公正証書遺言は死亡したらどうする?検索システムと写しの請求方法
親が亡くなったら、まず公正証書遺言の正本か謄本が手元に残っていないかを探し、見つからなければ近くの公証役場で「遺言検索」を申し出て、保管している公証役場に謄本を請求する、という順で進めます。遺言検索は全国どこの公証役場でもでき、申出は無料です。公正証書遺言は家庭裁判所の検認が要らない(民法1004条2項)ので、謄本が手に入れば、そのまま銀行や法務局の手続きに使えます。この記事では、検索と請求の必要書類、手数料、郵送での請求、その後の流れを順に示します。
亡くなった後の4つの段階
日本公証人連合会「2 遺言」の「7 遺言の検索、謄本の請求及び保存期間」に沿って、流れを4段階に分けます。
- 手元を探す:作成時、遺言者には正本1通と謄本1通が交付されるのが通常です。自宅の書類や、遺言執行者に指定された人・専門家が預かっていないかを確かめます。
- 遺言検索を申し出る:手元にない、または他にもあるか確かめたいときは、近くの公証役場で検索を申し出ます。分かるのは遺言の有無と、保管している公証役場です。
- 謄本を請求する:保管している公証役場に、窓口か郵送で謄本を請求します。
- 手続きに進む:検認は要らないので、謄本(または正本)を使って預金や不動産の名義変更に進みます。遺言執行者がいれば、執行者が中心になって進めます。
- 手元に正本・謄本がある → そのまま手続きへ(検認なし)
- 手元にない → 近くの公証役場で遺言検索(無料)→ 保管公証役場が分かる → 窓口か郵送で謄本を請求 → 手続きへ
- 検索で見つからない → 法務局の自筆証書遺言書保管制度と自宅の手書きの遺言を確かめる
亡くなった親が遺言を残したかどうかを、公証役場・法務局・自宅の全部から調べる方法は、遺言書があるかどうかの調べ方:法務局・公証役場・自宅の探し方にまとめています。
遺言検索の申出:必要書類と調べられる範囲
日本公証人連合会は、平成元年以降に全国の公証役場で作られた遺言公正証書について、作成した公証役場・公証人・遺言者の氏名・生年月日・作成年月日などの情報を管理しています。この情報を使って、どの公証役場でも遺言の有無と保管先を検索できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申し出られる人 | 相続人などの利害関係人(遺言者の生前は遺言者本人のみ) |
| 申出先 | 全国どこの公証役場でもよい(近くの公証役場) |
| 費用 | 無料 |
| 必要書類1 | 遺言者が亡くなった事実を証明する書類(除籍謄本など) |
| 必要書類2 | 申出人が遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本 |
| 必要書類3 | 申出人の本人確認書類(マイナンバーカード・運転免許証など顔写真付きの公的身分証明書、または実印と発行後3か月以内の印鑑登録証明書) |
| 分かること | 遺言公正証書の有無と、保管している公証役場 |
調べられるのは平成元年以降に作られたものです。それより前に作られた遺言は、この検索の対象に入っていません。遺言者が住んでいた地域の公証役場や、作成に関わった専門家の心当たりがあれば、直接問い合わせることになります。
申出の前に、戸籍の準備で手間取ることがあります。亡くなった人の除籍謄本と、自分がその相続人だと分かる戸籍謄本があれば足りるので、相続手続き全体のために出生から死亡までの戸籍を集めている途中でも、先にこの2つだけ取って検索に行けます。
謄本の請求:窓口でも郵送でもできる
検索で保管先が分かったら、その公証役場に謄本を請求します。日本公証人連合会によると、請求は郵送でもでき、保管先の公証役場に出向く必要はありません。公証人法44条も、嘱託人とその承継人が公正証書の正本や謄本を請求できると定めています。
郵送で請求するときに出すものは次の4つです。
- 謄本請求書(本人確認に印鑑登録証明書を使うなら実印を押す。顔写真付きの身分証明書を使うなら押印不要)
- 遺言者が亡くなった事実を証明する書類(除籍謄本など)
- 請求者が遺言者の相続人であることを証明する戸籍謄本
- 請求者の本人確認書類(顔写真付きの公的身分証明書、または実印と発行後3か月以内の印鑑登録証明書)
顔写真付きの身分証明書で本人確認をする場合は、補充的にテレビ電話で本人確認が行われます。日本公証人連合会は、事前に保管公証役場に連絡して相談するよう案内しています。手数料や郵送料の払い方もそのときに確かめます。
謄本の交付手数料は、書面なら1枚につき300円、電子データなら1通2,500円です(公証人手数料令40条・40条の2)。書面の場合は枚数で変わるので、何枚になるかを保管公証役場に聞いておくと、郵送で請求するときの準備がしやすくなります。
文例(保管公証役場への電話):「〇月〇日に亡くなった父〇〇(生年月日〇年〇月〇日)の遺言公正証書について、遺言検索でこちらに保管されていると分かりました。長男の〇〇です。謄本を郵送で請求したいので、請求書の書式と、手数料・返信用封筒の送り方を教えてください。」
