生前贈与と贈与税 / 比較

相続時精算課税と暦年贈与の併用:贈与者ごとに選ぶ方法と比較

この記事のもくじ
  1. 併用できるのは「贈与者ごと」:組み合わせの早見表
  2. 同じ年に父と母から受けたときの計算例
  3. 暦年贈与と相続時精算課税の比較表
  4. 贈与者ごとに方式を考える順番

相続時精算課税と暦年贈与は、贈与者ごとに選べるので併用できます。たとえば父からの贈与は精算課税、母からの贈与は暦年課税にして、同じ年に両方から受けることもできます。その場合、精算課税の110万円の基礎控除と、暦年課税の110万円の基礎控除は別々に差し引かれます。できないのは、同じ贈与者について年ごとに両方を行き来することです。一度精算課税を選んだ贈与者からの贈与は、その後ずっと精算課税になります。

併用できるのは「贈与者ごと」:組み合わせの早見表

精算課税は、贈与を受ける人(受贈者)が、贈与者ごとに届出書を出して選ぶ制度です。国税庁の案内では、選ぶとその贈与者から受ける財産すべてに適用され、暦年課税へは変えられません。この2つの決まりから、併用できる組み合わせは次のように整理できます。

組み合わせ(受贈者は同じ子) 併用できるか 理由
父は精算課税、母は暦年課税 できる 贈与者が違う
父も母も精算課税 できる 110万円は2人の贈与額の割合で分け、2,500万円は父・母それぞれに使う
父は精算課税、祖父は暦年課税 できる 贈与者が違う
父について、ある年は暦年課税・ある年は精算課税 できない 父について選んだ時点で、以後はすべて精算課税
父から2024年に暦年課税で受け、2026年から精算課税を選ぶ できる 選ぶ前の年の暦年贈与はそのまま。選んだ年以後が精算課税

精算課税を選べるのは、贈与の年の1月1日に60歳以上の父母・祖父母などから、同じ日に18歳以上の子・孫が受ける場合です。祖父母と孫の組み合わせでも選べます。制度そのものの要件は相続時精算課税とはで確かめてください。

同じ年に父と母から受けたときの計算例

国税庁が示している例を使って、父からは精算課税、母からは暦年課税で受けた場合の流れを追います(2024年1月1日以後の贈与、子は18歳以上)。

年 父から(精算課税) 母から(暦年課税)
1年目 1,000万円−110万円=890万円を特別控除で消し、税額0円。特別控除の残り1,610万円 400万円−110万円=290万円。290万円×15%−10万円=33.5万円
2年目 890万円を特別控除で消し、税額0円。残り720万円 (贈与なし)
3年目 890万円−720万円=170万円。170万円×20%=34万円 (贈与なし)

母からの贈与には暦年課税の110万円、父からの贈与には精算課税の110万円が、それぞれ別に差し引かれています。母からの400万円は、親から18歳以上の子への贈与なので特例税率(15%・控除10万円の区分)で計算しています。

父が亡くなったときは、精算課税で受けた分のうち、年ごとに110万円を引いた残り、890万円×3年=2,670万円を相続税の計算に足し、3年目に納めた34万円は相続税から差し引きます。母からの暦年課税の贈与は、母の相続のときに加算対象期間に入っていれば足されます(後の表)。

検算:1,000−110=890、2,500−890=1,610、1,610−890=720、890−720=170、170×0.2=34。400−110=290、290×0.15−10=33.5(単位は万円)。

図解:同じ年に2人から受けたときの110万円
  • 暦年課税の110万円:暦年課税で受けた贈与の合計から、受贈者1人につき年1回差し引く(贈与者が何人でも1回)
  • 精算課税の110万円:精算課税で受けた贈与から、受贈者1人につき年1回差し引く。精算課税の贈与者が2人以上なら、贈与額の割合で分ける
  • 2つの110万円は別枠。同じ年に両方使える

