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認知症の親の不動産売却は誰がどう進める?意思能力で分かれる3つの道

この記事のもくじ
  1. 認知症の親の不動産売却は「売る時の意思能力」で道が分かれる
  2. 意思能力があるかを、家族はどう見分けるか
  3. 成年後見人が売る道:流れの要点と、くわしい手順の行き先
  4. 売却の前に家族で決めておくこと
  5. まだ親が判断できるなら:委任状の注意と家族信託
  6. 売った後の代金は誰のものか

認知症の親の不動産売却は、売買契約を結ぶ時に親本人に意思能力があるかで、誰がどう進めるかが決まります。意思能力があれば親自身が売主になり、家族は委任状を受けて手続きを手伝えます。意思能力がなければ、その売買は無効になりうるため(民法3条の2)、家族が親の代わりに売ることはできません。この場合は家庭裁判所に成年後見を申し立て、選ばれた成年後見人が売主になります。親がまだ元気なうちに家族信託の契約を結んでいれば、受託者が売る道もあります。どの道に当たるかは、診断名ではなく「いま、どの状態か」で決まります。

認知症の親の不動産売却は「売る時の意思能力」で道が分かれる

診断名ではなく、売る時に親が「この家を、この値段で、この人に売る」ことの意味と結果を理解できるかが問われます。売り方は次の3通りです。

道 使える場面 売主になる人 家庭裁判所 注意点
親本人が売る 売る時に意思能力がある 親 関与しない 物忘れが進んでいると後から有効性が争われうる。家族は委任状で手続きを手伝う
成年後見人が売る 意思能力がない、または重要な契約を一人で判断するのが難しい 後見人(保佐人・補助人は代理権を付けた場合) 後見人を選ぶ。住まいなら売却の許可 申立てから数か月。後見は売却後も続く
家族信託の受託者が売る 親が元気なうちに信託契約を結んでいた 受託者(子など) 関与しない 契約で売却の権限を定めていることが前提。判断能力が落ちた後には新たに結べない

親が保佐の審判を受けている場合、不動産の売買は保佐人の同意が要る行為です(民法13条1項3号)。補助の場合は、家庭裁判所が同意権や代理権を付けた範囲によります。

分かれ道の早見:親の状態から見た3つの道
  1. 売る時に、親が売る家と価格を理解し、自分で決められる → 親本人が売主(家族は委任状で補助)
  2. 理解や判断が難しい、後見などの手続きをまだしていない → 成年後見の申立て → 後見人が売主(住まいなら家庭裁判所の許可)
  3. 親が元気なうちに信託契約を結んである → 契約の範囲で受託者が売主

本人に意思能力がないのに、家族が親の名前で契約書や委任状に署名して売った場合に何が起きるかは、認知症の親の不動産売却に罰則はある?勝手に売った場合に起きることで説明します。

意思能力があるかを、家族はどう見分けるか

意思能力は「認知症と診断されたか」や検査の点数だけで決まるものではありません。同じ診断でも、日によって、また話題によって理解の度合いは変わります。売却では、次の3点を親の言葉で説明してもらえるかが、見極めの手がかりになります。

  • 何を売るのか:どの家か、なぜ売るのか(施設費に充てる、住む人がいないなど)。
  • いくらで売るのか:おおよその価格と、その価格で良いと考えた理由。
  • 売ると何が変わるのか:売ったらその家には戻れないこと、代金が親の財産になること。

説明がちぐはぐなときや、同じ話を繰り返して先に進めないときは、親本人の売却は見送るほうが安全です。迷ったら、かかりつけ医や認知症の専門医に、売却の話を理解できる状態かを相談し、結果を診断書などの形で残しておきます。診断書の取り方は成年後見の診断書と本人情報シートでも説明しています。

意思能力が揺らいでいる段階で親本人が売る道を選ぶと、売買が終わった後に「あの時は判断できなかった」と有効性が争われるおそれが残ります。売却の相手方である買主にとっても同じです。のちの争いを避けたいなら、不安のある段階で成年後見の申立てを検討するほうが、結果として早く進めやすくなります。

成年後見人が売る道:流れの要点と、くわしい手順の行き先

意思能力がない場合の全体の流れは、次の5つの段階です。細かい書類や期間は、別の記事で手順どおりに説明しています。

  1. 後見の申立て(本人の住所地の家庭裁判所)。書類と費用は成年後見の申立ての流れ:必要書類・費用・審判までの期間へ。
  2. 審判と後見人の選任。家族を候補者にしても、専門職が選ばれることがあります。
  3. 後見人が財産を調べ、目録を作る(選任から1か月以内。民法853条)。売却の検討はこの後です。
  4. 査定と買主探し、契約書の案づくり。
  5. 売る家が親の住まいなら、居住用不動産の処分許可を申し立て、許可が出てから決済・引き渡し。

