相続登記の司法書士費用:報酬の決まり方と見積もりの比べ方
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相続登記を司法書士に頼むときの費用は、報酬(事務所ごとに自由に決まる)と、実費(登録免許税・戸籍などの手数料)に分かれます。参考になる数字には、日本司法書士会連合会(日司連)のアンケート(2024年3月)の設例の平均があります(74,888円・消費税込み・実費は別)が、不動産の数や戸籍の量、数次相続かどうかが設例と違えば報酬も変わります。この記事の主役は平均額ではなく、報酬が増える要素、見積書の行ごとの確かめ方、2つの事務所の比べ方です。
相続登記の司法書士費用は「報酬の基準」で決まる:設例との違いを数える
司法書士の報酬に法律で決まった額はありません。日司連は、報酬は各司法書士が自由に定め、報酬の額や算定方法・諸費用を示したうえで依頼者との合意で決める、と説明しています。そのかわり、司法書士法施行規則22条は、司法書士が事務を受任しようとするとき、あらかじめ「報酬額の算定の方法その他の報酬の基準」を示すよう定めています。つまり、依頼の前に、計算のしかたそのものを見せてもらえるということです。
設例の平均を自分の件の目安にするときは、設例の条件と自分の件の違いを数えてください。
| 設例の条件 | 自分の件で確かめること |
|---|---|
| 土地1筆・建物1棟 | 土地の筆数・建物の数はいくつか |
| 固定資産評価額の合計1,000万円 | 評価額の合計はいくらか(報酬の算定に入るかは事務所しだい) |
| 戸籍謄本等5通の請求 | 本籍の移り変わりと相続人の数から、戸籍は何通になりそうか |
| 遺産分割協議書と相続関係説明図の作成 | 協議書は自分で作るか、頼むか。遺言があるか |
| 法定相続人3名のうち1名が単独で相続 | 相続人は何人か。共有で相続するか |
違いが多いほど、設例の平均から離れます。違いが少なければ、見積もりが平均から大きく離れているときに理由を聞く手がかりになります。実費を含めた総額の比べ方は相続登記の費用:自分でする場合と司法書士に頼む場合の内訳で筆者の計算例とともに示しています。
報酬が増える8つの要素
見積もりが高くなる理由の多くは、次のどれかで作業が増えることです。
| 要素 | 作業が増える理由 | 見積書での現れ方の例 |
|---|---|---|
| 1. 不動産の数が多い | 申請書に書く不動産と、評価額・登記事項の確認が増える | 不動産1件ごとの加算 |
| 2. 管轄の法務局が複数 | 法務局ごとに申請書を分けて出す | 申請件数ごとの報酬・郵送料 |
| 3. 相続人が多い・疎遠 | 戸籍の量、協議書への署名押印の取りまとめが増える | 相続人1人ごとの加算、戸籍の取り寄せ代行の単価 |
| 4. 数次相続(相続が重なっている) | 亡くなった順に、相続ごとの登記や専用の書き方が要る | 申請件数の増加、協議書の作成の加算 |
| 5. 登記簿の住所と最後の住所が違う | 住所のつながりを示す住民票の除票・戸籍の附票などを追加で集める | 書類取得の加算、調査費 |
| 6. 未登記の建物がある | 相続登記(所有権保存登記を含む)の前に表題登記が要り、その代理は土地家屋調査士の仕事 | 土地家屋調査士の費用が別に発生 |
| 7. 不動産の調査から頼む | どの不動産があるかを名寄帳や所有不動産記録証明書で調べる | 調査費、証明書の手数料(所有不動産記録証明書は書面1通1,600円) |
| 8. 協議書の作成・遺産承継まで頼む | 登記以外の書類作成・預貯金の手続きが加わる | 別項目の報酬 |
4の数次相続は、法務局の様式でも「遺産分割(数次相続)」の記載例が別に用意されているほど、書き方が普通の相続と違います。祖父名義の不動産を登記するような場面は数次相続の相続登記:祖父名義の家を登記する順番と中間省略を先に読むと、見積もりの説明が理解しやすくなります。なお、登記しないまま亡くなった人を名義人にする土地の登記は、2027年3月31日までなら登録免許税が免税になりうるので(租税特別措置法84条の2の2第1項)、見積書でこの免税が反映されているかも見ます。
6の未登記建物は、司法書士の見積もりとは別の費用になる点に注意してください。表題登記がない建物を取得した人には1か月以内に表題登記を申請する義務があり(不動産登記法47条1項)、この手続の代理は土地家屋調査士が受けます。くわしくは未登記建物の相続登記:表題登記の手順としない場合の売却への影響にまとめています。
見積書を行ごとに確かめるチェックリスト
見積書を受け取ったら、金額の合計より先に、行ごとに次を確かめます。
- 報酬と実費の行が分かれている(登録免許税は国の税金で、報酬ではない)
- 登録免許税の計算の元になった価格と年度が書かれている、または聞けば答えてもらえる
- 100万円以下の土地の免税(2027年3月31日まで)を使うか、使わない理由が説明されている
