空き家の維持費:固定資産税・光熱費・保険・管理費の年間の目安
空き家の維持費は、固定資産税・都市計画税、電気と水道の基本料金、火災保険料、管理(見回り・草刈り)の費用、修繕に備える費用の5つを足すと、年間の額がつかめます。金額は家ごとに大きく違い、公的な平均値はありません。そのかわり、どの項目も「どの書類を見れば分かるか」は決まっています。この記事では、項目ごとの調べ方を表にし、筆者の計算例で年間の合計の出し方と、売るまで持ち続けた場合の比べ方を示します。
空き家の維持費の項目と調べ方:早見表
まず、相続した空き家に毎年かかるお金を、調べる書類と一緒に並べます。
| 項目 | 何にかかるか | 金額を調べる書類・窓口 | 減らし方の例 |
|---|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 1月1日時点の所有者に毎年 | 納税通知書と課税明細書(市区町村の資産税の担当課) | 住宅用地特例を外さない管理 |
| 電気 | 契約を続ける限り基本料金 | 電力会社の検針票・会員ページの料金表 | 契約アンペアの見直し、使わない季節の解約 |
| 水道 | 開栓している限り基本料金 | 水道局の検針票・料金表 | 冬の凍結に備えた水抜き、長期で通わないなら休止 |
| ガス | 開栓している限り基本料金 | ガス会社の料金表 | 使わないなら閉栓 |
| 火災保険 | 契約中は保険料 | 保険証券・更新案内 | 補償の範囲と保険金額の見直し |
| 管理 | 自分で通う交通費、または委託料 | 交通機関の運賃、管理会社の料金表と見積書 | 訪問をほかの用事とまとめる、家族で分担 |
| 草刈り・剪定 | 夏を中心に年数回 | 造園業者などの見積書 | 防草シート、伸びる前の早めの手入れ |
| 修繕 | 雨漏り・外壁・設備の不具合 | 工務店の見積書 | 小さな不具合のうちに直す |
| 自治会費など | 地域による | 自治会・町内会 | 加入の扱いを自治会と相談 |
固定資産税は、住宅用地特例で土地の課税標準が評価額の6分の1(200㎡以下の部分)に下がっている前提の額です。管理が悪く市区町村から勧告を受けると特例が外れ、土地の税が大きく上がります。特例の仕組みと外れたときの上がり方は空き家の固定資産税:6倍になると言われる理由と住宅用地特例で確かめてください。
光熱費:空き家の電気・水道・ガスを残すか止めるか
国の基本指針は、空き家の管理として定期的な通気・換気と、排水設備への封水の注入(排水口のにおい止めの水を保つこと)を挙げています。通水には水道が、室内の点検には照明が要るので、管理のために通うなら、電気と水道の契約は残しておく必要があります。ガスは、住む人がいなければ使う場面がほとんどないので、閉栓すれば基本料金がかからなくなります。
| 選び方 | 電気 | 水道 | ガス | 向いている場合 |
|---|---|---|---|---|
| 残す | 契約を続ける | 開栓のまま | 閉栓 | 月1回ほど通って換気・通水する |
| 季節で切り替える | 夏冬だけ契約など | 寒冷地は冬に水抜き | 閉栓 | 通う回数が年に数回 |
| すべて止める | 解約 | 休止 | 閉栓 | 売却や解体が決まっている、管理を外回りだけにする |
電気と水道は、使う量がほぼゼロでも、契約の種類によって毎月の基本料金がかかります。基本料金は電力会社・水道局ごとに違うので、亡くなった人の名義の検針票か、契約先の料金表で金額を確かめます。名義の変更や、亡くなった人の口座からの引き落としの止め方は、相続で口座凍結されたら:解除までの流れと公共料金・引き落としの対処にまとめています。
年間の目安を出す:筆者の計算例
ここでは、空き家の固定資産税の計算例と同じ家(土地の評価額1,200万円・200㎡以下、家屋の評価額150万円、市街化区域で都市計画税は0.3%)を使い、税の部分を計算します。
| 項目 | 計算 | 年額 |
|---|---|---|
| 固定資産税(土地) | 1,200万円×1/6×1.4% | 28,000円 |
| 固定資産税(家屋) | 150万円×1.4% | 21,000円 |
| 都市計画税(土地) | 1,200万円×1/3×0.3% | 12,000円 |
| 都市計画税(家屋) | 150万円×0.3% | 4,500円 |
| 税の合計 | 65,500円 |
前提:住宅用地特例が使えていて、課税標準は評価額の特例率どおりに達しているものとした。都市計画税の税率は市区町村が0.3%以内で決めるので、0.3%より低い地域もある。
