生前贈与と贈与税 / Q&A

親子の贈与税はばれる?税務署が把握するしくみと申告しない不利益

この記事のもくじ
  1. 親子の贈与税はばれる?税務署が把握できる仕組み
  2. 親の相続のときに見つかる流れ
  3. 申告しないとかかるもの:無申告加算税・延滞税・重加算税
  4. 何年前までさかのぼるか
  5. 申告していなかったと気づいたら:今からする手順

親から受け取ったお金を申告しないままにしておくと、税務署が把握する機会はあります。国税庁が2025年12月に公表した令和6事務年度の調査の結果では、贈与税の実地調査2,778件のうち2,582件で申告漏れなどが見つかり、そのうち2,154件(83.4%)は申告そのものをしていない無申告でした。見つかった財産の62.9%は現金・預貯金等です。この記事は「ばれない方法」ではなく、税務署が把握できる仕組みと、申告しなかった場合に増える税額を示し、今から申告する手順につなげます。

親子の贈与税はばれる?税務署が把握できる仕組み

税務署には、贈与税の調査のために、本人だけでなく周りの人や機関に質問し、帳簿や書類を確かめる権限があります。国税通則法74条の3は、相続税・贈与税の調査について、納税義務があると認められる人のほか、その人と債権債務のある人、その人の財産を保管していると認められる人、財産を譲り渡した・譲り受けたと認められる人にも質問や検査ができると定めています。預金を預かる金融機関のように、お金の流れの記録を持つ相手もここに含まれうる立場です。

国税庁が公表した令和6事務年度の調査の結果は次のとおりです。

統計:贈与税・相続税の調査の結果(令和6事務年度、国税庁)
項目 件数・金額
贈与税の実地調査 2,778件
うち申告漏れなどの非違 2,582件
非違のうち無申告 2,154件(83.4%)
贈与税の非違財産のうち現金・預貯金等 1,754件(62.9%)
贈与税の追徴税額 123億円
相続税の実地調査 9,512件(非違7,826件、非違割合82.3%)

数字から分かるのは、贈与税の調査で問題になるのは「申告をしていない」ケースが大半で、対象は不動産より現金や預金の移動が多い、ということです。親子の通帳間の振込は記録が残るので、「現金の手渡しでなく振込だったから分かる」というより、「記録が残る取引ほど、何年たっても後からたどれる」と考えるほうが実態に近いでしょう。

親の相続のときに見つかる流れ

贈与税の申告漏れが表に出やすいのは、贈与した親が亡くなったときです。理由は2つあります。

  1. 亡くなる前の贈与は相続税の計算に足し戻す:相続や遺贈で財産を取得した人が、亡くなった人から亡くなる前の一定期間に受けた贈与は、110万円以下の分も含めて相続財産に加算します(No.4161)。2026年中の相続なら3年以内の贈与が対象で、2027年以後の相続から段階的に7年へ延びます。相続税の申告では、この加算の対象になる贈与を書き出すことになります。
  2. 家族名義の預金が、亡くなった人の財産とされる場合がある:子が知らない口座に親が入金し、通帳と印鑑も親が持っていたような預金は、贈与ではなく名義預金として相続財産に入りえます。判断の5項目は贈与税の時効の記事の表にまとめています。

相続税の調査は令和6事務年度に9,512件行われ、82.3%で申告漏れなどが見つかっています。調べる側は、亡くなった人の口座だけでなく、家族の口座との間のお金の動きも見ていきます。家にある現金の扱いはタンス預金の相続税の記事で扱っています。

申告しないとかかるもの:無申告加算税・延滞税・重加算税

期限までに申告しなかった場合は、本来の贈与税に加えて次の税がかかります。

種類 割合(国税通則法) かかる場面
無申告加算税(調査の通知前に自主的に申告) 5% 自分で気づいて期限後申告した
無申告加算税(調査の通知後、調査を受ける前に申告) 10%(50万円超の部分15%、300万円超の部分25%) 通知を受けて申告した
無申告加算税(調査を受けて申告・決定) 15%(50万円超の部分20%、300万円超の部分30%) 調査で指摘された
重加算税(無申告の場合) 40% 事実を隠したり偽ったりして申告しなかった
延滞税 2026年は、納期限の翌日から2か月以内 年2.8%、2か月を過ぎた分 年9.1% 納付が遅れた日数分

無申告加算税は、期限から1か月以内に自主的に申告し、期限までに全額を納めているなど一定の条件を満たせば、課されない場合があります(No.2024)。また、期限内に申告しなかったことに正当な理由があると認められる場合も課されません。

