相続登記で共有名義にしてよい?兄弟で共有するデメリットと避け方
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相続登記を兄弟の共有名義にすること自体はでき、相続登記の義務もその登記で果たせます。ただ、共有にすると、家全体を売る・建て替えるには全員の関与が要り、貸すなどの管理も持分の過半数で決めることになります。さらに兄弟の誰かが亡くなるたびに持分がその家族へ分かれ、共有者は増えていきます。「とりあえず共有」で済ませる前に、1人が取得する分け方(現物・代償・換価)で共有を避けられないかを比べるのがおすすめです。
相続登記を共有名義にしてもよい?決める前に知っておく3つのこと
相続登記は、遺産分割をしないまま法定相続分どおりの共有で入れることも、遺産分割協議で決めた割合の共有で入れることもできます。法務局の法定相続編のハンドブックには、相続人の1人が申請人になって全員分の登記を申請できると書かれています。登記としては簡単に見えますが、共有で入れた後に起きることは次の3つです。
- 使い方の決め方が条文で決まる:誰が何をするのに、誰の同意が要るかが民法で分かれています(下の表)。
- 登記識別情報が申請人にしか届かない:兄弟の1人が全員分を申請すると、申請人にならなかった兄弟には登記識別情報が通知されません。後で持分を処分するときの本人確認は相続登記に権利証はいる?なくても申請できる理由と登記識別情報で確かめられます。
- 共有はいつでも分割を求められる:各共有者はいつでも共有物の分割を請求できます(民法256条1項)。ただし、遺産分割をすべき共有(相続したまま分けていない共有)のあいだは、裁判による共有物分割ではなく遺産分割の手続きになります(258条の2第1項)。どちらの手続きでも、共有にしたことで将来の話し合いを先送りしただけになる場合があります。
| したいこと | 必要な同意 | 根拠 |
|---|---|---|
| 雨漏りの修繕など、いまの状態を保つ行為(保存行為) | 共有者が1人でできる | 民法252条5項 |
| 管理者を決める、建物を3年以内で貸すなどの管理 | 持分の価格の過半数 | 民法252条1項・4項 |
| 建て替え、造成など形や効用が大きく変わる変更 | 共有者全員の同意 | 民法251条1項 |
| 家と土地を丸ごと売る | 全員がそれぞれの持分を売る形になり、全員が売主として関与 | 共有者は自分の持分を持つだけのため |
| 1人が住み続ける | 持分に応じて使えるが、持分を超える使用の対価を他の共有者に償還する義務がある(別の合意があれば除く) | 民法249条1項・2項 |
兄弟の1人が実家に住み、他の兄弟は遠方という形は多いですが、249条2項のとおり、住む人が持分を超えて使う分は、合意がなければ対価の問題が残ります。共有にするなら、誰が住むか、固定資産税や修繕費を誰がどの割合で負担するかを、協議書とは別の書面にしておくと後でもめにくくなります。
兄弟で共有するデメリット:持分が細かく分かれ、決められなくなる
共有のいちばんのデメリットは、時間がたつほど共有者が増え、同意を集めにくくなることです。共有者が亡くなると、その持分はその人の相続人に引き継がれます(いわゆる数次相続)。
| 時点 | 共有者と持分 |
|---|---|
| 父の相続登記の直後 | 長男 1/3、次男 1/3、三男 1/3(3人) |
| 次男が亡くなり、妻と子2人が相続した後 | 長男 1/3、三男 1/3、次男の妻 1/6、次男の子A 1/12、次男の子B 1/12(5人) |
次男の持分1/3を、配偶者1/2・子1/2(子2人で等分)の法定相続分(民法900条)で分けた筆者の計算です。1/3×1/2=1/6、1/3×1/4=1/12で、合計は1/3+1/3+1/6+1/12+1/12=1になります。父の家を売るときに、叔父と甥・姪が売主として並ぶことになり、連絡を取るだけでも負担になります。数次相続で登記を入れる順番は数次相続の相続登記:祖父名義の家を登記する順番で扱っています。
共有者が増えると、次のような場面で手続きが止まりやすくなります。
- 共有者の誰かが認知症になった:売買契約を結ぶ判断ができなければ、全体の売却には成年後見などの手続きが先に要ります。
- 共有者の居場所が分からない:裁判所の裁判で、残りの共有者の同意で変更や管理を決める道(民法251条2項・252条2項)や、所在等不明共有者の持分を取得する裁判(262条の2)があります。ただし持分が遺産分割前の相続財産に当たる場合、持分の取得の裁判は相続開始から10年を過ぎるまでできません(262条の2第3項)。
- 共有者の1人が売却に反対している:話し合いで決まらなければ裁判による共有物分割(258条)の話になり、時間と費用がかかります。
共有を避ける分け方:現物分割・代償分割・換価分割の比べ方
共有を避けたいなら、遺産分割協議の段階で「家は誰か1人が取得する」形を探します。遺産分割に期限はありませんが(民法907条1項)、分け方を決めずに共有で登記すると、上のデメリットを抱えたまま時間がたちます。
