暦年贈与の7年加算は法定相続人だけ?孫・子の配偶者の扱い
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暦年贈与の7年加算(相続開始前の一定期間の贈与を相続税の計算に足し戻す仕組み)の対象は、法定相続人かどうかではなく、その相続で「相続や遺贈によって財産を取得した人」かどうかで決まります。国税庁 No.4161 は、対象者を「相続等により財産を取得した人で、被相続人から加算対象期間内に暦年課税の贈与で財産を取得した人」と定めています。そのため、財産を何も取得しない孫や子の配偶者への贈与は、原則として足し戻されません。反対に、孫でも遺言で財産を遺贈されたり、生命保険金の受取人になったりすると、加算の対象に入ります。
7年加算の対象は法定相続人だけですか?
いいえ。相続税法19条の書き方も「相続又は遺贈により財産を取得した者」で、相続人という言葉で絞っていません。分かれ目は「その相続で財産を取得したか」の一点です。主な立場ごとに整理すると次のようになります。
| 立場 | 加算の対象になるか | 理由 |
|---|---|---|
| 配偶者・子(相続で遺産を取得) | なる | 相続で財産を取得している |
| 法定相続人だが、遺産分割で何も取得していない | 原則ならない | 相続等で財産を取得していない(生命保険金などを受け取れば別) |
| 相続放棄した子 | 原則ならない | 初めから相続人でなかったものとされる(生命保険金などを受け取れば別) |
| 孫(相続人ではない) | 原則ならない | 相続人ではなく、遺贈もなければ財産を取得しない |
| 孫で、遺言により遺贈を受けた | なる | 遺贈で財産を取得している |
| 孫で、生命保険金の受取人 | なる | 生命保険金は遺贈で取得したものとみなされる(相続税法3条) |
| 代襲相続人の孫(親が先に亡くなっている) | 相続で取得すればなる | 相続人として財産を取得する |
| 子の配偶者(嫁・婿) | 原則ならない | 相続人ではない(養子縁組をしていなければ) |
| 相続時精算課税で贈与を受けていた人 | 7年加算とは別のルールで入る | 精算課税の贈与は期間に関係なく、基礎控除110万円を引いた残りが相続税の計算に入る(国税庁 No.4103) |
この表で「なる」とされた人が、加算対象期間内に暦年課税で受けた贈与が足し戻されます。期間の長さそのもの(3年から7年への延び方)は、生前贈与の加算期間:3年から7年へ、相続開始日ごとの早見表で相続開始日ごとに確かめてください。
- その相続で、相続により遺産を取得したか → はい:加算の対象
- 遺言で遺贈を受けたか → はい:加算の対象
- 生命保険金・死亡退職金など、相続や遺贈で取得したとみなされる財産を受け取ったか → はい:加算の対象
- 相続時精算課税でその人から贈与を受けていたか → はい:7年加算とは別のルールで、期間に関係なく相続税の計算に入る
- どれにも当たらない → 暦年贈与は足し戻さない(亡くなった年の贈与は贈与税で扱う)
孫への暦年贈与は、7年加算の対象になりますか?
孫が祖父母の相続で財産を何も取得しなければ、孫への暦年贈与は加算されません。孫は、親(祖父母の子)が生きていれば相続人にならないからです。ただし、次の場合は孫も加算の対象に入ります。
- 遺言で孫に財産を遺贈した。 遺贈で財産を取得するので、加算期間内の暦年贈与も足し戻します。さらに、孫は配偶者・父母・子以外の人なので、相続税額の2割加算の対象になります(代襲相続人の孫は2割加算の対象外)。
- 孫が生命保険金の受取人になっている。 相続税法3条は、死亡保険金を受け取った人が相続人以外なら、その保険金を遺贈で取得したものとみなすと定めています。保険金だけを受け取った孫も「遺贈で財産を取得した人」になり、加算の対象です。相続人以外が受け取る保険金には、500万円×法定相続人の数の非課税枠も使えません。
- 孫を養子にしている。 養子になった孫は子として相続人になり、相続で財産を取得すれば加算の対象です。孫養子は2割加算の対象にもなります。
- 親が先に亡くなり、孫が代襲相続人になった。 相続人として取得するので加算の対象です。
孫への贈与を毎年続ける場合の口座の管理や、未成年の孫の受諾の考え方は孫への暦年贈与:加算対象外になる場合と未成年の口座管理、2割加算の仕組みは相続税の2割加算とは:孫・兄弟姉妹・甥姪が対象になる理由で扱います。
子の配偶者(嫁・婿)への贈与は加算されますか?
