相続で口座凍結されたら:解除までの流れと公共料金・引き落としの対処
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亡くなった人(被相続人)の口座は、金融機関が死亡を知った時点から相続手続きの扱いになり、出金や公共料金の引き落としが止まります。預貯金は亡くなった時点で遺産になり、原則として遺産分割の手続きが終わるまで引き出せないためです(全国銀行協会)。凍結の「解除」とは、遺言か遺産分割協議の結果にもとづいて相続人へ払い戻す(または名義を変える)ことを指し、そのあいだの生活費や引き落としは、別の手当てで乗り切ります。
口座凍結はいつまで続く?解除の意味と止まるもの
口座が止まるのは、預金が相続人全員のものになるからです。相続人が複数いると、遺産はいったん相続人の共有になります(民法898条)。だれか一人が勝手に引き出すと、ほかの相続人の取り分を動かしてしまうため、金融機関は相続人が確定し、分け方が決まるまで払戻しに応じません。
いつまで続くかは、相続手続きの書類がそろって金融機関に受け付けられるまでです。期限で自動的に解けるものではありません。遺言書がある場合は遺言の内容で、ない場合は遺産分割協議書で、だれがその預金を受け取るかを示します。
| 止まるもの | 主な中身 | その間の手当て |
|---|---|---|
| 窓口・ATMでの出金 | キャッシュカード・通帳での引き出し | 急ぎの費用は仮払い制度(後述) |
| 口座振替(引き落とし) | 電気・ガス・水道、携帯電話、カード、税金、保険料 | 各社へ支払方法の変更を連絡 |
| 振込の受け取り・送金 | 年金、給与、家賃収入、配当金など | 振込元へ死亡を連絡し、扱いを確かめる |
| 定期預金の解約・満期の扱い | 自動継続の定期預金など | 相続手続きの中で払戻し |
凍結の期間そのものを縮めたいなら、戸籍の収集と遺産分割協議を早く終えることが近道です。複数の金融機関に口座がある場合の回り方は、金融機関の相続手続き:複数の銀行を同時に進める順番と日数の確かめ方にまとめました。
凍結解除までの流れ:書類の分かれ道
解除までは、金融機関へ死亡を連絡して書類一式と残高証明書を頼み、戸籍と遺言書か遺産分割協議書をそろえて出し、払戻しか名義変更を受ける、という3つの動きです。各段階の書類と進め方は預金の相続手続きの4段階に書いてあるので、ここでは凍結中に困る部分に絞ります。
- 遺言書あり(公正証書遺言・法務局で保管した自筆証書遺言)→ 遺言書と戸籍類で手続き。家庭裁判所の検認は不要
- 遺言書あり(自宅で見つかった自筆証書遺言)→ 家庭裁判所の検認を受けてから手続き
- 遺言書なし → 相続人全員で遺産分割協議 → 協議書・印鑑証明書・戸籍類で手続き
- 分割の話し合いがまとまる前に急ぎの支払いがある → 仮払い制度(1金融機関150万円が上限)
預金の手続き全体の流れと書類の詳しい中身は、預金の相続手続き:銀行への連絡から払い戻しまでの流れと必要書類で扱っています。
公共料金・カードの引き落としが止まったときの対処
口座が止まると、その口座から落ちていた料金は残高があっても引き落とされず、未払いとして扱われます。支払いが遅れると督促が届くので、凍結が分かった日のうちに、どの引き落としがあったかを通帳や明細で洗い出すと後が楽です。
| 引き落とし | 連絡先 | 伝えること |
|---|---|---|
| 電気・ガス | 契約している電力会社・ガス会社 | 契約者の死亡、名義の変更か解約、新しい支払方法 |
| 水道・下水道 | 市区町村の水道局 | 使用者の名義変更、支払方法の変更 |
| 固定資産税・住民税の口座振替 | 市区町村の税務担当 | 納税通知書の送付先と支払方法 |
| 携帯電話・インターネット | 各通信会社 | 解約か承継か、最終月の請求の扱い |
| クレジットカード | カード会社 | 利用停止と解約、未払い残高の金額 |
| 家賃・管理費 | 大家・管理会社 | 契約の扱いと支払方法の変更 |
| 保険料・サブスク | 保険会社・各サービス | 解約か名義変更か |
クレジットカードの未払い残高やローンは、亡くなった人の債務として相続の対象になります(民法896条)。借金が多く相続放棄を考えている場合は、相続人の財布から立て替えて払う前に、相続放棄の前にしてはいけないこと:預金の引き出し・解約・処分を読んでから動いてください。
家族の誰かが立て替えて払った料金は、日付・金額・支払先を記録し、領収書を保管しておきます。遺産分割の話し合いで精算するときの根拠になります。
文例(電力会社・ガス会社への連絡):「契約者の〇〇が〇月〇日に亡くなりました。引き続き同居の家族が住むため、契約者の名義と支払口座を変更したいです。必要な手続きと、口座が止まっている間の請求の払い方を教えてください。」
凍結後の入金はどうなる?年金・給与・配当の扱い
止まった口座に入る予定のお金も、早めに振込元へ連絡します。とくに年金は、受け取ってはいけない分が入ることがあるので注意が要ります。
