田舎の土地が売れない相続:手放す5つの方法と費用の比べ方
相続した田舎の土地が売れないときに使える手放し方は、①仲介の売り方を見直す、②買取業者に売る、③隣地の人などに譲る、④自治体に寄付を打診する、⑤相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう、の5つです。比べるときは「受け取れるお金」だけでなく、「手放すまでに出ていくお金」と「持ち続ける間の固定資産税・草刈り代」を並べます。相続放棄はこの5つと違い、土地だけでなく預金も含めて全財産を手放す手続きなので、別の物差しで考えてください。
田舎の土地が売れない相続で使える5つの方法
5つは、上から順に「手元に残るお金が多いが、相手が見つかりにくい」ものから、「お金を払ってでも手放す先が決まっている」ものへ並んでいます。
| 方法 | お金の出入り | 向いている土地 | 注意すること |
|---|---|---|---|
| ①仲介の見直し | 代金を受け取り、仲介手数料を払う | 住宅地・道路に接した宅地など、買う人が想定できる土地 | 価格と不動産会社の選び方で結果が変わる |
| ②買取業者 | 代金を受け取る(仲介手数料なし) | 共有・接道の問題・古家付きなど、個人の買い手がつきにくい土地 | 価格は仲介より低くなりやすい。複数社で比べる |
| ③隣地などへ譲る | 0円か安い代金。登記費用の分担を決める | 隣の人が庭・駐車場・畑として使える土地 | 受け取る側の税金と、農地なら農地法の許可 |
| ④自治体へ寄付 | 原則0円 | 道路・公園など、自治体に使い道がある土地 | 受けるかは自治体が決める。使い道がないと受け入れの理由が立ちにくい |
| ⑤国庫帰属 | 1筆14,000円+負担金(基本20万円)を払う | 建物がなく、境界がはっきりした土地 | 建物は解体が前提。審査の標準処理期間は8か月(超える場合もある) |
どれから試すかは、土地の条件で決まります。建物が残っている、共有者がいる、という土地は⑤がすぐには使えないため、①②③を先に当たります。逆に、山林や原野のように買う人が想定できない土地は、早めに⑤の要件を確かめたほうが、売れない期間の固定資産税を払い続けずに済みます。
費用の比べ方:出ていくお金と残るお金を同じ表に並べる
5つの方法は、お金の流れの向きが違うため、手残りで比べます。次は、建物のない300㎡の宅地(市街化区域・用途地域の外)を例にした筆者の計算です。実際の額は、査定や見積もり、法務省の自動計算シートで置き換えてください。
| 方法 | 受け取る | 払う | 手残り |
|---|---|---|---|
| ①仲介で100万円で売れた場合(手数料が通常の上限5.5万円のとき) | 100万円 | 仲介手数料5.5万円(税込)など | 約94.5万円から、登記・測量の費用を引いた額 |
| ①仲介で100万円で売れた場合(特例の上限33万円で合意したとき) | 100万円 | 仲介手数料33万円(税込)など | 約67万円から、登記・測量の費用を引いた額 |
| ②買取で50万円の場合 | 50万円 | 契約で決めた費用 | 約50万円 |
| ③隣地の人へ0円で譲る場合 | 0円 | 名義変更の費用を誰が持つか次第 | 0円前後 |
| ⑤国庫帰属の場合 | 0円 | 14,000円+20万円 | マイナス約21.4万円 |
①の仲介手数料は、売買代金が200万円以下の部分なら、通常は代金の5%(税別)が上限です。100万円なら5万円、税込で5.5万円になります。これに加えて、売買代金が800万円以下の土地・建物には、媒介に要する費用を勘案し、事前に説明を受けて合意した場合に限り、通常の計算を超えて最大33万円(税込)まで受け取れる特例があります(国土交通省告示)。33万円は一律の額ではなく上限です。100万円で売れても、合意した手数料しだいで手残りが大きく変わるので、契約の前に金額を確かめてください。仕組みは仲介手数料の上限と計算式:800万円以下の空き家の特例で確かめられます。
もう一つの物差しが「持ち続けるお金」です。年に固定資産税が2万円、草刈りの外注が年3万円かかる土地なら、売れないまま5年たつと25万円になります(筆者の計算)。⑤の国庫帰属で払う約21.4万円は、この額と比べて判断します。
- 固定資産税の課税明細で、毎年いくら出ているかを確かめる
- 建物・共有者・境界の有無を確かめる(⑤が使えるかの入口)
- 不動産会社に査定を頼み、①と②の価格を比べる
- 隣地の所有者に、買う・もらう気があるかを聞く(③)
- 自治体の財産の担当課に寄付の受け付けを聞く(④)
- 1〜5で決まらなければ、法務局の本局で⑤を相談する
方法ごとの進め方と、つまずきやすい点
①仲介の見直し:売れない原因は、価格・不動産会社・売り方のどこかにあることが多いです。不動産会社は、媒介契約で価格に意見を言うとき、その根拠を示す義務があります(宅建業法34条の2第2項)。根拠を聞き、売り出し価格を見直すかを判断します。家が建っている場合は空き家が売れない理由と対策に、価格・状態・立地ごとの見直し方をまとめています。
