遺産分割協議書の依頼先はどこ?司法書士・行政書士・弁護士の違い
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遺産分割協議書の依頼先は、不動産がある相続なら司法書士、相続人どうしで争いがあるなら弁護士、預金や株式だけで話がまとまっているなら行政書士か司法書士が基本です。協議書そのものは三つの資格のどれでも作れますが、その後に続く手続き(相続登記・交渉・相続税の申告)を誰が担えるかが法律で分かれているため、場面で選ぶと二度手間を避けられます。この記事では、3つの場面ごとの依頼先と、費用の調べ方、見積もりで確かめる点を示します。
遺産分割協議書の依頼先は3つの場面で決まる
協議書の作成は、行政書士法1条の3がいう「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成に当たり、行政書士も司法書士も引き受けます。弁護士は法律事務全般を扱えるので、協議書も作れます。違いが出るのは協議書の「前」と「後」です。協議書の書き方そのものは遺産分割協議書の書き方の全手順に通しで書いてあります。自分で作るか迷うなら、分かれ目になる家族の条件を遺産分割協議書を自分で作成する手順で確かめてから比べると、頼む範囲を絞れます。
| 場面 | 主な依頼先 | 理由(根拠) | 協議書の後に続く手続き |
|---|---|---|---|
| 不動産がある・相続登記が要る | 司法書士 | 登記の申請の代理と法務局に出す書類の作成は司法書士の業務(司法書士法3条・73条) | 相続登記まで同じ窓口で進められる |
| 相続人どうしで争いがある・話し合いが進まない | 弁護士 | 報酬を得て他人の交渉の代理や法律事件の取扱いを業とできるのは、原則として弁護士(弁護士法72条)。家庭裁判所の調停の代理人も原則は弁護士 | 合意できたら協議書、できなければ調停 |
| 預金・株式・自動車だけで、合意ができている | 行政書士か司法書士 | どちらも協議書の作成を業務とする | 金融機関の手続き(代行の範囲は事務所ごと) |
| どの場面でも、相続税がかかりそう | 上に加えて税理士 | 申告書の作成と税額の計算の相談は税理士の業務(税理士法2条・52条) | 相続の開始を知った日の翌日から10か月以内の申告 |
行政書士と司法書士のどちらにするかを詳しく比べたい人は、相続は行政書士と司法書士どっちかで手続き全体の選び方を扱っています。ここでは協議書を頼む前提で、場面ごとに何を確かめるかに絞ります。
不動産がある場合:協議書と相続登記を司法書士にまとめる
実家の土地・建物や田畑がある相続では、協議書で誰が取得するかを決めた後、相続登記(不動産の名義を相続人に変える登記)が続きます。登記の申請書の作成と申請の代理は、司法書士法73条で司法書士でない者が仕事として行えない業務です(弁護士も扱えます)。協議書だけを別の資格者に頼むと、登記を頼む司法書士が協議書の不動産の表示を登記事項証明書と照らし直す作業が重なることがあります。
公表されている数字としては、日本司法書士会連合会が2024年3月に行った報酬アンケートがあります。土地1筆・建物1棟(固定資産評価額の合計1,000万円)、戸籍謄本等5通の請求、遺産分割協議書と相続関係説明図の作成、法定相続人3名のうち1名が単独で相続、という設例で、相続登記の報酬は全回答の平均74,888円(税込)でした。設例の条件が一つ違えば金額も変わるので、相場ではなく「この条件ならこのくらいの回答が多かった」という参考として読みます。
報酬とは別に実費がかかります。相続登記の登録免許税は不動産の価額の1,000分の4で、筆者の計算では評価額1,000万円なら4万円です。司法書士は依頼を受ける前に報酬の基準を示すことになっているので(司法書士法施行規則22条)、見積もりでは報酬と実費を分けて書いてもらいます。費用の内訳の見方は相続の司法書士費用にまとめています。
争いがある場合:協議書の前に弁護士へ
相続人の一人が分け方に反対している、連絡を無視される、遺言や生前贈与の扱いで意見が割れている、という段階では、協議書を作る前に話し合いをまとめる必要があります。相続人に代わって他の相続人と交渉する代理を仕事として頼めるのは弁護士で、家庭裁判所の調停で代理人になるのも原則として弁護士です(司法書士は家庭裁判所に出す書類の作成までです)。日本行政書士会連合会も、行政書士が相続で引き受けるのは法的紛争段階にある事案を除いた書類作成だと案内しています。
この場面で行政書士や司法書士に協議書を頼んでも、合意の中身を整える役にはなれず、署名押印が集まらないまま止まりがちです。逆に、弁護士の関わりで合意ができた後は、協議書の作成から登記までを弁護士に任せる形も、司法書士に引き継ぐ形もあります。
弁護士の報酬には公的な統計がなく、事務所ごとに報酬基準を決めています。相談の段階で、着手金・報酬金の決め方と、協議書の作成だけを頼んだ場合の費用を分けて聞きます。費用の支払いが難しい人には、法テラス(日本司法支援センター)が、資力が一定以下の人の民事裁判等の手続のために、弁護士・司法書士の報酬と実費を立て替える制度があります(総合法律支援法30条)。立替えなので原則は返すお金で、協議書の作成だけの依頼が対象になるかは法テラスの窓口で確かめます。窓口の番号は相続手続きの無料相談窓口一覧でまとめています。