住まいの範囲は広く、施設に入る前に住んでいた家や、将来戻る可能性のある家も含まれます。許可を得ない処分は無効と、裁判所は案内しています。対象になる物件の範囲、申立ての書類、許可の前に契約するときの条件は、成年後見人が自宅を売るには:居住用不動産処分の許可の手続きにまとめています。専門職が後見人になれば報酬もかかるので、成年後見の報酬:後見人・監督人に払う額の目安も申立ての前に見ておきます。

後見は、売却が終わってもそこで終わりません。判断能力が回復するか本人が亡くなるまで続きます。「売るためだけに後見をつける」つもりでも、売却後の報酬と報告が続く点は、申立ての前に家族で理解しておきます。

売却の前に家族で決めておくこと

どの道を通るにしても、家族が先に準備できることは多くあります。

  • 親の収支の見通し:年金と施設費用の差額、預金の残りから、いつまでに売却代金が必要かを書き出す。後見人が売る場合、申立てから代金を受け取るまで数か月かかる前提で考える。
  • 家財の扱い:思い出の品や仏壇をどうするか。家財の処分も本人の財産の処分なので、後見人がいれば相談して進める。
  • 売却にかかるお金と税金:仲介手数料、測量や解体の費用、売却益にかかる税金。税の特例の使い方は売る時期で変わることがあるので、親の施設費用のために家を売却する:売る前に確かめる税と手続きで先に確かめる。
  • 家族内の合意:きょうだいがいる場合、売ること自体と、売った後の代金の使い道を先に共有しておく。親の財産の話は、後の相続で感情のもつれになりやすい。

査定は「売るか決める前の材料」です。売るのが親本人でも後見人でも、査定を取るだけなら先に進められます。不動産会社に査定を頼む場合は、家の持ち主が認知症で、売る権限をどう確保するかを最初に伝えておくと、話がかみ合います。

まだ親が判断できるなら:委任状の注意と家族信託

親に意思能力があるうちなら、親が売主のまま、家族が委任状を受けて不動産会社とのやりとりや立ち会いを代わりに行えます。ただし契約の意思を持つのは親本人です。委任状に署名する時に、売る家と価格を親が理解しているかを確かめ、署名の経緯が分かるように記録を残しておきます。契約や登記の場面で、本人の意思を確かめる面談が求められることもあります。進め方は親の家を売るとき子が代わりに進めるには:委任状と意思確認で説明します。

すぐには売らないが、施設に入った後に売るかもしれない場合は、家族信託で受託者に売却の権限を渡しておく方法もあります。信託契約は結んだ時に効力が生じるので(信託法4条)、親の判断能力が落ちた後でも受託者が契約の範囲で売れます。家族信託・任意後見・法定後見の違いは成年後見とは?親が認知症になった時の財産管理と2026年改正の予定で整理しています。

売った後の代金は誰のものか

売却代金は、どの道でも親本人の財産です。後見人が売った場合、代金は後見人が本人の施設費や生活費のために管理し、家庭裁判所への報告に入れます。家族の間で分けることはできません。親本人が売った場合も、代金は親の口座に入り、家族が親の口座から勝手に引き出すことはできません。

家に代わって預金が増えると、親の財産の管理が一段と大事になります。預金の動かし方や口座凍結への備えは親が認知症になったら財産管理はどうなる?口座凍結と家族ができること、相続人に認知症の人がいるときの相続税の申告は相続人が認知症の場合の相続税の申告:誰が申告し特例はどうなるかで確かめます。

よくある質問

Q. 施設に入って空き家になった実家でも、家庭裁判所の許可が要りますか?

裁判所の案内では、居住用不動産には、今住んでいる家だけでなく、施設に入る前に住んでいた家や、将来戻って住む可能性がある家も含まれます。空き家になった実家でも、後見人が売るなら許可の申立てが必要になると考えて準備します。許可を得ずにした処分は無効と案内されています。

Q. 後見人をつければ、売った代金を家族で分けられますか?

分けられません。売却代金は親本人の財産のままで、後見人が本人の施設費や生活費などのために管理します。家族に渡るのは、親が亡くなって相続が始まった後です。売却の理由も、本人の生活のために必要かどうかという観点で家庭裁判所に説明します。

Q. 親名義のマンションでも、売り方は同じですか?

同じです。一戸建てでもマンションでも、売る時に本人に意思能力がなければ後見人が売主として手続きし、本人の住まいだった物件なら居住用不動産の処分許可が要ります。管理費や修繕積立金の滞納がないかなど、マンション特有の確認は売却の準備の段階で管理会社に問い合わせます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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