相続人と遺産分割 / 比較

遺産分割の方法4つ:現物・代償・換価・共有の違いと家の分け方

この記事のもくじ
  1. 遺産分割の方法4つの比較
  2. 現物分割と共有:手続きは軽いが残る問題
  3. 代償分割:家を継ぐ人が他の相続人に代償金を払う
  4. 換価分割:家を売って代金を分ける
  5. 家の評価額の決め方と、家が主な遺産のときの選び方

遺産分割の方法は、**現物分割(物のまま分ける)・代償分割(一人が取得して他の相続人にお金を払う)・換価分割(売って代金を分ける)・共有(持分で一緒に持つ)**の4つです。家が主な遺産で、誰かが住み続けるなら代償分割、誰も住まないなら換価分割が選ばれやすく、共有は決定を先送りする方法になりがちです。民法906条は、遺産の種類や性質、各相続人の年齢・職業・生活の状況など一切の事情を考えて分けると定めています。どれが正しいという決まりはないので、家族の事情と、方法ごとについてくる手続き・税金を並べて選びます。

遺産分割の方法4つの比較

まず全体を一つの表で比べます。

比較表:遺産分割の方法4つ
方法 やり方 長所 注意点 向いている場面
現物分割 家は長男、預金は長女、のように物のまま分ける 手続きが単純で、売る必要がない 財産の価値がそろわないと不公平感が出る 財産の種類が多く、価値が釣り合う
代償分割 一人が家を取得し、他の相続人に代償金を払う 家を残したまま公平に近づけられる 取得する人に支払えるお金が要る。家の評価額でもめやすい 住み続ける人がいて、支払い能力がある
換価分割 家を売り、代金を割合で分ける お金で分けるので公平にしやすい 売れるまで時間がかかる。売却益に税金がかかることがある 誰も住まない・管理できない
共有 法定相続分などの持分で全員の名義にする 当面の話し合いが要らない 売る・貸す・建て替えるときに共有者の協力が要る。次の相続で権利者が増える 近く売ることが決まっていて、全員が協力的

4つは組み合わせることもできます。家は代償分割、預金は現物分割、山林は換価分割、というように、財産ごとに方法を選び、協議書に書き分けます。

現物分割と共有:手続きは軽いが残る問題

現物分割は、最も手続きが少ない方法です。家を取得する人が相続登記をし、預金を取得する人が払戻しを受ければ終わります。ただ、家の価値が3,000万円、預金が500万円しかない、という相続では、家を取得しない人の取り分が小さくなります。差を埋めるお金が別にあるかどうかで、現物分割だけで済むかが決まります。

共有は、たとえば兄弟3人で家を3分の1ずつ持つ形です。法定相続分どおりの共有なら協議書がなくても相続登記ができ、当面は分け方を決めずに済みます。その代わり、家を売るときは共有者全員が売主になります。誰か一人が反対したり連絡が取れなくなったりすると、売れないまま固定資産税と管理の負担だけが続きます。共有者が亡くなると、その持分がさらに相続され、権利者が増えていきます。共有にしてよいかは相続登記で共有名義にしてよいかの判断で詳しく扱っています。

代償分割:家を継ぐ人が他の相続人に代償金を払う

代償分割は、家を取得する人が、他の相続人に対して代償金を払う債務を負う方法です。国税庁の No.4173 は、代償分割を「現物分割が困難な場合に行われる方法」と説明しています。

代償金を協議書に「代償として」と書くこと、自分の不動産で払うと譲渡所得の税がかかること、代償金の額が家の評価額で決まること(下の節で比べます)が要点です。相続税の課税価格の計算(払った人は財産の価額から代償金を引き、受け取った人は加える)と、国税庁の数字の例は代償分割の記事に任せます。

代償金の決め方と支払いの段取りは代償分割とは何かで詳しく扱います。

換価分割:家を売って代金を分ける

換価分割は、家を売り、仲介手数料などの費用を引いた代金を、決めた割合で分ける方法です。お金で分けるので公平にしやすい反面、売るまでの手続きと、売却益への税金が加わります。

