相続の弁護士選びで失敗しないために:面談で確かめる8つの点
相続の弁護士選びでよくある失敗は、「費用がどこまで含まれるか」「どんな方針で進めるか」「どのくらい連絡をくれるか」の思い違いから起きます。どれも、依頼前の面談で聞いて書面に残せば防げることです。この記事では、面談で確かめる8つの点をチェック表にし、聞き方の文例と、依頼した弁護士を変えたくなったときの進め方を示します。
相続の弁護士選びで起きやすい失敗の型
相続の依頼で不満が出やすいのは、次の5つの型です。
| 失敗の型 | 起きる理由 | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 調停に進んだら着手金が追加になった | 「交渉」と「調停」で依頼の範囲が別になっていた | 委任の範囲と、段階ごとの費用を書面で確かめる |
| 報酬金が思ったより高い | 経済的利益の見方(争いのない部分を含むか)を聞いていなかった | 報酬金の計算の元になる額を見積書に書いてもらう |
| 連絡が来ず、進み具合が分からない | 連絡の頻度と方法を決めていなかった | 報告の間隔と手段を最初に決める |
| 「早く終わらせたい」のに長引いた(逆もある) | こちらの希望と弁護士の方針がずれていた | 優先順位(早さ・取り分・家族関係)を最初に伝える |
| 担当が途中で別の人になった | 事務所の中で誰が実際に動くかを聞いていなかった | 担当弁護士の名前を契約書で確かめる |
費用の決まり方そのもの(着手金・報酬金・経済的利益)は相続の弁護士費用:着手金・報酬金のしくみと経済的利益の考え方で詳しく説明しています。ここでは面談で何を聞くかに絞ります。弁護士会の窓口の番号は相続手続きの無料相談窓口一覧にあります。
面談で確かめる8つの点
| # | 確かめる点 | 聞き方の例 | 答えの見方 |
|---|---|---|---|
| 1 | 費用の見積もり | 「見積もりを書面でいただけますか」 | 着手金・報酬金・実費・日当が分かれて書かれているか |
| 2 | 依頼の範囲 | 「交渉がまとまらず調停になったら、費用はどう変わりますか」 | 段階ごとの追加の有無がはっきりしているか |
| 3 | 委任契約書 | 「契約書を持ち帰って読んでから署名してもいいですか」 | 持ち帰りを嫌がらないか |
| 4 | 方針と見通し | 「どんな進め方が考えられ、それぞれ何が起こりえますか」 | 良い場合と悪い場合の両方を理由とともに説明するか |
| 5 | 連絡の頻度と方法 | 「進み具合はどのくらいの間隔で、何で知らせてもらえますか」 | 間隔と手段(メール・電話・面談)が具体的か |
| 6 | 担当者 | 「実際に担当するのはどなたですか」 | 担当弁護士の名前が分かるか |
| 7 | 利害の衝突 | 「相手方の相続人から相談を受けたことはありませんか」 | 確認したうえで答えるか |
| 8 | 途中でやめるときの精算 | 「途中で解約したら、費用はどう精算されますか」 | 契約書の条項を示して説明するか |
8つのうち、とくに大事なのは1・2・4です。
1と2(費用と範囲)。 相続の争いは、話し合い→家庭裁判所の調停→審判と段階を踏むことがあります。着手金が「交渉まで」なのか「調停まで」なのかで、総額は大きく変わります。弁護士会の法律相談センターを通じて依頼する場合、会によってはセンターが報酬の妥当性を審査するしくみもあります(大阪弁護士会の例)。
4(方針と見通し)。 相続の結論は、相手の出方や家庭裁判所の判断で変わります。良い見通しだけを強く言い切る説明より、「こうなる可能性も、こうなる可能性もある。その理由はこれ」と幅をもって説明するほうが、後で食い違いが起きにくくなります。
7(利害の衝突)。 弁護士法25条は、相手方から相談を受けて賛助した事件などについて、弁護士が職務を行ってはならないと定めています。小さな町で相続人どうしが同じ事務所に相談に行くこともあるので、面談の最初に相手の名前を伝え、確認してもらいます。
聞き方の文例と、委任契約書の読みどころ
面談で聞きにくいことほど、先に紙に書いておくと聞けます。
文例(面談の最後に聞く):「依頼するか家で考えたいので、見積もりと委任契約書の案をいただけますか。とくに、調停に進んだときの追加費用と、途中で解約したときの精算のところを確かめたいです。」
委任契約書を受け取ったら、署名の前に次の箇所に印をつけて読みます。
