相談先と専門家の選び方 / 制度解説

相続で行政書士に頼めること:遺産分割協議書と戸籍収集の範囲と限界

この記事のもくじ
  1. 相続で行政書士に頼めること:書類作成と前提の調査
  2. 行政書士にできないこと:登記・税・紛争は別の資格
  3. 行政書士に頼むのが合う場面・合わない場面
  4. 依頼の前に確かめること:資格・範囲・費用

相続で行政書士に頼めるのは、遺産分割協議書・相続関係説明図・財産目録などの書類の作成と、その前提になる相続人と相続財産の調査です。根拠は行政書士法1条の3で、行政書士は「権利義務又は事実証明に関する書類」を作ることを仕事にしています。一方、相続登記の申請、相続税の申告、もめている相続人との交渉は、それぞれ司法書士・税理士・弁護士の仕事で、行政書士にはできません。この記事では、頼めることとできないことを表で分け、行政書士に頼むのが合う場面を整理します。

相続で行政書士に頼めること:書類作成と前提の調査

行政書士法1条の3第1項は、行政書士が他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に出す書類その他「権利義務又は事実証明に関する書類」を作成することを仕事にすると定めています。続く1条の4は、書類の提出手続の代理、契約その他に関する書類を代理人として作成すること、書類作成についての相談などを加えています。

日本行政書士会連合会(日行連)は相続について、法的紛争段階にある事案や税務・登記申請業務に関するものを除き、遺産分割協議書・相続人関係説明図などの書類作成と、その前提の調査を引き受けると説明しています。相続の場面に当てはめると次のとおりです。

頼めること 中身 根拠・説明
相続人の調査 戸籍を集めて相続人を確定し、相続関係説明図にまとめる 事実証明に関する書類の作成とその前提の調査(1条の3、日行連の説明)
相続財産の調査と財産目録 預貯金・不動産などを洗い出して一覧にする 同上
遺産分割協議書の作成 相続人が話し合って決めた内容を書面にする 権利義務に関する書類(1条の3)
遺言書の作成の支援 遺言書の原案づくり、公正証書遺言の証人など 日行連が業務として案内
法定相続情報一覧図の申出の代理 法務局への申出を相続人に代わって行う 法務局が代理できる資格者に行政書士を挙げている
相続土地国庫帰属の申請書の作成 使わない土地を国に引き渡す申請書 法務省が作成を代行できる専門家に弁護士・司法書士とともに挙げている

協議書は「相続人が決めた内容を書面にする」ものです。誰が何を取得するかを決めるのは相続人で、行政書士がどちらが得かを判定したり、相続人の間を取り持ったりするわけではありません。

行政書士にできないこと:登記・税・紛争は別の資格

行政書士法1条の3第2項は、他の法律で制限されている業務は行えないと定めています。相続でぶつかるのは次の3つです。

早見表:行政書士の範囲と、別の資格が担う手続き
手続き 行政書士 担う資格 根拠
遺産分割協議書・相続関係説明図の作成 できる 行政書士・司法書士・弁護士 行政書士法1条の3
相続登記の申請・登記申請書の作成 できない 司法書士(と弁護士) 司法書士法3条・73条
相続税の申告・税額の計算の相談 できない 税理士(と通知した弁護士) 税理士法2条・52条
相続人どうしの交渉・調停の代理 できない 弁護士 弁護士法72条
相続放棄の申述書(家庭裁判所に出す書類)の作成 できない 司法書士(作成)・弁護士(代理) 司法書士法3条1項4号

とくに間違えやすいのが相続登記です。行政書士が協議書を作っても、法務局への登記申請は司法書士に頼むか、相続人が自分で申請します。不動産がある相続では、最初から登記まで受けられる司法書士に頼むか、行政書士と司法書士の両方に頼むかを選ぶことになります。どちらを先に選ぶかは相続は行政書士と司法書士どっちかで比べています。

