相続した土地は自治体に寄付できる?受け入れられにくい理由と代わり
相続した土地を自治体に寄付すること自体はできます。ただし、受け入れるかどうかは自治体が決めることで、道路の拡幅や公園など自治体に使い道がある土地でないと、受け入れる理由が立ちにくい仕組みになっています。自治体が土地を持つと固定資産税が入らなくなり、草刈りなどの管理費だけが残るからです。寄付を打診するなら、資料をそろえて財産の担当課に相談し、断られたときの代わりとして、国庫帰属・地域の団体・隣地の人・買取業者を並べておきます。
相続した土地を自治体に寄付できる?受け入れの判断は自治体側
自治体には、申し出のあった土地を受け取る義務はありません。寄付は、贈る側と受け取る側の合意で成り立つ契約で、自治体の側が「受け取る」と判断したときに初めて成立します。
判断の基準は自治体ごとに違いますが、土地の寄付の受け入れで一般に見られやすいのは、次の3点です。
| 自治体が見る点 | 受け入れに傾く例 | 断られやすい例 |
|---|---|---|
| 使い道 | 道路の拡幅に必要、公園・防災用地に隣接 | 山林・原野・住宅地の中の小さな区画 |
| 管理の負担 | 平らで管理しやすい | 崖・竹林・不法投棄・建物の残る土地 |
| 権利の状態 | 境界が確定し、担保などが付いていない | 境界不明、共有者がいる、抵当権が残る |
条件を付けた寄付は、手続きも重くなります。地方自治法96条1項9号は、自治体が「負担付きの寄附又は贈与を受けること」を議会の議決事項としています。「この土地を公園にすることを条件に」といった寄付は、担当課だけでは決められず、議会にかける必要が出てきます。
受け入れられにくい理由:税が入らず、管理費だけが残る
自治体にとって、土地を受け取ることは収入ではなく、支出の始まりです。
- 固定資産税が入らなくなる:市町村は、国や都道府県・市町村が持つ土地に固定資産税を課すことができません(地方税法348条1項)。今まで所有者から入っていた税が、寄付で止まります。
- 管理の責任を負う:草刈り、倒木・越境した枝への対応、不法投棄の片付けなどを、自治体の予算でする必要があります。
- 将来も手放しにくい:一度持った土地を売ったり譲ったりするのにも、手続きと手間がかかります。
このため、使い道のない土地は、所有者の事情に同情しても受け取れない、という判断になりやすくなります。断られても、それは土地の条件の問題で、頼み方が悪かったわけではありません。
なお、法務省のQ&Aによると、相続土地国庫帰属制度の申請書で同意しておくと、申請後に法務局が地方公共団体などへ土地の情報を伝え、寄附を受ける意向があるかを確かめる運用があります(相談の段階ではしてもらえません)。法務省の統計(2026年9月30日現在の速報値)では、申請の取下げ1,162件のうち595件の理由が「有効活用の見込みが生じた」でした。自分で打診して断られた土地でも、この仕組みで受け手が見つかる余地は残ります。
寄付を打診する手順と、持っていく資料
寄付を打診するなら、次の順で進めると話が早くなります。
- 相続登記を済ませる:自分の名義でない土地は寄付できません。
- 資料をそろえる:登記事項証明書、公図の写し、固定資産税の課税明細、現地の写真、境界が分かる資料(測量図・境界標の写真)。
- 担当課に電話で聞く:市区町村の財産の管理を担当する課(管財課などの名前の課)か、空き家の担当課に、土地の寄付を受け付けているかを聞きます。
- 書面で申し出る:受け付けている場合は、自治体の様式に沿って申し出ます。
- 回答を待つ:使い道の検討や議会の手続きで、時間がかかることがあります。返事の目安を聞いておきます。
電話で最初に聞くときは、土地の場所と状態を短く伝え、受け付けの有無と窓口を確かめるだけにします。
文例:「○○町△番地の土地を相続した者です。使う予定がなく、市に寄付を受けていただけないか相談したいのですが、土地の寄付を受け付けている課はどちらでしょうか。広さはおよそ200㎡で、建物はなく、道路に面しています。」
