相続の手続きと期限 / 手順

株の相続手続き:証券口座の調べ方から移管・売却まで、放置の影響

この記事のもくじ
  1. 株の相続手続きの全体:5つの段階
  2. 証券口座の調べ方:郵便物とほふりの開示請求
  3. 残高の確認と、相続人の口座への移管
  4. 単元未満株・NISA・配当金の扱い
  5. 株を放置したときの影響
  6. 自分で進めるか、手続きの代行を頼むか

相続した株は、現金で払い戻すのではなく、相続人名義の証券口座へ振り替えて(移管して)引き継ぐのが基本の流れです。手順は「口座を探す→残高と評価額を確かめる→分け方を決める→相続人の口座へ移管→必要なら売却」の5段階で、口座が分からないときは証券保管振替機構(ほふり)の開示請求で証券会社を特定できます。放置すると、売りたいときに売れない、配当を受け取れない、相続税の申告に間に合わないといった影響が出ます。

株の相続手続きの全体:5つの段階

株の手続きは預金と似ていますが、「払戻し」ではなく「名義の移し替え」になる点が違います。全体を先に押さえると、どこで何を待つのかが見えます。

株の相続手続きの5段階
段階 やること 主な相手 次へ進む条件
1 口座を探す 郵便物・メール・通帳の確認、ほふりへの開示請求 証券保管振替機構 証券会社が分かる
2 残高と評価を確かめる 死亡日時点の残高証明書を依頼 証券会社 銘柄・株数・評価額が分かる
3 分け方を決める 遺言の確認、遺産分割協議 相続人全員 協議書か遺言書がある
4 移管する 相続人の口座を開き、振替の書類を出す 証券会社 相続人の口座に株が入る
5 売却・保有 売るか持ち続けるかを決める 相続人 売るなら取得費を確かめる

証券会社が名義人の死亡を知ると、その口座では売買ができなくなります。株価が動いていても、移管が終わるまで売れないことを前提に段取りを組みます。

証券口座の調べ方:郵便物とほふりの開示請求

まず手がかりを探します。株を持っていた人の手元には、次のような書類が届いていることが多いです。

  • 証券会社からの取引報告書・取引残高報告書
  • 発行会社からの配当金計算書・株主総会の招集通知・株主優待
  • 銀行の通帳に入っている配当金の振込(振込元の名前)
  • メールやスマホのアプリ(ネット証券)

手がかりがない、または漏れが心配なときは、証券保管振替機構(ほふり)へ「登録済加入者情報」の開示請求をします。分かるのは上場株式などの口座が開かれている証券会社・信託銀行等の名前で、銘柄・残高・取引履歴は載りません。非上場株式や国債の口座も対象外です。

項目 内容(2026年10月1日以降)
費用(相続人が請求) 1件7,700円(税込)。法務局の法定相続情報一覧図のコピーを出すと6,050円
受付方法 郵送のみ(窓口・電話での回答はなし)
届くまで 受付から2か月ほど(書類に不備があるとさらに延びる)
主な書類 開示請求書、請求者の本人確認書類のコピー、戸籍か法定相続情報一覧図のコピー、被相続人の住所が分かる書類
注意 該当がなくても費用はかかる。結果は代金引換で届く

ほふりの開示は2か月ほどかかるので、相続税の申告が必要になりそうな家庭は、亡くなってから早い時期に請求しておくと安心です。財産全体の探し方は相続財産の調べ方:預金・不動産・借金を漏れなく見つける照会先一覧にまとめています。

残高の確認と、相続人の口座への移管

証券会社が分かったら、相続の窓口に連絡し、手続きの書類と死亡日時点の残高証明書を依頼します。残高証明書は、遺産分割の話し合いと相続税の計算の両方で使います。

相続税での上場株式の評価額は、死亡日の終値と、死亡した月・前月・前々月の毎日の終値の月平均のうち、最も低い額を使います(国税庁 No.4632)。証券会社の残高証明書の金額がそのまま相続税の評価額になるとは限らないので、評価の詳しい計算は相続した株の評価額:相続税では4つの価格のうち最も低い額を使うで確かめてください。

分け方が決まったら移管です。

  1. 株を引き継ぐ相続人が、移管を受ける証券口座を用意する(どの証券会社に口座を開けばよいかは、相続の窓口の案内に従う)
  2. 証券会社所定の相続手続き依頼書に、引き継ぐ人と口座を書く
  3. 遺言書または遺産分割協議書、戸籍類(または法定相続情報一覧図の写し)、印鑑証明書を出す
  4. 相続人の口座に株が振り替えられたら、銘柄・株数を照合する

