自筆証書遺言の検認は必要?自宅保管と法務局保管で分かれる理由
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自筆証書遺言に検認が必要かどうかは、どこに保管されていたかで決まります。自宅・貸金庫・知人宅などで保管されていた自筆証書遺言は、見つけた相続人や保管していた人が家庭裁判所に提出して検認を請求する必要があります(民法1004条1項)。一方、法務局(遺言書保管所)に預けられていた自筆証書遺言は、遺言書保管法11条で検認の規定が適用されないため、検認は要りません。公正証書遺言も検認は不要です(民法1004条2項)。
検認が必要か不要かの見分け方
手元の遺言書がどれに当たるかを、まず表で確かめます。
| 遺言書の種類と保管場所 | 検認 | 手続きに使う書類 |
|---|---|---|
| 自筆証書遺言(自宅・貸金庫・知人宅などで保管) | 必要 | 遺言書の原本+検認済証明書 |
| 自筆証書遺言(法務局の遺言書保管所で保管) | 不要(遺言書保管法11条) | 遺言書情報証明書(1通1,400円) |
| 公正証書遺言 | 不要(民法1004条2項) | 公正証書遺言の正本・謄本 |
| 秘密証書遺言 | 必要 | 遺言書の原本+検認済証明書 |
見分けるときの手がかりは次のとおりです。
- 手元にあるのが手書きの原本そのもので、法務局の保管証が見当たらない → 自宅保管の可能性が高く、検認が必要
- 遺言者の書類の中に法務局の「保管証」がある、または法務局から通知が届いた → 法務局保管。原本は法務局にあり、手元に原本はない
- 公証役場の名前と公証人の記名がある証書 → 公正証書遺言
自宅で見つかった遺言書とは別に、法務局にも遺言書が預けられていることがあります。相続人などは、遺言者の死亡後に全国どこの遺言書保管所でも、遺言書保管事実証明書(1通800円)を請求して、自分に関係する遺言書が預けられているかを確かめられます。探し方は遺言書があるかどうかの調べ方で説明しています。
- 遺言書は手書き(自筆証書)か? → 公正証書なら検認不要
- 原本が手元(自宅・貸金庫など)にあるか? → あれば検認が必要。開封せずに家庭裁判所へ
- 法務局の保管証・通知があるか? → 法務局保管なら検認不要。遺言書情報証明書を請求
- 両方ある可能性は? → 遺言書保管事実証明書で法務局の分を確かめる
法務局保管なら検認が不要になる理由
検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、検認の日の遺言書の形状・加除訂正の状態・日付・署名などを明らかにして、偽造や変造を防ぐための手続きです。
法務局に預けた遺言書は、申請のときから原本が法務局の施設で保管され、画像データでも管理されます。法務省は、相続人などによる破棄・隠匿・改ざんを防げることと、検認が要らないことを、この制度の利点として並べています。偽造・変造を防ぐという検認の目的を、法務局の保管が担う形です。そのうえで、遺言書保管法11条は「民法第千四条第一項の規定は、遺言書保管所に保管されている遺言書については、適用しない」と定めています。
相続人などが遺言書情報証明書(遺言書の画像を印刷した証明書)の交付を受けると、ほかの相続人などにも遺言書が保管されている旨の通知が届きます(遺言書保管法9条5項)。検認の期日の通知がなくても、相続人全員に遺言の存在が伝わる仕組みになっています。法務局の保管制度のしくみは遺言書の法務局保管制度で詳しく説明しています。
見つかった場所でどう変わるか:場面別の見分け方
同じ自筆証書遺言でも、見つかった場所と、手元にあるものによって答えが分かれます。よくある場面を並べます。
| 場面 | 検認 | 次にすること |
|---|---|---|
| 自宅の机・仏壇・金庫から、封のある遺言書が出てきた | 必要 | 開けずに家庭裁判所へ(民法1004条3項) |
| 銀行の貸金庫から遺言書が出てきた | 必要(自宅以外の保管でも、法務局以外なら同じ) | 貸金庫を開ける手続きを銀行に確かめたうえで、見つかった遺言書は検認へ |
| 知人・親族・士業が預かっていた遺言書を受け取った | 必要 | 預かっていた人(保管者)にも提出の責任があるので、受け取った後は早めに申立てへ |
| 法務局の保管証だけが見つかり、原本は手元にない | 不要(遺言書保管法11条) | 遺言書情報証明書を請求する |
| 手書きの遺言書と法務局の保管証の両方がある | 手元の原本は必要、法務局分は不要 | 日付の新しい方を先に確かめる。両方の内容が食い違うときは、後の日付の遺言が前の遺言と抵触する部分を撤回したものとみなされる(民法1023条1項) |