計算例1(筆者の概算。加算税・延滞税の端数処理は省略):2025年中に、30歳の子が父から500万円を受け取り、申告しなかった。

  • 本来の贈与税:(500万円−110万円)×15%−10万円=48.5万円(特例税率)
  • 調査の通知前に自主的に申告した場合の無申告加算税:48.5万円×5%=約2.4万円
  • 調査を受けて申告した場合の無申告加算税:48.5万円×15%=約7.3万円
  • 事実を隠していたとされた場合の重加算税:48.5万円×40%=19.4万円
  • 延滞税:2026年の割合のまま納付が1年遅れたとすると、48.5万円×(2.8%×2/12+9.1%×10/12)=約3.9万円

計算例2:税額が50万円を超えるとき(筆者の概算):2025年中に、30歳の子が父から1,000万円を受け取り、申告しなかった。

  • 本来の贈与税:(1,000万円−110万円)×30%−90万円=177万円(特例税率)
  • 調査の通知前に自主的に申告:177万円×5%=8.85万円
  • 調査の通知後、調査を受ける前に申告:50万円までの部分は10%、超える127万円の部分は15%なので、5万円+19.05万円=24.05万円
  • 調査を受けて申告、または決定を受けた場合:50万円までは15%、超える127万円の部分は20%なので、7.5万円+25.4万円=32.9万円

税額が大きいほど、通知の前後で加算税の差が開きます。通知前の5%と調査後の32.9万円では、4倍近い開きです。

計算例3:期限から1か月以内の例外(筆者の概算):計算例1の子が、期限(3月15日は日曜日なので2026年3月16日)を2週間ほど過ぎた3月末に気づいて自分から申告し、本税48.5万円をその日に全額納めた。国税庁 No.2024(所得税の案内ですが、無申告加算税は国税通則法の同じ規定で、贈与税にも当てはまります)の要件(期限から1か月以内の自主的な申告、期限内に申告する意思があったと認められる一定の場合)を満たせば、無申告加算税は0円です。この場合も、期限の翌日から納付日までの延滞税はかかります。要件のうち「納付すべき税金の全額を法定納期限までに納めている」などの点は、期限後に気づいた人には当てはまりにくいので、自分が該当するかは申告前に税務署で確かめます。

同じ500万円でも、自分から申告するか、調査で指摘されるか、隠したとされるかで、上乗せの額は数万円から20万円以上まで変わります。延滞税の割合は年ごとに変わるので、実際の計算は国税庁 No.9205 のその年の割合を使います。

何年前までさかのぼるか

税務署が贈与税を課税できる期間は、申告期限(もらった翌年の3月15日)から6年、偽りその他不正の行為があれば7年です。数え方の早見表と、名義預金との関係は贈与税の時効は6年かの記事で説明しています。

申告していなかったと気づいたら:今からする手順

  1. 年ごとに書き出す:いつ、誰から、いくら受け取ったかを、通帳の記録で1年ずつ確かめる(1月〜12月で区切る)
  2. 年ごとに110万円を超えるかを見る:超えた年が申告の対象。生活費・学費として都度使った分は除く
  3. 贈与だったかを確かめる:自分が知って受け取り、自分で管理していたか。知らないうちの入金だった場合は、贈与として申告する前に相談する
  4. 超えた年の分を期限後申告する:申告書は年分ごとに作る。作り方は贈与税の申告のやり方と同じ
  5. 本税と延滞税を納める:加算税は後で税務署から通知が来る

何年分もある、金額が大きい、親がすでに亡くなっていて相続税の申告とも関係する、といった場合は、どの年に何を申告するかの判断が必要になり、税理士の仕事の範囲です。一般的な質問は国税庁の電話相談センターでもできます。相続税の側で申告を忘れていた場合の流れは相続税の申告をしないとどうなるかの記事にまとめています。

よくある質問

Q. 少額の仕送りや、たまのお小遣いでも申告が要りますか?

1年間の合計が110万円以下なら、贈与税はかからず申告も要りません。生活費や学費を必要な都度出してもらう分は、もともと贈与税の対象外です。気にすべきなのは、まとまった額を受け取って預金したり、家や車の購入に充てたりした年で、その年の合計が110万円を超えるかを確かめます。

Q. 親が自分の通帳に入金していたのを、後から知りました。贈与税の申告をすべきですか?

まず、その入金が贈与として成り立っていたかを整理します。贈与は、あげる人の意思表示と、もらう人の受諾で成り立つ契約なので、知らないうちに入金されていた期間は、親の財産を子の名義で預けていただけと扱われることがあります。どちらに当たるかは事実関係で決まるため、入金の記録と通帳の管理状況をまとめて税務署の相談窓口か税理士に相談してください。

Q. 自分から期限後に申告すると、調査で見つかるより軽くなりますか?

軽くなります。国税通則法では、調査の通知の前に自主的に期限後申告をした場合の無申告加算税は5%、調査を受けて申告した場合は15%(50万円を超える部分は20%など)と、割合に差があります。期限から1か月以内で一定の条件を満たせば、無申告加算税がかからない場合もあります。

出典・参考にした公的な情報

出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。

この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。

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