遺言書 / 比較

公正証書遺言の費用:2025年10月改正後の手数料の計算と専門家の報酬

この記事のもくじ
  1. 公証人手数料の計算方法(2025年10月改正後)
  2. 筆者の計算例:4つのケース
  3. 自分で進める場合にかかる費用
  4. 司法書士など専門家に頼む場合の報酬

公正証書遺言の費用は、**「受け取る人ごとの公証人手数料の合計」+「遺言加算13,000円」+「正本・謄本の交付手数料」**が基本で、出張してもらうなら病床加算・日当・交通費、証人を紹介してもらうなら謝礼、専門家に頼むならその報酬が加わります。公証人手数料は政令で決まっていて、公証役場での相談は無料です。この記事では、2025年10月1日からの手数料表で筆者が計算した例を示し、自分で進める場合と司法書士などに頼む場合の総額の違いを分けて整理します。

公証人手数料の計算方法(2025年10月改正後)

公正証書遺言の手数料は、公証人手数料令9条の別表で、財産の価額の区分ごとに決まっています。この表は令和7年政令第263号で改正され、2025年10月1日以後の嘱託から使われています。

目的の価額 手数料
50万円以下 3,000円
50万円超〜100万円以下 5,000円
100万円超〜200万円以下 7,000円
200万円超〜500万円以下 13,000円
500万円超〜1,000万円以下 20,000円
1,000万円超〜3,000万円以下 26,000円
3,000万円超〜5,000万円以下 33,000円
5,000万円超〜1億円以下 49,000円
1億円超〜3億円以下 49,000円+超過額5,000万円までごとに15,000円
3億円超〜10億円以下 109,000円+超過額5,000万円までごとに13,000円
10億円超 291,000円+超過額5,000万円までごとに9,000円

計算は次の順で進めます(日本公証人連合会「2 遺言」Q7)。

  1. 財産を受け取る人ごとに、受け取る財産の価額を出す
  2. 1人ずつ表に当てはめて手数料を出し、合計する
  3. 遺言全体の財産が1億円以下なら、13,000円を足す(遺言加算。手数料令19条1項)
  4. 原本が横書きで3枚(縦書きは4枚)を超えるときは、超える1枚ごとに300円を足す(手数料令25条)
  5. 正本・謄本に当たるものの交付手数料を足す(電子データは1通2,500円、書面は1枚300円。手数料令40条・40条の2)

細かい点として、予備的な遺言(受け取る人が先に亡くなったときの定め)を同じ公正証書に書いても手数料は増えません。配偶者居住権を遺贈するときは、建物と敷地の評価額の3割を配偶者居住権の価額として計算し、建物と敷地を取得する人は7割の額で計算すると日本公証人連合会は案内しています。

筆者の計算例:4つのケース

以下は筆者が上の表で計算した例です(正本・謄本は電子データ2通、紙の枚数加算なしと仮定)。不動産の価額の出し方などで実際の額は変わるので、公証役場の見積もりで確かめてください。

ケース 手数料の内訳(筆者の計算) 合計
A:配偶者1人に全財産2,500万円 26,000円+遺言加算13,000円+正本・謄本5,000円 44,000円
B:妻に3,000万円、長男に1,500万円、長女に800万円(総額5,300万円) 26,000円+26,000円+20,000円+遺言加算13,000円+5,000円 90,000円
C:Aと同じ内容を病院で作成(4時間以内) 26,000円×1.5=39,000円+遺言加算13,000円+日当10,000円+5,000円 67,000円+交通費
D:1人に2億円 49,000円+15,000円×2(超過額1億円)+5,000円。1億円超なので遺言加算なし 84,000円

ケースCの病床加算は、手数料令32条により遺言加算を足す前の額(26,000円)にその10分の5を足します。日当は1日2万円、4時間以内なら1万円です(手数料令43条)。交通費は実費です。ケースBは、同じ5,300万円でも1人に全部を渡すなら「5,000万円超〜1億円以下」の49,000円に遺言加算と交付手数料を足して67,000円になり(筆者の計算)、受け取る人を分けると手数料が上がることが分かります。

早見表:公正証書遺言の費用の内訳
  • どの遺言にもかかるもの:受け取る人ごとの手数料の合計、遺言加算13,000円(総額1億円以下)、正本・謄本の交付手数料
  • 場合によってかかるもの:紙の枚数加算(横書き3枚・縦書き4枚を超える1枚300円)、病床加算(基本の手数料の5割)、日当(1日2万円・4時間以内1万円)と交通費
  • 公証人手数料の外にあるもの:証人の謝礼、専門家の報酬、書類の取得費