精算課税の贈与者が2人以上いる場合の分け方は、国税庁の例では父600万円・母400万円で、110万円を66万円と44万円に分けています。110万円以下の年の扱いと分け方の細かい点は、相続時精算課税の110万円で扱います。

暦年贈与と相続時精算課税の比較表

併用を考えるときは、2つの制度の違いを同じ表で見ると、どちらの贈与者にどちらを当てるかを考えやすくなります。

比べる点 暦年課税(暦年贈与) 相続時精算課税
贈与者・受贈者 制限なし 60歳以上の父母・祖父母などから、18歳以上の子・孫へ
毎年の控除 受贈者ごとに年110万円 受贈者ごとに年110万円+贈与者ごとに累計2,500万円の特別控除
税率 10〜55%の累進(親・祖父母から18歳以上の子・孫へは特例税率) 特別控除を超えた部分に一律20%
相続のときに足す贈与 加算対象期間内の贈与(110万円以下の贈与も含む) 選んだ後の贈与すべて(2024年以後は年110万円を引いた残り)
足す期間 相続開始が2026年12月31日までなら3年以内。2027年から段階的に延び、2031年以後の相続は7年以内 年数の区切りなし
申告 110万円を超えた年 110万円を超えた年。最初の年は届出書も出す
小規模宅地等の特例 贈与した土地は対象外(相続財産ではないため) 精算課税の贈与を受けた宅地等は対象外
選び直し 精算課税に切り替えられる 暦年課税に戻れない

暦年課税の加算は、相続や遺贈で財産を取得した人が対象です。相続開始日ごとの加算期間の早見表は生前贈与の加算期間:3年から7年へ、暦年課税の進め方は暦年贈与とは?毎年110万円の贈与のやり方にまとめています。

贈与者ごとに方式を考える順番

どちらを選ぶかは家ごとの財産で決まるので、ここでは判断の材料を集める順番を示します。

  1. 贈与者を書き出す:父・母・祖父母それぞれの年齢(1月1日に60歳以上か)と、渡したい財産の種類・時期を書く。
  2. 相続税がかかる見込みかを見る:贈与者ごとに、亡くなったときの財産が相続税の基礎控除を超えそうかを見積もる。超えない見込みなら、相続のときに足されることの重みは小さくなる。
  3. 渡す財産の性質を見る:自宅の土地なら、精算課税で渡すと小規模宅地等の特例が使えない点を確かめる(詳しくは相続時精算課税のデメリット)。値上がりが見込まれる財産かどうかも書いておく。
  4. 年数を見る:贈与者が高齢で、暦年課税の贈与が加算期間に入りやすいかを考える。
  5. 贈与者ごとに方式を決め、記録を残す:贈与契約書と振込記録を贈与者ごとに分けて保管する。

記録の例:「2026年5月10日 父→長男 300万円 相続時精算課税(2027年3月に届出書と申告書を提出予定)」

父と母のどちらに精算課税を当てるかで、相続税と贈与税の合計がどう変わるかを、家の財産の額で試算して判定するのは税理士の仕事です。相続税の見込みと合わせて相談したい場合の探し方として、税理士の紹介サービスもあります。使う前に確かめる点は相続で税理士紹介サービスを使う前にを参考にしてください。

よくある質問

Q. 同じ父から、ある年は暦年課税・別の年は精算課税と使い分けられますか?

できません。父について精算課税を選ぶと撤回できず、その後の父からの贈与はすべて精算課税で計算します。使い分けができるのは、父と母のように贈与者が違う場合です。

Q. 兄と弟で、父からの贈与の方式を変えてもよいですか?

精算課税は、贈与を受ける人がそれぞれ贈与者ごとに届出書を出して選ぶ仕組みです。兄は父について精算課税を選び、弟は父からの贈与を暦年課税のままにする組み合わせも、制度の上では起こりえます。

Q. 精算課税を選んだ年に、暦年課税の110万円も使えますか?

暦年課税で受ける贈与者がほかにいれば使えます。国税庁の計算例では、父からの精算課税の贈与と母からの暦年課税の贈与に、それぞれ別の110万円が差し引かれています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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