税以外の項目は、次の手順で自分の家の数字を入れて足します。
- 電気・水道・ガス:直近12か月の検針票の請求額を合計する(12か月分がなければ、1か月の基本料金×12)。
- 火災保険:年払いならその額、長期契約なら総額を年数で割る。
- 管理:自分で通うなら「往復の交通費×年間の訪問回数」、委託なら「月額×12+別料金の作業」。
- 草刈り・剪定:昨年の見積書か、今年の見積もりの額。
- 修繕の積立て:直す予定の箇所の見積額を、持ち続ける予定の年数で割る。
この5つと税の65,500円を足したものが、この家の年間の維持費です。家族で分担するなら、表にしたものを共有しておくと、誰がいくら負担したかの記録にもなります。
売るまで持ち続けた場合の比べ方
持ち続ける年数が長いほど、維持費は積み上がります。売るか持つかを考えるときは、「年間の維持費×持ち続ける年数」と、その間の建物の傷み、税の特例の期限を並べて比べます。
- 相続した空き家の3,000万円特別控除:昭和56年5月31日以前に建てられた家など要件を満たす空き家を、相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ると、譲渡所得から最高3,000万円(相続人が3人以上なら1人2,000万円まで)を差し引ける特例です。制度自体の期限は2027年12月31日の売却までです(国税庁 No.3306)。要件は相続した空き家の3000万円控除:特別控除の要件と2027年末の期限で確かめてください。
- 取得費加算の特例:相続税を納めた人が、相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売ると、相続税の一部を取得費に加えられます(国税庁 No.3267)。3,000万円特別控除とは選択になります。
- 固定資産税の1月1日:その年の固定資産税は1月1日の所有者にかかります。年をまたぐ前に引き渡すかどうかで、翌年度の納税通知が誰に届くかが変わります。売買のときに税を日割りで精算するかは、売買契約で決めます。
持ち続けた場合の総額を出すには、まず「いま売るといくらくらいになりそうか」の見込みが要ります。
一括査定で出てくる査定額は、各社が売り出し価格の参考として示す見込みの金額で、その値段で売れると決まったものではありません。宅建業者は、価格について意見を述べるときは根拠を明らかにする義務があるので(宅建業法34条の2第2項)、「なぜこの金額か」を各社に聞いて比べます。申し込むと複数の会社から連絡が来ることがあり、売るかどうかは査定の結果を見てから決めて構いません。
持ち続けると決めた場合の管理の段取りは空き家の管理方法:月1回の点検項目と管理サービスの選び方、保険料の見直しは空き家の火災保険:住宅用で入れるか・告知と相続後の名義変更を見てください。
よくある質問
Q. 空き家の電気は止めた方が安くなりますか?
電気を解約すれば基本料金はかからなくなりますが、室内の点検で照明が使えず、換気扇や防犯ライトも動きません。契約によっては、使う量がほぼゼロでも基本料金が毎月かかります。点検の回数と季節を考え、契約アンペアを下げる、基本料金のない料金プランを選ぶ、といった方法も含めて、電力会社の料金表で比べてください。
Q. 空き家の維持費は、相続人の間でどう分ければよいですか?
法律で決まった分け方はなく、相続人の話し合いで決めます。遺産分割が終わるまでは、固定資産税は相続人が連帯して納める立場にあり、誰かが立て替えることが多くなります。領収書と記録を残し、遺産分割協議の中で「誰がいくら立て替えたか」を精算する項目に入れておくと、後でもめにくくなります。
出典・参考にした公的な情報
- 地方税法 第349条の3の2・第350条・第359条・第702条の3・第702条の4(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 固定資産税(地方税制度)(総務省)
- 空家等に関する施策を総合的かつ計画的に実施するための基本的な指針(総務省・国土交通省)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
- No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(国税庁)
- 宅地建物取引業法 第34条の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。