遺言書 / 文例

自筆証書遺言の書き方と例文:不動産・預金の特定のしかた

この記事のもくじ
  1. 自筆証書遺言の書き方:全体の例文
  2. 不動産を特定する書き方:登記事項証明書どおりに写す
  3. 預金・株式など、不動産以外の財産の書き方
  4. 財産の書き方で手続きが止まる失敗例と、確かめ方
  5. 書き上げた後の点検表と、法務局に預ける場合の様式

自筆証書遺言の書き方の要点は、「誰に」「どの財産を」「相続させる(または遺贈する)」を、第三者が読んでも一つに決まるように書くことです。不動産は住所ではなく登記事項証明書の所在・地番・家屋番号どおりに、預金は銀行名・支店名・種類・口座番号まで書きます。そのうえで、日付・氏名を自書して押印します。この記事では、家と預金を分けて残す場合などの例文を、手本としてそのまま使える形で示します。要件そのもの(なぜ自書か、目録の例外、訂正の方法)は自筆証書遺言の要件で確かめてください。

自筆証書遺言の書き方:全体の例文

まず1通の完成形を見ます。家を妻に、預金を長男に残し、遺言執行者を決めておく例です。〇の部分は自分の情報に置き換え、全文を自分の手で書きます。

遺言書 遺言者〇〇〇〇は、次のとおり遺言する。 第1条 遺言者は、遺言者の所有する次の不動産を、遺言者の妻〇〇〇〇(昭和〇年〇月〇日生)に相続させる。  (1)土地 所在 〇〇市〇〇町〇丁目 地番 〇番〇 地目 宅地 地積 〇〇.〇〇平方メートル  (2)建物 所在 〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇 家屋番号 〇番〇 種類 居宅 構造 木造瓦葺2階建 床面積 1階〇〇.〇〇平方メートル 2階〇〇.〇〇平方メートル 第2条 遺言者は、遺言者名義の次の預金を、遺言者の長男〇〇〇〇(平成〇年〇月〇日生)に相続させる。  〇〇銀行〇〇支店 普通預金 口座番号〇〇〇〇〇〇〇 第3条 遺言者は、前2条に記載のない遺言者の有する一切の財産を、妻〇〇〇〇に相続させる。 第4条 遺言者は、この遺言の遺言執行者として長男〇〇〇〇を指定する。 令和〇年〇月〇日 住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 遺言者 〇〇〇〇 印

書き方のコツは3つです。1つ目は、受け取る人を続柄・氏名・生年月日で特定すること。同じ名前の親族がいても取り違えが起きません。2つ目は、第3条のように「書き漏れた財産の行き先」を決めておくこと。これがないと、書いていない財産は相続人全員の話し合いで分けることになります。3つ目は、日付を年月日まで書くこと。「吉日」は使いません。

不動産を特定する書き方:登記事項証明書どおりに写す

不動産は、法務局で登記事項証明書(登記簿謄本)を取り、その表題部の記載を書き写します。不動産登記法が登記事項として定めている項目は次のとおりです。

種類 書き写す項目(登記事項) 書き方の注意
土地 所在(市区町村・字)、地番、地目、地積 地番は住居表示の番地と違うことが多い
建物 所在、家屋番号、種類、構造、床面積 附属建物(車庫・物置など)があれば併せて書く
マンション 一棟の建物の表示、専有部分の家屋番号、敷地権の表示 証明書の該当欄をそのまま写すか、目録で添える

書き写す量が多いときは、登記事項証明書のコピーを財産目録として添え、本文には「別紙目録1記載の不動産を妻〇〇〇〇に相続させる」と書く方法があります。法務省は、所在や地番・家屋番号で不動産を特定できれば、登記事項証明書の一部を目録として添付できると案内しています。目録は手書きでなくてよい代わりに、各ページに署名と押印をします。

自分名義の不動産を漏れなく洗い出したいときは、2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度で、自分が登記名義人になっている不動産の一覧を請求できます(不動産登記法119条の2)。検索は請求書に書いた検索条件(氏名・住所など)だけで行われ、登記上の住所が古いままだと抽出されないことがあります。引っ越しの経歴があるなら、過去の住所も検索条件に加えます。

預金・株式など、不動産以外の財産の書き方

預金は、銀行名・支店名・預金の種類・口座番号で特定します。残高は書いた後も変わるので、金額で書くと、亡くなった時の残高と違ったときに読み方が割れるおそれがあります。口座そのもので特定する書き方が向いています。通帳の、銀行名・支店名・口座名義・口座番号が分かるページのコピーを目録として添えることもできます。

文例:「遺言者は、遺言者名義の〇〇銀行〇〇支店の普通預金(口座番号〇〇〇〇〇〇〇)及び定期預金の全部を、長女〇〇〇〇に相続させる。」

文例(金融機関ごとまとめる):「遺言者は、〇〇銀行に預け入れている遺言者名義の預貯金の全部を、長女〇〇〇〇に相続させる。」

株式や投資信託は、証券会社名・支店名と口座の種類(例:「〇〇証券〇〇支店の遺言者名義の口座で保管されている株式・投資信託の全部」)で書くと、銘柄が入れ替わっても対象が変わりません。車や貴金属など手元の物は、車検証の登録番号や、保管場所と品名で特定します。

