遺言書があるかどうかの調べ方:法務局・公証役場・自宅の探し方
この記事のもくじ
亡くなった人の遺言書があるかどうかは、法務局・公証役場・自宅や身の回りの3か所を順に調べると見落としを減らせます。法務局に預けられた自筆証書遺言は「遺言書保管事実証明書」(1通800円)で、公証役場で作られた公正証書遺言は「遺言検索」(無料)で、相続人が全国どこからでも確かめられます。どちらにも記録がなければ、自宅などに手書きの遺言が残っていないかを探します。3つとも記録も手がかりも見つからなければ、遺言は見つからなかったものとして遺産分割の話し合いに進みます。
遺言書があるかどうかを調べる3つの窓口
遺言には主に3つの置き場所があり、調べる窓口がそれぞれ違います。
| 置き場所 | 対象の遺言 | 調べ方 | 費用 | 見つかった後 |
|---|---|---|---|---|
| 法務局(遺言書保管所) | 法務局に預けた自筆証書遺言 | 遺言書保管事実証明書を請求 | 1通800円 | 遺言書情報証明書(1通1,400円)で中身を確かめる。検認は不要 |
| 公証役場 | 公正証書遺言 | 公証役場で遺言検索を申し出る | 無料 | 保管している公証役場に謄本を請求。検認は不要 |
| 自宅・貸金庫・預け先 | 手元で保管された自筆証書遺言など | 置いていそうな場所を探す | 実費 | 開けずに家庭裁判所で検認 |
どの窓口でも、まず亡くなった人の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本と、自分が相続人であることが分かる戸籍謄本を求められます。2つの窓口で同じ書類を使うので、戸籍を集めるときに通数を多めに取っておくと手戻りがありません。
法務局に預けた遺言書があるかどうか:遺言書保管事実証明書
自筆証書遺言を法務局に預ける制度を使っていた場合、遺言書の本体は法務局にあり、自宅には「保管証」が残っているだけのことがあります。保管証が見つからなくても、相続人は法務局で調べられます。
- 請求できる人:遺言者の死亡後に限り、相続人、受遺者等、遺言執行者等と、その法定代理人
- 分かること:相続人が請求すれば、遺言者の遺言書が保管されているかどうか。相続人でない人は、自分を受遺者や遺言執行者とする遺言書があるかどうか
- 請求先:全国どこの法務局(遺言書保管所)でもよい
- 方法:郵送が勧められている。窓口に行く場合は予約が必要
- 費用:1通800円(収入印紙)
- 主な書類:遺言者の死亡が分かる戸籍(除籍)謄本、請求する人の住民票の写し、相続人であることが分かる戸籍謄本。郵送の場合は宛名を書き切手を貼った返信用封筒
保管されていると分かったら、遺言書情報証明書(1通1,400円)を請求すると、遺言書の画像を印刷したものが届き、中身を確かめられます。この証明書は原本の代わりに手続きで使え、家庭裁判所の検認もいりません。また、相続人の一人が遺言書情報証明書を受け取ったり閲覧したりすると、法務局からほかの相続人全員に、遺言書が保管されている旨の通知(関係遺言書保管通知)が届きます。遺言者が申請のときに通知先として指定していた人(最大3名)には、遺言者の死亡が確認された時点で通知が届く仕組み(指定者通知)もあります。家族のもとにこうした通知が届いていないかも確かめます。
公正証書遺言があるかどうか:公証役場の遺言検索
日本公証人連合会によると、平成元年以降に作られた公正証書遺言は、作成した公証役場などの情報が連合会で管理されていて、全国どこの公証役場でも有無と保管している公証役場を調べられます。平成元年より前に作られた遺言は、この検索の対象とは案内されていません。その時期に作った心当たりがあるときは、当時通っていた公証役場に直接尋ねます。
- 近くの公証役場に連絡する。 事前に電話で必要書類を確かめておくと一度で済みます。
- 書類をそろえて申し出る。 遺言者が亡くなったことが分かる除籍謄本など、申し出る人が相続人であることが分かる戸籍謄本、本人確認の書類です。申し出ることができるのは、秘密を守るため相続人などの利害関係人に限られます。
- 結果を受け取る。 遺言があれば、どの公証役場が保管しているかが分かります。検索の申出は無料です。
- 謄本を請求する。 保管している公証役場に遺言公正証書の謄本を請求します。郵送でも請求でき、請求書、死亡と相続関係が分かる戸籍、本人確認の書類が必要です。謄本の交付には書面1枚300円(電子データなら1通2,500円)の手数料がかかります。
