空き家の解体:費用の決まり方・解体後の固定資産税・売るなら先か後か
この記事のもくじ
空き家を解体するかどうかは、解体費用(建物の構造・広さ・立地・残った家財・アスベストの有無で決まる)と、解体後に上がる固定資産税、そして売るときの買い手の付きやすさを並べて決めます。費用は家ごとに大きく違うので、3社以上の見積もりで確かめるのが出発点です。解体して更地にすると、1月1日時点で住宅がない土地として扱われ、翌年度から固定資産税の住宅用地特例が外れます。売るつもりなら、更地にしてから売るか、古家付きのまま売って買主に解体してもらうかを、税の特例の条件も含めて比べましょう。
空き家を解体する前に決めること:向く家と待ったほうがよい家
解体は元に戻せない選択なので、取りかかる前に家の条件を確かめます。
| 状況 | 解体が向くか | 理由・確かめること |
|---|---|---|
| 屋根や外壁が傷み、倒れたり落ちたりしそう | 向く | 近所に被害が出れば所有者の責任が問われうる。市区町村の補助の対象になることもある |
| 売る予定で、買い手が新築用地を探す地域 | 向くことがある | 更地のほうが建物の状態を気にせず検討できる。ただし先に査定で比べる |
| 前の道が狭く、建て替えできない土地かもしれない | 待つ | 解体すると新しく建てられないおそれ。再建築不可とはを先に読む |
| 相続放棄を考えている | 待つ | 取り壊しは処分に当たるおそれ(下のFAQ) |
| 相続人で共有していて意見が割れている | 待つ | 全員の同意が要る(民法251条) |
| 貸す・住むなど使い道がある | 待つ | 修繕で使えるなら解体費は不要。比べ方は空き家を賃貸に出すか売るか |
迷う場合は、解体した場合と、しない場合の両方で、売却の査定や固定資産税の額を聞いてから決めても遅くありません。
解体費用の決まり方と見積もりの取り方
解体費用には公的な相場の統計がありません。金額は次の要素で変わるので、同じ条件で複数社に見積もりを頼み、内訳を比べます。
- 建物の構造と延べ床面積:木造か、鉄骨造・鉄筋コンクリート造か。
- 立地:重機やトラックが入れる道か、隣の家との間が狭いか(手作業が増えると高くなる)。
- 残った家財:家具や家電、生活用品が残っていると、その処分費が別にかかる。
- アスベスト(石綿):使われていれば、除去の作業と費用が加わる。
- 付帯物:ブロック塀、庭木、庭石、物置、井戸、浄化槽など。
- 地中の埋設物:掘ってみて古い基礎やがれきが出ると追加になることがある。
見積もりの流れは次のとおりです。
- 登記事項証明書や固定資産税の課税明細で、建物の構造と床面積を確かめる。
- 残す物と処分する物を決め、家財の片付けを自分でするか業者に含めるかを決める。
- 3社以上に現地を見てもらい、同じ条件(付帯物・家財の扱い)で見積もりを頼む。
- 見積書で、本体工事・付帯工事・家財処分・アスベスト調査・届出の代行・整地の仕上げ方が分かれて書かれているかを比べる。
- 「地中から何か出たら」の追加費用の決め方を、契約前に書面で確かめる。
業者の資格も確かめます。解体工事業を営むには、建設業の許可(土木・建築・解体工事業)か、都道府県知事の解体工事業者の登録が要ります(建設リサイクル法21条)。床面積の合計が80㎡以上の建物の解体は、分別解体が義務になり、発注者(あなた)が着工の7日前までに都道府県知事に届け出る決まりです(同法9条・10条、施行令2条)。届出の書類づくりを業者に代行してもらえる場合もあるので、見積もりに含まれているかを聞いてください。
アスベストについては、解体工事の元請業者が着工前に使用の有無を調べ、その結果を発注者に書面で説明する義務があります(大気汚染防止法18条の15)。説明の書面は、費用の根拠にもなるので保管しておきます。
解体前後の固定資産税:住宅用地特例が外れる時期
住宅が建っている土地(住宅用地)は、固定資産税の課税標準が価格の3分の1、200㎡以下の部分は6分の1に下がります(地方税法349条の3の2)。住宅用地かどうかは毎年1月1日時点で判定されるので、解体して1月1日に建物がなければ、その年度から特例が外れます。
例えば、価格(評価額)1,200万円、面積180㎡の土地なら、特例がある間の課税標準は200万円です(1,200万円÷6、筆者の計算)。解体すると、この特例はなくなります。ただし、特例のない土地にも税負担を急に増やさない別の調整の仕組みがあるので、「税額がそのまま6倍になる」わけではありません。実際の額は、土地のある市区町村の資産税の担当課で、解体した場合の見込みを聞くのが確実な方法です。
| 時期 | 1月1日の状態 | その年度の住宅用地特例 |
|---|---|---|
| 解体する前の年度 | 建物あり | 適用(勧告を受けていなければ) |
| 年の途中で解体した年度 | 1月1日には建物あり | その年度は1月1日の状態で判定 |
| 解体した翌年の年度 | 建物なし | 外れる |
一方で、傷んだ空き家を放置して市区町村から勧告を受けた場合も、建物が残っていても特例は外れます。仕組みは空き家の固定資産税:6倍になると言われる理由で詳しく扱っています。
売るなら解体が先か後か:古家付きと更地の比べ方
| 比べる点 | 古家付きで売る | 解体して更地で売る |
|---|---|---|
| 解体費 | 売主は払わない(買主が解体するなら価格に反映されやすい) | 売主が先に払う |
| 買い手 | 建物を直して使う人、建て替える人 | 新築用地を探す人 |
| 固定資産税 | 売れるまで住宅用地特例が続く | 1月1日をまたぐと特例が外れる |
| 建物の不具合 | 契約で建物の状態や責任の範囲を取り決める必要がある | 建物についての取り決めは不要になる |
| 空き家の3,000万円特別控除 | 売った翌年2月15日までに買主が耐震改修か取壊しをすれば対象になりうる(2024年1月1日以後の譲渡) | 取り壊してから敷地を売る方法として対象になりうる |
