相談先と専門家の選び方 / 比較

相続手続きの専門家の違い:弁護士・司法書士・税理士・行政書士の頼み分け

この記事のもくじ
  1. 相続手続きの専門家4つの違い:独占業務の比較表
  2. 弁護士:もめている・交渉が要るときの専門家
  3. 司法書士と税理士:登記と税金の専門家
  4. 行政書士とその他の専門家(土地家屋調査士・不動産鑑定士・不動産会社)
  5. 場面別の頼み先と、登録の確かめ方

相続手続きの専門家は、法律で「その資格の人しか仕事として受けられない業務」が分かれています。もめていて交渉が要るなら弁護士、不動産の名義を変えるなら司法書士、相続税の申告なら税理士、争いのない書類づくりなら行政書士、が基本の分け方です。ここでは条文を根拠に違いを表にし、場面ごとの頼み先と、登録を確かめる探し方を示します。自分の家の事情から依頼先を絞りたいときは、相続手続きは誰に頼む?財産と家族の状況で決める依頼先の選び方が近道です。

相続手続きの専門家4つの違い:独占業務の比較表

まず全体を一枚で見ます。「頼めないこと」の列は、別の資格の領域にあたるものです。条文はすべて2026年10月23日時点の現行版で確かめました。

比較表:相続手続きの専門家の守備範囲
資格 相続で頼めること 頼めないこと(別の資格の領域) 根拠 探し方
弁護士 遺産分割・遺留分の交渉と調停・審判の代理、相続放棄など家庭裁判所の手続の代理、遺言の作成支援 —(登記の代理もできる。税理士業務は国税局長への通知が要る) 弁護士法3条・72条、税理士法51条 各地の弁護士会の法律相談センター
司法書士 相続登記の申請代理、家庭裁判所に出す書類(相続放棄の申述書など)の作成、遺言の作成支援 家庭裁判所の手続の代理、相続人どうしの交渉の代理、相続税の申告 司法書士法3条・73条 日本司法書士会連合会の司法書士検索
税理士 相続税・贈与税の申告、準確定申告、相続した不動産を売ったときの申告、具体的な税額の計算の相談 登記の申請、交渉の代理。登録免許税は税理士業務の対象外 税理士法2条・52条 日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト
行政書士 争いのない遺産分割協議書、相続関係の説明図、財産目録の作成と、その前提の戸籍の収集 登記の申請書、相続税の申告書、争いのある遺産分割の交渉 行政書士法1条の3・1条の4・19条 日本行政書士会連合会の会員検索

表の線引きは、他人の依頼を受けて「業として」行うことを制限するものです。相続人本人が自分の相続登記を申請する、自分の相続税の申告書を作る、といったことまで禁じる条文ではありません。ただし税理士の仕事は、報酬を受け取らなくても税理士でない人が他人のために行うことはできない、と国税庁が説明している点が他の資格と違います。

弁護士:もめている・交渉が要るときの専門家

弁護士法72条は、弁護士でない者が報酬を得る目的で、法律事件について代理・和解などの法律事務を扱うこと、その周旋をすることを業とするのを禁じています。相続では、ほかの相続人との遺産分割の交渉、遺留分侵害額請求、家庭裁判所の調停・審判の代理がこれにあたります。司法書士・行政書士・税理士・不動産会社・相続手続きの代行会社には、相続人どうしの交渉を代理できるという別の定めは見当たらないため、交渉の代理を頼めるのは弁護士と考えておきます。

弁護士法3条は、弁護士の職務を「一般の法律事務」とし、弁理士・税理士の事務もできると定めています。登記の代理もできます。税理士の仕事を実際に行うには、税理士法51条により所属弁護士会を経て国税局長への通知が要ります。弁護士に頼む場面の見分け方は相続で弁護士に頼むべきとき(もめている・交渉が要る場面)にまとめています。

司法書士と税理士:登記と税金の専門家

司法書士法3条1項は、登記の手続の代理(1号)、法務局に出す書類の作成(2号)、裁判所に出す書類の作成(4号)と、それらの相談(5号)を司法書士の業務とし、73条で司法書士でない者がこれを行うことを禁じています。相続登記の申請、相続放棄の申述書や遺産分割調停の申立書の作成が司法書士の仕事です。家庭裁判所の手続は「書類の作成」で、代理人として出席するのは原則として弁護士です。認定司法書士の代理の枠と遺産分割の関係は相続で司法書士に頼めることで説明しています。

司法書士の事務所の中には、預金の解約や名義の書き換えまでまとめて行う「遺産承継業務」を受けるところもあります。日本司法書士会連合会の報酬アンケート(2024年3月実施)にも、3つの金融機関の口座を解約して相続人に分ける設例があります。頼める範囲の詳細は相続で司法書士に頼めること(登記・書類作成・相続放棄の範囲)で扱っています。

