相談先と専門家の選び方 / 比較

相続の弁護士費用:着手金・報酬金のしくみと経済的利益の考え方

この記事のもくじ
  1. 弁護士費用の6つの種類と、相続でかかる場面
  2. 経済的利益の考え方と、着手金・報酬金の計算
  3. 遺言書・内容証明など、定額で頼めるもの
  4. 見積もりで確かめる7つの点
  5. 費用を一度に払えないとき:法テラスの立替え

相続で弁護士に頼む費用は、相談料・着手金・報酬金・手数料・日当・実費の組み合わせで決まります。遺産分割の交渉や調停を頼むときの中心は着手金と報酬金で、多くは「経済的利益」(争いの対象になっている財産の額)に割合をかけて計算します。全国一律の料金表はなく、事務所ごとに報酬基準が違います。この記事では大阪弁護士会の法律相談センターが、センター経由の依頼について定めた参考基準を例にしますが、これはすべての弁護士・事務所に共通する基準ではありません。計算のしかたと見積もりの比べ方を示します。

弁護士費用の6つの種類と、相続でかかる場面

大阪弁護士会の総合法律相談センターは、弁護士が受け取る費用を次のように説明しています。相続の場面に当てはめた例を右の列に足しました。

費用の種類 中身(弁護士会の説明の要旨) 相続での例
法律相談料 相談の対価。電話での相談も含む(同センターは例として「30分5000円」を挙げている) 依頼前の相談
着手金 結果にかかわらず、手続きを始めるときに払う対価 遺産分割の交渉・調停を頼むとき
報酬金 結果の成功の程度に応じて払う対価 遺産分割が成立し、取得する財産が決まったとき
手数料 1回程度で終わる事務の対価 遺言書の作成、内容証明郵便の作成
日当 移動で拘束されることへの対価 遠方の家庭裁判所に出向くとき
実費 収入印紙代・交通費・通信費・コピー代など 調停の申立ての印紙、戸籍の取り寄せ

ほかに、継続的な相談の「顧問料」や、時間当たりの単価に作業時間をかける「タイムチャージ」という決め方もあります。相続の争いでどの決め方をするかは事務所によるので、最初の見積もりで「着手金・報酬金方式か、時間制か」を聞いておきます。

経済的利益の考え方と、着手金・報酬金の計算

着手金と報酬金は、争いの対象である「経済的利益」の額を元に計算する方式がよく使われます。日本弁護士連合会も、弁護士費用の目安を弁護士報酬規程やアンケートに基づいて紹介し、費用を払えないときの法律扶助や弁護士費用特約の案内を設けています。ここでは一つの例として、大阪弁護士会の法律相談センターが、センターを通じた依頼について定めている参考基準(上限)を挙げます。他の弁護士会や事務所の基準は異なります。

参考基準:経済的利益の額ごとの着手金・報酬金(大阪弁護士会 総合法律相談センター)
経済的利益の額 着手金 報酬金
300万円以下 8% 16%
300万円超〜3,000万円以下 5%+9万円 10%+18万円
3,000万円超〜3億円以下 3%+69万円 6%+138万円
3億円超 2%+369万円 4%+738万円
(いずれも「以下」の上限。事件の内容により30%の範囲で増減できるとされている)

遺産分割の事件では、経済的利益は「対象となる相続分の時価相当額」とされています。さらに、分割の対象になる財産の範囲や相続分に争いがない部分は、その時価相当額の3分の1を元に計算するとされています。つまり、争っている部分ほど費用の元になる額が大きくなるしくみです。

この基準で数字を入れてみます(筆者の計算。上限の額で、消費税の扱いは事務所の見積書で確かめる)。

  • 取得を争っている相続分の時価が2,000万円の場合:着手金は2,000万円×5%+9万円=109万円、報酬金は2,000万円×10%+18万円=218万円
  • 相続分3,000万円のうち、範囲にも割合にも争いがない場合:元になる額は3,000万円×1/3=1,000万円。着手金は1,000万円×5%+9万円=59万円

検算すると、2,000万円の5%は100万円、10%は200万円で、上の結果と合います。同じ相続分でも「争いがあるか」で元の額が3倍違うので、見積もりでは経済的利益をいくらと見たかを書面に書いてもらうと、事務所どうしを比べやすくなります。

遺言書・内容証明など、定額で頼めるもの

争いの交渉ではなく、1回で終わる仕事は手数料として定額で示されることが多くあります。同じ参考基準では次のとおりです。

頼むこと 参考基準(上限) 別にかかるもの
遺言書の作成 1件10万円(複雑・特殊な事情があれば協議で30万円まで) 公正証書にする場合は3万円以下を加算。公証人に払う手数料は別
内容証明郵便の作成(弁護士名の表示なし) 3万円以下 郵便料金
内容証明郵便の作成(弁護士名の表示あり) 5万円以下 郵便料金
日当 半日5万円以下、1日10万円以下 交通費