1つの銘柄を株数で分けることもできます。たとえば1,000株を兄弟2人で500株ずつ分ける、という書き方です。ただし売買の単位(単元)未満の端数が出ると扱いが面倒になるので、単元の倍数で分けるか、売却してお金で分けるかを話し合います。

単元未満株・NISA・配当金の扱い

単元未満株は、証券会社の口座ではなく、発行会社の株主名簿を管理する側の手続きになることがあります。単元未満株主は、発行会社に対して単元未満株式を買い取るよう請求できる(会社法192条)ので、少ない株数を持ち続ける理由がなければ、相続人へ名義を移したうえで買取請求をする方法があります。

NISA口座の株も相続の対象です。相続により口座から払い出され、原則として相続開始日の終値に相当する金額で相続人が取得したものとみなされます(国税庁タックスアンサー コード1464)。それ以外の株は、亡くなった人の取得費を引き継ぎます。

配当金は、亡くなった後に届くものも、相続人が受け取る手続きが要ります。振込先の口座が止まっていると受け取れないまま残ることがあるので、発行会社か証券会社に振込先の変更を伝えます。

株を放置したときの影響

株の手続きをしないまま置いておくと、次のような不都合が重なります。

放置すると 起きること
売りたいときに売れない 名義人の死亡後は口座で売買できず、値下がりしても手を打てない
配当や優待が受け取れない 振込先が止まり、未受領のまま残ることがある
相続税の申告に間に合わない 申告・納付の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内(国税庁 No.4205)
分け方の主張が限られる 相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、特別受益・寄与分の主張が原則としてできなくなる(民法904条の3)
次の相続で複雑になる 相続人がさらに亡くなると、その相続人まで協議に加わる

一方で、相続放棄を考えている人は、株を売ったり自分の口座へ移したりする前に立ち止まってください。相続財産を処分すると、単純承認をしたものとみなされることがあります(民法921条1号)。相続するか放棄するかを決める3か月(熟慮期間)の考え方は、相続放棄の手続き:期限・費用・申述から受理通知までの5段階で確かめられます。

自分で進めるか、手続きの代行を頼むか

株の相続は、ほふりへの開示請求から移管まで、相続人が自分で進められる手続きです。証券会社が1社で、遺産分割がまとまっていれば、書類の数もそれほど多くありません。証券会社が複数ある、ほかに預金や不動産もある、相続人が遠方に散らばっている、といった場合は、相続手続きの代行サービスを使う選択肢もあります。

頼むときは、見積書で「どの手続きを・誰(どの資格者)が・いくらで」担当するかを確かめます。不動産の相続登記は司法書士、相続税の申告は税理士の仕事で、資格のない会社が代わりに行うことはできません。資格者が所属している事務所か、提携先に回す形かも聞いておきましょう。

株を引き継いだ後に売る場合の取得費と税金は、相続した株の売却:取得価格が分からない時の扱いと税金のしくみで続けて説明します。

よくある質問

Q. どこの証券会社に口座があったか、家族の誰も知りません。

郵便物とメールを探したうえで、証券保管振替機構(ほふり)に開示請求をすると、上場株式などの口座がある証券会社・信託銀行等の一覧が分かります。銘柄や株数は載らないので、判明した会社にあらためて残高を問い合わせます。郵送のみの受付で、結果が届くまで2か月ほどかかります。

Q. 株を売って現金にしてから、兄弟で分けることはできますか?

できます。遺産分割協議書に「株式を売却し、売却代金から費用を引いた残りを各相続人が○分の1ずつ取得する」と書く分け方(換価分割)です。売るために相続人の誰かの口座へいったん移すのが一般的なので、誰の口座に移し、売却益の税金を誰がどう負担するかまで協議書に書いておきます。

Q. 亡くなった親のNISA口座の株はどうなりますか?

NISA口座の株も相続の対象で、相続により口座から払い出されて相続人が引き継ぎます。国税庁の案内では、この場合は原則として相続開始日の終値に相当する金額で取得したものとみなされます。相続人自身のNISAの枠にそのまま入るものではないので、移管先の口座の種類を証券会社に確かめます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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