法務局に預けた遺言書は、預けた後で自宅で書き直した遺言書があっても、法務局の分が消えるわけではありません。両方があるときは、どちらも読んだうえで日付を比べます。内容の優先は自筆証書遺言のトラブルで整理している「複数の遺言書が出てきた」場面と同じ考え方になります。
検認が必要と分かったときの手順(戸籍の集め方、申立先、収入印紙800円、期日の当日、検認済証明書の申請)は、遺言書の検認の手続きに全部まとめています。この記事では手順を繰り返さず、「検認が要るかどうか」の判断に絞ります。申立ての前に開けてしまった場合は、遺言書を開けてしまったらを先に読んでください。
検認しなかった場合はどうなるか
検認をしないまま放っておいたり、検認を経ずに手続きを進めたりした場合に起きることは、大きく3つです。
1つ目は過料の対象になることです。 民法1005条は、遺言書の提出を怠った人、検認を経ないで遺言を執行した人、家庭裁判所の外で封を開けた人を、5万円以下の過料に処すると定めています。過料は、刑罰の罰金とは別のものです。
2つ目は、名義変更などの手続きが進まないことです。 自宅保管の自筆証書遺言で預金の払戻しや相続登記をするときは、遺言書に検認済証明書が付いていることを求められます。検認を受けない限り、遺言に沿った名義変更に進めません。
3つ目は、相続人どうしの疑いが残ることです。 検認は、遺言書の形状・日付・署名などをその日の状態で記録する手続きです。申立てを遅らせるほど、「その間に誰かが書き換えたのでは」という疑いが入り込む余地が広がります。見つけた日・場所・見つけた人を書き留め、遅滞なく申し立てることが、あとの争いを減らす実務上の手当てになります。
一方で、検認をしなかったこと、あるいは開けてしまったことだけを理由に遺言を無効とする規定は、民法にはありません。検認は有効・無効を判断する手続きではないからです。ただし、検認前に開けた遺言書は、後で「中身を差し替えたのではないか」と疑われる原因になりえます。開けてしまった後にすることは遺言書を開けてしまったらで説明しています。
相続人への伝え方の例:「父の机から封のある遺言書が見つかりました。開けずに家庭裁判所に検認を申し立てるので、期日の通知が届いたら出席できるか教えてください」
2026年の法改正で検認はどう変わるか(施行前)
2026年6月に成立した民法等の改正(令和8年法律第45号)で、パソコンなどで作ったデータを法務局に保管してもらう「保管証書遺言」が新設されます。法務省の概要資料では、保管証書遺言は相続開始後の検認が不要とされています。施行は公布(2026年6月24日)から3年以内の政令で定める日で、2026年10月時点ではまだ作れません。今ある遺言書は、現行の決まり(自宅保管は検認が必要、法務局保管は不要)で手続きを進めます。改正の中身と施行時期は遺言書の押印不要はいつから?2026年の民法改正の中身と施行時期に集めています。
よくある質問
Q. 封筒に入っていない自筆証書遺言でも、検認は要りますか?
要ります。検認の対象は封の有無ではなく、自宅などで保管されていた遺言書そのものです(民法1004条1項)。封がない場合は開封の問題が起きないだけで、家庭裁判所への提出と検認の請求は同じように必要です。
Q. 検認を受けた遺言書なら、内容は有効と認められたことになりますか?
なりません。裁判所の説明では、検認は遺言書の形状や日付・署名などをその日の状態で明らかにして偽造・変造を防ぐ手続きで、有効か無効かを判断するものではありません。有効性に争いがあるときは、検認とは別の手続きで争われます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第1004条・第1005条・第1023条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 法務局における遺言書の保管等に関する法律 第9条〜第11条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 遺言書の検認(裁判所)(最高裁判所)
- 家事事件Q&A(裁判所)(最高裁判所)
- 相続人等の手続(自筆証書遺言書保管制度)(法務省)
- 預金相続の手続に必要な書類(全国銀行協会)(全国銀行協会)
- 登記手続ハンドブック(法務局)(法務省)
- 民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)の概要(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。