相続税と申告 / Q&A

相続した株の評価額:相続税では4つの価格のうち最も低い額を使う

この記事のもくじ
  1. 相続税の株の評価額は「4つの価格のうち最も低い額」
  2. 4つの価格の調べ方と、評価額の計算例
  3. 休日に亡くなった・取引所が複数ある場合の扱い
  4. 申告で漏れやすい株まわりの財産
  5. 相続税の評価額と、売るときの取得費は別の数字

相続した上場株の相続税評価額は、亡くなった日の終値と、亡くなった月・前月・前々月それぞれの毎日の終値の月平均、あわせて4つの価格のうち最も低い額に株数を掛けて出します(国税庁 No.4632、財産評価基本通達169)。亡くなった日の終値だけで計算すると、評価額を高く見積もりすぎることがあります。この記事では、4つの価格の調べ方、休日に亡くなった場合の扱い、計算例、売るときの取得費との違いを順に説明します。

相続税の株の評価額は「4つの価格のうち最も低い額」

上場株の評価は、財産評価基本通達の169〜172に決まりがあります。比べる価格は次の4つです。

上場株の評価で比べる4つの価格
価格 中身 例:2026年8月20日に亡くなった場合
① 課税時期の終値 亡くなった日の、上場している取引所の終値 2026年8月20日の終値
② 当月の月平均 亡くなった月の毎日の終値の平均 2026年8月の月平均
③ 前月の月平均 前の月の毎日の終値の平均 2026年7月の月平均
④ 前々月の月平均 前々月の毎日の終値の平均 2026年6月の月平均
評価額 ①〜④のうち最も低い額 × 株数 —

ここでいう「課税時期」は、相続では亡くなった日です。通達の言い方では、①の終値が②〜④の月平均のうち最も低い額を上回るときは、その最も低い額で評価します。結果として、4つのうち一番低い額を使うことになります。

この方法が使えないのは、負担付贈与や個人間の売買など対価を伴う取引で取得した株です。この場合は①の終値だけで評価します(評価基本通達169(2))。相続や遺贈で引き継いだ株は、4つの価格を比べる方法で評価できます。

亡くなった人の財産に占める株の割合は小さくありません。国税庁の令和6年分の申告事績では、申告された相続財産245,415億円のうち有価証券が43,676億円で、筆者の計算で約17.8%を占めます。現金・預貯金等や土地に次ぐ大きさなので、評価の仕方で税額が変わりやすい財産です。

4つの価格の調べ方と、評価額の計算例

4つの価格は、自分で集めることもできますし、証券会社に頼むこともできます。

  1. 銘柄と株数を確かめる:証券会社に死亡日時点の残高証明書を頼む。口座の探し方と手続きの流れは株の相続手続き:証券口座の調べ方から移管・売却まで、放置の影響で説明しています。
  2. 4つの価格を集める:上場している取引所が公表する日々の終値と月平均を使う。自分で集めにくいときは、残高証明書を頼む際に、相続税の評価に使う月平均の資料も出せるかを証券会社の相続窓口に問い合わせる。
  3. 国税庁の「上場株式の評価明細書」に書く:銘柄ごとに4つの価格を並べ、最も低い額を選ぶ。
  4. 株数を掛けて合計する:銘柄ごとの評価額を合計し、申告書の有価証券の欄に入れる。

例として、A社株1,000株を持っていた人が2026年8月20日に亡くなったとします(数字は筆者が置いた仮の例です)。

価格 1株の価格
① 8月20日の終値 1,250円
② 8月の月平均 1,230円
③ 7月の月平均 1,180円
④ 6月の月平均 1,210円

最も低いのは③の1,180円なので、評価額は1,180円×1,000株=118万円です(筆者の計算)。①の終値で計算した125万円と比べると7万円低くなります。銘柄が多いと、この差が積み上がります。