預金だけの場合:行政書士・司法書士・信託銀行を比べる
不動産がなく、預貯金・株式・自動車が中心で、分け方の合意もできているなら、選択肢が広がります。
- 行政書士:協議書の作成と、その前提の戸籍の収集・相続人の調査を引き受けます。日本行政書士会連合会の令和7年度報酬額統計調査(2026年1月実施、税込・実費を除く)では、遺産分割協議書の作成の平均は69,752円、最も多い回答は55,000円で、最小1,000円から最大100万円まで幅があります。行政書士は報酬額を事務所に掲示する義務があります(行政書士法10条の2)。
- 司法書士:協議書の作成に加え、事務所によっては預金の解約・払戻しの手続きまで引き受けます。日司連の同じアンケートの遺産承継の設例(3つの金融機関に各1,000万円、相続人3人が各1,000万円を相続、協議書の作成と口座の解約・振込の代理)の平均は272,780円でした。
- 信託銀行などの遺産整理業務:手続き全体を任せる形で、手数料は各社の手数料表で決まります。仕組みと費用の決まり方は遺産整理業務の費用の決まり方で比べています。
協議書の作成だけを頼むのか、銀行の手続きまで任せるのかで、比べるべき金額が変わります。同じ範囲の作業で見積もりをそろえてから比べます。なお、協議書を作らずに済む相続もあり、その見分け方は次の遺産分割協議書が必要ない場合で扱います。
依頼する前に確かめる5点と見積もり依頼の文例
どの資格者に頼むとしても、最初の問い合わせで次の5点を確かめると、後から「そこまでは含まれていない」となりにくくなります。
- 担当する資格者の名前:会社名だけでなく、協議書を誰が作り、登記を誰の名前で申請するか。
- 作業の範囲:戸籍の収集、財産の調査、協議書の作成、相続人への郵送、登記、金融機関の手続きのどこまでか。
- 報酬と実費の内訳:登録免許税・戸籍の手数料・郵送費が報酬に含まれるか。
- 追加料金がかかる条件:相続人や不動産の数が増えた場合、数次相続、海外に住む相続人がいる場合。
- 相続税の扱い:税理士と提携しているか、自分で探すのか。
見積もり依頼の文例:「母の相続で、実家の土地1筆・建物1棟と、2つの銀行の預金があります。相続人は兄と私の2人で、分け方は話し合いで決まっています。戸籍の収集から遺産分割協議書の作成、相続登記までをお願いする場合と、協議書の作成までの場合の、報酬と実費を分けて教えてください」
自分で協議書を作る方法も含めて手続きを比べたい人は、相続手続きの専門家の違いで各資格の頼み分けを一覧にしています。手続きを一つの窓口にまとめて任せたい場合は、代行サービスも選択肢になります(PR)。その場合も、どの手続きを、どの資格者が、いくらで担当するのかを見積書で確かめ、仕組みは相続手続きの代行サービスの頼める範囲で確かめてから申し込みます。
よくある質問
Q. 遺産分割協議書だけを司法書士に頼むことはできますか?
できます。協議書は権利義務に関する書類なので、司法書士も行政書士も作成を引き受けられます。ただし不動産がある相続では、協議書を作った後に相続登記が控えているので、登記まで同じ司法書士に頼むかどうかを先に決め、見積もりを両方の場合で出してもらうと比べやすくなります。
Q. 相続人の一人が依頼した専門家に、他の相続人も協議書を任せて大丈夫ですか?
書類を作る専門家は、全員の合意を文章にする役で、特定の相続人の味方として交渉する役ではありません。内容に不満がある、または話し合いがまとまっていないなら、署名押印の前に自分で内容を読み、必要なら別に弁護士へ相談します。合意ができていれば、一人が依頼した専門家の作った協議書で手続きを進めて差し支えありません。
Q. 協議書の作成費用は誰が払うのが一般的ですか?
費用を誰が負担するかを決めた法律の決まりはなく、相続人どうしの話し合いで決めます。遺産の中から払う、取得する割合に応じて分ける、不動産を取得する人が登記の費用を負担する、などの決め方があります。後で揉めないよう、負担の決め方も協議書に一行書いておくと安心です。
出典・参考にした公的な情報
- 司法書士法 第3条・第73条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法施行規則 第22条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士法 第1条の3・第10条の2・第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 総合法律支援法 第30条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士の報酬(報酬アンケート 2024年3月実施)(日本司法書士会連合会)
- 行政書士報酬額統計調査(令和7年度)(日本行政書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。