相続登記の前に名寄帳で親の不動産を漏れなく調べる取り方
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親の不動産を漏れなく調べるには、不動産がありそうな市区町村ごとに名寄帳(土地名寄帳・家屋名寄帳)を請求し、法務局の所有不動産記録証明書で全国分を補うのが基本の手順です。名寄帳は、市区町村が固定資産課税台帳に基づいて、同じ人の土地と家屋をまとめた一覧です(地方税法387条)。請求先は不動産のある市区町村の固定資産税の窓口で、東京23区は都税事務所です。相続人は、親の死亡と自分が相続人であることを戸籍で示して請求します。
名寄帳とは:相続登記の前に取っておく理由
相続登記は、不動産ごとに所在・地番・家屋番号を書いて申請します。1つでも漏れると、その不動産だけ名義が親のまま残り、相続登記の申請義務も果たせていないことになります。名寄帳を先に取る理由は次の3つです。
- 納税通知書だけでは漏れる:同じ人が同じ市区町村に持つ土地の課税標準の合計が30万円未満だと、固定資産税は課されません(免税点、地方税法351条)。山林や小さな私道の持分などは、通知書に出てこないことがあります。
- 登記のない建物も分かる:市区町村は、登記されていない家屋でも課税できるものを家屋補充課税台帳に登録します(381条4項)。名寄帳に載っていて登記事項証明書が取れない建物は、未登記の可能性があります。
- 評価額も同時に分かる:相続登記の登録免許税は不動産の価額をもとに計算し、評価額は固定資産評価証明書で証明します(382条の3)。名寄帳を取るときに評価証明書も頼めば、窓口に行くのが1回で済みます。
名寄帳の取り方:請求先・必要書類・手数料の手順
名寄帳の請求は、次の順番で進めます。
- 請求先の市区町村を決める:親の住所地だけでなく、実家のある場所、本籍地、祖父母の出身地など、不動産がありそうな市区町村を書き出します。東京23区の不動産は区役所ではなく、都税事務所が扱います。
- 自分が請求できる立場かを確かめる:名寄帳は、固定資産課税台帳の閲覧の代わりに、納税義務者などに閲覧させるものです(地方税法382条の2・387条3項、地方税法施行令52条の14)。登記名義人が賦課期日(1月1日)より前に亡くなっている場合は、その土地や家屋を現に所有している人が固定資産税の所有者とされます(地方税法343条2項)。相続人は、この立場で請求します。
- 書類をそろえる:請求書(窓口か市区町村のホームページの様式)、請求する人の本人確認書類、亡くなった人の死亡と請求する人が相続人であることが分かる戸籍の証明書を用意します。代理人が請求するときは委任状も要ります。市区町村によって求める書類が違うので、ホームページの「固定資産の証明・閲覧」の案内で確かめます。
- 窓口か郵送で請求する:郵送での請求を受け付けている市区町村なら、遠方でも出向かずに済み、手数料は定額小為替などで納めます。東京23区では、名寄帳の郵送請求は都税証明郵送受付センターで受け付け、発送まで概ね1週間から10日程度かかると案内されています。
- 届いた名寄帳を一覧表に書き写す:所在・地番・地目・地積・家屋番号・評価額を、相続人どうしで共有できる表にまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名寄帳の閲覧(写しの交付) | 納税義務者ごとに300円。共有名義と単独名義の名寄帳がある場合は、それぞれ300円 |
| 固定資産評価証明書など | 1件目400円、2件目以降は1件ごと100円(同じ区内・同じ人の証明に限る) |
| 閲覧の申請先 | 資産が所在する区の都税事務所 |
| 最新年度の名寄帳を申請できる時期 | 4月1日から(土・日・祝日なら翌開庁日) |
手数料は市区町村が決めるので、23区以外では金額が違います。請求の前に、各市区町村の案内で手数料と支払い方法を確かめてください。
窓口や電話で伝える例:「亡くなった父の不動産を相続登記のために調べています。この市にある父名義の土地・家屋を、共有の分も含めて名寄帳で出してください。あわせて評価証明書もお願いします」
名寄帳で見落としやすい不動産:共有・別の市区町村・未登記
名寄帳を取っても、次の不動産は漏れやすいので、意識して確かめます。
- 共有名義の不動産:東京23区の案内にあるとおり、共有名義と単独名義では名寄帳が分かれることがあります。兄弟や叔父との共有の土地、マンションの敷地、私道の持分は、共有分を含めて出してもらうよう頼みます。
- 別の市区町村の不動産:名寄帳に載るのは、その市区町村の中の不動産だけです。昔住んでいた土地、田舎の山林・田畑は、それぞれの市区町村に請求します。山林の場所の調べ方は山林の相続登記:義務化の対象・場所が分からない時の調べ方で扱っています。
- 祖父母の名義のまま残っている不動産:名寄帳は名義人ごとに作られるので、親の名寄帳には祖父母名義の土地は出てきません。祖父母の代から登記されていない土地がありそうなら、祖父母の名義でも請求できるかを窓口で相談します。
- 未登記の建物:名寄帳にあって登記がない建物は、表題登記が必要になる場合があります。扱いは未登記建物の相続登記:表題登記の手順としない場合の売却への影響で確かめてください。
