相続は行政書士と司法書士どっち?不動産の有無で決める選び方
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相続の手続きを行政書士と司法書士のどっちに頼むかは、相続する財産に不動産があり、相続登記(不動産の名義を相続人に変える登記)が要るかどうかでほぼ決まります。登記が要るなら司法書士です。法務局に出す登記申請書の作成と申請の代理は、司法書士法で司法書士(と弁護士)の仕事とされ、行政書士は引き受けられません。不動産がなく、戸籍の収集や遺産分割協議書の作成、預貯金や自動車の手続きが中心なら、行政書士も選択肢になります。この記事では、判断の流れと場面ごとの分かれ道、両方の資格を持つ事務所の確かめ方を示します。
結論:相続登記が要るかで分かれる
最初に見るのは不動産の有無です。次の順に当てはめると、依頼先の候補が絞れます。
- 相続人どうしでもめている、または話し合いがまとまりそうにない → 弁護士。遺産分割の交渉や調停の代理は、弁護士法72条により弁護士でない者が報酬を得て扱えません。行政書士も司法書士も、もめている話し合いをまとめる役にはなれません。
- 土地・建物(実家、マンション、田畑や山林を含む)を相続する → 司法書士。相続登記の申請の代理と、法務局に出す書類の作成は司法書士法3条1項1号・2号の業務で、73条により司法書士でない者は仕事として行えません。
- 不動産はなく、預貯金・株式・自動車などが中心 → 行政書士か司法書士。どちらも遺産分割協議書や相続関係説明図を作れるので、範囲と費用で選びます。
- 相続税の申告が要りそう → 1〜3に加えて税理士。申告書の作成や税額の計算の相談は税理士法52条で税理士(と国税局長に通知した弁護士)の仕事です。
| 確かめること | はい | いいえ |
|---|---|---|
| ① 相続人どうしでもめている | 弁護士へ(協議書づくりの前に) | ②へ |
| ② 不動産を相続する | 司法書士(協議書から登記まで) | ③へ |
| ③ 戸籍集め・協議書だけ頼みたい | 行政書士か司法書士で見積もりを比べる | 自分で進める |
| ④ 遺産総額が相続税の基礎控除を超えそう | ②③に加えて税理士 | 税理士は通常不要 |
行政書士に頼めることの全体は相続で行政書士に頼めることに、司法書士の業務の全体は相続で司法書士に頼めることにまとめています。ここでは「どっちにするか」の判断に必要な違いだけを扱います。
行政書士と司法書士の違い:書類で見る線引き
二つの資格の違いは、どの役所に出す書類を作れるかで整理すると分かりやすくなります。行政書士法1条の3は、官公署に出す書類と「権利義務又は事実証明に関する書類」の作成を行政書士の業務としていますが、同じ条の2項で「他の法律で制限されている業務」は除いています。登記申請書は司法書士法、家庭裁判所に出す書類も司法書士法3条1項4号で司法書士の業務とされているため、行政書士の範囲から外れます。
| 書類・手続き | 行政書士 | 司法書士 |
|---|---|---|
| 遺産分割協議書・相続関係説明図・財産目録 | 作成できる | 作成できる |
| 戸籍などの収集(作成の前提の調査) | 引き受ける | 引き受ける |
| 相続登記の申請書の作成と申請の代理 | できない | できる |
| 相続放棄の申述書など家庭裁判所に出す書類 | できない | 作成できる(代理は弁護士) |
| 自動車の名義変更など運輸支局に出す書類 | できる | 司法書士法3条の業務に入らない(引き受ける事務所かは個別に確かめる) |
| 相続人どうしの交渉・調停の代理 | できない | できない |
| 相続税の申告書の作成 | できない | できない |
日本行政書士会連合会も、行政書士が相続で引き受けるのは「法的紛争段階にある事案や、税務・登記申請業務に関するもの」を除いた書類作成と調査だと案内しています。協議書の作成までは両方の資格が重なり、その先の登記で分かれる、と覚えておけば足ります。
場面ごとの分かれ道:実家・預貯金・相続放棄・国庫帰属
よくある場面を当てはめるとこうなります。
- 実家の土地と建物を長男が相続する:司法書士に協議書の作成から登記まで頼むと、一つの窓口で済みます。行政書士に協議書だけを頼み、登記は自分で申請する形もあります。自分で申請するなら、法務局の登記手続案内(予約制)で書類の作り方を教わりながら進めます。登記の期限は相続登記の義務化の解説で確かめてください。
- 預貯金と自動車だけで、相続人は兄弟2人:行政書士・司法書士のどちらでも協議書を作れます。運輸支局に出す自動車の名義変更の書類は行政書士の業務の範囲なので、車の手続きまで任せたいなら、その事務所が受けているかを最初に聞きます。
- 借金が多そうで相続放棄を考えている:家庭裁判所に出す申述書の作成は司法書士の業務で、行政書士は扱えません。期限は相続の開始があったことを知った時から3か月以内なので、迷っている時間を短くします。流れは相続放棄の手続きにまとめています。
- 使わない土地を国に引き取ってもらいたい:相続土地国庫帰属制度の申請書の作成を仕事として代行できるのは、法務省の案内では弁護士・司法書士・行政書士です。この場面は行政書士も選べます。
- 協議書を作ったあとで実家を売る予定:売却の前に相続登記が要るので、司法書士に頼むほうが二度手間になりにくいです。
