遺言書の法務局保管制度:申請の流れ・手数料3,900円・必要書類
この記事のもくじ
自筆証書遺言は、法務局の「遺言書保管所」に預けることができます。手数料は遺言書1通につき3,900円(収入印紙)で、遺言者本人が予約をして出向き、遺言書・保管申請書・本籍の載った住民票の写し・顔写真付きの身分証明書を出すと、その場で保管証が渡されます。預けた遺言書は、亡くなった後に家庭裁判所の検認が要らず、希望すれば死亡後に指定した人へ通知も届きます。以下、法務省の案内に沿って手順を説明します。
遺言書を法務局に預ける流れ(6つの手順)
法務省が示している手順は次の6つです。根拠は「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(遺言書保管法)です。
- 遺言書を書く。 本文・日付・氏名を自書して押印した自筆証書遺言を用意します。様式の決まり(次の章)に合わせて書きます。書き方の例文は自筆証書遺言の書き方と例文にあります。
- 預ける保管所を選ぶ。 遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所から選びます(同法4条3項)。2通目以降を追加で預けるときは、最初に申請した保管所になります。
- 保管申請書を作る。 様式は法務省のサイトからダウンロードするか、法務局の窓口でもらえます。記載例と記入上の注意も用意されています。
- 予約する。 手続きは予約制です。法務局手続案内予約サービスの専用ホームページなら24時間いつでも予約でき、電話・窓口での予約は平日9時〜17時です。予約できるのは30日先までで、当日の予約はできません。
- 本人が保管所へ行き、申請する。 予約した日時に遺言者本人が出向きます(同法4条6項)。書類の審査のため待ち時間があります。
- 保管証を受け取る。 書類に問題がなく手数料を納めると手続きが終わり、保管証が交付されます。
一部の法務局では、提出書類を事前に電子メールで確かめてもらえる試行をしています。2026年2月2日から、使える保管所が39都道府県・68か所に増えました。書き直しを避けたい人は、預ける予定の保管所が対象かを法務省のお知らせで確かめておくと、当日のやり直しを減らせます。
| 段階 | すること | 目安・注意 |
|---|---|---|
| 準備 | 遺言書を様式どおりに書く/申請書を作る | A4片面・余白・ページ番号 |
| 予約 | 専用ホームページか電話・窓口 | 30日先まで、当日は不可 |
| 当日 | 本人が出向き、書類と手数料を出す | 代理・郵送は不可 |
| 完了 | 保管証を受け取る | 再発行されないので保管に注意 |
当日の持ち物と手数料
当日に持っていくものを一覧にします。
| 持ち物 | 中身・注意 |
|---|---|
| 遺言書 | ホチキスでとじず、封筒にも入れない。ばらばらのまま持参 |
| 保管申請書 | 事前に記入しておく |
| 住民票の写し等 | 本籍と筆頭者の記載があるもの。マイナンバー・住民票コードの記載がないもの。原本 |
| 顔写真付きの身分証明書 | 運転免許証・マイナンバーカードなど。有効期限内のもの |
| 手数料 | 3,900円分の収入印紙(庁舎内の販売窓口や郵便局で買える) |
| 外国語の遺言書の場合 | 日本語の翻訳文 |
手数料は保管の申請のほか、手続きごとに次のように決まっています。収入印紙で納めます。
| 手続き | 誰が | 手数料 |
|---|---|---|
| 遺言書の保管の申請 | 遺言者 | 1通 3,900円 |
| 遺言書の閲覧(モニター) | 遺言者・死亡後の相続人等 | 1回 1,400円 |
| 遺言書の閲覧(原本) | 同上 | 1回 1,700円 |
| 遺言書情報証明書の交付 | 死亡後の相続人等 | 1通 1,400円 |
| 遺言書保管事実証明書の交付 | 死亡後の相続人等 | 1通 800円 |
| 保管の申請の撤回・住所等の変更の届出 | 遺言者 | 無料 |
身分証明書が1つもない人は、法務省がマイナンバーカードの取得を勧めています。顔写真付きの証明書がないと申請できないので、予約の前にそろえておきます。
遺言書の様式の決まり(書き直しになりやすい点)
保管制度に預ける遺言書は、法務省令の様式に従った、封をしていないものでなければなりません(遺言書保管法4条2項)。民法の要件を満たしていても、様式が合わないと書き直しになります。
- A4サイズで、文字が読みにくくなる地紋や彩色のない紙を使う
- 片面だけに書く(財産目録も片面)
- 余白は上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上あけ、余白には何も書かない
- 複数枚なら、余白の内側にページ番号を「1/2」のように総ページ数とともに書く(1枚なら不要)
- 消えないボールペンや万年筆で書く
- 日付は年月日を特定して書く(「吉日」は不可)
- 氏名は戸籍どおりに書き、押印する
- 財産目録は手書きでなくてよいが、各ページに署名と押印をする
法務省の用紙例(PDF)を拡大・縮小せずにA4で印刷すると、必要な余白がとれるように作られています。プリンターによって位置がずれることがあるので、印刷後に余白を測って確かめます。
もう1つ気をつけたいのは、遺言書の原本と画像には、住所や本籍を見えなくする処理ができないことです。なお、2026年3月2日の省令改正で、DV被害者などが遺言者の住所・本籍を証明書や閲覧画面に表示させない措置を申し出る制度ができましたが、遺言書そのものの記載は対象外です。相続人などが閲覧したときに見せたくない住所・本籍は、遺言書に書かないようにします。