遺言公正証書は、遺言者の死亡後50年、証書作成後140年、または遺言者の生後170年間保存する取扱いとされています。何年もたってから遺言の存在に気づいた場合でも、検索と請求ができる可能性があります。
謄本が手に入った後:検認なしで手続きへ
公正証書遺言は検認が要らないので、謄本を受け取ったらすぐに手続きを始められます。進め方は、遺言執行者が指定されているかで変わります。
| 場面 | 進め方 |
|---|---|
| 遺言執行者が指定されている | 執行者は就任を承諾したら直ちに任務を行い、遅滞なく遺言の内容を相続人に通知する(民法1007条)。預金や不動産の手続きは執行者が中心に進める |
| 遺言執行者が指定されていない | 財産を受け取る人が自分で名義変更を進める。執行者が必要なら、利害関係人が家庭裁判所に選任を申し立てる(民法1010条。遺言書1通につき収入印紙800円分と郵便切手) |
預金の手続きでは、全国銀行協会の案内によると、遺言がある場合に一般に必要な書類は、遺言書、亡くなった人の死亡が確認できる戸籍謄本、その預金を受け取る人(遺言執行者がいれば執行者)の印鑑証明書です。公正証書遺言なので、ほかの遺言で求められる検認調書や検認済証明書は要りません。家庭裁判所で執行者が選任されていればその審判書の謄本が加わります。金融機関によって追加の書類を求められることがあるので、取引先に確かめてください。
不動産を遺言で受け取る相続人は、自分が相続したと知り、取得したことを知った日から3年以内に相続登記を申請する義務があります。相続人への遺贈も同じです(不動産登記法76条の2第1項)。期限の数え方と過料は相続登記の義務化:期限3年・過料10万円以下・相続人申告登記で確かめてください。
遺言があっても、相続放棄を考えるなら期限は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」です(民法915条)。遺言の中身を確かめるのが遅れると判断の時間が減るので、検索と請求は早めに済ませます。他の期限の全体は相続の期限一覧:3か月・4か月・10か月・3年の順番と過ぎたときの影響で確かめられます。
遺言書がある場合とない場合で手続きがどう分かれるかは遺言書あり・なしで相続手続きはどう違う?手順の分かれ道を比較、執行者の役割は遺言執行者とは?指定された人の役割と、いない時の家庭裁判所での選任で詳しく扱っています。遺言の内容に納得できない相続人がいる場合は、公正証書遺言でももめる?争いになる原因と無効が主張される場面を先に読んでください。
なお、親が銀行の貸金庫を使っていて、その中に遺言の正本があるかもしれない場合、日本公証人連合会は、相続人の依頼で貸金庫を開けて中身を点検・確認する事実実験公正証書を作る例を紹介しています。開け方は金融機関ごとの手続きなので、まず取引先の金融機関に相談します。
よくある質問
Q. 親が生きているうちに、公正証書遺言があるか調べられますか?
調べられません。日本公証人連合会は、遺言者が亡くなる前の遺言検索の申出は遺言者本人に限られると案内しています。家族が生前に内容を知りたいときは、本人に正本や謄本を見せてもらうしかありません。
Q. 遺言検索で見つからなければ、遺言はないと考えてよいですか?
遺言検索で分かるのは、平成元年以降に作られた公正証書遺言です。自筆証書遺言は対象外で、法務局に預けた自筆証書遺言は法務局で別に調べます。自宅に手書きの遺言が残っていることもあるので、公証役場の検索と法務局での確認、自宅の書類の確認を組み合わせます。
Q. 公正証書遺言の謄本は、財産をもらわない相続人でも請求できますか?
日本公証人連合会の案内では、遺言で財産を受け取るかどうかにかかわらず、遺言者の相続人であることを戸籍謄本で示して謄本を請求する形になっています。公証人法44条も、嘱託人とその承継人が謄本などを請求できると定めています。遺言で財産を受け取る相続人以外の人が請求できるかは、保管している公証役場に相談してください。
出典・参考にした公的な情報
- 7 遺言の検索、謄本の請求及び保存期間 Q1〜Q4(日本公証人連合会「2 遺言」)(日本公証人連合会)
- 1 公正証書 Q2(貸金庫の開扉の事実実験公正証書)(日本公証人連合会)(日本公証人連合会)
- 公証人法 第44条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 公証人手数料令 第40条・第40条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第915条・第1004条・第1007条・第1010条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産登記法 第76条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 預金相続の手続に必要な書類(全国銀行協会)(全国銀行協会)
- 遺言執行者の選任(裁判所)(最高裁判所)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。