②買取業者:業者が自ら買主になるため、買い手探しの期間がなく、仲介手数料もかかりません。広告やチラシの業者が自分で買うのか、仲介なのかは、業者に明示する義務があります(宅建業法34条)。共有持分や接道に問題のある土地を扱う業者もあるので、1社だけで決めず、査定の根拠と契約条件を比べてください。
③隣地などへ譲る:隣の人にとっては、庭や駐車場を広げられる土地です。0円で個人に渡すと、受け取った人に贈与税がかかる場合があり、時価より著しく低い価格で売った場合も、差額が贈与とみなされることがあります(国税庁 No.4423)。受け取る側には、名義変更の登録免許税(贈与による移転は、固定資産課税台帳の価格などを基にした額の2%)や、都道府県の不動産取得税もかかります。費用の分担と契約書の作り方は空き家を無料で譲ります:譲渡先の探し方と契約・税金の注意で詳しく扱っています。
④自治体へ寄付:自治体が土地を持つと固定資産税が入らなくなり(地方税法348条)、草刈りなどの管理費だけが残ります。そのため、道路の拡幅や公園など使い道がある土地でないと、自治体の側に受け入れる理由が立ちにくくなります。打診のしかたは相続した土地は自治体に寄付できる?を見てください。
⑤国庫帰属:建物がある土地、境界が分からない土地、他人が通路に使っている土地などは却下されます。条件と費用の全体は相続土地国庫帰属制度とは:国に引き取ってもらう条件と費用にまとめています。田畑なら農地は相続土地国庫帰属制度で手放せる?も確かめてください。
相続放棄との違い:放棄は土地だけを選べない
まだ相続するかどうかを決める前なら、相続放棄という選択肢もあります。ただし、放棄した人は初めから相続人でなかったとみなされるため(民法939条)、売れない土地だけでなく、預金や自宅などすべての財産を受け取れなくなります。期限は、相続の開始を知った時から3か月以内です(915条)。
| 比べる点 | 5つの方法 | 相続放棄 |
|---|---|---|
| 手放す範囲 | その土地だけ | プラスもマイナスも全財産 |
| 使える時期 | 相続した後いつでも | 相続を知ってから3か月以内 |
| 相続登記 | 先に済ませる | 不要(相続人にならない) |
| 借金 | 引き継ぐ | 引き継がない |
放棄しても、その時に土地や家を現に占有していた人は、引き渡すまで保存の義務を負います(民法940条)。扱いは相続放棄した空き家はどうなる?保存義務の範囲と手放すまでの流れで確かめられます。借金がなく、預金なども受け取りたい場合は、相続してから土地だけを手放すほうが向いていることが多いです。どちらにするか、時点ごとの判断の順番は相続した土地や家がいらない:3か月以内か後かで変わる判断の順番で整理しています。
よくある質問
Q. 田舎の土地を0円で手放すと、自分に税金がかかりますか?
個人に無償で渡す場合、渡した側には原則として譲渡所得の税金はかからず、受け取った側に贈与税がかかるかどうかの問題になります。一方、会社などの法人に無償や時価の2分の1未満で渡すと、時価で売ったとみなされて渡した側に所得税がかかる場合があります。相手が個人か法人かを先に確かめてください。
Q. 売れない土地を持ち続けると、毎年いくらかかりますか?
主なものは固定資産税(市街化区域なら都市計画税も)と、草刈りや見回りの費用です。固定資産税の額は毎年届く納税通知書の課税明細で確かめられます。同じ市町村の中で同じ人が持つ土地の課税標準の合計が30万円に満たないと、原則として固定資産税はかかりません(地方税法351条の免税点)。明細の金額を見てから比べてください。
出典・参考にした公的な情報
- 相続土地国庫帰属制度の概要(法務省)(法務省)
- 相続土地国庫帰属制度の負担金(法務省)(法務省)
- 宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額(国土交通省告示)(国土交通省)
- 宅地建物取引業法 第34条・第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 登録免許税法 別表第一(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法 第73条の2・第348条・第351条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき(国税庁)(国税庁)
- No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法(国税庁)(国税庁)
- 民法 第915条・第939条・第940条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。