所有不動産記録証明書で全国分を補う:開始時期と使い方
名寄帳の弱点である「市区町村ごとにしか分からない」を補うのが、2026年2月2日に始まった所有不動産記録証明制度です。相続人は、亡くなった人が所有権の登記名義人として記録されている不動産の一覧(所有不動産記録証明書)を、法務局に請求できます(不動産登記法119条の2第2項)。開始時期や様式は、法務省の「所有不動産記録証明制度について」のページで最新の情報を確かめられます。
| 名寄帳 | 所有不動産記録証明書 | |
|---|---|---|
| 請求先 | 不動産のある市区町村(23区は都税事務所) | 全国の法務局(支局・出張所を含む)、郵送・オンラインも可 |
| 範囲 | その市区町村の中だけ | 全国の登記記録 |
| 登記のない建物 | 課税されていれば載る | 出てこない |
| 費用 | 市区町村ごと(23区は300円の例) | 検索条件1件につき書面1,600円、オンライン請求で郵送受取1,500円・窓口受取1,470円 |
| 必要書類(相続人) | 本人確認書類、戸籍の証明書 | 印鑑証明書か本人確認書類の写し、相続関係を証する戸籍の証明書や法定相続情報一覧図の写し |
所有不動産記録証明書は、登記記録の氏名と住所で検索します。氏名が前方一致し、住所が市区町村まで一致するなどの条件で抽出されるため、登記の住所が古いままだと出てきません。親が引っ越しを重ねていたら、住民票の除票や戸籍の附票で過去の住所を確かめ、過去の氏名・住所でも検索します。該当がなくても手数料は返らないので、検索条件を絞ってから請求します。財産全体の調べ方(預金・借金を含む)は相続財産の調べ方:預金・不動産・借金を漏れなく見つける照会先一覧にまとめています。
調べた結果を相続登記につなげる
不動産の一覧ができたら、相続登記の準備に移ります。
- 登記事項証明書で名義を確かめる:一覧の不動産ごとに、法務局で登記事項証明書を取ります(書面で1通600円、登記手数料令2条)。名義が親のままか、祖父母のままかで、登記の順番が変わります。
- 評価証明書で登録免許税の見込みを出す:相続登記の登録免許税は、不動産の価額の0.4%です。価額が100万円以下の土地は、2027年3月31日(令和9年3月31日)までの登記なら免税になります(租税特別措置法84条の2の2第2項)。
- 相続人で分け方を決め、申請する:誰がどの不動産を取得するかを決め、3年以内に申請します。親の権利証が見つからなくても申請できる点は相続登記に権利証はいる?なくても申請できる理由と登記識別情報で確かめてください。
相続登記の全体の流れ(義務化の期限、必要書類、自分でやる手順と司法書士に頼む場合)は、相続登記とは?義務化の期限3年・必要書類・自分でやる手順の全体で通して確かめられます。
よくある質問
Q. 兄弟のうち1人だけで、親の名寄帳を請求できますか?
できます。登記名義人が亡くなっている場合、その年の1月1日より前に亡くなっていれば、固定資産税の上ではその土地や家屋を現に所有している人(相続人)が所有者として扱われます(地方税法343条2項)。1月2日以降に亡くなった場合も、納税義務は相続人が引き継ぎます(同法9条)。どちらでも相続人の1人が請求できるのが一般的ですが、必要書類は市区町村で確かめます。請求の際は、親が亡くなったことと自分が相続人であることを、戸籍の証明書などで示します。
Q. 名寄帳と固定資産評価証明書は、何が違いますか?
名寄帳は、その市区町村にある同じ人の土地・家屋を一覧にしたもので、どの不動産があるかを調べるのに使います。固定資産評価証明書は、個々の不動産の評価額を証明するもので、相続登記の登録免許税の計算などに使います。窓口で両方を同時に頼むと、出直しが減ります。
Q. 所有不動産記録証明書を取れば、名寄帳はいりませんか?
名寄帳も取ったほうが確実です。所有不動産記録証明書は登記の記録から探すので、登記のない建物は出てこず、登記の住所が古いままだと抽出されないこともあります。逆に名寄帳はその市区町村の分しか載らないので、2つを照らし合わせて漏れを埋めます。
出典・参考にした公的な情報
- 地方税法 第9条・第343条・第351条・第381条・第382条の2・第382条の3・第387条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 地方税法施行令 第52条の14(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 固定資産に関する証明等(23区内)申請できる方・必要書類・申請方法(東京都主税局)
- 都税に関するよくある質問(土地・家屋名寄帳の申請時期)(東京都主税局)
- 不動産登記法 第119条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 所有不動産記録証明制度について(法務省)
- 登記手数料令 第2条・第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 租税特別措置法 第84条の2の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。