家庭裁判所に出す書類も、作成を仕事として受けられるのは司法書士(3条1項4号)で、行政書士の範囲ではありません。相続放棄を考えているなら、行政書士ではなく司法書士か弁護士に相談します。

行政書士に頼むのが合う場面・合わない場面

場面 行政書士が合うか 理由
不動産がなく、預貯金・株・車などの手続きが中心 合う 登記が要らず、協議書と戸籍の整理が主な作業になる
相続人の確定に手間がかかる(本籍の移動が多い) 合う 調査と相続関係説明図の作成が仕事の中心
不動産があり、名義変更までまとめて頼みたい 司法書士のほうが一度で済む 登記の申請は行政書士にはできない
相続税がかかりそう 税理士にも相談が要る 税額の計算・申告は税理士の仕事
分け方でもめている 合わない 紛争段階の調整は弁護士の仕事

不動産がある場合でも、協議書だけを行政書士に頼み、登記は自分で申請する人もいます。自分で登記するときの手間は相続で司法書士に頼まないとどうなるかで確かめてください。協議書の依頼先を司法書士・弁護士とも比べたい人は遺産分割協議書の依頼先の違いを参考にしてください。

依頼の前に確かめること:資格・範囲・費用

  1. 行政書士本人が受けるか:行政書士法19条は、行政書士でない者が「いかなる名目によるかを問わず」報酬を得て書類作成を業とすることを制限しています(2026年1月1日施行の改正で明記)。依頼先がどの行政書士の名前で書類を作るのかを、見積もりの段階で確かめてください。日行連の行政書士会員検索では、氏名・登録番号・事務所の所在地・主な取扱い業務(「遺言・相続・遺産分割」を含む)で調べられます。司法書士に登記まで頼む場合の選び方は相続で司法書士に頼めることで比べられます。
  2. どこまでが範囲か:戸籍の収集を含むか、財産の調査をどこまでするか、登記や申告が必要になったときに誰に引き継ぐかを聞きます。
  3. 報酬額:行政書士法10条の2により、行政書士は事務所の見やすい場所に報酬の額を掲示することになっています。報酬の目安と見積もりの見方は相続の行政書士費用の目安の調べ方にまとめています。

質問の例:「相続人の調査から遺産分割協議書の作成までお願いした場合、戸籍の手数料などの実費と報酬を分けて見積もってください。不動産の登記が必要な場合は、どなたに引き継ぎますか」

相続人の調査から協議書、登記、相続税の申告までを、資格者のいる事務所にまとめて頼む相続手続きの代行サービスもあります。選ぶときは、見積書で「どの手続を、どの資格者が、いくらで行うか」を確かめ、登記は司法書士、申告は税理士が担う形になっているかを見てください。

よくある質問

Q. 行政書士に相続登記まで頼めますか?

頼めません。登記申請の代理や法務局に出す登記の書類の作成は、司法書士法により司法書士(と弁護士)の仕事です。行政書士法1条の3第2項も、他の法律で制限されている業務は行えないと定めています。協議書を行政書士に作ってもらい、登記は司法書士か自分で申請する、という分担になります。

Q. 相続人の1人が話し合いに応じないとき、行政書士に間に入ってもらえますか?

相続人どうしの争いの調整や交渉の代理は、弁護士法72条との関係で行政書士の仕事ではありません。日本行政書士会連合会も、相続の書類作成を「法的紛争段階にある事案」を除いて引き受けると説明しています。話し合いが止まっているなら、弁護士や家庭裁判所の調停を検討します。

Q. 2026年の行政書士法の改正で、何が変わりましたか?

2026年1月1日に施行された改正で、行政書士でない者の業務の制限(19条)に「いかなる名目によるかを問わず報酬を得て」という文言が入りました。報酬の名目が何であっても、この制限の対象から外れないという条文になっています。個別のサービスが当たるかどうかは、このサイトでは判断できません。あわせて、業務の条文の番号が1条の3・1条の4に整理されています。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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