相続人と遺産分割 / 手順

相続で兄弟と連絡取れない・行方不明のとき:住所の調べ方と不在者財産管理人

この記事のもくじ
  1. 相続で兄弟と連絡が取れないときは、状況を3つに分ける
  2. 戸籍と戸籍の附票で兄弟の住所を調べる手順
  3. 住所が分かったら:手紙の送り方と文例
  4. 住所も分からないとき:不在者財産管理人と失踪宣告
  5. 連絡を待つ間にできること:預金・登記・期限

相続で兄弟と連絡が取れないときは、まず兄弟の本籍地で「戸籍の附票」を取り、住民票上の今の住所を調べます。住所が分かれば手紙を送り、それでも返事がなければ家庭裁判所の遺産分割調停を使います。住所自体が分からないときは「不在者財産管理人」の選任、生死が7年以上分からないときは「失踪宣告」という選択肢があります。連絡の取れない兄弟を外したままの遺産分割は有効にならないので、順番に手を打ちます。

相続で兄弟と連絡が取れないときは、状況を3つに分ける

「連絡が取れない」には、事情の違う3つの場面があります。どの手続きを使うかは、この区別で決まります。

状況 使う手続き 申立先・費用(裁判所の案内)
住所は分かるが、手紙や電話に返事がない 手紙を送る → 遺産分割調停 相手方の住所地の家庭裁判所。収入印紙1,200円分と郵便切手
住所が分からず、戻る見込みもない(行方不明) 不在者財産管理人の選任 → 権限外行為許可 不在者の従来の住所地の家庭裁判所。各800円分と郵便切手
生死が7年以上分からない 失踪宣告 同上。800円分と郵便切手、官報公告料5,298円(2026年10月時点)

不在者財産管理人の対象は「従来の住所または居所を去り、容易に戻る見込みのない者」です(民法25条、裁判所の案内)。住所が分かっていて返事がないだけの兄弟は、これに当たらず、遺産分割調停で進める場面です。まず住所を調べ、届く場所に連絡を尽くすことが出発点です。兄弟と顔を合わせたくない事情があって連絡をためらっている場合は、相続で兄弟に会いたくないときの進め方で、会わずに進める方法を整理しています。

分かれ道:連絡の取れない相続人がいるとき
  • 戸籍で相続人を確定する → 戸籍の附票で住所を調べる
  • 住所が分かった → 手紙を送る → 返事なし → 遺産分割調停
  • 住所が分からない → 不在者財産管理人 → 家庭裁判所の許可を得て遺産分割
  • 生死が7年以上不明 → 失踪宣告 → 死亡とみなされ、その人の相続人と分割

戸籍と戸籍の附票で兄弟の住所を調べる手順

戸籍の附票は、本籍地の市区町村が戸籍ごとに作っている、住所の移り変わりの記録です。住民票を移していれば、ここに今の住所が載ります。

  1. 被相続人の戸籍で相続人を確定する:亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍をそろえ、兄弟姉妹の全員と、先に亡くなった兄弟姉妹の子(甥・姪)を洗い出します。親の相続で子が請求するなら、2024年3月から始まった広域交付で、本籍地以外の市区町村の窓口でもまとめて請求できます。
  2. 兄弟の今の本籍を調べる:兄弟が結婚などで親の戸籍から出ていると、新しい戸籍が別の本籍地にあります。親の戸籍の記載から移った先の本籍を追います。
  3. 兄弟の戸籍を請求する:広域交付で請求できるのは本人・配偶者・直系の親族だけで、兄弟姉妹は対象外です。兄弟の戸籍は本籍地の市区町村に、相続手続きのためという理由を示して請求します(戸籍法10条の2第1項)。請求の方法(窓口・郵送)と必要な書類は、本籍地の市区町村の案内に従います。
  4. 兄弟の本籍地で戸籍の附票の写しを請求する:兄弟は配偶者・直系の親族に当たらないため、「自己の権利を行使するために記載事項を確認する必要がある」として申し出ます(住民基本台帳法20条3項1号)。被相続人の戸籍など、相続人どうしであることが分かる書類を添えます。
  5. 手数料と申出の書き方を確かめる:手数料の額や申出書の様式は市区町村ごとに決まっています。請求する市区町村のページで確かめてから出します。

戸籍の読み取りや請求に手間取るときは、専門家に頼む方法もあります。弁護士・司法書士・行政書士などは、受任した事件や事務のために必要なとき、戸籍謄本等を請求できる(戸籍法10条の2第3項)ので、戸籍の収集から相続人の確定までを任せられます。

住所が分かったら:手紙の送り方と文例

住所が分かったら、いきなり家庭裁判所に行く前に手紙を送ります。長く連絡を取っていない兄弟にとって、突然の相続の知らせは身構えるものです。責める言葉を避け、事実と頼みたいことだけを短く書きます。

手紙に入れることは次のとおりです。

  • 誰が、いつ亡くなったか
  • 相続人が誰か(あなたも相続人の一人であること)
  • 分かっている財産と借金の概要(一覧の写しを同封すると伝わりやすい)
  • 何をしてほしいか(返事・話し合い・書類への署名など)
  • 返事の目安の日付と、連絡の方法(電話・メール・手紙のどれでもよい)