- 年金:年金は亡くなった月の分まで支払われ、亡くなった月までの分で受け取っていないものは、未支給年金として遺族が自分の名で請求できます。届出が遅れて亡くなった日の翌日以後に年金を受け取ったときは、後日返還を求められます(日本年金機構)。マイナンバーが年金機構に収録されている人の死亡届は原則として不要ですが、未支給年金の請求などの届出は要ります。手順は親が亡くなった時の相続手続きと年金:受給停止・未支給年金の請求にあります。
- 給与・退職金:勤め先に死亡を伝え、未払いの給与と退職金の支払先を相談します。
- 家賃収入・配当金:入居者や証券会社・発行会社へ連絡し、振込先を相続人の口座へ切り替える手続きを確かめます。
止まった口座に入った入金も、払戻しのときには遺産として扱われます。誰のお金かを後で説明できるよう、入金の内訳を一覧にしておきましょう。
凍結前に引き出す・凍結させないまま使うのが危ない理由
「凍結される前にカードで下ろしておけばよい」と考える人もいますが、次の3つの点で後から問題になりえます。
- 相続放棄ができなくなるおそれ。 相続財産を処分すると、単純承認(借金も含めて全部を引き継ぐこと)をしたものとみなされます(民法921条1号)。引き出しや使い道が「処分」に当たるかは事情によって判断が分かれます。
- ほかの相続人との争い。 遺産分割の前に処分された財産も、相続人全員の同意で遺産として残っているものとみなせます。引き出した本人の同意は要りません(民法906条の2)。下ろした分は、分け方の話し合いでその人の取り分から差し引かれる対象になりえます。
- 相続税の計算で漏れる。 下ろした現金も遺産に変わりはありません。現金で手元に置いた分を相続財産から外すと、申告の誤りになります。
急ぎの葬儀代や生活費が必要なら、法律で用意された仮払い制度を使うのが筋です。各相続人は、口座ごとに「相続開始時の残高×3分の1×自分の法定相続分」まで、1つの金融機関につき150万円を上限に、単独で払戻しを受けられます(民法909条の2・法務省令)。たとえば相続人が子2人で、ある銀行の預金が600万円なら、600万円×1/3×1/2=100万円です(筆者の計算)。仮払いの手続きと注意点は預金の相続の仮払い制度:遺産分割前に引き出せる上限と手続きで詳しく説明しています。
どうしても事情があって引き出した場合は、引き出した日・金額・使い道を記録し、領収書を残して、ほかの相続人に早めに伝えます。黙っていることが一番こじれます。
- 取引のある金融機関をすべて書き出す(通帳・キャッシュカード・郵便物・アプリ)
- 各金融機関へ死亡を連絡し、相続手続きの案内と残高証明書を頼む
- 止まった口座からの引き落としを洗い出し、各社へ支払方法の変更を連絡する
- 年金・給与・家賃などの入金元へ連絡する
- 立て替えた費用を記録する表を作る
よくある質問
Q. 死亡届を出せば、銀行の口座も自動で止まりますか?
死亡届は市区町村に出す届出で、金融機関への連絡とは別の手続きです。口座の扱いが変わるのは金融機関が名義人の死亡を知ったときなので、相続人から取引のある金融機関に連絡します。連絡の前でも預金が遺産であることは変わらないため、引き出してよいことにはなりません。
Q. 凍結された口座の残高は、相続人なら教えてもらえますか?
金融機関に相続人であることを戸籍などで示すと、残高証明書の発行を受けられるのが一般的です。残高証明書は遺産分割の話し合いと相続税の一次判定の両方で使います。発行手数料と必要書類は金融機関ごとに違うので、最初の連絡で一緒に聞いておくと二度手間になりません。
Q. 凍結を解除して、口座をそのまま家族が使い続けることはできますか?
相続手続きは、預金を相続人へ払い戻すか、相続人の名義に変える手続きで、亡くなった人の名義のまま使い続ける形にはなりません。公共料金などの引き落としを続けたい場合は、支払口座を相続人の口座に切り替える連絡を各社に入れます。
出典・参考にした公的な情報
- 亡くなった親の預貯金、すぐに引き出すことは可能ですか?(全国銀行協会)
- 民法 第898条・第906条の2・第909条の2・第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法第909条の2に規定する法務省令で定める額を定める省令(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 年金を受けている方が亡くなったとき(日本年金機構)
- 年金受給者が亡くなったときの届出(よくある質問)(日本年金機構)
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律 第11条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 法定相続情報証明制度について(法務局)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。