- 戸籍の取り寄せ代行が1通いくらか、手数料の実費と分かれている
- 申請件数(管轄の法務局ごと、相続ごと)が何件で計算されているか
- 協議書・相続関係説明図の作成が報酬に含まれるか、別項目か
- 追加料金が出る条件(相続人が増えた、不動産が見つかった、住所がつながらない)と、その単価
- 消費税が込みか別か
- 日当・交通費(遠方の法務局、出張の面談)があるか
- 支払いの時期(着手金と完了時の精算)と、途中でやめたときの精算
- 完了時に受け取る書類(登記完了後の登記事項証明書、返却される戸籍の原本など)と、その受け渡しの方法
チェックがつかない行は、面談の場で聞けば足ります。司法書士は報酬の基準を示す立場にあるので、計算のしかたを聞くことは失礼ではありません。
2つの事務所の見積もりを並べる手順
見積もりを比べるときは、条件をそろえて依頼し、同じ表に書き写します。
- 依頼の条件を文章にしてそろえる:不動産の所在(課税明細書の写し)、相続人の人数と関係、遺言の有無、協議書を自分で作るか、戸籍を自分で集めるかを、どの事務所にも同じ文面で伝えます。
- 報酬の基準と見積書をもらう:見積書だけでなく、算定方法が分かる報酬の基準も一緒にもらいます。
- 下の表に書き写す:空欄が残ったら、その項目を問い合わせます。
- 差が大きい行の理由を聞く:作業の範囲が違うのか、単価が違うのかを分けて考えます。
| 項目 | 事務所A | 事務所B |
|---|---|---|
| 登記の申請代理(報酬) | _円 | _円 |
| 申請件数(管轄・相続の数) | _件 | _件 |
| 戸籍の取り寄せ代行(1通あたり) | _円 | _円 |
| 協議書・相続関係説明図の作成 | _円/含む | _円/含む |
| 不動産の調査 | _円/なし | _円/なし |
| 登録免許税(実費・価格の年度) | _円(_年度) | _円(_年度) |
| 戸籍などの手数料・郵送料(実費) | _円 | _円 |
| 追加料金の条件と単価 | ||
| 支払いの時期 |
依頼文の例:「亡父名義の不動産の相続登記について、お見積もりをお願いします。課税明細書の写しを添付します。不動産は2つの市にあり、相続人は母と兄と私の3人で、私が単独で相続する予定です。協議書は作成をお願いしたく、戸籍は私が集めて郵送します。報酬の基準と、報酬・実費を分けた見積書をいただけますか」
安さ以外で比べる点と、頼み先の選択肢
報酬が安くても、作業の範囲が狭ければ、後から追加が出ます。比べるときは、担当する司法書士の名前、完了までの目安の期間、補正(法務局からの直しの指示)があった場合の対応、連絡の手段も確かめてください。司法書士が登録されているかは日司連の司法書士検索で調べられます。
そもそも頼むか、自分で申請するかを決めかねている人は、条件ごとの向き不向きを相続登記は司法書士に頼むべき?自分でできる人と頼むべき人で確かめてから見積もりを取ると、依頼の範囲を決めやすくなります。
戸籍の収集から相続登記、預貯金の手続きまでをまとめて頼める相続手続きの代行サービスもあります(PR)。パック料金のときは、上の比較表の行に分けて書き写し、登記を担当する資格者と、不動産の数などの上限を超えたときの単価を確かめてから比べてください。
よくある質問
Q. 相続登記の報酬は、不動産の評価額が高いほど上がりますか?
評価額を報酬の算定に入れるかどうかは事務所の報酬の基準しだいです。評価額に比例して増えると決まっているのは国に納める登録免許税(0.4%)のほうなので、見積書では報酬と登録免許税を分けて見てください。報酬の算定方法は、依頼の前に基準として示してもらえます。
Q. 見積もりを取った事務所に依頼しないと失礼になりますか?
見積もりは依頼を決めるための材料なので、比べたうえで断ってかまいません。断るときは「今回はほかの方法で進めることにしました」と短く伝えれば足ります。相談料がかかる事務所もあるので、面談の予約の時点で相談料の有無を聞いておきます。
出典・参考にした公的な情報
- 司法書士の報酬(報酬アンケート 2024年3月実施)(日本司法書士会連合会)
- 司法書士法施行規則 第22条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 司法書士法 第3条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産登記法 第47条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 所有不動産記録証明制度について(法務省)
- 相続登記の登録免許税の免税措置について(法務局)
- 不動産登記の申請書様式について(法務局)
- 司法書士検索(日本司法書士会連合会)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。