税理士法2条は、税務代理(申告の代理)、税務書類の作成、税務相談(課税標準等の計算に関する具体的な相談)を税理士の業務とし、52条で税理士でない者がこれを行うことを禁じています。国税庁は、有償・無償を問わず52条に反するとしています。相続では、相続税の申告、亡くなった人の所得税の申告(準確定申告)、相続した家を売った翌年の申告がこれにあたります。一方で、相続登記の登録免許税は税理士業務の対象の税から外されていて、登記と一緒に司法書士が計算します。両方が必要な家の順番は、相続は司法書士と税理士どっちが先?頼む順番と両方必要なケースにまとめました。

行政書士とその他の専門家(土地家屋調査士・不動産鑑定士・不動産会社)

行政書士法1条の3は、官公署に出す書類と、権利義務・事実証明に関する書類の作成を行政書士の業務とし、他の法律で制限されているものは除くと定めています。遺産分割協議書や相続関係の説明図、財産目録はここに入ります。2026年1月1日施行の改正で、19条に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」の文言が加わりました。資格のない業者に書類づくりを頼むときは、名目にかかわらず、誰の名前で書類を作るのかを先に確かめます。日本行政書士会連合会も、紛争の段階にある事案と、税務・登記の申請に関するものを除いて書類作成を引き受けると説明しています。もめていない、不動産がない、相続税がかからない家なら、行政書士だけで足りることがあります。司法書士と迷うときは相続は行政書士と司法書士どっち?不動産の有無で決める選び方を見てください。

相続では、次の専門家が関わる場面もあります。

  • 土地家屋調査士:土地の境界や、建物の表示の登記(未登記の建物の登記など)。法務省も境界・表示登記の問い合わせ先として日本土地家屋調査士会連合会を案内しています。
  • 不動産鑑定士:不動産の経済価値を判定して価額で示す「鑑定評価」は、不動産鑑定士の仕事です(不動産の鑑定評価に関する法律36条)。遺産分割で家の値段について意見が割れたときに使われます。不動産会社の無料の査定は、売り出し価格の目安を示すもので、鑑定評価とは別のものです。
  • 不動産会社(宅建業者):相続した家を売る仲介は、宅地建物取引業の免許を受けた業者の仕事です(宅建業法3条・12条)。免許は国土交通省の宅地建物取引業者情報検索で確かめられます。
  • 相続土地国庫帰属の申請:申請書の作成を業務として代行できるのは、弁護士・司法書士・行政書士に限られると法務省が案内しています。

場面別の頼み先と、登録の確かめ方

最後に、よくある場面ごとの頼み先をまとめます。1つの家で複数の場面が重なるときは、争いがあれば弁護士を最初にします。争いがなければ、相続税がかかりそうな家は税理士に早めに声をかけ、遺産の分け方が決まってから司法書士が登記をする流れが一般的です。

場面 頼み先 ひとこと
兄弟が遺産の分け方に納得しない、話し合いに応じない 弁護士 相手に弁護士がついた場合も同じ
実家の名義を変えたい 司法書士 自分で申請する道もある
借金が多そうで相続放棄を考えている 司法書士(書類の作成)か弁護士(代理) 期限があるので早めに
相続税がかかりそう 税理士 不動産の評価や特例の判断が税額に響く
預金と株だけで、もめていない 行政書士、司法書士、自分で 金融機関ごとの書類を確かめる
隣地との境界がはっきりしない土地を売りたい 土地家屋調査士、不動産会社 測量の要否は売り方で変わる

依頼する前に、相手が本当に登録された資格者かを確かめます。司法書士は日本司法書士会連合会の司法書士検索、税理士は日本税理士会連合会の税理士情報検索サイト(国税庁は税理士証票の提示を受ける方法も案内)、行政書士は日本行政書士会連合会の会員検索、宅建業者は国土交通省の検索で確かめられます。

司法書士・税理士などを抱える事務所や、相続手続きの代行サービスにまとめて頼む方法もあります。その場合は、登記は司法書士、申告は税理士というように、どの手続を、どの資格者の名前で行うかを見積書で確かめます。窓口の番号は相続手続きの無料相談窓口一覧(番号と受付時間)にまとめています。

よくある質問

Q. 弁護士に頼めば、登記も相続税の申告もまとめて任せられますか?

弁護士は法律事務全般を扱え、登記の代理もできます。税理士の仕事は、所属する弁護士会を通じて国税局長に通知した弁護士なら行えます。実際には、登記は司法書士、申告は税理士と組んで進める事務所も多いので、誰が担当するかを見積もりの段階で聞きます。

Q. 行政書士に相続登記の申請書を作ってもらえますか?

登記の申請書の作成は司法書士法で司法書士(と弁護士)の仕事とされ、行政書士法も他の法律で制限された書類は扱えないと定めています。行政書士に頼めるのは、争いのない遺産分割協議書や相続関係の説明図、財産目録の作成などです。不動産があるなら、登記は司法書士に頼む前提で考えます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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