売却益の税金。 家を売って利益が出ると所得税・住民税がかかります。売る前に協議書で代金の取得割合を決めておくと、各相続人がその割合で申告できます。決めずに売ると原則として法定相続分で申告することになるため、売る前に分配の割合を決めておくのが大事です。申告の手順と特例は換価分割の進め方で説明しています。

家庭裁判所での換価。 話し合いがまとまらず審判になった場合、家事事件手続法194条は、家庭裁判所が相続人に遺産を競売や任意の売却で換価するよう命じる裁判を定めています。売却の段取りや登記・税金の手順は、次の相続不動産の換価分割の進め方で順に説明します。

家の評価額の決め方と、家が主な遺産のときの選び方

代償分割でも現物分割でも、家をいくらと見るかで取り分が変わります。民法には遺産分割で使う評価方法を定めた条文はなく、相続人が納得できる基準を話し合って決めます。よく使われる基準は次の4つです。

基準 調べ方 特徴
相続税評価額(路線価・倍率) 国税庁の路線価図・評価倍率表。家屋は固定資産税評価額×1.0(No.4602) 相続税の計算のための額で、売れる値段とは別のもの
固定資産税評価額 市区町村の納税通知書・評価証明書 手に入れやすい。これも課税のための額で、取引の値段ではない
不動産会社の査定額 複数の不動産会社に依頼 売り出し価格の目安。宅建業者は価額に意見を述べるとき根拠を示す(宅建業法34条の2)
不動産鑑定士の鑑定評価 鑑定士に依頼(有料) 法律に基づく評価(不動産の鑑定評価に関する法律)。争いがあるときに使われる

筆者の計算例(数字は仮定)。 兄が実家を継ぎ、弟に法定相続分の2分の1に当たる代償金を払うとします(遺産はその家だけの2人きょうだい)。同じ家でも、どの基準を使うかで代償金は次のように変わります。

使う基準(仮定の額) 家の評価額 弟への代償金(2分の1)
固定資産税評価額 2,000万円 1,000万円
相続税評価額(路線価で計算) 2,400万円 1,200万円
不動産会社の査定額 3,200万円 1,600万円

(検算:2,000÷2=1,000、2,400÷2=1,200、3,200÷2=1,600。最大と最小の差は600万円)。継ぐ側は低い基準を、受け取る側は高い基準を望みやすいので、基準は先に全員で決めてから数字を出します。

家が主な遺産のときは、次の順で考えると選びやすくなります。

  1. 住み続ける相続人がいるか。 いれば代償分割を検討し、その人が代償金を払えるかを確かめる。
  2. 誰も住まないか。 換価分割を検討し、売れる見込みと時期を確かめる。
  3. 評価額の基準で意見が割れるか。 割れるなら、複数の査定額か鑑定評価をそろえて、同じ資料を全員で見る。
  4. 話し合いが進まないか。 進まないなら、協議書づくりの前に弁護士に相談する。

代償分割でも換価分割でも、家の市場での値段の目安は、不動産会社の査定で知ることができます。複数社の査定を一度に依頼できる一括査定サービスも選択肢の一つです(PR)。ただし査定額は売れる値段ではなく、申し込むと複数の会社から連絡が来ることがあります。売るかどうかは、査定額と根拠を見比べてから決めて構いません。

よくある質問

Q. 遺産分割の方法は、1つの相続で1つしか選べませんか?

組み合わせられます。たとえば家は長男が取得して代償金を払い、預金は法定相続分で分け、使わない山林は売って代金を分ける、という形です。協議書には財産ごとに誰がどの方法で取得するかを書きます。

Q. 話し合いがまとまらないと、家庭裁判所はどの方法で分けますか?

遺産分割の審判では、家庭裁判所が事情を考えて分け方を決めます。家事事件手続法は、特別の事情があるときに一部の相続人に債務を負担させる方法(代償分割)や、遺産を競売や任意の売却で換価させる裁判を定めています。どの方法になるかは個々の事案で決まります。

Q. 代償金を払うお金がない場合、家を継ぐのはあきらめるしかありませんか?

代償金を分割払いにする、金額を下げることに他の相続人の理解を得る、家を担保に借り入れる、などの道があります。分割払いにするなら、回数・期日・遅れたときの扱いを協議書に書いておきます。払えるか不安なまま合意すると後で争いになりやすいので、家計の見通しを立ててから合意します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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