。死亡を伝えると口座の取引が止まり、手続きの書類が案内されます。店舗がないため、書類は郵送などで送る形になります。求められる書類は店舗のある銀行と同じ系統で、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、印鑑証明書、遺言書や遺産分割協議書などです。流れの詳細は預金の相続手続き:銀行への連絡から払い戻しまでの流れと必要書類を見てください。

問い合わせの例:「口座名義人の○○○○(生年月日 昭和○年○月○日)が、令和8年○月○日に亡くなりました。私は長男の○○です。相続の手続きに必要な書類と、亡くなった日時点の残高証明書の取り寄せ方を教えてください。なお、口座へのログインはしていません。」

種類ごとに押さえる点は次のとおりです。

  • ネット銀行の預金:店舗のある銀行と同じく、遺産分割の前でも一定額まで各相続人が単独で払い戻しを受けられる制度があります。口座ごとに「相続開始時の残高×3分の1×その人の法定相続分」、同じ金融機関では合計150万円までです(民法909条の2・法務省令)。もっと多く必要なときは家庭裁判所の保全処分を申し立てる方法があり、こちらは金額の上限が決まっておらず裁判所が判断すると全国銀行協会は案内しています。計算例と書類は預金の相続の仮払い制度:遺産分割前に引き出せる上限と手続きにあります。
  • 長く使っていない口座:10年以上取引のない預金は休眠預金として扱われますが、対象は2009年1月1日以降に最後の取引があったものです。移された後も、取引のあった金融機関で引き出せ、期限はありません(金融庁)。
  • ネット証券:株や投資信託は現金で払い戻すのではなく、相続人名義の証券口座へ移す(移管する)のが基本です。相続人が同じ会社に口座を持っていないときは、新しく開く必要があります。
  • 暗号資産:国税庁のFAQは、相続で取得した暗号資産は相続税の課税対象になるとしています。活発な市場がある暗号資産は、相続人が取引している交換業者が公表する、亡くなった日(課税時期)の取引価格で評価し、交換業者が出す残高証明書の価格も使えます。取引所に死亡を伝え、死亡日時点の残高証明書を頼んでおきます。取引所を通さず自分で鍵を管理する形で持っていた場合、鍵になる情報が見つからなければ相続人も動かせなくなるおそれがあります。
  • 電子マネー・ポイント:残高やポイントを引き継げるか、払い戻しを受けられるかは、各社の規約しだいです。金額の大きいものから問い合わせます。

ネットの資産を足すと、相続税がかかるかどうかの見立てが変わることがあります。かかるかの一次判定は相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定する方法で確かめられます。個別の税額の計算は税理士の仕事です(税理士法52条)。

サブスク・携帯電話の解約手順と、記録の残し方

料金のかかる契約は、次の順に止めていきます。

  1. カード会社に死亡を伝える。 カードの利用を止める手続きをすると、そのカードでの新しい支払いは通らなくなります。ただし、支払いが失敗しても契約そのものが終わるとは限らないため、各サービスへの連絡は別に行います。
  2. サービスごとに解約する。 各社の「契約者が亡くなった場合」の案内を探し、問い合わせフォームか電話で死亡を伝えます。アプリの中から申し込んだ有料サービスは、請求元がアプリストアになっていることがあり、その場合はストアの問い合わせ窓口に相談します。
  3. 口座振替のものを切り替える。 故人の口座から引き落とされていた料金は、口座が止まると支払えなくなります。公共料金も含めた対処は相続で口座凍結されたら:解除までの流れと公共料金・引き落としの対処にあります。
  4. 携帯電話は最後に。 解約するか、家族が番号を引き継ぐかを決めます。端末代の分割払いが残っていないか、最終月の請求書で確かめます。必要書類は通信会社ごとの案内に沿って用意します。
記録表:デジタル遺品の解約・手続きの控え
サービス名 請求元(カード・口座・ストア) 月額 連絡した日と方法 結果(解約・引き継ぎ・返金)
例:動画配信 クレジットカード 明細の額 ○月○日 問い合わせフォーム ○月分で解約
例:携帯電話 口座振替 請求書の額 ○月○日 店舗 長女が番号を引き継ぎ

この表は、相続人の間で「誰が何を止めたか」を共有するのにも使えます。解約で戻るお金や、亡くなった後の請求を誰の財布から払ったかも書いておくと、遺産分割のときの精算が楽になります。

写真・メール・SNSは急がない:端末を手放す前に決めること

スマホやパソコンの本体も相続財産です。売る、人に譲る、捨てる前に、相続人の間で話をしておきます。相続放棄を考えている間は、端末の処分も含めて動かさないでおくのが安全です。

残すデータは、家族で次のように分けて決めます。

  • 写真・動画:家族が見たい物を、相続人の誰かの保存先にコピーします。誰が持つかを決めておくと、後で「消された」という行き違いを防げます。
  • メール・メッセージ:故人と他の人とのやり取りが含まれます。読むのは手続きに必要な範囲にとどめ、内容を広めないようにします。
  • SNS:アカウントを残すか削除するかを家族で決めます。亡くなった人のアカウントについて、追悼用の表示や削除の申請を用意しているサービスもあるので、各社のヘルプで方法を探します。

データを残し終えたら、端末を初期化してから手放します。買取に出す場合の業者の確かめ方は遺品整理の買取:売れる物の見分け方と買取業者の確かめ方を参考にしてください。写真や手紙と同じように、区切りをつけて手放したい物の扱いは遺品の供養はどうする?仏壇・人形・写真の手放し方と費用で、片付け全体の進め方は遺品整理のやり方と進め方:始める時期・自分でやる手順・業者に頼む判断で扱っています。

これから自分や親のデジタル遺品に備えたい人は、使っているサービスの一覧を家族に伝わる形で残しておくと、今回のような手探りを減らせます。書き方は遺言書とエンディングノートの違い:法的な効力と書き分け方にあります。

よくある質問

Q. 故人のスマホのパスコードが分からないとき、携帯ショップで開けてもらえますか?

通信会社の窓口で扱うのは回線の契約(解約や名義の引き継ぎ)で、端末のロック解除とは別の手続きです。ロック解除の相談を受け付けているかは、端末のメーカーの案内で確かめます。お金の手続きはスマホを開けなくても、郵便物やカードの明細から会社を特定し、相続の窓口に連絡すれば進められます。

Q. 故人のIDとパスワードが分かっています。ネット銀行にログインしてお金を移してもよいですか?

避けてください。他人のIDやパスワードを承諾なく入力して使える状態にすることは、不正アクセス禁止法が禁じる行為の定義に当たりうるうえ、相続人の間で「誰がいつ動かしたか」が問題になります。相続放棄ができなくなるおそれもあるので、各社の相続窓口に死亡を伝え、所定の書類で払い戻しを受けます。

Q. 亡くなった後も引き落とされていたサブスクの料金は戻りますか?

返金の扱いは各サービスの規約で決まるため、死亡日が分かる書類(死亡診断書の写しなど)を用意して問い合わせ、回答を記録に残します。カード払いならカード会社の明細で請求の日付と金額を押さえておくと、話が早く進みます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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