相続登記と名義変更 / Q&A

山林の相続登記:義務化の対象・場所が分からない時の調べ方

この記事のもくじ
  1. 山林も相続登記の義務化の対象:3年の登記と90日の森林の届出
  2. 場所が分からない山林の調べ方:名寄帳から公図・林地台帳へ
  3. 山林の相続登記の進め方と、費用を抑えられる場合
  4. 相続した山林をどうするか:持ち続ける・譲る・国庫帰属

相続した山林も、宅地や家と同じく相続登記の義務化の対象で、取得を知った日から3年以内に登記を申請する義務があります。山林にはさらに、地域森林計画の対象の森林なら、森林法の**「森林の土地の所有者届出」を所有者になった日から90日以内**に市町村へ出す決まりがあります。場所が分からない山林は、①市町村の名寄帳で地番を出し、②法務局の公図で位置をつかみ、③市町村の林地台帳と森林の地図で境界の状況を確かめる、の順でたどります。

山林も相続登記の義務化の対象:3年の登記と90日の森林の届出

不動産登記法の相続登記の申請義務(76条の2)は、土地の種類を区別していません。地目が山林でも、相続で所有権を取得した人は3年以内に登記を申請する義務を負い、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります(164条1項)。過料は罰金ではなく、登記官が義務違反を把握して催告し、それでも申請がない場合に裁判所へ通知される流れです。法務省は、催告の端緒として、遺言や遺産分割協議書に別の不動産の記載があった場合を挙げています。家や宅地だけ登記して、協議書に書いた山林を放っておくと、そこから把握されることがあります。

山林を相続したときに出てくる届け出・申請は次の2つで、窓口も期限も違います。

早見表:山林を相続したときの2つの手続き
相続登記 森林の土地の所有者届出
根拠 不動産登記法76条の2 森林法10条の7の2
出す先 土地を管轄する法務局 土地のある市町村の長
期限 相続の開始と取得を知った日から3年以内 所有者となった日から90日以内
対象 相続で所有権を取得したすべての土地 地域森林計画の対象の森林(面積を問わない)
怠った場合 10万円以下の過料(164条1項) 届出をしない・虚偽の届出は10万円以下の過料(213条)
添付・必要なもの 戸籍の証明書、住民票、遺産分割協議書など 届出書、登記事項証明書(写し可)など取得が分かる書類、土地の位置を示す図面

林野庁の案内では、2026年4月1日から届出書の様式が改められ、届出人の国籍等を書く欄が加わっています。古い様式を使わないよう、市町村の窓口か林野庁のページで最新の様式を取ってください。

場所が分からない山林の調べ方:名寄帳から公図・林地台帳へ

親や祖父母の山林は、「どこかに山がある」と聞いているだけで、地番も場所も分からないことがよくあります。次の順番で調べると、机の上でかなりのところまで絞れます。

  1. 家の中の手がかりを集める:古い権利証、売買の契約書、森林組合からの通知、固定資産税の納税通知書を探します。ただし山林は評価額が小さく、同じ人が同じ市町村に持つ土地の課税標準の合計が30万円未満だと固定資産税が課されません(免税点、地方税法351条)。通知書がないから土地もない、とは言えません。
  2. 名寄帳で地番の一覧を取る:市町村は、固定資産課税台帳に基づいて土地名寄帳を備えます(地方税法387条)。課税台帳には、課税されるかどうかとは別に登記されている土地を登録する定めなので(381条1項)、免税点未満の山林も、その市町村の分は一覧に出てくるのが原則です。窓口では「課税されていない土地も含めて」と頼みます。請求先は土地のある市町村(東京23区は都税事務所)で、取り方は相続登記の前に名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方で扱っています。
  3. 市町村が分からなければ所有不動産記録証明書を使う:2026年2月2日に始まった制度で、亡くなった人が登記名義人になっている不動産を全国から抽出できます(不動産登記法119条の2)。書面請求は検索条件1件につき1,600円です。登記の住所が古いままだと抽出されないので、昔の住所でも検索します。
  4. 公図で位置と形をつかむ:地番が分かったら、法務局で地図または地図に準ずる図面(いわゆる公図、不動産登記法14条)の写しを取ります。書面での写しは1筆500円、登記事項証明書は1通600円です(登記手数料令2条)。登記所に正式な地図がまだなく、地図に準ずる図面で代えている地域では(不動産登記法14条4項)、形や位置は目安と考えます。
  5. 林地台帳と森林の土地の地図を見る:市町村は、地域森林計画の対象の森林について、所有者・所在・地番・地目・面積と、境界の測量の実施状況を載せた林地台帳を作り(森林法191条の4)、森林の土地に関する地図とともに公表します(191条の5)。公表する範囲は市町村ごとに決まっているので、林務担当の窓口で見せてもらえる内容を確かめます。
  6. 現地を確かめる:隣の土地の所有者や地元の人に、境界の目印(杭・境界木など)を聞きます。境界があいまいなまま売る・手放すことは難しいので、この段階で分かったことを写真と地図に書き込んで残します。