断られたときは、理由(使い道がない、管理が難しい、境界が分からない等)を聞いておくと、次に国庫帰属や譲渡を考えるときの材料になります。
| 用意するもの | どこで手に入れるか |
|---|---|
| 登記事項証明書・公図の写し | 法務局(オンライン請求もできる) |
| 固定資産税の課税明細 | 毎年届く納税通知書に同封 |
| 測量図・境界の資料 | 手元の書類、なければ法務局の地積測量図(登録がある土地のみ) |
| 現地の写真 | 四方と、建物・樹木・道路との接し方 |
| 寄付したい理由のメモ | 相続の経緯、使う予定がないこと |
自治体への寄付で、渡す側に所得税がかかる心配はほぼありません。法人に土地を無償で渡すと、時価で売ったとみなされて譲渡所得の税金がかかるのが原則ですが(国税庁 No.3105)、国や地方公共団体への贈与は、この扱いの対象外とされています(租税特別措置法40条1項前段)。一方、NPOなどの公益法人等への寄付が非課税になるには、同じ条文の細かい要件を満たす必要があります。
寄付を断られたときの代わり
寄付が難しいときは、次の候補を順に当たります。
| 代わりの道 | 向いている土地 | ポイント |
|---|---|---|
| 相続土地国庫帰属制度 | 建物がなく、境界がはっきりした土地 | 1筆14,000円の審査手数料と、基本20万円の負担金を納める |
| 認可地縁団体(自治会など) | 集会所・ごみ置き場・広場に使える土地 | 市町村長の認可を受けた地縁団体は、規約の目的の範囲で権利を持てる(地方自治法260条の2) |
| 隣地の人へ譲る | 隣の人が庭や駐車場に使える土地 | 受け取る側の贈与税・登録免許税を先に伝える |
| 買取業者へ売る | 古家付き、共有など個人に売りにくい土地 | 複数社の査定の根拠と条件を比べる |
国庫帰属の条件と費用は相続土地国庫帰属制度とは:国に引き取ってもらう条件と費用で確かめてください。隣地の人や個人へ譲る手順は空き家を無料で譲ります:譲渡先の探し方と契約・税金の注意にまとめています。5つの手放し方の費用を並べて比べたいときは田舎の土地が売れない相続:手放す5つの方法と費用の比べ方が使えます。
家が建っていて、そもそも売りに出しているのに買い手がつかない、という場合は、寄付の前に売り方を見直す余地があります。売りに出した空き家が売れない理由と対策:価格・状態・立地・契約の見直し方に進んでください。
よくある質問
Q. 自治体に寄付した土地に、相続税はかかりますか?
相続や遺贈で取得した財産を、相続税の申告期限までに国や地方公共団体に寄附した場合、その財産は相続税の課税価格に入れない特例があります(租税特別措置法70条)。相続税がかかる人だけに関係する話で、適用には申告での手続きが要ります。使えるかどうかは税務署か税理士に確かめてください。
Q. 国に直接、土地を寄付することはできますか?
相続した土地を国に引き取ってもらう仕組みとして設けられたのが、相続土地国庫帰属制度です。建物がない、境界が明らかなどの要件を満たせば、審査手数料と負担金を納めて国庫に帰属させられます。寄付を打診するより、この制度の要件に当てはまるかを法務局の本局で相談するほうが話が進みます。
出典・参考にした公的な情報
- 地方自治法 第96条・第260条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法 第348条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 租税特別措置法 第40条・第70条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法(国税庁)(国税庁)
- 相続土地国庫帰属制度に関するQ&A(法務省)(法務省)
- 相続土地国庫帰属制度の統計(法務省)(法務省)
- 相続土地国庫帰属制度の概要(法務省)(法務省)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。