相続放棄と借金の相続 / 手順

相続放棄の手続き:期限・費用・申述から受理通知までの5段階

この記事のもくじ
  1. 相続放棄の手続きの全体像:5段階と期限・費用
  2. 段階1:期限の起算日と、申述先の家庭裁判所を確かめる
  3. 段階2・3:書類を集め、申述書を書いて出す
  4. 段階4・5:照会に答え、受理通知書と受理証明書を受け取る
  5. 自分で進めるか、司法書士・弁護士に頼むかの分かれ目

相続放棄の手続きは、亡くなった人(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に、相続放棄の申述書を出すことです。期限は「自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内」、費用は申述する人1人につき収入印紙800円分と、裁判所ごとに額が違う連絡用の郵便切手、それに戸籍などの取得費です。流れは、期限と申述先の確認、書類集め、申述書の提出、照会への回答、受理通知書の受け取りの5段階で進みます。この記事はサイト内の相続放棄の手続きの正本として、各段階でやることを順番に示します。

相続放棄の手続きの全体像:5段階と期限・費用

まず全体を表で見ておきます。段階ごとの詳しい書き方や書類は、それぞれの記事に分けています。

段階 やること お金 目安となる注意
1 期限と申述先の確認 3か月の起算日を決め、管轄の家庭裁判所を一覧で引く なし 申述先は申述人の住所地ではない
2 書類集め 住民票の除票(または戸籍附票)、申述人の戸籍、立場に応じた戸籍 戸籍の手数料 間に合わない分は後から出せる
3 申述書の提出 裁判所の書式に記入し、印紙を貼って提出 印紙800円/人、郵便切手 貼った印紙に押印しない
4 照会への回答 書面の照会や呼出しがあれば応じる 返送の郵送代 照会がない場合もある
5 受理通知書の受け取り 受理通知書を保管し、必要なら受理証明書を申請 受理証明書は150円 債権者に受理を伝える
図解:相続放棄の手続きの5段階

1 期限(知った時から3か月)と申述先(被相続人の最後の住所地の家庭裁判所)を決める → 2 住民票の除票・戸籍を集める(足りない分は後から追加できる) → 3 申述書を書き、印紙800円分と切手を添えて出す → 4 家庭裁判所からの照会・呼出しに応じる → 5 受理通知書が届く(債権者などに示すなら受理証明書を申請)

家族の間で「私は放棄する」と言うことや、遺産分割協議で何も受け取らないことは、民法938条の相続放棄ではありません。借金を引き継がない効果があるのは、家庭裁判所に申述して受理された場合だけです(民法939条で、初めから相続人でなかったものとみなされます)。制度の全体と判断の材料は相続放棄とは?期限3か月の手続き・費用・してはいけないことの全体にまとめています。

段階1:期限の起算日と、申述先の家庭裁判所を確かめる

期限は死亡日からではなく、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月です(民法915条1項)。子や配偶者なら通常は死亡を知った日、先順位の人が放棄して相続人になった兄弟姉妹などは、そのことを知った日が起点になります。相続人が承認も放棄もしないまま亡くなった場合はその人の相続人が知った時から(916条)、相続人が未成年者なら法定代理人が知った時から(917条)数えます。起算日の考え方の細部は相続放棄の期間3か月はいつから?で扱っています。

3か月の間に財産を調べても決めきれないときは、家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられます。伸長の申立てそのものも3か月以内にする必要があります。やり方は相続放棄の期間の延長:伸長の申立てのやり方を見てください。

申述先は、相続が開始した地(被相続人の住所地:民法883条)を管轄する家庭裁判所です(家事事件手続法201条1項)。調べ方は次の4つの手順です。

  1. 被相続人の住民票の除票を取り、最後の住所を確かめる。
  2. 裁判所ウェブサイトの「申立書提出先一覧(家庭裁判所)」を開き、その住所の都道府県の一覧を開く。
  3. 市区町村名で、本庁か支部・出張所のどこが担当かを引く。
  4. その家庭裁判所のページで、郵便切手の額と個別の案内(追加の書類など)を確かめる。

この段階から受理までの間に、相続財産を売る・使うといった「処分」をすると、単純承認したとみなされることがあります(民法921条1号)。預金の引き出しや車の名義変更など、手を付ける前に相続放棄の前にしてはいけないことで線引きを確かめてください。

段階2・3:書類を集め、申述書を書いて出す

どの立場でも出すのは、申述書、被相続人の住民票の除票または戸籍附票、申述人の戸籍謄本の3つです。これに、配偶者や子なら被相続人の死亡の記載がある戸籍、父母や兄弟姉妹なら被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍などが加わります。立場ごとの範囲は相続放棄の必要書類:立場ごとの戸籍の範囲と取り寄せの順番に表で示しています。

書類集めで知っておくと楽になる裁判所の決まりは次のとおりです。

  • 同じ書類は1通で足りる(兄弟で同時に出すなら共通の戸籍は1通)。
  • 申述前に入手できない戸籍等は、申述後に追加で出せる。
  • 戸籍等の代わりに法定相続情報一覧図の写しを出せる場合がある(可否は申述先に確かめる)。
  • 死亡日から3か月を過ぎて申述する場合は、相続の開始を知った日が分かる書面(債権者からの通知書の写しなど)を求められることがある(大阪家庭裁判所などの案内)。