公正証書遺言の場合、弁護士の手数料とは別に、公証人手数料令で決まる手数料が公証役場にかかります。遺留分侵害額の請求のように「1年以内に意思表示をする」ための内容証明だけを頼む使い方もありますが、遺留分の費用の考え方と費用倒れの見極めは遺留分の弁護士費用:着手金と報酬金の考え方と費用倒れの見極めで詳しく扱います。

実費のうち、家庭裁判所の遺産分割調停の申立ては、被相続人1人につき収入印紙1,200円分と連絡用の郵便切手が要ります。切手の額は申立先の家庭裁判所ごとに違います。

見積もりで確かめる7つの点

費用のトラブルの多くは、「どこまでが着手金に含まれるか」の思い違いから起きます。面談では、次の7点を書面で確かめます。

  1. 経済的利益をいくらと見て、何%で計算したか
  2. 交渉から調停、調停から審判に進んだとき、着手金が追加でかかるか
  3. 報酬金は、何が決まった時点で、何を元に計算するか(取得した財産の時価か、争いのない部分の扱いはどうか)
  4. 日当がかかる条件(家庭裁判所までの距離、回数)
  5. 実費の預かり金の額と、精算のしかた
  6. 消費税を含んだ額か
  7. 途中で依頼をやめたときの精算のしかた

文例(見積もりを頼むとき):「遺産分割の交渉を、まとまらなければ調停までお願いすることを考えています。経済的利益をいくらと見るか、交渉・調停それぞれの着手金と、報酬金の計算のしかたを、書面の見積もりでいただけますか。」

複数の事務所の見積もりを並べるときは、合計額だけでなく、この7点が同じ条件になっているかを見ます。面談でほかに確かめたいこと(方針・連絡の頻度・担当者)は相続の弁護士選びで失敗しないために:面談で確かめる8つの点にまとめています。

費用を一度に払えないとき:法テラスの立替え

収入や資産が一定の基準以下の人は、日本司法支援センター(法テラス)の立替制度を使える場合があります。法テラスの説明(2026年10月23日に確認)では、使える条件は次の3つです。

  1. 収入(賞与を含む手取りの平均月収)や資産(現金・預貯金・不動産・有価証券)が一定の基準以下であること
  2. 勝訴の見込みがないとはいえないこと
  3. 民事法律扶助の趣旨に適すること

収入の基準は世帯の人数と地域で変わります。たとえば東京都特別区・大阪市などで3人家族なら収入299,200円・資産270万円、そのほかの地域の3人家族なら収入272,000円・資産270万円が基準で、家賃や住宅ローンを払っている場合は一定額を収入から差し引けます。審査は申込みをした法テラスの地方事務所で行われ、決定まで通常2週間ほどかかります。立て替えてもらった費用は無料になるのではなく、分割で返します(利息はつきません)。

押さえておく点が2つあります。ひとつは、実費だけの立替えは原則できないことで、代理人の着手金などと合わせた利用になります。もうひとつは、すでに立替制度で弁護士に依頼している事件については、法テラスの無料法律相談は使えないことです(別の弁護士の意見を聞きたいときは有料相談などを考えます)。基準の数字は改定されることがあるので、申し込む前に法テラスのサポートダイヤルで自分の条件を確かめます。番号は相続手続きの無料相談窓口一覧に載せています。総合法律支援法30条は、こうした代理人の報酬と実費の立替えを法テラスの業務として定めています。

まず費用をかけずに見通しを聞きたい人は、相続の弁護士無料相談の使い方:法テラスと弁護士会の窓口の違いから始めてください。そもそも弁護士に頼む段階かどうかを迷っている人は、相続で弁護士に頼むべきときの見分け方で先に確かめておくと、費用をかける意味を判断しやすくなります。

よくある質問

Q. 相続の弁護士費用に全国共通の相場はありますか?

全国一律の料金表はありません。大阪弁護士会の法律相談センターは、2004年4月に弁護士報酬が自由化されて標準価格がなくなったと説明しており、いまは事務所ごとに報酬基準を定めています。複数の事務所で見積もりを取り、計算の元になる経済的利益の額と割合を比べるのが確かめ方です。

Q. 着手金は、遺産分割がうまくいかなかったら返ってきますか?

着手金は、結果にかかわらず手続きを始めるときに払う費用と説明されており、結果が望みどおりでなかったことを理由に返ってくるものではありません。途中で依頼をやめた場合の精算のしかたは事務所ごとに違うので、委任契約書の解約・精算の条項で確かめます。

Q. 弁護士費用を遺産の中から払うことはできますか?

遺産は分割が終わるまで相続人全員のものなので、そこから払うかどうかは相続人どうしの取り決め次第です。自分が頼んだ弁護士への支払いは、委任契約の上では依頼した本人が負うものと考えておき、遺産から出したいときはその方法を依頼前に弁護士に相談します。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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