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遺留分の弁護士費用:着手金と報酬金の考え方と費用倒れの見極め

この記事のもくじ
  1. 遺留分の弁護士費用は「請求額」と「回収額」で決まる
  2. 請求額ごとの試算:回収額の何割が費用になるか
  3. 交渉・調停・訴訟と進むと、着手金が追加になることがある
  4. 費用倒れを避ける見極め:依頼する前の5つの確認
  5. 費用を一度に用意できないとき:法テラスと相談窓口

遺留分の弁護士費用は、請求する金額を元にした着手金と、実際に支払いを受けた額に応じた報酬金が中心です。遺留分侵害額請求はお金の支払いを求める請求(民法1046条)なので、費用の元になる「経済的利益」をお金の額でとらえやすく、請求額が小さいほど費用の割合が重くなります。この記事では大阪弁護士会の参考基準(上限)で試算し、回収できる見込みと比べて費用倒れにならないかを見極める手順を示します。

遺留分の弁護士費用は「請求額」と「回収額」で決まる

2004年4月に弁護士報酬は自由化され、全国一律の料金表はありません。大阪弁護士会の総合法律相談センターは、センターを通じた依頼に使う報酬の参考基準を公開しており、着手金と報酬金は争いの対象の「経済的利益」の額に割合をかけて出すとしています。同じ基準は、経済的利益の例として、金銭債権は「債権総額(利息及び遅延損害金を含む)」を挙げています。

遺留分侵害額請求は、侵害額に当たる金銭の支払いを求める権利です。この考え方を当てはめると、着手金は請求する額、報酬金は実際に支払いを受けた額(または合意・判決で認められた額)を元にする形が考えられます。ただし、どの額を元にするかは事務所が決めることで、参考基準も事件の内容により30%の範囲で増減できるとしています。見積もりで「何をいくらと見て計算したか」を書面で確かめることが、事務所どうしを比べる出発点になります。

費用の種類 遺留分の事件での意味 払う時期の目安
法律相談料 依頼前の相談 相談のとき
着手金 交渉や調停を始める対価(結果にかかわらない) 依頼したとき
報酬金 支払いを受けられた成果に応じた対価 解決したとき
手数料 内容証明郵便の作成など1回で終わる事務 依頼したとき
実費 戸籍・証明書、調停の印紙、訴訟の手数料、郵便料金 その都度

請求額ごとの試算:回収額の何割が費用になるか

大阪弁護士会の参考基準(上限)では、経済的利益が300万円以下なら着手金8%・報酬金16%、300万円を超え3,000万円以下なら着手金5%+9万円・報酬金10%+18万円です。この式に数字を入れると次のようになります。

試算:遺留分の請求額・回収額ごとの着手金と報酬金(参考基準の上限で計算)
請求額 回収できた額 着手金 報酬金 合計 回収額に占める割合
300万円 300万円 24万円 48万円 72万円 24%
800万円 600万円 49万円 78万円 127万円 約21%
2,000万円 1,500万円 109万円 168万円 277万円 約18%
(筆者の計算。着手金は請求額、報酬金は回収額を元にした場合。消費税・実費・日当は含まない)

検算します。800万円×5%=40万円に9万円で49万円、600万円×10%=60万円に18万円で78万円です。2,000万円×5%=100万円に9万円で109万円、1,500万円×10%=150万円に18万円で168万円です。表のとおり、請求額が小さいほど回収額に占める費用の割合が大きくなります。

実費も段階によって増えます。調停の申立ては収入印紙1,200円と郵便切手ですが、訴訟になると請求額に応じた手数料がかかります。民事訴訟費用等に関する法律の別表第一で計算すると、請求額800万円なら4万2,000円、2,000万円なら8万円です(筆者の計算。100万円までが1万円、100万円超500万円までが2万円、500万円超の部分は50万円ごとに2,000円、1,000万円超の部分は100万円ごとに3,000円)。

交渉・調停・訴訟と進むと、着手金が追加になることがある

参考基準は、裁判外の事件は最初に依頼を受けた事務の範囲ごとに、裁判上の事件は審級ごとに着手金を定めるとしています。遺留分の請求は、話し合い→調停→訴訟と段階が進むことがあるので、次の段階に進んだときの着手金がいくらかを最初に聞いておかないと、合計が思ったより膨らみます。

