共有名義の売却に反対されたら:話し合い・持分売却・共有物分割請求
共有名義の不動産の売却に共有者が反対しているとき、打てる手は①話し合いで反対の理由を解く → ②持分を買い取ってもらう・自分の持分を売る → ③裁判所に共有物分割を求めるの順に重くなります。家全体を売るには共有者全員の合意が要るため(理由は共有名義の不動産の売却で全員の同意が要る場面)、反対が続く限り家全体の売却は進みません。ただし、反対する共有者を説得できなくても、自分の持分を手放す道や、裁判所に分け方を決めてもらう道は残っています。
共有名義の売却に反対されたときの3つの段階
| 段階 | すること | 期間・費用の目安 | 関係はどうなるか |
|---|---|---|---|
| ①話し合い | 反対の理由を聞き、条件を出し合う | 当事者しだい。費用はほぼかからない | 続けられる可能性がいちばん高い |
| ②持分の売買 | 反対する側に自分の持分を買ってもらう/第三者に売る | 売買の手続き分。第三者への売却は価格が下がりやすい | 共有関係から抜けられる |
| ③共有物分割請求 | 裁判所に分け方を決めてもらう | 弁護士費用と裁判の期間がかかる | 対立がはっきりする |
いきなり③に進むと、時間も費用もかかるうえ、兄弟の関係が戻りにくくなります。①で反対の理由を具体的にしておくと、②の価格交渉や③の主張の準備にもそのまま使えます。
段階1:反対の理由を聞き、条件を出し合う
反対には理由があります。よくある理由と、話し合いで出せる条件の例です。
| 反対の理由 | 話し合いで出せる条件の例 |
|---|---|
| 親の家を残したい・寂しい | 売る時期を1年後にする、仏壇や写真など残す物を先に分ける |
| 自分が住んでいる・住みたい | 住む人が他の共有者の持分を買い取る、使用の対価を払う |
| 価格が安すぎると思う | 複数社の査定を全員で見る、最低価格を全員で決める |
| 手続きが面倒・関わりたくない | 窓口役を1人にし、反対側は委任状を出すだけにする |
| 他の遺産の分け方に不満がある | 家だけでなく遺産全体の分け方を見直す |
話し合いの申し入れは、感情的なやり取りを避けるため手紙やメールで、提案の形にすると伝わりやすくなります。
文例:「実家の今後について、一度話す時間をもらえないでしょうか。売ると決めたいわけではなく、固定資産税や管理の負担をどう分けるかも含めて、それぞれの希望を聞きたいと思っています。査定の結果も共有します。」
直接話すと口論になる場合は、家庭裁判所の調停を使う道もあります。親から相続してまだ遺産分割をしていない家なら、遺産分割調停で家の扱いを話し合います(遺産分割調停の流れと1回目の準備)。兄弟の関係そのものがこじれているときは相続で兄弟がもめるときに第三者を入れる順番も参考にしてください。
段階2・3:持分の売買と共有物分割請求
持分を反対する共有者に買い取ってもらうのは、住み続けたい兄弟が反対しているときに最も自然な解決です。相手は単独の所有者になれます。価格は、査定額を持分の割合で割った額を出発点に話し合います。
相手に買う資金がない、または話し合い自体に応じない場合は、自分の持分だけを第三者に売ることができます。他の共有者の同意は要りません。ただし買い手は共有持分を扱う買取業者などに限られ、価格は家全体を売った場合の持分相当額より低くなりやすい点と、買った業者が残りの共有者に持分の売買や分割を持ちかけることになる点は、知っておく必要があります(詳しくは共有持分の買取業者に売る前に確かめる点)。業者に売る場合、売主の側は不動産のクーリング・オフ(宅建業法37条の2)を使えない取引であることも前提にします。
それでも共有のままにしておけない場合は、共有物分割請求を検討します。共有者の間で分け方の協議が調わないときは、裁判所に分割を求めることができ、裁判所は次の方法で分割を命じます(民法258条)。
- 現物を分ける(土地を2つに分けるなど)
- 共有者の一人に家を取得させ、その人に他の共有者へお金を払わせる
- 1・2で分けられない、または価値が大きく下がるおそれがあるときは、競売にして代金を分ける
注意点は、遺産分割をする必要がある共有(遺産共有)には、原則としてこの手続きを使えないことです(民法258条の2第1項)。親から相続してまだ分けていない家は、まず家庭裁判所の遺産分割(907条)で決めます。相続開始から10年を過ぎた場合の例外もあり(258条の2第2項)、どちらの手続きになるかは事情しだいです。裁判の見通しや、相手との交渉を任せるのは弁護士の仕事です(弁護士法72条)。相談先の選び方は相続手続きの専門家の違いと頼み分けにまとめています。
