タンス預金の相続税:現金が申告から漏れやすい理由と申告の仕方
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自宅の金庫やタンスに置いていた現金も、亡くなった日に手元にあった額がそのまま相続財産になり、相続税の申告に入れます。相続税は、相続や遺贈で取得した「財産の全部」にかかるからです(相続税法2条)。銀行口座と違って残高証明書が出ないため、数え方と記録の残し方を決めておかないと申告から漏れやすい財産です。この記事では、現金の扱い、漏れやすい場面、申告の手順、漏れたときの不利益を順に説明します。
相続税で現金はどう扱う?亡くなった日の手元の額が財産
現金は評価の計算をせず、亡くなった日に存在した金額をそのまま相続財産の額にします。国税庁の「相続税の申告のためのチェックシート」も、預貯金の項目で「相続開始日現在の残高で計上していますか(現金の残高も確認しましたか。)」と確かめるよう求めています。
場面ごとの扱いを整理すると次のとおりです。
| 場面 | 相続税での扱い | 残しておく資料 |
|---|---|---|
| 自宅・金庫に置いていた現金 | 亡くなった日の額を「現金」として計上 | 数えた日・金額・立ち会った人の記録、写真 |
| 亡くなる前に口座から引き出し、亡くなった日に残っていた | 残っていた額を「現金」として計上 | 通帳の出金記録、数えた記録 |
| 亡くなる前に引き出し、生前に使い切った | 使った分は財産に残らない | 何に使ったかが分かる領収書・メモ |
| 亡くなった後に口座から引き出した | 引き出す前の口座の残高(預金)として計上 | 死亡日時点の残高証明書 |
| 手元の現金で葬儀代を払った | 現金は財産に入れ、葬儀代は葬式費用として差し引く | 葬儀社の領収書、お布施のメモ |
注意したいのは、亡くなった後に葬儀代などを払って現金が減っていても、財産に入れるのは亡くなった日の額だという点です。葬儀代は、財産から差し引ける葬式費用として別に扱います(国税庁 No.4129)。差し引けるもの・引けないものは相続税の債務控除:借金や葬儀費用は引ける?対象と対象外の一覧にまとめています。
家族名義の口座に移されていたお金は、現金ではなく預金の問題になります。亡くなった人がお金を出して管理していた家族名義の預金の扱いは預金の相続と相続税:名義預金と判断される例と記録の残し方で説明しています。
現金が申告から漏れやすい理由と、調査での見られ方
現金は、次のような理由で申告から抜け落ちやすくなります。
- 残高証明書のような第三者の書類がなく、家族も総額を知らない
- 自宅の複数の場所や、貸金庫・実家の仏壇など、保管場所が分かれている
- 亡くなる前の入院や葬儀に備えて引き出したお金が、「もう使うお金」として意識から外れる
- 遺産分割の話し合いで現金を先に分けてしまい、申告書に書く段階で忘れる
一方で、現金の出どころは銀行の記録に残ります。国税庁が公表した令和6事務年度の相続税の調査では、申告漏れ相続財産2,879億円のうち、現金・預貯金等は837億円(29.1%)で、有価証券(393億円)や土地(353億円)を上回り、「その他」を除くと最も大きな区分でした。同じ資料には、相続開始前に引き出された多額の現金の使い道を尋ねたところ相続人があいまいな回答を繰り返し、相続人の自宅の金庫から現金が見つかった事例が載っています。
調査の進み方と、申告後に備えておくことは相続税の税務調査:時期・調べられる点・申告後に備えることで取り上げています。
タンス預金の申告の仕方:数える・記録する・申告書に書く
現金を申告するときの手順です。
- 保管場所を洗い出す:金庫、タンス、仏壇、書斎、貸金庫、別宅。亡くなった人がよく使っていた財布や封筒も見る。
- 相続人が立ち会って数える:できれば相続人の2人以上で、紙幣と硬貨を金種ごとに数える。
- 記録を作る:数えた日、場所、金種ごとの枚数、合計、立ち会った人の名前を書き、全員が署名する。札束や封筒の写真も撮る。
- 通帳の出金記録と照らす:亡くなる前の数年分の大きな出金を書き出し、手元の現金や支払いの領収書と結びつける。
- 財産の一覧に「現金」として書く:申告書の財産の明細に、種類「現金」、金額は亡くなった日の額で載せる。
- 分け方を遺産分割協議書に書く:誰がいくら受け取るかを協議書に入れておくと、申告書の取得者欄と一致させやすい。
記録の書き方の例です。