山林の相続登記の進め方と、費用を抑えられる場合

場所と地番が分かれば、相続登記の手順は家や宅地と同じです。山林で特に気をつけたいのは次の3点です。

  • 名義が祖父や曾祖父のまま:山林は何代も登記されていないことがあり、その場合は数次相続として順番に整理します。進め方は数次相続の相続登記:祖父名義の家を登記する順番と中間省略にまとめています。
  • 登録免許税の免税に当たるか:相続による土地の所有権移転登記で、不動産の価額が100万円以下のものは、2027年3月31日(令和9年3月31日)までの登記なら登録免許税がかかりません(租税特別措置法84条の2の2第2項)。申請書に免税の根拠を書かないと適用されないので、固定資産評価証明書の価格を見て判断します。
  • 共有の山林:昔の入会地などで多数の共有になっている山林は、相続人の確定だけで時間がかかります。法務省は、相続人が極めて多数で戸籍の収集に時間がかかる場合を、正当な理由の例に挙げています。期限内に終わらないときは、相続人申告登記で自分の義務を先に果たす方法もあります。

自分で進めるなら、法務局の登記手続案内(予約制)で、地番の一覧と公図を見せながら必要書類を確かめるのが近道です。書類集めや登記を任せたい場合は、相続手続きの代行サービス(PR)も選択肢の一つです。

代行サービスを使うときは、他人の登記の申請代理は司法書士(または弁護士)、税務の代理は税理士の仕事と法律で決まっているので、見積書で「どの手続きを、どの資格者が、いくらで」担当するかを確かめてください。森林の所有者届出を含むかどうかも、見積もりの段階で聞いておきます。

相続した山林をどうするか:持ち続ける・譲る・国庫帰属

登記を済ませたら、山林をどうするかを決めます。選択肢と確かめることは次のとおりです。

選択肢 向いている場合 確かめること
持ち続ける 将来使う予定がある、手放す先がない 固定資産税(免税点未満かどうか)、境界の管理、隣地への枝の越境
隣接する所有者などに譲る 隣の山の持ち主が広げたいと考えている 売買・贈与の登記、境界の確認、森林の所有者届出は相手方の手続き
相続土地国庫帰属制度で国に引き取ってもらう 使い道がなく、境界が明らか 審査手数料1筆14,000円、森林は面積に応じた負担金(法務省の概要資料の例:1,500㎡で約27万円、3,000㎡で約30万円)

国庫帰属は、境界が明らかでない土地などは申請できず、管理に過分の費用がかかる土地は承認されません。法務省の統計(2026年9月30日現在の速報値)では、申請6,125件のうち山林が928件で、森林で帰属したのは229件でした。審査中の件数も含むので、この数字から承認の割合は出せません。森林の負担金や境界の要件は、山林は相続土地国庫帰属制度で手放せる?負担金と境界の問題で詳しく扱っています。期限と過料の全体は、正本の相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記で確かめてください。

よくある質問

Q. 山林の場所が現地で分からないままでも、相続登記はできますか?

相続登記は、登記記録の所在と地番で土地を特定して申請するので、現地の境界が分からなくても申請はできます。地番は名寄帳や所有不動産記録証明書で確かめられます。ただし、売る・国に引き取ってもらうといった次の段階では、境界がはっきりしていることが求められる場面が出てきます。

Q. 固定資産税の納税通知書が届いていない山林でも、相続登記の義務はありますか?

あります。同じ人が同じ市町村に持つ土地の課税標準の合計が30万円未満だと固定資産税が課されず(免税点、地方税法351条)、納税通知書が届かないことがあります。通知書の有無と登記の義務は関係がないので、名寄帳で土地の一覧を確かめます。

Q. 森林の所有者届出は、相続登記が終わってからでいいですか?

届出の期限は、所有者となった日から90日以内で、相続登記の3年より早く来ます。林野庁の案内では、添付書類は登記事項証明書(写しも可)か、権利を取得したことが分かる書類の写しと、土地の位置を示す図面です。登記の前に届け出るときに遺産分割協議書の写しなどで足りるかは、届出先の市町村に聞いてください。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

山林は相続土地国庫帰属制度で手放せる?負担金と境界の問題

相続登記の前に名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方

数次相続の相続登記:祖父名義の家を登記する順番と中間省略

相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記