申述書は、裁判所の書式ページから成人用(未成年者は別の書式)をダウンロードして書きます。欄ごとの書き方と放棄の理由の選び方は相続放棄申述書の書き方で記入例に沿って説明しています。

提出のときの注意は3つです。第一に、収入印紙は申述人1人につき800円分で、申述書の印紙欄に貼ります。書式には「貼った印紙に押印しないでください」と書かれているので、印紙には押印しません。印紙を裁判所で販売していない庁もあるため、郵便局などで先に買っておきます(名古屋家庭裁判所の案内)。第二に、郵便切手の額と組み合わせは裁判所ごとに違い、保管金として電子納付することもできます。第三に、窓口に持参するなら、認印と本人確認書類を用意しておくと補正にその場で対応できます。

段階4・5:照会に答え、受理通知書と受理証明書を受け取る

申述後、家庭裁判所は判断のために書面で照会したり、直接事情を尋ねたりすることがあります。書式ページの注意書きは、照会や呼出しには応じるよう求めています。届いた照会書の読み方と答え方は相続放棄の照会書が届いたらにまとめました。

受理されると、家庭裁判所が申述書に受理の旨を記載し、その時点で効力が生じます(家事事件手続法201条7項)。申述人には受理通知書が届きます。受理通知書は受理証明書を窓口で申請するときの持ち物にもなるので、大切に保管します。債権者や金融機関から証明を求められたときは、受理証明書を申請します。

書類 誰が受け取る・申請する 費用 主な使い道
受理通知書 申述人に届く なし 受理された事実を自分で確かめる
受理証明書 申述人(利害関係人も申請できる庁がある) 収入印紙150円分 債権者への提示、不動産の登記、次順位の人の手続き

裁判所の家事事件Q&Aは、受理後に亡くなった人の財産を管理している場合は相続人に引き継ぐこと、債権者から請求を受けている場合は受理されたことを債権者に連絡するのがよいことを案内しています。申述が却下された場合、申述人は即時抗告ができ、期間は告知を受けた日から2週間です(家事事件手続法201条9項3号・86条)。

放棄が受理されると、次の順位の人が相続人になります。子が全員放棄すれば親、親もいなければ兄弟姉妹へと移るため、相続放棄したら次は誰が相続人?を読んで連絡の順番を決めておきます。一度受理された放棄は、3か月の期間内でも撤回できません(民法919条1項)。

自分で進めるか、司法書士・弁護士に頼むかの分かれ目

裁判所は申述書の書式と記入例を公開しており、書類がそろい、期限内で、財産に手を付けていなければ、自分で進めることもできる手続きです。次のどれかに当てはまる場合は、早めに専門家に相談したほうが安全です。

  • 死亡日から3か月をすでに過ぎている、または起算日の説明が難しい。
  • 預金の引き出しや遺品の売却など、財産に手を付けてしまった。
  • 未成年の子と親が一緒に相続人になっていて、子の分だけ放棄する。
  • 相続人が多く、戸籍が古い・外国籍の人がいるなど書類集めが重い。

頼み先は役割で選びます。司法書士は裁判所に出す書類の作成を仕事にでき(司法書士法3条1項4号)、弁護士は申述人の代理人として手続きに関わることができます(家事事件手続法22条)。費用の比べ方は相続放棄の費用:自分でやる実費と司法書士・弁護士に頼む場合、資格ごとの違いは相続手続きの専門家の違い、無料で話を聞ける窓口は相続手続きの無料相談窓口一覧で確かめてください。

よくある質問

Q. 相続放棄の申述は、自分の住んでいる地域の家庭裁判所に出せますか?

出せません。申述先は、亡くなった人(被相続人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。遠方の場合は、裁判所の案内に沿って郵送で出す方法を申述先に尋ねてください。管轄は裁判所の「申立書提出先一覧」で、市区町村名から引けます。

Q. 戸籍が3か月以内にそろわないときはどうすればいいですか?

裁判所の案内では、申述前に入手できない戸籍等は申述後に追加で出してよいとされています。期限が迫っているなら、そろった書類で先に申述し、残りは届きしだい送ります。調査そのものが間に合わない場合は、3か月以内に期間の伸長を申し立てる方法もあります。

Q. 家族に「放棄する」と伝えれば、相続放棄したことになりますか?

なりません。民法938条の相続放棄は、家庭裁判所に申述して受理されて初めて効力が生じます。遺産分割協議で何も受け取らないと決めても、借金を引き継がない効果はありません。借金を引き継ぎたくない場合は、家庭裁判所での手続きが要ります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

相続放棄の必要書類:立場ごとの戸籍の範囲と取り寄せの順番

相続放棄申述書の書き方:記入例に沿った各欄と放棄の理由の選び方

相続放棄の照会書が届いたら:回答の書き方と受理証明書の取り方

相続放棄とは?期限3か月・手続きの流れ・費用・してはいけないこと