- まだ遺産分割をしていない相続の家か? → はい:遺産分割の話し合い・調停・審判で家の扱いを決める
- 遺産分割は済んでいる(通常の共有)か? → 話し合い → 持分の売買 → 共有物分割請求の順
- 反対ではなく「共有者が誰か分からない・所在が分からない」か? → 所在等不明共有者の制度などを検討
- 共有者が亡くなった・認知症か? → 相続人や後見人が話し合いの相手になる
共有者の片方が死亡・認知症・行方不明のとき
反対ではなく、共有者の状態で売却が止まることもあります。
共有者の片方が死亡した場合、その人の持分はその人の相続人に引き継がれます。たとえば兄弟2人で共有していた実家で兄が亡くなると、兄の持分は兄の配偶者や子が相続し、売却には兄の相続人全員の合意が要るようになります。兄の相続人が持分の相続登記をしてから売る流れになるため、話し合いの相手と必要な書類が増えます。
共有者が認知症の場合、意思能力がない状態での売買契約は無効です(民法3条の2)。その共有者の持分を売るには、家庭裁判所が選ぶ成年後見人が本人に代わって契約します。家がその共有者の住まいなら、売却に家庭裁判所の許可も要ります(859条の3)。進め方は認知症の親の不動産売却と後見人を通す手続きにまとめました。
共有者が行方不明・誰か分からない場合は、2023年4月に始まった所在等不明共有者の制度が使えることがあります。不動産の共有者が他の共有者を知ることができない、または所在が分からないとき、地方裁判所に申し立てて次の裁判を受けられます(民法262条の2・262条の3、非訟事件手続法87条・88条)。
- 所在等不明共有者の持分を、申し立てた共有者が取得する裁判
- 所在等不明共有者の持分を、他の共有者全員の持分とまとめて第三者に譲渡する権限をもらう裁判
裁判の前には公告がされ、異議の届出などの期間は3か月以上とされています。申し立てた人は、裁判所が決めた額のお金を供託する必要があります。また、その持分が遺産分割をすべき相続財産に含まれる場合は、相続開始から10年が過ぎるまで使えません(262条の2第3項・262条の3第2項)。行方不明の相続人がいる段階では、家庭裁判所の不在者財産管理人など別の制度を検討することになります。
よくある質問
Q. 反対している兄弟がその家に住んでいます。出て行ってもらうことはできますか?
共有者はそれぞれ持分に応じて家全体を使う権利があるため、住んでいる共有者を他の共有者の判断だけで退去させることは難しいと考えられます。一方で、持分を超えて使っている共有者は、別の合意がなければ他の共有者にその対価を払う義務があります(民法249条2項)。住み続ける代わりに持分を買い取ってもらう、使用の対価を払ってもらう、といった形で話し合う材料になります。
Q. 共有物分割請求の裁判を起こすと、家は競売になってしまうのですか?
競売は最後の方法です。裁判所はまず、現物を分ける方法や、共有者の一人に家を取得させて他の共有者にお金を払わせる方法を検討し、それらでは分けられない場合や価値が大きく下がるおそれがある場合に競売を命じることができます(民法258条)。どの方法になるかは家の状態や当事者の事情で決まるため、見通しは弁護士に聞きます。
Q. 行方の分からない兄弟がいるとき、不在者財産管理人と所在等不明共有者の制度はどちらを使えばよいですか?
不在者財産管理人は不在者の財産全体を管理する人を家庭裁判所が選ぶ制度、所在等不明共有者の制度は不動産の持分だけを対象に地方裁判所が裁判をする制度で、目的と手続きが違います。遺産分割をする必要があるか、相続開始から10年たっているかなどで使える制度が変わるため、司法書士か弁護士に事情を伝えて選びます。
出典・参考にした公的な情報
- 民法 第3条の2・第249条・第258条・第258条の2・第262条の2・第262条の3・第859条の3・第907条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 非訟事件手続法 第87条・第88条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 宅地建物取引業法 第37条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。