公正証書遺言の原本は公証役場で保管されているので、自宅で正本や謄本が見つからなくても、遺言がないとは言えません。謄本の請求の細かい流れは公正証書遺言は死亡したらどうする?検索システムと写しの請求方法で説明しています。
自宅・身の回りでの探し方:チェックリスト
手元で保管された自筆証書遺言は、どこにも登録されていないので、家族が探して見つけるしかありません。次の場所を、家族で手分けして見ていきます。
- 仏壇・神棚の引き出し、位牌の裏
- 書斎や寝室の机、たんす、金庫、手提げ金庫
- 通帳・権利証・保険証券をまとめた書類箱やファイル
- 本棚の本の間、アルバム、手紙の束
- 銀行の貸金庫(契約していた場合。開ける手続きは各金融機関の公式案内で確かめる)
- 信託銀行・弁護士・司法書士・税理士など、遺言の作成や保管を頼んでいた先(契約書や名刺、郵便物が手がかり)
- 親しい親族や友人に預けていないか
- 法務局の「保管証」、公証役場の封筒や領収書(ほかの窓口で調べるきっかけになる)
探すときは、見つけても封を開けないことを家族全員で決めておきます。封のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで開封する決まりです(民法1004条3項)。見つけた後の動き方は遺言書の開け方:見つけたら開封前に確かめることと検認の流れにまとめています。遺言書を探すついでに、通帳や借入れの書類など財産の手がかりも集めておくと、相続財産の調べ方:預金・不動産・借金を漏れなく見つける照会先一覧の作業が進みます。
調べる順番と期限:どこまで調べたら次へ進むか
相続するか放棄するかを決める3か月の期限(民法915条)は、遺言の有無を調べている間も進みます。遺言の中身で判断が変わることもあるので、亡くなってから早いうちに次の順で進めます。
- 戸籍を取る(死亡の記載のある戸籍と、自分が相続人と分かる戸籍)
- 法務局に保管事実証明書を郵送で請求し、同時に公証役場で遺言検索を申し出る(2つは並行できる)
- 自宅や身の回りを探す(結果を待つ間に)
- 結果をまとめる:調べた日、窓口、結果をメモに残し、相続人全員に共有する
3つとも見つからなければ、遺言は見つからなかったものとして相続人全員で遺産分割協議に進みます。見つかった遺言で遺言執行者が指定されていた場合や、執行者が必要になった場合は、遺言執行者とは?指定された人の役割と、いない時の家庭裁判所での選任へ進んでください。
よくある質問
Q. 親が生きているうちに、遺言書があるかどうかを子が調べられますか?
公正証書遺言の検索は、遺言者が生きている間は遺言者本人しか申し出られないと日本公証人連合会は案内しています。法務局の遺言書保管事実証明書も、請求できるのは遺言者の死亡後に限られます。生前に知りたいときは、本人に尋ねるほかありません。
Q. 遺言書が見つからないまま遺産分割協議をしてもよいですか?
法務局と公証役場で調べ、自宅も探して見つからなければ、相続人全員で遺産分割協議を進めます(民法907条)。調べた日と結果をメモに残しておくと、他の相続人への説明に使えます。協議の後に遺言書が出てきた場合の扱いは内容によって変わり、個別の判断は弁護士の仕事になるので、そのときは弁護士に相談します。
Q. 法務局と公証役場の両方に遺言があった場合はどうなりますか?
遺言は何通あっても、日付の新しい遺言が古い遺言と食い違う部分では、新しいほうで古いほうを撤回したとみなされます(民法1023条)。どれが生きているかの読み解きは相続人の間で解釈が分かれやすいので、見つかった遺言をすべて並べて専門家に見てもらいます。
出典・参考にした公的な情報
- 自筆証書遺言書保管制度 相続人等の手続(法務省)(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度 手数料(法務省)(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度 保管の申請(法務省)(法務省)
- 自筆証書遺言書保管制度 制度の概要と通知(法務省)(法務省)
- 遺言(日本公証人連合会)(日本公証人連合会)
- 民法 第907条・第915条・第1004条・第1023条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。