子の配偶者は、養子縁組をしていなければ相続人ではありません。相続で財産を取得せず、遺贈も生命保険金の受け取りもなければ、子の配偶者への暦年贈与は足し戻されません。
一方で、次のような事情があると扱いが変わります。
| 事情 | 扱い |
|---|---|
| 子の配偶者を養子にしている | 子として相続人になり、相続で取得すれば加算の対象 |
| 遺言で子の配偶者に財産を遺贈した | 遺贈で取得するので加算の対象(2割加算の対象にもなる) |
| 子の配偶者が死亡保険金の受取人 | 遺贈で取得したとみなされ、加算の対象 |
| 子の配偶者名義の口座に入れたが、実際は子や親が管理していた | 贈与が成立していないと見られ、名義預金として扱われるおそれ |
最後の行は、加算とは別の問題です。名義を分けて贈与しても、もらった本人が受諾していない、あるいは実際には別の家族のお金のままだと、相続のときに亡くなった人の財産に数えられることがあります。贈与のたびに契約書と振込の記録を残す方法は暦年贈与とは?毎年110万円の贈与のやり方と7年加算の影響で説明しています。
相続放棄した人や、遺産をもらわなかった相続人はどうなりますか?
相続放棄をすると、民法上は初めから相続人でなかったものとされ、相続で財産を取得しません。そのため、放棄した人が生前に受けた暦年贈与は、原則として足し戻されません。ただし、放棄した人が死亡保険金の受取人として保険金を受け取ると、その保険金は遺贈で取得したものとみなされ(相続税法3条)、加算の対象に入ります。放棄した人は生命保険金の非課税枠も使えません。
遺産分割で何も取得しなかった相続人も、相続等で財産を取得していなければ、定義の上では加算の対象者に当たりません。ただ、相続時精算課税でその被相続人から贈与を受けていた人は、遺産を何も取得しなくても、精算課税で受けた贈与が相続税の計算に入ります。これは7年加算とは別のルールで、期間の制限がありません。
相続放棄は借金や負担を引き継がないための手続きで、税の扱いだけを理由に選ぶものではありません。放棄するかどうかの判断と期限は、家庭裁判所の手続きの説明と合わせて相続放棄とは?期限3か月の手続き・費用・してはいけないことで確かめてください。
経過措置で、いつの贈与から7年の対象になりますか?
7年への延長は、2024年1月1日以後の贈与が対象です。それより前の贈与まで7年分遡ることはありません。相続開始日ごとに見ると、2026年12月31日までの相続は従来どおり3年以内、2027年1月1日〜2030年12月31日の相続は2024年1月1日から死亡の日まで、2031年1月1日以後の相続は7年以内です。3年より前に延びた部分の贈与は、合計から100万円を引いてから加算します。具体的な日付ごとの表と計算例は生前贈与の加算期間の早見表にまとめました。
誰が「相続や遺贈で財産を取得する人」になるかは、遺言の内容、保険の受取人、遺産分割の結果で決まります。自分の家で誰への贈与がどう扱われるかを数字で詰める判断は、税理士の仕事です。不動産を生前に贈与する場合の手続きと税金は、次の不動産の生前贈与:手続き・登記・かかる税金と相続との比べ方で扱います。
よくある質問
Q. 孫に毎年110万円を贈与していた場合、祖父の相続で孫は何か申告しますか?
孫が遺贈も生命保険金も受け取らず、相続財産を何も取得しなければ、孫への暦年贈与は祖父の相続税の計算に足し戻されません。孫が相続税の申告をする立場にもなりません。年110万円以下の贈与なら、贈与税の申告も要りません。
Q. 法定相続人でない人が亡くなった年にもらった贈与は、どう扱いますか?
亡くなった年の贈与を相続税で扱い、贈与税をかけない決まりは、相続や遺贈で財産を取得した人に限られます。財産を取得しない孫や子の配偶者が亡くなった年に受けた贈与は、通常どおり贈与税の対象で、その年の合計が110万円を超えれば翌年に申告します。
出典・参考にした公的な情報
- No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁)
- No.4103 相続時精算課税の選択(国税庁)
- No.4405 贈与税がかからない場合(国税庁)
- No.4157 相続税額の2割加算(国税庁)
- No.4114 相続人が生命保険金などを受け取ったとき(国税庁)
- 相続税法 第3条・第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第939条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。