相続時精算課税の110万円:基礎控除以下なら申告不要になった改正
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相続時精算課税の110万円は、2024年1月1日以後の贈与から設けられた基礎控除です。精算課税で受けた贈与が1年間で110万円以下なら、その年は贈与税の申告が要らず、贈与者が亡くなったときも相続税の計算に足されません。ただし、精算課税を使い始める最初の年は、110万円以下でも「相続時精算課税選択届出書」を税務署に出す必要があります。暦年課税の110万円とは別の枠で、相続のときの扱いも違います。
Q1. 110万円以下の年は、申告しなくてよいのですか?
はい。国税庁の案内では、精算課税の贈与税は、1年間の贈与額から基礎控除110万円を引き、残りから特別控除(累計2,500万円まで)を引いて計算します。110万円以下なら残りがないので、贈与税の申告は要りません。2023年までは精算課税に基礎控除がなく、1円でも贈与を受けた年は申告が必要でした。
ただし、精算課税を選ぶ年だけは届出書が要ります。届出書は、最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、受贈者の戸籍の謄本などを添えて出します。110万円を超えて申告が要る年は、届出書を申告書に添えます。年ごとの扱いを表にすると次のとおりです。
| 精算課税で受けた1年間の贈与額 | 贈与税の申告 | 届出書 | 特別控除2,500万円 |
|---|---|---|---|
| 110万円以下(最初の年) | 不要 | 要る(翌年3月15日まで) | 減らない |
| 110万円以下(2年目以後) | 不要 | 不要(最初の年に提出済み) | 減らない |
| 110万円を超える | 要る(翌年2月1日〜3月15日) | 最初の年なら申告書に添える | 超えた分だけ減る。期限内申告が条件 |
書類のそろえ方と出し方は相続時精算課税の手続き:選択届出書の出し方と必要書類で手順にしています。
Q2. 相続のとき、足されないのはどの部分ですか?
2024年1月1日以後の精算課税の贈与は、贈与者が亡くなったとき、年ごとに贈与時の価額の合計から110万円を引いた残りだけを相続税の計算に足します。110万円以下の年は、足す額がゼロです。2023年12月31日以前に精算課税で受けた贈与は、この110万円がないので全額を足します。
ここが暦年課税の110万円との大きな違いです。暦年課税では、加算対象期間内の贈与は110万円以下でも相続税の計算に足します。毎年100万円ずつ贈与した場合で比べます(筆者の計算。相続開始が2031年以後で、受贈者が相続で財産を取得する前提)。
| 方式 | 相続のときに足す額 | 計算 |
|---|---|---|
| 精算課税で毎年100万円 | 0円 | 毎年110万円以下なので、どの年も足す額なし |
| 暦年課税で毎年100万円 | 600万円 | 3年以内の300万円+(3年超7年以内の400万円−100万円) |
検算:100万円×3年=300万円、100万円×4年=400万円、400万円−100万円=300万円、300万円+300万円=600万円。
暦年課税の加算期間は相続開始日によって3年から7年へ段階的に延びるので、早見表は生前贈与の加算期間:3年から7年へで確かめてください。
Q3. 父と母の両方から精算課税で受けたら、110万円はどう分けますか?
精算課税の110万円は、受贈者1人につき年110万円です。精算課税の贈与者が2人以上いる年は、110万円をそれぞれの贈与額の割合で分けます。国税庁の例は、父600万円・母400万円で、110万円を66万円と44万円に分けています。
分け方で見落としやすいのが、1人ずつは110万円以下でも合計が超える場合です。父と母から精算課税で100万円ずつ受けた年は、次のようになります(筆者の計算)。
| 贈与者 | 贈与額 | 110万円の分け方 | 残り |
|---|---|---|---|
| 父 | 100万円 | 110万円×100/200=55万円 | 45万円 |
| 母 | 100万円 | 110万円×100/200=55万円 | 45万円 |
残りの45万円ずつは特別控除で消せるので税額は0円ですが、その年は贈与税の申告が要ります。特別控除は期限内に申告した場合だけ使えるからです。父と母の相続のときには、それぞれ45万円を相続税の計算に足します。
- 精算課税で受けた贈与を、贈与者を問わず1年分合計する
- 合計が110万円以下 → 申告不要(最初の年は届出書だけ出す)
- 合計が110万円超 → 申告が要る(1人ずつが110万円以下でも同じ)
- 暦年課税で受けた贈与は、別に暦年課税の110万円で判定する
暦年課税の贈与者がほかにいる場合の組み合わせ方は、相続時精算課税と暦年贈与の併用で計算例を示しています。
Q4. 2023年以前に精算課税を選んだ人も、110万円を使えますか?
使えます。110万円の基礎控除は贈与の時期で決まるので、2023年以前に届出書を出した人も、2024年1月1日以後に受けた贈与から110万円を差し引けます。選択はその後も続いているので、届出書を出し直す必要はありません。
一方で、2023年以前に受けた分は、相続のときに全額が足されたままです。古い年の贈与額を、贈与税の申告書の控えで年ごとに分けて残しておくと、相続税の申告のときに足す額を整理しやすくなります。
Q5. 申告が要らない年でも、残しておくものはありますか?
申告が要らない年でも、贈与があったことを示す記録は残します。精算課税の贈与は、贈与者が亡くなったときに「何年にいくら受けたか」で足す額が決まるからです。
- 贈与契約書(日付・贈与者・受贈者・金額。贈与者ごとに作る)
- 振込の記録(通帳の該当ページの写しなど)
- 最初の年の届出書の控え(税務署の収受日が分かるもの)
- 年ごとの贈与額の一覧(精算課税の贈与者ごと)
制度の全体(特別控除2,500万円・税率20%・対象者)は相続時精算課税とはに戻って確かめられます。
よくある質問
Q. 精算課税の110万円は、子が2人いたら家族で1つですか?
受贈者ごとに年110万円です。父が長男と長女にそれぞれ精算課税で贈与した場合、長男と長女がそれぞれ110万円を差し引けます。1人が複数の贈与者から精算課税で受けたときだけ、その人の110万円を贈与額の割合で分けます。
Q. 2027年に贈与を受けて精算課税を選ぶ場合、届出書はいつまでに出しますか?
最初に贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。2027年中の贈与なら、2028年2月1日から3月15日までに出します。110万円を超えて申告が要るときは、届出書を申告書に添えて出します。
出典・参考にした公的な情報
- No.4103 相続時精算課税の選択(国税庁)
- No.4409 相続時精算課税を選択した場合の贈与税の計算(国税庁)
- No.4410 複数の人から贈与を受けた場合の贈与税の計算(国税庁)
- No.4304 相続時精算課税選択届出書の添付書類(国税庁)
- No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)(国税庁)
- No.4429 贈与税の申告と納税(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。