相続した株の売却:取得価格が分からない時の扱いと税金のしくみ
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相続した株を売ったときの税金は、売却額−取得費(亡くなった人が買ったときの価格を引き継ぐ)−売却手数料で計算した売却益に、所得税・住民税がかかるしくみです。取得価格が分からないときは、取引報告書・証券会社の顧客勘定元帳・本人のメモ・名義書換の時期の順に調べ、それでも分からなければ売却額の5%を取得費にできます。相続税を払った人は、取得費加算の特例で税金が減る場合があります。
相続した株の取得価格は、亡くなった人から引き継ぐ
売却益の計算で一番大事なのが取得費です。相続で取得した株の取得費は、被相続人(亡くなった人)の取得費をそのまま引き継ぎます(国税庁タックスアンサー コード1464)。相続した日の株価や、相続税の評価額ではありません。
| 金額 | 何に使うか | 誰の時点の値段か |
|---|---|---|
| 取得費(取得価格) | 売却益の計算(所得税・住民税) | 亡くなった人が買ったとき |
| 相続税の評価額 | 相続税の計算 | 死亡日の終値と死亡月までの3か月の月平均のうち最も低い額 |
| 売却額 | 売却益の計算 | 相続人が売ったとき |
亡くなった人が同じ銘柄を何回かに分けて買っていた場合は、買った総額を総株数で割った1株あたりの金額(総平均法に準ずる方法)で取得費を出します(コード1466)。NISA口座に入っていた株は例外で、原則として相続開始日の終値に相当する金額で取得したものとみなされます(コード1464)。また、限定承認をした場合の株は引継ぎの扱いが違うので、証券会社と税務署に確かめます。
相続税の評価額の出し方は相続した株の評価額:相続税では4つの価格のうち最も低い額を使うで扱っています。ここでは売却の税金に絞って進めます。
取得価格が分からないときの調べ方と、5%の概算取得費
国税庁のパンフレット「上場株式等の取得価額の確認方法」は、次の順番で調べる方法を示しています。上から順に当たり、分かったところで止めます。
- 取引報告書を探す。 証券会社から買ったときに届く書類です。取引残高報告書・月次報告書・受渡計算書で分かることもあります。
- 証券会社の顧客勘定元帳を確かめる。 過去10年以内に買ったものなら、その証券会社で確認できます。10年より前の記録が残っている場合もあるので、相続の窓口に問い合わせます。
- 本人の手控えを見る。 日記帳や預金通帳の記録で取得価額が分かれば、その額を使えます。取得時期だけ分かる場合は、その時期を基に取得価額を算定してもかまいません。
- 名義書換日から時期を割り出し、当時の相場で計算する。 発行会社や証券代行会社の株主名簿・株式異動証明書などで名義書換の時期をつかみ、その時期の相場を基に取得費を計算します。株券電子化の後に手元に残った株券の裏面で確かめてもよいとされています。
どうしても分からない場合は、同じ銘柄ごとに、売却代金の5%を取得費にすることが認められています(コード1464)。300万円で売ったなら15万円が取得費です。
前提:亡くなった親が1株1,200円で1,000株購入。相続人が1株3,000円で全株を売却(売却額300万円)。売買手数料と端数処理は考えない。
| 項目 | 取得価格が分かる | 分からない(5%) |
|---|---|---|
| 取得費 | 120万円 | 15万円 |
| 売却益 | 180万円 | 285万円 |
| 所得税(15%) | 27万円 | 42万7,500円 |
| 復興特別所得税(所得税の2.1%) | 5,670円 | 8,977円 |
| 住民税(5%) | 9万円 | 14万2,500円 |
| 合計 | 36万5,670円 | 約57万8,977円 |
| 検算:180万円×20.315%=36万5,670円、285万円×20.315%=57万8,977.5円 |
この例では、取得価格が分かるかどうかで税金が約21万円変わります。売る前に1〜3を当たる価値があるのは、このためです。
相続した株の税金:税率・特定口座・損が出たとき
上場株式の売却益は、給与などとは分けて計算する申告分離課税で、税率は所得税15%と住民税5%です(コード1463)。これに所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わり、合わせて20.315%になります(筆者の計算:15%×1.021+5%)。2027年(令和9年)以後に生じる所得は、復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税1%が加わる内訳に変わります(コード1476)。所得税15%に対する合計は15%×1.011+15%×1%=15.315%で、負担は同じです(筆者の計算)。
売った人の手間は、移管先の口座の種類で変わります。
| 口座 | 申告の扱い |
|---|---|
| 特定口座(源泉徴収あり) | 証券会社が税金を差し引くので、申告不要を選べる |
| 特定口座(源泉徴収なし) | 証券会社の年間取引報告書を使って簡便に申告する |
| 一般口座 | 自分で取得費を集めて計算し、確定申告する |