財産の書き方で手続きが止まる失敗例と、確かめ方

文例集としての場面別の書き方(分けて残す、割合で分ける、相続人以外に遺贈する、予備の定め、遺言執行者の指定)は遺言書の書き方の例文集に家族構成別にまとめています。この記事では、財産の特定のしかたでつまずく場面に絞ります。

口座の書き方で手続きが止まる場面。 「〇〇銀行の預金を長男に」とだけ書くと、同じ銀行に普通預金と定期預金があるとき、どの口座を指すのかを遺言の文面だけで決められません。支店名と口座番号まで書いていても、番号を1桁書き間違えれば別の口座の番号になります。窓口で遺言の文言と口座が結びつかないと、追加の書類や相続人の同意を求められることがあります。通帳の表紙裏か見開きの、支店名・口座番号が印字された部分を見ながら書き写し、書いた後にもう一度通帳と照らし合わせます。

地番と住所のずれ。 郵便物が届く住所(住居表示)と、登記に載っている地番・家屋番号は別物です。「〇〇市〇〇町1丁目2番3号」と書いただけだと、登記上のどの土地・建物かが決まりません。登記事項証明書の所在・地番・家屋番号と、遺言に書いた表示が一致しないと、相続登記の申請が受け付けられない原因になります(不動産登記法25条は、申請情報の内容である不動産が登記記録と合致しないときを、申請の却下の事由に挙げています)。

地番の確かめ方は3つあります。

  1. 法務局で取った登記事項証明書の表題部を、1字ずつ写す。
  2. 毎年届く固定資産税の納税通知書に付く課税明細書で、土地の所在・地番と家屋番号を見比べる。
  3. どちらも手元になければ、法務局に登記事項証明書を請求する(登記事項証明書は、手数料を納めれば所有者以外も請求できます。不動産登記法119条1項)。

建物は増築や取り壊しで登記と現況がずれることもあります。その場合も、遺言には現在の登記記録のとおりに書き、現況との違いは遺言を書いた後で登記の専門家に相談します。

株式・投資信託の書き方。 銘柄を並べると、売買で保有が入れ替わった時に対象が変わってしまいます。口座で特定する書き方は前の章のとおりです。

書き方の順番:自筆証書遺言を1通仕上げるまで
  1. 財産の一覧を作る(登記事項証明書・通帳・証券口座の資料をそろえる)
  2. 誰に何を残すかをメモで決める(書き漏れ用の「その他一切の財産」の行き先も)
  3. 下書きを作り、財産と受け取る人の特定を見直す
  4. 本文・日付・氏名を清書し、押印する
  5. 目録を添えるなら、各ページに署名と押印
  6. 保管の方法を決める(自宅か法務局か)

書き上げた後の点検表と、法務局に預ける場合の様式

清書したら、次の点を1つずつ確かめます。

  • 本文の全文・日付・氏名が自分の手書きで、押印がある
  • 日付が年月日まで書かれている
  • 受け取る人が続柄・氏名・生年月日で特定できる
  • 不動産が地番・家屋番号まで書かれている(住所だけになっていない)
  • 預金が銀行・支店・種類・口座番号で特定できる
  • 書き漏れた財産の行き先(その他一切の財産)を書いた
  • 目録の各ページに署名と押印がある
  • 夫婦で1枚に連名していない(民法975条の共同遺言の禁止)

法務局の保管制度を使うなら、用紙と書式にも決まりがあります。A4の片面だけに書き、余白は上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上をあけ、複数枚ならページ番号を「1/2」のように余白の内側に書きます。ホチキスでとじず、消えないボールペンや万年筆を使います。法務局の手続きの流れと手数料は遺言書の法務局保管制度で説明しています。

内容が複雑な場合(事業用の財産がある、相続人の一部に多く残したいなど)は、書いた遺言が意図どおりに読めるかを、遺言作成を扱う弁護士・司法書士や公証役場に見てもらうと安心です。法務局の保管制度は、遺言の内容の相談には応じていません。

よくある質問

Q. 自筆証書遺言のひな形を印刷して、空欄だけ手書きで埋めてもよいですか?

本文は全文を自書する決まりなので、印刷した文に名前や数字だけを書き込む形は要件を満たしません。手書きが要らないのは、本文に添える財産目録だけです。ひな形は、見ながら全文を自分の手で書き写す手本として使います。

Q. 財産をすべて1人に残すなら、財産を一つずつ書かなくてもよいですか?

「私の有する一切の財産を妻〇〇に相続させる」のように、まとめて書く方法もあります。ただ、残された人が銀行や法務局で手続きするときに、どの財産が対象かを示しやすいのは、主な財産を特定して書き、最後に「その他一切の財産」を加える形です。

Q. 住所の「〇丁目〇番〇号」で家を書いてはいけませんか?

住居表示の住所と、登記に使う地番・家屋番号は別の番号であることが多く、住所だけでは登記記録のどの土地・建物かを読み取りにくくなります。登記事項証明書を取り寄せ、所在・地番・家屋番号などを書き写すと特定がはっきりします。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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