文例:「ご無沙汰しております。〇〇(父)が令和〇年〇月〇日に亡くなりました。父の相続人は、私と〇〇さんの2人です。父の財産は、預金と自宅の土地建物があることが分かっており、一覧を同封します。今後の分け方について、〇〇さんのご意向を伺いたく、お手紙を差し上げました。〇月〇日ごろまでに、同封の返信用封筒か、下記の電話・メールでご連絡をいただけますと助かります。」

送り方は、届いたことが記録に残る郵便(書留など)を選ぶと、後で調停を申し立てるときに「連絡を尽くした」経過を示しやすくなります。送った日・方法・返事の有無は、メモに残しておきます。

返事がないまま進まないときは、遺産分割調停を申し立てます。調停は、相続人の一人または数人が他の相続人全員を相手方にして、相手方のうち一人の住所地の家庭裁判所に申し立てます(民法907条2項、裁判所の案内)。調停で話がまとまらなければ審判に移り、裁判官が分け方を決めます。申立ての書類と当日の準備は遺産分割調停の流れ:費用・書類・期間と1回目の準備で順に示しています。

住所も分からないとき:不在者財産管理人と失踪宣告

住所を調べても今の居場所が分からず、戻る見込みもない兄弟は、法律上の「不在者」に当たりえます。この場合、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てます(民法25条)。

項目 不在者財産管理人 失踪宣告
使える場面 従来の住所を去り、容易に戻る見込みがない 生死が7年間分からない(災害などの危難では危難が去ってから1年間)
申し立てられる人 利害関係人(相続人に当たる人など)、検察官 利害関係人(配偶者・相続人に当たる人など)
結果 管理人が不在者の財産を管理し、家庭裁判所の許可を得て遺産分割に加わる 7年の期間が満了した時に死亡したものとみなされ、その人の相続が始まる
費用(裁判所の案内) 収入印紙800円分と郵便切手。管理費用が不足しそうなときは予納金を求められることがある 収入印紙800円分と郵便切手、官報公告料5,298円(2026年10月時点)

不在者財産管理人ができるのは、もともと財産の保存などに限られます。遺産分割協議に加わるには、管理人が家庭裁判所の「権限外行為許可」を得る必要があります(民法28条。申立ての収入印紙は800円分)。管理人は不在者のために財産を管理する立場なので、分割の内容は不在者の利益を踏まえて検討されます。

申立ての書類には、不在者の戸籍謄本と戸籍附票、不在の事実を証する資料、不在者の財産の資料、管理人の候補者の住民票などが求められます。

失踪宣告で兄弟が死亡したとみなされる日が、被相続人の死亡より前か後かで扱いが変わります。前なら兄弟の子が代わりに相続人になり(代襲相続)、後なら兄弟の取り分を兄弟自身の相続人(配偶者や子など)が引き継ぎます。宣告のあとは、その人たちと遺産分割をします。

連絡を待つ間にできること:預金・登記・期限

兄弟と連絡が取れない間も、相続の期限は進みます。分割が終わらなくても一人でできることを、先に進めておきます。

  • 預金の一部の払戻し:遺産分割の前でも、各相続人は「口座の残高×3分の1×自分の法定相続分」を、金融機関ごとに150万円を上限として単独で払い戻せます(民法909条の2)。筆者の計算では、子2人が相続人でA銀行の預金が600万円なら、600万円×1/3×1/2=100万円です。
  • 相続人申告登記:不動産の相続登記には、取得を知った日から3年以内の申請義務があります(不動産登記法76条の2)。分割が終わらないときは、法務局に「相続が開始したこと・自分が相続人であること」を申し出ると、申請義務を果たしたとみなされます(同法76条の3)。
  • 相続税の申告期限:相続税がかかる場合、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内の申告が必要で、分割が終わっていなくても期限は延びません。期限の一覧は相続の期限一覧:3か月・4か月・10か月・3年にまとめています。

相続人の中に養子がいる、相続人がそもそもいないかもしれないといった場合は、確定の仕方が変わります。養子は法定相続人になるか、実子との割合の違いと法定相続人がいない場合の財産と相続財産清算人もあわせて確かめてください。

よくある質問

Q. 兄弟の住所を役所に聞いたら、教えてもらえますか?

兄弟の本籍地の市区町村に「戸籍の附票の写し」を請求する方法があります。附票には住民票上の住所の移り変わりが記録されています。兄弟は配偶者や直系の親族に当たらないため、相続手続きに必要だという理由を示して申し出る形になり(住民基本台帳法20条3項)、交付するかは市区町村長が判断します。

Q. 連絡の取れない兄弟を除いて、残りの相続人だけで遺産分割をしてもよいですか?

遺産分割は相続人全員で行うもので、一人でも欠けた協議は有効な分割になりません。住所が分かっていて返事がないだけなら遺産分割調停を、住所も分からないなら不在者財産管理人の選任を考えます。どちらの手続きでも、連絡の取れない兄弟の取り分は無視されません。

Q. 亡くなった兄弟の子(甥・姪)にも連絡が必要ですか?

兄弟姉妹が相続人になる相続で、その兄弟姉妹が先に亡くなっているときは、その子である甥・姪が代わりに相続人になります(代襲相続)。この場合は甥・姪も遺産分割に加わる相続人なので、同じように住所を調べて連絡します。甥・姪がさらに亡くなっていても、その子は代わりに相続しません。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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