税の面では、相続した空き家の3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除)が大きな分かれ目です。1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた区分所有でない家などが対象で、売り方として「取り壊してから敷地を売る」「売った年の翌年2月15日までに買主が取り壊す」などが認められています。どちらの場合も、相続から売るまでの間に、事業・貸付け・居住に使っていないことが要件です。更地を一時的に貸駐車場にすると、この要件を満たさなくなるおそれがあります。取り壊してから売る場合は、取り壊してから売るまでの間、その土地に建物や構築物の敷地として使っていないことも求められます。そのほか、相続の開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること、売却代金が1億円以下であることが要件で、売却は2027年12月31日までに限られます(国税庁タックスアンサー3306番)。買主が取り壊す形を選ぶなら、買主の協力が欠かせないので、売買契約で取り壊しの時期や費用の負担を書面に定めておきます。要件の全体は相続した空き家の3000万円控除で確かめてください。
どちらが高く売れるかは、地域の買い手によって変わります。先に解体してしまうと元に戻せないので、古家付きと更地の両方の前提で査定を頼み、手取りの差と解体費を比べてから決めるのが安全です。
一括査定を使う場合は、査定額は売れる値段ではなく、各社が根拠を示して出す見込みである点に注意します(宅地建物取引業者には、価格について意見を述べるときに根拠を明らかにする義務があります)。申し込むと複数の会社から連絡が来ることがあるので、「古家付きと更地の両方で査定してほしい」と最初に伝えておくと比べやすくなります。
解体の流れ:見積もりから滅失登記まで
- 相続の整理:相続放棄をしないことを決め、共有なら全員の同意を書面で取る。名義の整理は空き家の相続登記は必要?。
- 補助金を調べる:市区町村に除却の補助制度があれば、契約や着工より前の申請を求められることがあるので、業者と契約する前に調べる。探し方は空き家の解体補助金の探し方。
- 家財の片付け:残す物を取り出し、処分する物を決める。
- 見積もりと契約:3社以上を比べ、契約は書面で結ぶ(工事の内容・代金・工期などを書面に記載して交付する決まりが建設業法19条にある)。
- 届出とアスベスト調査:80㎡以上の届出(着工7日前まで)と、事前調査の結果の説明を受ける。
- 近所へのあいさつ:工事の期間、車両の出入り、騒音の時間帯を伝える。業者と一緒に回るか、誰が回るかを契約時に決めておく。
- 工事と立ち会い:終わったら境界の杭や整地の状態を確かめ、写真を残す。
- 建物の滅失登記:取り壊しの日から1か月以内に申請(不動産登記法57条)。添付する書類は法務局の登記手続案内で確かめ、取り壊したことを示す書類を業者から受け取っておく。
- 市区町村への連絡:家屋がなくなったことを資産税の担当課に伝え、翌年度の税額の見込みを確かめる。
解体した後の土地の使い道は空き家の活用方法7つ:駐車場・賃貸・貸地の収支と向いている家で比べられます。売る以外の手放し方に迷ったら、相続した空き家はどうする?で全体の選択肢を見直してください。
よくある質問
Q. 相続放棄するかどうか迷っている間に、空き家を解体してもよいですか?
民法921条1号は、相続人が相続財産を処分したときは単純承認をしたものとみなすと定めています。建物の取り壊しは処分に当たるおそれがあり、そうなると相続放棄ができなくなりかねません。放棄を考えている間は解体の契約をせず、先に放棄するかどうかを決めてください。
Q. 兄弟と共有で相続した家は、自分の判断だけで解体できますか?
民法251条は、共有物に変更を加えるには他の共有者の同意が要ると定めています。建物の取り壊しはこの変更に当たると考えられるので、遺産分割の前や共有のままの間は、共有者全員の同意を書面で取ってから契約します。分け方が決まっていない場合は、先に遺産分割で誰が土地を取得するかを決めるのが順当です。
Q. 解体したあと、建物の登記はどうなりますか?
不動産登記法57条により、建物がなくなったときは、所有権の登記名義人などがその日から1か月以内に建物の滅失の登記を申請します。正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になりえます。名義が亡くなった親のままなら、相続人が申請する扱いが一般的です。申請の方法と必要書類は、建物のある地域の法務局の登記手続案内で確かめましょう。
出典・参考にした公的な情報
- 地方税法 第349条の3の2(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 空き家対策特設サイト(固定資産税の住宅用地特例の判定)(国土交通省)
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律 第9条・第10条・第21条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律施行令 第2条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 大気汚染防止法 第18条の15(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 不動産登記法 第57条・第164条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 建設業法 第19条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- 民法 第251条・第921条(e-Gov法令検索)(デジタル庁)
- No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例(国税庁)
出典の確認日:2026-10-24。制度や受付条件は変わることがあります。手続きの前に、各窓口の最新の案内を確認してください。
この記事は一般的な情報で、個別の法律判断・医療的な診断をするものではありません。