休日に亡くなった・取引所が複数ある場合の扱い

亡くなった日に終値がない場合(土日・祝日、取引がなかった日)は、亡くなった日の前日以前と翌日以後の終値のうち、亡くなった日に最も近い日の終値を①として使います。前後に同じだけ離れた日が2つあるときは、その平均です(評価基本通達171(1))。たとえば日曜日に亡くなった場合、前の金曜日は2日前、翌日の月曜日は1日後なので、近い月曜日の終値が①です。水曜日が祝日で、前の火曜日と翌日の木曜日がどちらも1日の距離なら、その2つの終値の平均が①になります。

権利落ちや配当落ちの時期に亡くなった場合は、①や月平均に修正を加える決まりがあります(評価基本通達170・172)。株式分割や増資の基準日の前後に亡くなったときは、評価明細書の記載の仕方に沿って計算するか、税務署の相談窓口で確かめます。

2つ以上の取引所に上場している株は、納税する人が選んだ取引所の価格で評価します(評価基本通達169(1))。

申告で漏れやすい株まわりの財産

国税庁の「相続税の申告のためのチェックシート」は、有価証券について次の点を確かめるよう挙げています。株の評価額を出すときに、あわせて見ておきます。

  • 名義は家族でも、実際は亡くなった人に帰属する株や、無記名の有価証券がないか
  • 増資などで増えた株や、単元未満の株(端株)を数え漏らしていないか
  • 株式の割当てを受ける権利や、配当期待権がないか(配当金支払通知書で確かめる)
  • 日本国外の有価証券がないか

家族名義の口座の扱いは、預金と同じ考え方です。詳しくは預金の相続と相続税:名義預金と判断される例と記録の残し方で整理しています。非上場の株(取引相場のない株式)は、上場株とはまったく別の評価方法になり、会社の規模や株主の立場で計算が分かれます。家業の株がある場合は、評価明細書の作成を税理士に頼むことも含めて検討します。

相続税の評価額と、売るときの取得費は別の数字

株を相続した人がつまずきやすいのが、「相続税の評価額」と「売るときの取得費」の取り違えです。

使う場面 基準になる数字 決まり方
相続税の申告 相続税評価額 4つの価格のうち最も低い額×株数
株を売ったときの税金(譲渡所得) 取得費 亡くなった人が買ったときの価額を引き継ぐ

相続税の評価額は「亡くなった時点でいくらの財産だったか」を示す数字で、売却益の計算には使いません。親が昔安く買った株を相続して売ると、評価額よりずっと低い取得費で計算するため、売却益の税金が思ったより大きくなることがあります。取得費が分からないときの扱いは相続した株の売却:取得価格が分からない時の扱いと税金のしくみで説明しています。

相続税の申告と納税の期限は、相続の開始を知った日の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)。株の評価は死亡日前後の価格さえそろえば計算できるので、不動産の評価(相続する土地の評価額の調べ方:路線価図の読み方と計算の手順)より先に片づけておくと、申告全体の見通しが早く立ちます。相続税がかかるかどうかの一次判定は相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定する方法で確かめられます。

「相続 株 評価額」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。

よくある質問

Q. 証券会社の残高証明書の金額を、そのまま申告に使ってよいですか?

残高証明書は死亡日の時価(終値)で書かれていることが多く、相続税の評価額とは限りません。月平均の3つの額のほうが低ければ、低い額で評価できます。残高証明書は銘柄と株数を確かめる資料として使い、評価額は「上場株式の評価明細書」で計算し直します。

Q. 亡くなった後に株価が大きく下がりました。下がった後の株価で申告できますか?

できません。比べる4つの価格は、亡くなった月とその前2か月の月平均、そして死亡日の終値で、亡くなった後の値動きは評価に入りません。死亡後に値下がりしても評価額は変わらないので、納税資金をどう用意するかは早めに考えておきます。

Q. 株を売ったときの利益は、相続税の評価額を基準に計算しますか?

基準になりません。売却益の計算に使う取得費は、亡くなった人が買ったときの金額を引き継ぎます。相続税の評価額とは別の数字なので、親の取引記録を探しておきます。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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