- 事件の表示と委任の範囲:「遺産分割協議(交渉)」だけか、「遺産分割調停」まで含むか
- 着手金・報酬金の額または計算式:経済的利益の額と割合が書かれているか
- 実費の預かり金と精算:余った分が返されるか
- 解約(中途終了)の条項:途中でやめたとき、着手金の扱いがどうなるか
- 担当弁護士:名前が書かれているか
弁護士は日本弁護士連合会の名簿に登録されている人だけがなれます(弁護士法8条)。名刺や契約書で所属の弁護士会と氏名を確かめておくと、後で何かあったときの問い合わせ先にもなります。
依頼した弁護士を変えたいときの手順
依頼した後で「この弁護士とは合わない」と感じたら、次の順で考えます。
- 不満を具体的に書き出す。 連絡の遅さか、方針か、費用か。伝えれば直る不満なら、まず担当の弁護士に書面やメールで伝えます。
- 別の弁護士に意見を聞く。 依頼中でも、別の弁護士に意見(セカンドオピニオン)を聞くことはできます。
- 委任契約を終わらせる。 民法651条1項は、委任は各当事者がいつでも解除できると定めています。相手にとって不利な時期に解除したときは損害の賠償が問題になりうる(同条2項)ので、解除の連絡は記録が残る方法で行い、契約書の精算の条項に沿って、預かり金や着手金の扱いを確かめます。
- 新しい弁護士に引き継ぐ。 記録(相手とのやりとり、提出した書面)を受け取り、新しい弁護士に渡します。
弁護士を変える時期には、期限に気をつけます。遺留分侵害額の請求には、知った時から1年という期間があります(民法1048条)。切り替えの間に期限が過ぎないよう、新しい弁護士への相談を先に入れてから解約するのが安全です。
なお、弁護士法58条は、弁護士に懲戒の事由があると考える人は誰であれ、その弁護士の所属弁護士会に懲戒を求められると定めています。懲戒は弁護士への処分を求める手続きで、自分の相続の問題を前に進める手続きではない点は分けて考えます。
依頼先を決める前に
選ぶ前の段階で迷っている人は、まず費用をかけずに複数の弁護士の話を聞いて比べる方法があります。相続の弁護士無料相談の使い方:法テラスと弁護士会の窓口の違いで、窓口ごとの条件を確かめてください。相手の弁護士から先に手紙が届いて急いでいる人は、相続で他の相続人の弁護士から手紙が届いたら:最初にやる5つのことを先に読むと、依頼先を探す間にやっておくことが分かります。
相談先の窓口の番号は相続手続きの無料相談窓口一覧に、弁護士以外の専門家との頼み分けは相続手続きの専門家の違いにあります。
よくある質問
Q. 依頼中の弁護士の方針に不安があるとき、別の弁護士に意見を聞いてもいいですか?
かまいません。大阪弁護士会の相談センターも、依頼中の弁護士の助言以外の考え方を知りたい人の相談(セカンドオピニオン)を受けられると案内しています。依頼中の弁護士とのやりとりの記録を持っていくと、意見を出してもらいやすくなります。お住まいの弁護士会に同種の窓口があるかは、[相続手続きの無料相談窓口一覧](/souzoku-soudan-saki/)の電話予約で確かめます。
Q. 相続人の何人かで同じ弁護士に頼んでもいいですか?
頼む側の利害が一致していれば、まとめて依頼することはあります。ただ、相続人どうしは取り分で利害が分かれやすく、途中で対立が出ると同じ弁護士が全員の代理を続けられなくなることがあります。依頼の前に、利害が分かれたときの扱いを弁護士に聞いておきます。
Q. 相続に強い弁護士かどうかは、何で見分けますか?
広告の言葉より、面談での説明の具体さで見ます。手続きの段階(交渉・調停・審判)ごとの見通し、期限、費用の計算のしかたを、こちらの事情に合わせて説明できるかが目安です。弁護士会によっては、重点的に扱う分野で弁護士を検索できるしくみもあります。
出典・参考にした公的な情報
- 弁護士法 第8条・第25条・第58条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第651条・第1048条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士費用(報酬の種類・センターによる審査)(大阪弁護士会 総合法律相談センター)
- よくあるご質問(セカンドオピニオン・専門分野)(大阪弁護士会 総合法律相談センター)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。