現金の確認記録:「令和8年9月14日、被相続人○○の自宅(××市△△)の寝室の金庫および仏壇引き出しにて、相続人△△・□□の2名で現金を確認した。一万円札312枚、五千円札4枚、千円札17枚、硬貨合計2,860円。合計3,159,860円。(署名)△△ □□」
亡くなった日と数えた日が離れている場合は、その間に現金から払ったもの(葬儀代、病院への支払いなど)を領収書つきで書き添え、亡くなった日の額に戻して計上します。
申告から漏れたときの不利益:加算税・延滞税・軽減が使えない
申告した額が足りなかったと後から分かると、不足した税額に加えて次の負担がかかります。
| 負担 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 過少申告加算税 | 増えた税額の10%。期限内申告の税額と50万円の多い方を超える部分は15% | 国税通則法65条 |
| 自分から直した場合 | 調査の通知の前に修正申告すれば課されない。通知の後、調査による更正を予知する前なら5% | 国税通則法65条 |
| 重加算税 | 財産を隠したり事実を偽ったりした場合、過少申告加算税に代えて35%(無申告なら40%) | 国税通則法68条 |
| 延滞税 | 2026年中は、納期限の翌日から2か月以内が年2.8%、2か月を過ぎると年9.1% | 国税庁 No.9205 |
| 配偶者の税額の軽減 | 隠したり偽ったりした財産には使えない | 国税庁 No.4158 |
手元の現金をわざと申告から外すと、加算税の割合が大きく上がるうえ、配偶者が相続した分でも税額の軽減が使えなくなります。現金があることに気づいた時点で申告に入れるのが、結果として負担を小さくします。
税務署が申告の誤りを正せる期間は、法定申告期限から5年、偽りその他の不正があれば7年です。詳しくは相続税の時効は5年・7年?税務署が調べられる期間と申告漏れで説明しています。申告前に財産全体を漏れなく探す方法は相続財産の調べ方:預金・不動産・借金を漏れなく見つける照会先一覧が参考になります。
「相続税 現金」の話が相続税の手続き全体のどこに当たるかは、相続税とは?かかる人の目安・計算の流れ・申告期限10か月の全体像で確かめられます。次に読むならマンションの相続税評価額はどう変わった?2024年からの区分所有補正率です。
よくある質問
Q. 亡くなる数日前に、葬儀代として口座から200万円を引き出しておきました。どう申告しますか?
亡くなった日にその現金が手元に残っていれば、200万円は「現金」として相続財産に入ります。そのお金で後から葬儀代を払った場合は、葬式費用として財産から差し引く側で扱います。引き出しの日付と金額、葬儀代の領収書をそろえておくと、財産と控除の両方を説明できます。
Q. 申告を出した後に、押し入れから現金が見つかりました。
見つかった額を数えて記録し、修正申告の準備をします。税務署から調査の通知を受ける前に自分から修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。延滞税は、納期限の翌日から納める日までの日数に応じてかかることがあります。
Q. 家に置いてある現金は、税務署に分からないのではありませんか?
現金そのものに記録はありませんが、銀行口座から引き出した日付と金額は通帳や取引履歴に残ります。国税庁の調査事例にも、相続開始前に引き出された多額の現金の使い道を調べて、相続人の自宅の金庫から現金が見つかった例が公表されています。
出典・参考にした公的な情報
- 相続税法 第2条(相続税の課税財産の範囲)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 相続税の申告のためのチェックシート(令和6年分以降用)(国税庁)
- 令和6事務年度における相続税の調査等の状況(国税庁)
- 国税通則法 第65条(過少申告加算税)・第68条(重加算税)・第70条(更正の期間制限)(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.9205 延滞税について(国税庁)
- No.4158 配偶者の税額の軽減(国税庁)
- No.4129 相続財産から控除できる葬式費用(国税庁)
出典の確認日:2026-10-23。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。