| 分け方 | 中身 | 向いている家族 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| 現物分割 | 家は長男、預金は次男のように物ごとに分ける | 家と同じくらいの他の財産がある | 財産の額に差が出やすい |
| 代償分割 | 家を取得した人が、他の兄弟にお金を払う | 住み続けたい人に支払う資金がある | 代償金の額と支払時期を協議書に書く |
| 換価分割 | 家を売って代金を分ける | 誰も住まない、売ることで全員が一致している | 売るまでの名義・費用負担を先に決める |
| 共有 | 持分で分けて全員の名義にする | 夫婦など関係が近く、近い将来に売る予定が決まっている | 上の表のとおり同意が要る場面が多い |
それぞれの進め方は遺産分割の方法4つ:現物・代償・換価・共有の違いにまとめ、代償金の決め方は代償分割とは?家を一人が継いで他の兄弟にお金を払う方法、売って分ける場合の登記と税金は相続不動産の換価分割の進め方で詳しく書いています。
協議で単独の取得に決まったら、法務局の遺産分割協議編のハンドブックに沿って登記します。協議書には相続人全員が実印を押し、申請人以外の相続人の印鑑証明書を添えます。この印鑑証明書には「作成後3か月以内」という制約はない、とハンドブックに明記されています。
協議で使える言い方の例:「すぐに決められないなら、共有で登記するのではなく、いつまでに誰が取得するかを決める期限を先に決めよう」
すでに共有名義で登記した、共有にするしかない時の手当て
話し合いがまとまらず、ひとまず法定相続分の共有で登記する家族もあります。その場合でも、次の手当てでデメリットを小さくできます。
- あとで遺産分割したら3年以内に登記する:法定相続分の登記の後に遺産分割で法定相続分を超えて取得した人は、分割の日から3年以内に登記を申請する義務があります(不動産登記法76条の2第2項)。
- 使い方と費用の負担を書面にする:住む人、税金と修繕費の割合、貸す・売るときの決め方を、共有者全員で書いておきます。
- 分割しない期間を決める場合は5年まで:共有者どうしで分割しない契約をするときは5年を超えられず、更新も5年までです(民法256条)。
- 遺産分割前の共有かどうかを確かめる:遺産分割をすべき共有のあいだは、原則として裁判による共有物分割ではなく遺産分割の手続きになります(民法258条の2第1項)。相続開始から10年を過ぎると扱いが変わる定めもあるので(同条2項)、どちらの手続きになるかは弁護士に確かめます。
共有者の1人が売却に反対しているときの話し合い方や裁判の流れは、共有名義の売却に反対されたらで扱っています。全体を売れないまま、自分の持分だけを手放す方法もあります。その考え方は共有名義の不動産の売却:全員の同意が要る場面と持分だけ売る方法で整理しています。
持分だけの買取(PR)を考えるなら、仲介で家全体を売る場合の見込み額と比べてから決めます。業者に自宅や持分を売る売主には、宅地建物取引業法のクーリング・オフ(37条の2、業者が売主の取引で買主を守る制度)は使えません。契約書に署名する前に、買取価格の根拠と、他の共有者への連絡の有無を書面で確かめてください。共有者と争いになっている場合は、広告より先に相続・不動産売却の相談先一覧で弁護士の窓口を確かめるのが順番です。
よくある質問
Q. 共有名義の相続登記は、兄弟のうち1人だけで申請できますか?
法定相続分どおりの共有で登記するなら、相続人の1人が申請人になれると法務局のハンドブックに書かれています。遺産分割で決めた割合で共有にする場合は、協議書に全員が実印を押し、申請人以外の印鑑証明書を添えます。
Q. 兄弟の共有名義にしておけば、相続登記の義務は果たしたことになりますか?
法定相続分どおりの共有で登記がされれば、取得した相続人の申請義務はその登記で果たされます。ただし、その後の遺産分割で法定相続分より多く取得した人は、分割の日から3年以内にあらためて登記を申請する義務を負います。
Q. 共有者の1人が、家を丸ごと勝手に売ることはできますか?
家と土地を丸ごと売るには、共有者それぞれの持分をまとめて売ることになるため、共有者全員が売主として契約と登記にかかわります。1人の判断だけで全体を売ることはできません。持分の扱いや反対されたときの道は、共有名義の売却の記事で詳しく整理しています。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第249条・第251条・第252条・第256条・第258条・第258条の2・第262条の2・第900条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産登記法 第21条・第76条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登記申請手続のご案内(相続登記②/法定相続編)令和8年4月(法務省)
- 登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)令和8年4月(法務省)
- 相続登記の申請義務化に関するQ&A(法務省)
- 宅地建物取引業法 第37条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。