迷いやすいのは、行政書士に協議書を頼み、後から不動産が見つかって司法書士にも頼む流れです。戸籍の収集のような作業が二つの事務所にまたがるため、その分の報酬が二重にかかることがあります。不動産が少しでもありそうなら、固定資産税の納税通知書や名寄帳で先に確かめてから依頼先を決めます。
費用の調べ方:報酬と実費を分けて比べる
報酬は、行政書士・司法書士とも各事務所が自由に決めます。公表されている数字は条件つきの調査結果なので、目安として読み、最後は見積もりで比べます。
| 調査 | 業務(条件) | 金額 |
|---|---|---|
| 日本司法書士会連合会の報酬アンケート(2024年3月実施、税込) | 相続登記(協議書の作成を含む設例。条件は司法書士費用の記事) | 全回答の平均 74,888円 |
| 日本行政書士会連合会の報酬額統計(2026年1月実施、税込・実費を除く) | 遺産分割協議書の作成(詳しくは行政書士費用の記事) | 平均 69,752円、最も多い回答 55,000円 |
司法書士の数字は協議書の作成から登記までを含む設例で、行政書士の数字は協議書の作成だけです。同じ「7万円前後」でも中身が違うので、横に並べて安い高いを決めないでください。どちらの数字にも、登録免許税(相続登記は不動産の価額の1,000分の4)や戸籍の手数料などの実費は入っていません。
行政書士は事務所に報酬額を掲示する義務があり(行政書士法10条の2)、司法書士は、日本司法書士会連合会の案内によると、会則で報酬の額や算定方法を依頼者に明示することになっています。詳しい内訳の見方は相続の行政書士費用の調べ方と相続の司法書士費用の内訳で扱っています。
見積もりの依頼の例:「父の相続で、自宅の土地1筆・建物1棟と預金口座が2つあります。相続人は母と子2人です。戸籍の収集から遺産分割協議書の作成、相続登記の申請までをお願いした場合の報酬と実費を、項目ごとに分けて教えてください」
両方の資格を持つ事務所の確かめ方
行政書士と司法書士の両方に登録している人や、司法書士法人と行政書士法人を併設している事務所もあります。窓口が一つになる利点はありますが、資格ごとに登録先が違うので、名刺や広告の肩書きだけでなく登録を確かめます。
- 司法書士の登録:日本司法書士会連合会の「司法書士検索」で、氏名・事務所の所在地・事務所名を確かめます。登録番号は表示されず、掲載は推薦の意味ではありません。
- 行政書士の登録:日本行政書士会連合会の会員検索で、氏名・登録番号・事務所と、主な取扱い業務(「遺言・相続・遺産分割」など)を確かめます。
- 見積書の名義:登記の部分は司法書士(または司法書士法人)、協議書の部分は行政書士か司法書士の名前で出ているかを見ます。会社名だけで、どの資格者が担当するか書かれていない見積書は、説明を求めます。
- 相続税の扱い:両方の資格を持っていても、相続税の申告は税理士の仕事です。提携する税理士がいるのか、自分で探すのかを聞きます。
確かめるときの質問の例:「登記の申請は、どなたの名前で行いますか。協議書の作成は司法書士として受けますか、行政書士として受けますか」
複数の資格者がいる事務所にまとめて頼む方法は、相続手続きの代行サービスの頼める範囲と資格者の確かめ方でも整理しています。各資格の違いを一覧で見たい人は相続手続きの専門家の違いを、相続税がかかりそうな人は次の相続で税理士は必要かを読んでください。
よくある質問
Q. 行政書士に遺産分割協議書を作ってもらえば、相続登記まで済みますか?
済みません。協議書は行政書士に作ってもらえますが、法務局に出す登記申請書の作成と申請の代理は、司法書士法で司法書士(と弁護士)の仕事とされています。行政書士に協議書を頼んだ場合も、登記は自分で申請するか、別に司法書士へ頼むことになります。
Q. 預貯金だけの相続でも司法書士に頼んでよいですか?
頼めます。司法書士に協議書の作成や、扱っている事務所なら預貯金の解約までの手続きを任せることもできます。不動産がない相続では行政書士も選択肢に入るので、同じ範囲の作業で両方から見積もりを取り、報酬と実費を並べて比べると決めやすくなります。
Q. 行政書士と司法書士の両方の資格を持つ人に頼むと何がよいですか?
協議書の作成から相続登記まで、一人の資格者の名前で通して引き受けてもらえる点です。ただし資格ごとに登録先が違うので、司法書士として受ける業務と行政書士として受ける業務を見積書で分けて書いてもらうと、誰が何に責任を持つかがはっきりします。
出典・参考にした公的な情報
- 司法書士法 第3条・第73条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 行政書士法 第1条の3・第1条の4・第10条の2・第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 弁護士法 第72条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 税理士法 第2条・第52条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士の報酬(報酬アンケート 2024年3月実施)(日本司法書士会連合会)
- 司法書士検索(日本司法書士会連合会)
- 相続土地国庫帰属制度の申請書の作成代行(法務省)
- 報酬額統計調査の結果(令和7年度・2026年1月実施)(日本行政書士会連合会)
- 遺言・相続(行政書士が相続で行うこと)(日本行政書士会連合会)
- 行政書士会員検索(日本行政書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。