預けた後にできること:閲覧・撤回・変更の届出
遺言者は、預けた後もいつでも自分の遺言書を閲覧できます(遺言書保管法6条2項)。閲覧も本人が出向いて行います。
保管の申請は、いつでも撤回できます(同法8条)。撤回すると遺言書は返され、保管されていた情報は消去されます。ただし、撤回は「法務局に預けるのをやめる」手続きで、遺言の効力そのものには影響しません。内容を変えたいときは、撤回して書き直し、もう一度保管を申請する方法を法務省は勧めています。
氏名・住所などが変わったら、速やかに変更の届出をします(無料。郵送でもできます)。届出をしないと、相続人や受遺者が遺言書を確かめられなかったり、通知が届かなかったりするおそれがあります。
亡くなった後の通知と、相続人がする手続き
預けた遺言書は、遺言者が亡くなった後に次の形で家族に伝わります。どちらの通知にも、遺言者の氏名・生年月日、保管している遺言書保管所の名称、保管番号が書かれています。
| 通知 | いつ届くか | 誰に届くか | 必要な手続き |
|---|---|---|---|
| 指定者通知 | 法務局が戸籍の担当部署との連携で死亡を確認したとき | 遺言者が保管の申請時に指定した人(3人まで) | 遺言者が申請時に希望する。後から変更の届出で追加できる |
| 関係遺言書保管通知 | 相続人等の1人が、遺言書の閲覧か遺言書情報証明書の交付を受けたとき | ほかの相続人・受遺者・遺言執行者の全員 | 不要(自動で届く) |
指定者通知の相手は、2023年10月2日から相続人や受遺者などに限られなくなり、3人まで選べるようになりました。家族が誰も法務局に問い合わせなくても遺言の存在を知らせたいなら、申請時に指定しておくのが有効です。ただし、通知を受けた人でも、遺言者の推定相続人や遺言書に書かれた受遺者・遺言執行者でなければ、閲覧や証明書の請求はできません(法務省の案内)。指定する人は、請求できる立場の人にすると手続きが止まりません。
相続人など(相続人・受遺者・遺言執行者)は、遺言者の死亡後に、全国どこの遺言書保管所でも次の請求ができます(同法9条・10条)。請求は郵送でもでき、法務省は郵送をすすめています。共通して、遺言者が亡くなったことが分かる戸籍(除籍)謄本、請求者の住民票の写し、請求者が相続人であることが分かる戸籍謄本などを付けます。
- 遺言書保管事実証明書(1通800円)で、自分に関係する遺言書が預けられているかを確かめる
- 遺言書情報証明書(1通1,400円)を取る。遺言書の画像を印刷した証明書で、登記や預金の手続きで原本の代わりに使える
- 必要なら遺言書を閲覧する(原本の閲覧は保管している保管所だけ)
法務局で保管されている遺言書には家庭裁判所の検認の規定が適用されないので(同法11条)、遺言書情報証明書を取ればそのまま名義変更などに進めます。検認の有無の違いは自筆証書遺言の検認は必要か、遺言があるかどうかを調べる手順は遺言書があるかどうかの調べ方で説明しています。
原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間保管されます。一方で、法務局は申請時に民法の方式に合っているかを外形的に確かめるだけで、内容の相談には応じず、有効性も保証しません。この点を含めた弱点は自筆証書遺言の法務局保管のデメリットで、公正証書遺言と比べています。
よくある質問
Q. 家族が代わりに法務局へ遺言書を預けに行けますか?
できません。保管の申請は遺言者本人が遺言書保管所に出向いて行う決まりで(遺言書保管法4条6項)、代理人による申請や郵送での申請は受け付けていません。家族に頼めるのは書類をそろえる手伝いまでで、窓口での申請は本人がします。
Q. 保管証をなくしてしまったら、遺言書は無効になりますか?
保管証は再発行されませんが、なくしても遺言の効力には関係しません。保管証は閲覧や撤回、亡くなった後の証明書の請求で保管番号を示すのに使う書類です。家族に預けたことを伝えるときは、保管証の写しを渡しておくと手続きの手がかりになります。
Q. 法務局に預けた遺言書の内容を変えたいときは、どうしますか?
保管の申請はいつでも撤回でき(遺言書保管法8条)、遺言書は返還されます。法務省は、内容を変えたい場合は撤回したうえで書き直し、改めて保管を申請する方法を勧めています。撤回は無料ですが、新しい遺言書の保管にはまた1通3,900円がかかります。
出典・参考にした公的な情報
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律 第4条・第6条・第8条・第9条・第10条・第11条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 自筆証書遺言書保管制度(制度の概要)(法務省)
- 遺言書の保管申請(遺言者の手続)(法務省)
- 遺言書の様式等についての注意事項(法務省)
- 手続の予約(法務省)
- 手数料(法務省)
- 相続人等の手続(自筆証書遺言書保管制度)(法務省)
- 通知(関係遺言書保管通知・指定者通知)(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度のお知らせ(指定者通知の拡大・メールでの事前チェック)(法務省)
- 遺言書保管等に関する省令の一部改正(令和8年3月2日施行)の概要(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。