依頼の範囲 着手金の考え方の例 確かめること
内容証明郵便の作成だけ 手数料として定額(参考基準は弁護士名なし3万円以下、弁護士名あり5万円以下) 1年の期限に間に合う日程で作れるか
交渉まで 交渉の着手金 調停に進んだときの追加の有無と額
調停まで 交渉から続けて頼むときの扱い 調停の期日に出る日当の条件
訴訟まで 訴訟の着手金 不動産の鑑定費用などの実費の見込み

意思表示の期限だけが迫っていて、請求するかはまだ決めきれないという人は、内容証明の作成だけを頼み、その後の進め方を落ち着いて決める使い方もあります。期限の数え方は遺留分の時効:1年と10年はいつから数える?で確かめてください。

費用倒れを避ける見極め:依頼する前の5つの確認

費用倒れとは、弁護士費用と実費が、最終的に受け取れる額に比べて大きすぎる状態です。依頼する前に、次の順で確かめます。

  1. 侵害額の見込みの幅。 自分の計算と相手の主張の差がどこにあるか(不動産の評価、生前贈与を計算に入れるか)を相談で聞き、低めの見込みで費用を計算する
  2. 相手に払う力があるか。 相手にお金がなくて払えない場合の損失は、遺留分権利者の負担になると民法1047条4項は定めています。遺産が不動産だけで、相手に預金がない場合は特に確かめる
  3. 段階ごとの合計。 調停・訴訟まで進んだ場合の着手金・報酬金・実費を足した額を、見積もりで出してもらう
  4. かかる期間。 調停や訴訟は期日を重ねるので、日当や交通費が回数分かかる
  5. 自分でできる部分。 戸籍や証明書を自分で集める、調停を自分で申し立てるなど、費用を抑える分担ができるか

文例(見積もりを頼むとき):「遺留分侵害額の請求を考えています。着手金は請求額と回収額のどちらを元に計算するか、調停や訴訟に進んだときの追加の着手金、相手が分割で払う場合の報酬金の払い時期を、書面で教えてください。」

試算した結果、費用の割合が大きすぎると感じたら、請求をやめる判断も1つの選択肢です。その場合の扱いは遺留分がいらない場合は?生前の遺留分放棄と相続開始後の扱いで整理しています。進める場合の段階は遺留分侵害額請求の流れ:話し合いから調停・訴訟までの段階と準備を見てください。

費用を一度に用意できないとき:法テラスと相談窓口

収入や資産が一定の基準以下の人は、日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助を使える場合があります。総合法律支援法30条は、費用を払う資力がない人などのために、代理人の報酬と実費を立て替える業務を定めています。立替えなので、後で返していく制度です。基準と返し方は、法テラスのサポートダイヤルで自分の収入と資産を伝えて確かめます。番号と受付時間は相続手続きの無料相談窓口一覧に載せています。

相続の争い全般で弁護士費用がどう決まるか、遺産分割の事件での経済的利益の考え方は相続の弁護士費用:着手金・報酬金のしくみと経済的利益の考え方にまとめています。費用をかけずにまず見通しを聞きたい人は、相続の弁護士無料相談の使い方:法テラスと弁護士会の窓口の違いから始めると、依頼するかどうかを決める材料がそろいます。

よくある質問

Q. 遺留分を請求された側が弁護士に頼む場合も、費用の決め方は同じですか?

着手金・報酬金の組み合わせで決める点は同じですが、請求された側で何を経済的利益と見るか(請求された額か、減らせた額かなど)は事務所によって違います。依頼する前に、着手金と報酬金それぞれの計算の元になる額を見積書に書いてもらいます。

Q. 弁護士費用を、相手に払わせることはできますか?

遺留分侵害額として請求できるのは、民法1046条の計算で出る侵害額に当たるお金です。自分が頼んだ弁護士の費用は、基本的に依頼した本人が負うものと考えて費用倒れを見積もっておきます。話し合いの中で費用の負担をどう扱えるかは、依頼する弁護士に確かめます。

Q. 相談だけで依頼しなかった場合、何にお金がかかりますか?

かかるのは法律相談料だけで、着手金は依頼して手続きを始めるときに払うものです。弁護士会の法律相談センターや法テラスの相談を使うと、相談料の負担を抑えて見通しを聞けることがあります。窓口の番号は相談先の一覧の記事にまとめています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続の弁護士費用:着手金・報酬金のしくみと経済的利益の考え方

遺留分侵害額請求の流れ:話し合いから調停・訴訟までの段階と準備

遺留分がいらない場合は?生前の遺留分放棄と相続開始後の扱い

相続の弁護士無料相談の使い方:法テラスと弁護士会の窓口の違い