自分で進める場合にかかる費用

専門家を通さず、本人や家族が直接公証役場に相談して作る場合、公証人手数料のほかにかかるのは主に次の2つです。

  • 書類の取得費:戸籍謄本は多くの市区町村で1通450円、除籍謄本は1通750円(政令の標準額)。不動産の登記事項証明書は法務局の窓口・郵送の請求で1通600円、オンライン請求なら490円(送付は520円)です。印鑑登録証明書や固定資産評価証明書は、取得する市区町村の手数料を確かめます。
  • 証人の謝礼:知人に頼むならお礼の考え方は人それぞれです。公証役場に紹介してもらう場合の謝礼は公証人手数料に含まれないので、紹介を頼むときに額を確かめます。

自分で進めると、費用はほぼ公証人手数料と実費に収まります。その代わり、財産の一覧づくりや戸籍集め、証人探しは自分ですることになります。公証人は内容の相談にも無料で応じ、日本公証人連合会も、士業や銀行を通さずに本人や家族が直接依頼する例は少なくないと説明しています。財産の分け方が単純で、家族の間に争いの気配がないなら、まず公証役場に相談してみる選び方があります。手順は公正証書遺言の作り方:公証役場への相談から当日の署名までの流れ、集める書類は公正証書遺言の必要書類:本人・相続人・財産ごとに用意するものにまとめました。

司法書士など専門家に頼む場合の報酬

専門家に頼むと、公証人手数料と実費に専門家の報酬が上乗せされます。報酬は事務所ごとに自由に決められているので、公的な「定価」はありません。目安を知る材料として、日本司法書士会連合会が公表している報酬アンケートがあります。

資料 設例の条件 結果
日本司法書士会連合会の報酬アンケート(2024年3月実施、消費税込み) 遺言書作成サポート(公正証書遺言の原案起案・公証役場への同行・立会証人) 有効回答738、全回答の平均62,193円

この平均は報酬だけの額で、公証人手数料や戸籍代などの実費は含みません。遺言執行者の報酬も入っていません。ケースBの家族が同じ条件で司法書士に頼んだとすると、筆者の計算では手数料90,000円+報酬の平均62,193円で、15万円台に実費が加わる見当になります。

行政書士も遺言書の作成の支援をしており、報酬の額を事務所に掲示する決まりがあります(行政書士法10条の2)。弁護士の報酬は事務所ごとの基準で決まるため、依頼の前に報酬基準と見積もりを見せてもらいます。相続人どうしの争いが見込まれ、遺留分への対策や交渉まで相談したいなら、それは弁護士の仕事です(弁護士法72条)。依頼先ごとの違いは遺言書の作成の相談先:公証役場・司法書士・弁護士・信託銀行の違いで比べ、見積もりの見方は相続の司法書士費用:報酬と実費の内訳と見積もりの確かめ方で扱っています。

見積もりを比べるときは、次の点を書面で確かめると食い違いが起きにくくなります。

  • 報酬に「原案の作成」「公証役場との調整」「当日の同行」「証人2人」のどこまでが入っているか
  • 公証人手数料・書類の取得費・交通費を、報酬と分けて書いてあるか
  • 遺言執行者を引き受ける場合、その報酬を別にどう決めるか

遺言を作る費用とは別に、相続が始まった後の名義変更や預金の手続きにも費用がかかります。遺言で遺言執行者を指定しておくか、家族が自分で進めるか、手続きの代行を頼むかを、作成の時点で家族と話しておくと、後で慌てずに済みます。代行を選ぶときは、登記の申請は司法書士、相続税の申告は税理士が担うので、どの資格者が担当するかを確かめてください。

よくある質問

Q. 公正証書遺言の手数料は、財産の総額で計算するのですか?

総額ではなく、財産を受け取る人ごとにその人が受け取る額を手数料表に当てはめ、それを合計します。そのうえで、遺言全体の財産が1億円以下なら遺言加算13,000円を足します。同じ総額でも、受け取る人が多いほど手数料は高くなりやすい仕組みです。

Q. 2025年より前の記事に書かれた手数料は使えますか?

使えません。公証人手数料令は改正され、2025年10月1日以後の嘱託から新しい額になりました。たとえば100万円以下の区分や遺言加算の額が変わっているので、計算は現行の手数料表で行い、最終的な額は公証役場の見積もりで確かめます。

Q. 証人を公証役場に紹介してもらうと、いくらかかりますか?

紹介された証人への謝礼は公証人手数料とは別の費用で、手数料令の表には載っていません。紹介を頼むときに、1人あたりの額と支払い方を公証役場に確かめてください。専門家に依頼した場合は、その専門家や事務所の人が証人になり、報酬に含まれることがあります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

公正証書遺言の作り方:公証役場への相談から当日の署名までの流れ

公正証書遺言の必要書類:本人・相続人・財産ごとに用意するもの

遺言書の作成の相談先:公証役場・司法書士・弁護士・信託銀行の違い

相続の司法書士費用:報酬と実費の内訳と見積もりの確かめ方