特定口座で売る場合も、証券会社が把握している取得費が正しいかを確かめます。亡くなった人の取得費が証券会社に引き継がれていないと、計算が実際と合わないことがあります。
売って損が出た場合、上場株式の譲渡損失は、確定申告をすれば同じ年の上場株式等の配当(申告分離課税を選んだもの)と損益通算でき、残った損失は、一定の要件を満たせば翌年以後3年間繰り越せます。繰越しには、損失が出た年と、その後の各年に連続して確定申告をする必要があります(コード1465)。給与など他の所得とは相殺できません。
相続税を払った人は取得費加算の特例を確かめる
相続税が課された人が、相続した株を相続開始の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(おおむね相続開始から3年10か月)に売った場合、払った相続税の一部を取得費に足せます(国税庁 コード3267)。相続税がかからなかった人は使えません。
加算できる額は「その人の相続税額×売った株の価額(相続税評価額)÷(その人の相続税の課税価格+債務控除額)」が基本で(生前の贈与財産がある人は課税価格の内訳が変わるので、国税庁の計算明細書で確かめます)、売却益が上限です。たとえば、相続税額300万円、売った株の評価額280万円、課税価格と債務控除額の合計が7,000万円なら、300万円×280万円÷7,000万円=12万円を足せます。先の例で取得費120万円に足すと132万円になり、売却益は168万円、税金は34万1,292円です(筆者の計算。168万円×20.315%)。
この特例は、確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」を付けて受けるしくみです。源泉徴収ありの特定口座で売って申告不要で済ませると、特例は反映されません。特例の詳しい要件と計算は取得費加算の特例:相続税を払った人が売却益の税金を減らすしくみで説明しています。
相続税がかかったか、かかるかの一次判定は相続税の基礎控除:3,000万円+600万円×人数で一次判定する方法でできます。相続税の申告が必要な家庭では、株の売却の時期と取得費加算の計算をまとめて税理士に頼む選択肢があります。紹介サービスを使う場合は、紹介先が税理士として登録されているかを日本税理士会連合会の税理士情報検索サイトで確かめ、見積もりで「相続税の申告」と「株の売却の確定申告」のどちらまでを頼むのかをはっきりさせます。
単元未満株の買取と、税金の相談先
単元未満の端数株は市場で売りにくいことがあります。単元未満株主は、発行会社に買い取るよう請求できます(会社法192条)。相続人の名義に移してから、証券会社か発行会社の株主名簿を管理する窓口で買取請求の手続きを確かめます。
株の税金は、個別の申告内容によって答えが変わります。相談先は次のように使い分けます。
- 税務署(国税の電話相談):取得費の考え方、申告の要否、特例の一般的な要件。番号と受付時間は相続手続きの無料相談窓口一覧:登記・税・売却まで番号と受付時間にまとめています。
- 証券会社:取得費の記録(顧客勘定元帳)、特定口座への移管の扱い、年間取引報告書。
- 税理士:相続税の申告とあわせて売却の時期を決めたい、取得費加算を使いたい、非上場株式が含まれる。非上場株式は市場で売れず、評価や売り方が上場株式と大きく違います。
株の相続そのもの(口座の探し方・移管)は、株の相続手続き:証券口座の調べ方から移管・売却まで、放置の影響で前の段階から確かめられます。
よくある質問
Q. 相続税の評価額を、売るときの取得価格として使ってはいけないのですか?
使えません。相続した株の取得費は、亡くなった人が買ったときの取得費を引き継ぐ決まりです(国税庁)。相続税の評価額は相続税を計算するための金額で、売却益の計算とは別物です。相続税を払った人は、取得費加算の特例で相続税の一部を取得費に足せる場合があります。
Q. 取得価格が分からないまま、とりあえず売ってしまっても大丈夫ですか?
売ること自体はできますが、取得費が分からないと売却額の5%を取得費とする計算になり、売却益が大きく出ることがあります。証券会社の顧客勘定元帳は過去10年以内の取引なら確認できるとされているので、売る前に問い合わせておくと、後から取得費を説明できます。
Q. 相続した株を売った税金は、誰が申告しますか?
実際に売った人(株を引き継いで自分の口座で売った相続人)が、自分の所得として申告・納税します。売却代金を兄弟で分ける約束でも、売った人の名義で税金が計算されるので、税金分を差し引いて分けるかどうかを先に話し合っておきます。
出典・参考にした公的な情報
- No.1464 譲渡した株式等の取得費(国税庁)
- 上場株式等の取得価額の確認方法(パンフレット)(国税庁)
- No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)(国税庁)
- No.1466 同一銘柄の株式等を2回以上にわたって購入している場合の取得費(国税庁)
- No.1476 特定口座制度(国税庁)
- No.1465 株式等の譲渡損失(赤字)の取扱い(国税庁)
- No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
- 会社法 第192条(単元未満株式の買取りの請求)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。